16sp-1
谷岡 竜平(20歳・東芝)投手 181/79 右/右 (成立学園出身) |
「着実に力は付けている」 高卒2年目から、東芝のエースとして活躍。さらにドラフト解禁となった今年は、チームの主戦としてその仕事を全うした。まだ絶対的な安定感はないものの、大舞台でも自分の投球に堂々と徹することができた点は、エースの名に恥じない内容だった。 (ここに注目!) 立ち上がり不安定だったり、不用意に甘く入ってランナーを背負う場面も少なくない。しかしこの投手の持ち味は、怪しくなってきたところからの踏ん張りにあり、そういった追い込まれてからの精神面の強さこそが売り。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んでくる。 ストレート 140~150キロ ☆☆☆☆ 4.0 先発でも安定して140キロ台中盤を投げ込める投手であり、ボール自体の力も安定して高い。打者の空振りを誘うような球質ではないが、相手のバットを押し返せるある程度の勢いと球威があり、その点はプロに混ぜても見劣りしないだろう。球筋もピンポイントではないものの、ある程度外角に安定して集められる。昨年までは、何処か狙ったところに収まりきらなかった印象があった。しかし今年は、そういったバラツキもかなり減ってきたのではないのだろうか。それでも都市対抗本戦の2試合では、12回1/3イニングで四死球は5個。四死球率は、40.7%とやや高いのは気になるところか。 変化下級 フォーク・スライダー・カーブなど ☆☆☆ 3.0 完全に変化球は、フォークボールとのコンビネーションになり、スライダー・カーブの比率が減っている。このフォークはストンと落ちるよりもドロンと落ちるチェンジアップ的な効果であり、カウントを整える役割も少なくない。先程、関谷亮太(JR東日本-ロッテ)のルーキー回顧を行ったが、フォークボーラの割に三振が奪えないという部分では関谷と良く似たフォークを投げる。もう少しスライダー・カーブの頻度を増やさないと、投球が汲々となってしまうだろう。 その他 昨年までは、牽制はとりあえず軽く入れてくるという感じ。しかし今年に入り、走者の足を封じようとする鋭いものも観られて平均以上。クィックは、1.1秒~1.2秒ぐらいと平均的で、ベースカバーに素早く入るなどフィールディングも悪くありません。 (投球のまとめ) ボールそのものの威力は、一軍でも充分通用するものがあると思います。ただしフォークに依存し過ぎた投球の幅の無さ、本当のコントロールの無さなどを考えると、一軍半レベルの投手との印象。もし1年目から一軍で活躍するとなると、150キロ級のボールを連発できるリリーフではないかと思います。その辺がうまくハマると、3位でも面白い存在になるかもしれません。 (投球フォーム) 引き上げた足を、空中で素早く曲げ伸ばしするタイプのフォーム。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足がピンと伸びる位置が、昨年よりも高くなっているかもしれません。お尻がまだバッテリーライン上に残りがちではあるのですが、昨年よりも一塁側に落とせるようになりつつあります。そういった意味では、ある程度身体を捻り出すスペースを確保。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球をなげるのにも無理がなくなってきています。 「着地」までの粘りも、昨年より作れていて淡白さが薄れました。そのため身体を捻り出す時間が確保でき、変化球のキレや曲がり幅を生み出す原動力になっています。昨年よりも、だいぶ下半身が使えるようになりつつあります。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで身体の近くで抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。まだ足の甲での地面への押しつけが浅いので、力を入れてしまうとボールが上吊りやすいように感じます。また「球持ち」が非常に良くなっており、指先までかなり力を伝えられるようになってきました。あとはあまり肘を立てて投げられないので、ボールがしっかり叩けていないのが残念。この辺が改善されると、かなり良くなるように感じます。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としに甘さは残すものの、以前よりも窮屈さがなくなったのはフォークボーラーだけに良かったかと。それでも肘への負担は少なくないでしょうから、その辺充分注意したい。 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も大きそうではない。それほど力投派というほどでもないので、リリーフで登板過多にならなければ、それほど心配はなさそう。身体も丈夫そうだし、何より春のスポニチ大会~秋の日本選手権まで調子を持続できる点は素晴らしい。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りも出てきて、打者としては合わせやすいフォームではなくなりつつある。それでもまだ身体の「開き」が少し早いフォームなので、甘くない球でも打ち返される可能性は秘めている。 腕はしっかり振れているので、速球と変化球の見極めはつき難い。その割にフォークで空振りが誘えないところは、正直気になっている。ボールへの体重の乗せも、ボールに体重を乗せてからリリースできるようになってきており、打者の手元まで勢いの落ちないボールは投げられている。 (フォームのまとめ) フォームの4大要素である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」「球持ち」「体重移動」が昨年から比べると大幅に良化。しいて課題を言えば、まだ「開き」の部分がやや甘く見やすいところが気になるところ。 お尻が落とせるようになり故障のリスクは軽減したものの、フォークへの依存度が増しているのは気になる材料。細かい制球力に欠けるのは、足の甲の押し付けの甘さとボールを上から叩け無い腕の振りからではないのだろうか。 まだまだ成長途上の段階との印象ではあるが、自分の課題を見つけてそれを改善しようとする意欲を強く感じる。まだまだ自己追求して、進化して行ける選手ではないのだろうか。 (最後に) まだプロのローテーションを担うほどの投球の幅、制球力などがあるかと言われると微妙。しかしリリーフならば、球の力は充分一軍級だし、フォークを多投するという今のピッチングスタイルでも誤魔化せる可能性は高い。現状はまだ、一軍半レベルの投手との印象は拭えないが、課題を見つけて努力できるタイプだけに、プロで生き残る術を自分自身見つけて行ける選手ではないのだろうか。 しかしリリーフタイプだと思われた 高木 勇人(巨人)も1年目から9勝できたように、アマ時代の高木と比較してもむしろ谷岡の方が魅力を感じるぐらいの選手。そう考えると1年目から、こちらの想像以上にフィットする可能性は秘めている。ひょっとすると、新人王候補のダークホース になりえるかもしれない。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2016年 都市対抗) |
