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小林 慶佑(オリックス)投手のルーキー回顧へ







 小林 慶祐(24歳・日本生命)投手 187/86 右/右
 




                       「好不調の波をなくせば」





 好調時の投球を見れば、上位指名確実というぐらいの投球を魅せる 小林 慶祐 。しかしボールの勢いを無くすことも少なく、球速が140キロぐらいしか出ないと、フォークとの単調な投球に終始し全く見栄えがしなくなる。この選手を見る時は、この2つの側面があることを忘れてはいけない。大学4年時にもガクッとパフォーマンスが低下していたし、今年も春先もパッとしない投球が続いていたという。そういった好不調の波をすることが、この選手の一番の課題なのではないのだろうか。


(ここに注目!)

 スラッとした手足の長い投手体型から、角度溢れる速球をビシッと投げ込んでくる。この時の球を観てしまうと惚れ惚れしてしまうのだが、いつもこういった投球ができるわけではない。そこを知って見ているのと見ていないのでは、雲泥に評価も変わってくる。

(投球内容)

 非常に今は、ゆったりとしたモーションから投げ込んできます。打者としては、なんとも嫌な間合いではないのでしょうか。

ストレート 常時140キロ台~後半 
☆☆☆☆ 4.0

 非常に角度を感じさせる球が、真ん中~低めに決まってくることが多い。それもボールは両サイドに散っており、コントロールも悪く無い。ただし上記にも記したとおり、調子が落ちると140キロ前後ぐらいしか出なくなり、なんとも見栄えが悪くなる。

変化球 フォーク、カーブ・スライダー 
☆☆☆★ 3.5

 フォークとのコンビネーションになり、投球が汲々なることが少なくない。しかし今年の都市対抗では、横滑りするスライダーやカーブなどを織り交ぜるなど、投球に幅をもたせようという意識があります。フォークにも一定の威力があり、中間球を上手く織り交ぜることで、フォークをより効果的に使えるようになってきました。

その他

 クィックは1.15秒前後と平均的で、牽制はあまり観られませんが鋭さはあります。むしろフィールディングがあまり上手くないことの方が、気になります。そういった野球センス、運動神経の良さは、あまり感じません。

(投球のまとめ)

 秋の日本選手権では存在感を遺憾なく発揮できましたが、都市対抗では緒戦負け。そういった意味では、もう少し観てみたかった気がします。代わりっぱなは良くありませんでしたが、ランナーがいなくなってからは素晴らしい投球でした。いずれにしても現時点では、リリーフとしての人材だと観て好いでしょう。

(投球フォーム)

 オフシーズンに作成した寸評のとおり、フォームは昨秋と変わっていないように思えます。「着地」までの粘りが平凡で、「開き」も早いフォームのため、ボールにある程度勢いがないと合わされやすいことは間違いありません。

 また肩への負担の大きなフォームなのも変わっていません。この辺が、好不調の大きな要因なのかもしれません。


(最後に)

 どうしても調子の好い状態が限られていて、それによって好不調の波が激しい可能性があります。もしそうだとすると、リリーフでもあまり無理させることができないということになります。そうかといって先発でこなせるほどの技量が、プロであるのかには疑問が残ります。

 非常に好調期間が限られており、幾ら素晴らしい球を投げる選手でも割り引いて考えるべきではないのでしょうか。ボールだけ見ていれば、上位24名(2位以内)のような投球に見えます。しかしいろいろ総合的に判断すると、3位前後の評価にとどまるかもしれません。短期的にはセットアッパーやクローザー的な活躍を魅せても不思議ではありませんが、長いスパンでみるとどうかという選手だと思います。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016年 都市対抗)





 




 小林 慶祐(23歳・日本生命)投手 187/86 右/右 (八千代松陰-東京情報大出身)
 




                       「プロ好みの素材」





 恵まれた体格を活かし、真上から投げ下ろして来る角度が売りの速球派。いかにもプロが好みそうな、スケール感溢れる本格派。東京情報大の4年時にもドラフト候補として注目されていたが、早くから社会人に進むことを表明しており、ドラフト戦線からは外れていた。モチベーションも低下していたのか? 最終学年のピッチングは冴えなかった。


(投球内容)

