16ky-5
小川 晃太朗(龍谷大平安3年)中堅 180/72 右/右 | |
私は迷スカウト活動をして17年目になるが、その当初からストップウォッチを持参して試合を見ている。これまで数多くのタイムを図ってきたが、彼ほど速いタイムを出す右打者を未だかつて見たことがない。一体彼の身体能力は、いかなるものなのか改めて冷静に分析してみた。 (ここに注目!) 桁違いの走力だけでなく、肩・守備、強烈なヘッドスピードを誇るスイングなどを見ていると、この選手の秘めたるポテンシャルは桁違いなのではないのだろうか。理屈抜きに、この選手の可能性を見つめてあげて欲しい! 走塁面: ☆☆☆☆★ 4.5 センバツ・緒戦の明徳義塾戦では、右打席から4.05秒という破格のタイムを叩き出しビックリした。このタイムを左打者に換算すると、3.8秒前後に相当する。プロに混ぜても、トップクラスの走力であることは間違いない。しかし驚いたのは、2回戦の八戸学院光星戦でのタイムだった。なんとショートゴロという引っ張った打球にも関わらず、一塁にヘッドスライディングして叩き出したタイムは、3.90秒。左打者でも4秒を切れば俊足だというのに、右打者で3.90秒を叩き出した打者など未だかつて一人もいなかった。このタイムを左打者に換算すると、3.65秒ぐらいに相当するのだ。こんなタイムは、セーフティバントであらかじめ左打者が走り出さない限り出せるタイムではない。彼の走力は、間違いなく17年間の活動の中でも最も速い部類だと断言できよう。 まだまだ走塁技術には課題があったといわれる秋の時点での成績では、36試合で19盗塁を記録。それでもこれをプロの143試合で換算すると、シーズン75個のペースで盗塁を決めていたことになる。更に一冬超えて、どのぐらいの走塁技術を身につけているのか? しかしセンバツでは、4試合で敗れた智辯学園戦で決めた2盗塁のみしか走れなかった。絶対的な走力がありながら、まだ技術的な部分では課題を残していることが伺われる。 守備面:☆☆☆★ 3.5 打球への反応、落下点までの入り、キャッチングなどを見ていても、けして勘の悪い選手でも、下手な選手でもないようだ。守備範囲の広さにも定評があり、基準レベル以上の守備力はありそう。送球を見ていても基準~以上の地肩もありそう。 (打撃内容) 新チーム結成以来の秋の成績は、打率.380厘とけして低くはない。しかしセンバツでの4試合では、打率.167厘と全国レベルへの対応に苦しんだ。強烈なヘッドスピードを持っている一方で、ボールをコンタクトする対応力に課題を残す。 <構え> ☆☆☆ 3.0 スクエアスタンスで両足を揃え、グリップは高めに添えられている。腰の据わり具合・全体のバランスは悪くないが、両目で前を見据える姿勢はもう一つ。両目でしっかり前を観ないと、球筋を追うときに錯覚を起こしやすくボールを捉えるのに影響する。 更に構えた時に身体を動かす「揺らぎ」の動作が見られないせいか? どうも固く脆い印象を受けてしまう。もう少し全身を柔らかく使い、リラックスすることを心がけたい。 <仕掛け> 早め 投手の重心を下げるときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。これは典型的なアベレージヒッターに観られる仕掛けであり、確実性を重視したスタイル。しかし時々ベース側につま先立ちして、リリース直前に動き出す「遅すぎる仕掛け」を使うこともあり、まだまだ始動のタイミングに悩みがあるのかもしれない。始動が遅い方がしっくり来るのであれば、気持ち動き出しを早くするだけでも良いのではないのだろうか? <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を引き上げて回し込み、ベース側に踏み込んで来る。始動~着地までには時間的余裕があり、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすい。ベース側にインステップして踏み込んでくるので、外角を意識した打撃スタイルなのがわかる。踏み込んだ足元は、インパクトの際にブレず我慢。そのため外角の厳しい球や、低めの球にも喰らいつくことができている。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、速い球に立ち遅れる心配はない。気になるのは、ボールを呼びこむ際にグリップを引き上げるヒッチする癖があり、この辺が余計な動作となって確実性を損なう要因になっているかも。しかしそれ以上に気になるのは、バットを振り出すときに遠回りに軌道してしまい、ボールを捉えるまでにロスが観られるということ。それが何より、確実性を損なう最大の要因になっているのだろう。 それでもボールを捉える頃には、バットの先端であるヘッドを立てる意識があるので、ボールを広い面で捉えられている。こういった選手は、高い位置からインパクトまで振り下ろすダウンスイングで振り出すことを心がけると、バットが遠回りになるのを修正しやすくなる。 スイング自体は鋭く、ポテンシャルの高さを強く感じる。あとは、ボールを確実に捉えるための術を身につけるられるかにかかっている。 <軸> ☆☆☆ 3.0 足の上げ下げは大きくはないものの、目線はそれなりに動いている。身体の開きは我慢できており、軸足は大きくは崩れていない。 (打撃のまとめ) 持っている肉体の資質は高そうなものの、ボールを的確に捉えるためには無駄な動作が多い。最大の課題は、スイング軌道が遠回りなので、ここを改善できるかにかかっている。将来的にも、確実性をいかに改善して行けるかがポイントになるのではないのだろうか。 (最後に) 技術的には課題があるものの、走攻守すべてに関して可能性を秘めた素材だといえよう。何より走力に関しては、プロでもトップレベルになれる身体能力を秘めている。守備の資質も悪くないので、まずここから上のレベルへのとっかかりになると良いのだが。 スイングにひ弱さがあるわけではないので、打撃も箸にも棒にもといった選手ではないようだ。現状は明らかにドラフトレベルの打力の持ち主ではないのだが、プロの指導次第ではどうにかなるのではないかという淡い期待も抱きたくなる。本人に高いプロ志向があるのならば、育成枠あたりでの指名ならば指名して来る球団が出てきても不思議ではない。個人的には非常に興味深い選手であり、夏までに打撃に変化が観られるのか? 最後まで見極めてゆきたい。 蔵の評価:追跡級! (2016年 選抜大会) |