谷岡 竜平(19歳・東芝)投手 180/80 右/右 (成立学園出身) |
「柿田パターンあるか?」 高卒2年目にして、東芝のエース格に成長した 谷岡 竜平。高卒3年目である程度社会人で実績を残している選手は、ドラフトでも実戦力+伸び代も期待されて評価されやすい。近年だと 柿田 裕太(日本生命-DeNA1位)などが、その典型的なパターン。そういった意味では、谷岡のここまでの実績は柿田以上だと言える。 (投球内容) ストレート 常時140キロ台~MAX150キロ すでに先発でもコンスタントに140キロ台中盤を連発し、速い時には150キロにも到達。そのボールの勢い・球速は、社会人の先発投手の中でも目立つ存在。ストレート自体のコマンドは結構ばらつき不安定なのだが、ストライクゾーンの枠の中で暴れているという感じで的が絞りづらい。 変化球 スライダー・ツーシーム・スプリットなど 球速のある動く系のボールが多く、正直何を投げているのかわからない。130キロ台中盤~140キロぐらいで少し沈んだり、シュートしたりという感じで、何か明確な変化球を投げている感じはしてない。唯一わかるのは、スライダーを投げている時ぐらいか。この微妙な変化が、相手にとっても厄介な一方で、自分でも細かくは投げ分けられていない。 その他 牽制は、とりあえず一息いれるためとかそういった使い方で、走者を刺そうという意味合いは薄い。クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまずで、ベースカバーなどにも素早く対応できていた。 (投球のまとめ) フォーシームのストレートは、コンスタントに145キロ前後~150キロぐらい投げ込める。その一方で、135~140キロぐらいの動くボールを多く使い、これがどう変化して来るのかは予測が難しい。ただし動く系のボールを多投するのに大事なのは、あくまでも低めに集められる、コースを突けるということ。そうでなければ、ただの棒球となって餌食になりやすい。 現状の谷岡のアバウトなコントロールは、まさにアマ時代の 柿田 裕太 の投球と同レベルであり、プロ相手では今のままでは厳しいだろう。そのためにも今年は、沈む系は低めに集め、曲がる系はコースに投げるぐらいの意図的なコントロールをモノにしたい。そうしなければ、いつまでも収まりの悪い消化不良の投球から脱却できない。逆にこの辺の部分に成長が見られれば、ドラフト1位候補に浮上してきても不思議ではないだろう。そのぐらいの力は、この選手は秘めている。 (投球フォーム) では今度は、フォームの観点から、彼の可能性について考えてみよう。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側に落とせません。そのため身体を捻り出すスペースが確保できず、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化には適しません。それでもフォーク系の沈む球を投げるのですが、これは落差も小さくスプリット気味な球なのではないのでしょうか? 「着地」までもあっさり地面を捉えており、身体を捻り出す時間も充分ではありません。そのため曲がりの大きな変化やキレのある変化球の習得は、厳しいと言えます。しかしそれを逆手にとって、ストレートを微妙に動かす球種で投球を組み立てていると考えられます。 <ボールの支配> ☆☆ 投げ終わったあとに、グラブは少し身体から離れており、両サイドの投げ分けは不安定。足の甲の地面への押し付けも浮いてしまい、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでいて「球持ち」もそれほどではなく、指先でボールをコントロールしている感じもしません。コントロールがアバウトなのも、この辺の動作がしっかり出来ていないからだと考えられます。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻が落とせない割に、フォーク系の球を多投するので、腕を送り出すときに窮屈になり肘への負担が心配されます。フォークではなく、あくまでも握りの浅いスプリットやツーシーム程度に留めるべきではないのでしょうか。 腕の送り出しには無理は感じられず、肩への負担は感じまられません。それほど力投派でもないので、疲労の消耗が激しいタイプではないと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」まではあっさりしているので、打者としては合わせやすいフォーム。それでも「球持ち」は抑えられており、コースを間違わなければ、痛打を浴び難いのではないのでしょうか。 腕の振り、ボールへの体重の乗せも発展途上であり、まだ改善の余地があります。球速ほどボールが手元まで来ないのは、単にボールを動かしているだけでなく、フォームによる影響も少なくありません。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」に課題があり、あとの部分も平均的で発展途上。 お尻が落とせない割にフォークを使っている部分もあり、肘への負担を感じます。グラブの抱え、足の甲の押し付けの甘さもあり、コントロールへの不安も拭えません。投球フォームとしては、課題の多いことがわかります。 (最後に) 高卒2年目で東芝のエース格に成長している点は、高く評価できるポイント。フォーシームは、145キロ前後~150キロ級のボールを投げ込めるスピード能力も評価できます。 気になるのは、ボールを動かす球のコントロールがアバウトな点。沈む球は低めに、横に動く球はコースを突けるコントロールがあることが、動かす投手が大成するポイント。今年は、それができるようになっているのかが、大きな見極めのポイントではないのでしょうか。 投球フォームもけして実戦的とは言えず、現時点では素材型・あるいは危険な素材という印象は拭えません。スカウトも、柿田の時の反省を元に、選手を見極めていって欲しいものです。谷岡自体も、もう一歩深く掘り下げて、投球を探求して欲しいと願っています。 (2015年 都市対抗) |