 都市対抗での登板はなかったが、日本選手権では4試合に登板し存在感を示した。良かった頃の大学3年生の頃の勢いを、完全に取り戻していたといえるのではないのだろうか。

ストレート 常時140キロ~MAX145キロ

 角度のある球筋のボールが、両サイドに散る。速い時には、140キロ台後半も連発するスピード能力がある。ボールに角度と勢いがあるので、145キロ前後出ている時は、力で押すことが充分可能。この選手はやはり、リリーフでこそ持ち味を発揮するタイプとの印象を受ける。

変化球 フォーク・スライダー・カーブ・カットボールなど

 大学時代には、先発でもフォークに依存しすぎる投球に苦言を呈していた。縦の変化に頼り過ぎて、どんどんピッチングが汲々になると。元々この選手のフォークは、ドロンとしており思ったほど空振りが取れない。日本選手権の投球を観ていると、スライダーを混ぜたり、余裕が出てくると緩いカーブを投げるなど、フォークに依存し過ぎない投球ができていた。他にも確か、カットボール気味のボールも持っていたと記憶する。

(投球のまとめ)

 大学時代は、自分の投球の不甲斐なさにイライラする場面も観られましたし、もっとコントロールがアバウトだった記憶がある。今は上手くボールが外に散っており、無駄な四死球もなくなってきているのではないのだろうか。以前よりも、まとまってきた感じはする。

 フォークに依存にし過ぎない投球もできていますし、マウンドでも自信に溢れており勢いを取り戻しています。今年はプロからも注目されるでしょうが、あえてリリーフに限定して起用して欲しいかと思います。大学時代はエースとして先発していた投手ですから、当然そういったことも可能でしょう。しかし彼の魅力を引き出せるのは、やはりリリーフだと思うわけです。



(投球フォーム)

今度はフォームの観点から、彼の可能性について考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を比較的高い位置では落とせており、お尻の一塁側への落としは、甘さは残すものの出来てはいます。そのため身体を捻り出すスペースはある程度確保できており、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのにも、それほど無理がないように見えます。

 「着地」までのタイミングを見ていると、足が地面を捉えるのは並ぐらいでしょうか。それほど粘りは感じませんが、身体を捻り出す時間は平均的。ステップが少し狭く股関節が固く見えるので、この辺がもう少し柔らかくかつ下半身が強化されて来ると、粘りが出てきて良い変化球を身につけられる可能性が広がります。

<ボールの支配> 
☆☆

 グラブが投げ終わったあと、しっかり抱えられているわけではありません。それでもグラブが遊んでしまっているというほどではないので、両サイドのブレには大きく影響していないようにも見えます。

しかし足の甲での地面への押し付けは、完全に足が地面から浮いてしまっています。これだと力を入れて投げると時に、ボールが上吊りやすいわけです。それでも「球持ち」はそれなりで、上から叩くことで多少上吊るのを防ぐことはできています。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを投げても、捻り出しに窮屈さは少ないはず。それでもフォークへの依存度は少なめにしないと、肘への負担は大きいでしょう。

 腕の送り出しの際には、ボールを持っている肩が上がり、グラブを抱えている肩は下がっていて、肩への負担は少なくないはず。将来的にあまり無理をすると、肩を痛め兼ねないので注意が必要かと。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りがそれほどないので、打者としてはあまり苦にならないフォーム。また体の「開き」が早く、いち早く球筋が読まれてしまうので、甘くない球を痛打される危険性はあります。それでも相当な角度と威圧感は打者は感じるはずで、この辺で合わされやすさを軽減している可能性はあります。

 腕は強く振られており、速球と変化球の見極めはつきにくいはず。しかしボールへの体重の乗せは充分とは言えず発展途上であり、もっと良くなっても不思議ではありません。現状のフォームでこのぐらいできるのですから、もっと乗せられるようになったら、前に飛ばないのではないのでしょうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」の早さに課題があります。「着地」「体重移動」は平均的ですが、まだ良くなる余地が。「球持ち」に関しては、思ったよりも良かった気がします。

 コントロールを司る動作が悪いのと、肩への負担の大きなフォームなのにはマイナス材料かと。それほどフォーム自体は、大学時代から変わっていないように感じました。


(最後に)

 大学時代の勢いのあるボールを取り戻しているので、これからはいかにピッチングを広げて行けるのか?それもリリーフの投球の中でも、そういったピッチングができるようだと楽しみ。

 順調にアピールして行けば、上位24名の中に入ってきても全然不思議ではない投手。特にプロ受けするタイプでしょうから、注目される1年になると思います。そんな時も足元を見つめて、自分の課題に向き合って行ければ更に上の投球が期待できそうです。


(2015年 日本選手権)








小林 慶祐(東京国際大)投手 186/80 右/右 (八千代松陰出身) 
 

 真上からビシッと投げ込んで来る140キロ台のストレートと、落差の大きなフォークとのコンビネーションで、来年のドラフト候補と期待される存在です。春のリーグ戦では、5勝1敗 防御率 1.52 でチームを大学選手権に導きました。リーグ戦では、最優秀防御率とベストナインに選出。ただ大学選手権では、思い通りのピッチングはできず、全国の壁の高さを痛感することになりました。

(投球内容)

 スピードガン表示の厳しい東京ドームでも、初回はコンスタントに140キロ台を記録し、MAX143キロを記録。圧倒的にフォークとのコンビネーションで、時々スライダーを挟む程度。ストレートの勢い・フォークの落差はあるものの、どうしてもフォークに頼りきった投球になると、コンビネーションが単調になり投球が汲々となってしまいます。細かい制球力に欠け消耗も激しく、イニングを重ねるにつれ速球の勢い・フォークの落ちも鈍ってきます。現状は、上のレベルを意識すると、先発では苦しいなぁといった印象が残ります。

 牽制は鋭いのですが、フィールディングはあまり上手くは見えません。現状は、フォークとストレートの威力が勝って、細かいコントロール・投球の「間」や駆け引きとかそういったものはありません。来年プロを意識するのであれば、もう少しフォークだけに頼ららないピッチングを身につけるべきではないのでしょうか。

(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせるので、お尻は一塁側に落とせます。体を捻り出すスペースは確保できているので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げるのには無理がありません。ただ「着地」までの粘りはそれほどでもないので、体を捻り出す時間は平均的。そうなると変化球のキレがイマイチだったり、曲がりが小さかったりします。もう少し投球の幅を広げる意味でも、着地までの「間」を稼げるようになりたいところ。

<ボールの支配> 
☆☆

 グラブを抱える意識がないので、フォームが暴れて制球が安定しません。足の甲での地面への押し付けも浮いてしまい、ボールがどうしても高めに抜けがち。けして指先の感覚も良さそうではないので、どうしても後はボールに訊いてくれ!といった投球になってしまいます。けしてストライクが入らず苦しんでいるわけではありませんが、上のレベルで通用するにはもう少し思い通りボールを制御できるようにしたいです。

<故障のリスク> 
☆☆

 お尻を落とせるフォームなので、肘への負担は少なそうと言っても、圧倒的にフォークを多投するので心配です。まして腕を真上から振り下ろし、グラブを持っている腕は下がり、ボールを持っている腕は極端に上がるような格好で投げていますから、肩への負担は大きいはず。まして力投派ですから、体への負担はかなり大きいと考えて好いでしょう。故障には充分注意して、取り組んで欲しいと思います。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りもそれほどでもないですし、体の「開き」も早めで、打者としては球筋が見極めやすいタイプ。少しでもボールの勢いが鈍って来ると、つけ込まれる危険性があります。

 真上から豪快に投げ下ろす割に、振り下ろした腕は体に絡んできません。またボールへの体重の乗せも、踏み込んだ足が突っ張ってしまい、前に重心が移って行きません。現状は、上半身の強い振りでキレを生み出しており、ウエートの乗ったボールが投げ込めているわけではありません。

(最後に)

 ボールの勢いもありますし、フォークの落差にも観るべきものがあります。そのため短いイニングならば、ある程度上のレベルでもボールの威力で押せる気は致します。しかし長いイニング・登板過多になってきた時に、それに対応できるほどのコントロール・投球術・フォームの裏付けなどがないだけに、プロでは不安がつきまといます。その辺の問題を、来年までにどのぐらい解消できるのか、それにかかっていると思います。それでも来年のドラフト候補としてマークできる素材ですし、千葉リーグから直接ドラフト指名される可能性を秘めている楽しみな選手だと言えるでしょう。

(2013年 大学選手権)