16ky-28
根本 薫(霞ヶ浦3年)投手&外野手 185/82 左/左 |
「えっ、投手評価なの?」 本人ですらプロ志望届けを提出する時に外野手としていたのに、指名したオリックスは左投手としての力量も買っての指名だった 根本 薫。左投手としてはどのような選手だったのか? 投手としてのレポート作成してみたい。 (プレースタイル) この夏の茨城大会では、3本塁打・8打点・打率.368厘 で存在感を示した。投手もこなす強肩と俊足で、鋭い当たりを連発する左の強打者としての注目度が高かった。左腕からMAX140キロを記録し、まずは投手としての可能性も模索し、球団では二刀流で適性を見極めてゆく方針だという。 (投球内容) ちょっと肘が突っ張って外旋するような投げ方であり、けしてしなやかなフォームとはいえない。 ストレート 130~140 ☆☆★ 2.5 普段の球速は、130キロ~中盤ぐらいという感じで、驚くようなキレや勢いは感じられない。その証に、高めに浮いた速球を打ち返されるケースが多い。力を入れると135~140キロぐらいの球速になり、それなりに勢いと強さは感じられるのだが。またコントロールも大まかに両サイド散らせて来る程度で、高めに甘く入ってくることも少なくない。コントロールの精度は、それほど高くない。 変化球 カーブ・スライダーなど ☆☆★ 2.5 変化球は、緩いカーブでカウントを整えたり、スライダーを織り交ぜてくる。投球を観る感じでは、チェンジアップらしきボールは確認できず。カウントを取ることは可能だが、打者を仕留めきれるほどの絶対的な威力は感じない。 その他 クィックは、1.20~1.30秒ぐらいと、やや遅い感じ。これでも走者が常に見える状態の左腕投手だけに、なんとか許されるところ。逆に背中越しになるためフォームを盗まれ三塁盗塁をされたりすることもあり、走者への引きつけには優れていない。 また牽制も軽く入れる程度で、所作を見ていると野手としては内野手よりも外野手の方が適している。 (投球のまとめ) 投手としては、普通の高校生左腕という感じで正直ドラフトでかかるような投手だとは思っていなかった。球団は、彼の投球に何を見出したのだろうか? その辺の理由がよくわからないので、フォームを分析する中で考えてみたい。 (投球フォーム) ランナーがいなくてもセットポジションで投げ込んで来る選手で、下半身をうまくリードできるのが特徴。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻がバッテリーライン上に残って落とせていません。これだと身体を捻り出すスペースが充分確保できず、身体を捻りだして投げるカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に落差のある球の習得に苦労します。そのため投球が単調になったり、決め手に欠ける投手になりやすいわけです。 それでも「着地」までの粘りはよく、うまく足を前に逃がすことができています。これだと身体を捻り出すのに必要な充分な時間が確保。カーブやフォークといった球種の習得には向きませんが、それ以外の変化球のキレや曲がりの大きさに大きな影響を及ぼします。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定しやすい。また足の甲の地面への押しつけも充分できているので、力を入れても上吊り難い。しかし実際は、まだかなりボールがバラついたり高めに抜けることも多く、もう少し「球持ち」が良くなり指先まで力を伝えられる、ボールをもっと押し込んでリリースできるようになると、土台は良いだけに制球は安定しそう。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻を落とせない割にカーブを多く投げてくるので、肘への負担が心配される。さらにテイクバックした時に、背中のラインよりもかなり肩が後ろに入り込んでおり、故障の原因になりやすい。 腕の送り出しも、ボールを持っている肩が上がり、グラブを抱えている肩が下がっている。このような場合は、腕の送り出しに無理があり肩を痛めやすい。力投派ではないので疲労はためやすくはないと思うが、故障には充分注意してもらいたい。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りが作れるので、打者としては「イチ・ニ~のサン」の「ニ~の」粘りによりタイミングが図り難い。ボール出処も隠せていて「開き」も遅いので、打者としては厄介なフォーム。 腕も適度に振れており、身体に投げ終わったあと絡んでくる。これにより、打者の空振りを誘いやすい。あとはもう少し「球持ち」を我慢して、ボールに体重を乗せ終わるまでリリースを遅らせたい。そうしたら打者の手元まで、グッと乗ってくる勢いのあるボールが投げられるだろう。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、下半身の使い方に優れ「着地」や「体重移動」に優れている。あとは「球持ち」を良くして指先の感覚やボールの押し込みなどを可能にしたい。 コントロールを司る動作にも優れているが、故障のリスクが非常に高いところが心配点。ここに気をつけて、今後も鍛錬を積んで欲しい。 (最後に) 現時点では、何か凄い球を投げるとか、武器になる球があるのだとか、投球センスや精神面が素晴らしいとかそういったものは感じられない。その一方で、非常に打ち難いなフォームをしており、打者としては厄介。投手としての可能性を探るとすればこの部分で、左腕だということ。この打ち難さに、可能性を見出したとしか考え難い。 個人的には野手かなと思えるのだが、野手の関するレポートは次回また行いたい。果たしてプロでは、どちらの才能が開花するのか、それとも大谷翔平(日ハム)のように、両方の可能性で秀でるのか? |
根本 薫(霞ヶ浦3年)中堅 185/82 左/左 |
「野手寸評」 オリックスから指名された 根本 薫 は、誰もが野手としての才能を評価をしての指名だと思っていた。しかしオリックスは、投手としての才能も買っているようで、まずはタイミングを図り難い左腕での適正をみるという。そこで前回は、投手としての寸評を作成した。しかし今回は、改めて野手としての寸評も作成しておきたい。 (ここに注目!) 3年夏の茨城県大会では、3本塁打・8打点・打率.368厘 の好成績。 爆発的な活躍を魅せ、改めて県下屈指の左打者という評価を不動のものにした。 守備・走塁面 一塁までの塁間は、左打席から4.0秒前後で走り抜ける。プロに混ぜれば絶対的なタイムではないが、基準レベル以上の俊足であるのは間違いない。プレーを見ている限りは、それほど走力を全面に出す感じはなかったが。 試合の模様を見た夏の明秀日立戦では、打球が飛ばす守備がよくわからなかった。投手としては140キロを越えることもあり、強肩であるのは間違いないのだろうが。強肩、俊足の身体能力があるのは確かだが、走れるのか守れるのかのレベルは今回の観戦だけではよく掴めなかった。 (打撃内容) ツボにハマればスタンドインのパンチ力はあるようだが、基本は野手の間を鋭く抜ける中距離打者のではないかという気がする。しかし観戦した明秀日立戦では、4打数で無安打・2三振。良いところがなく最後の夏を終えることになる。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前足をしっかり引いた左オープンスタンスで、グリップの高さは少し低めに添えている。腰の据わりはよく、両目では真っ直ぐ前を見据えられているところは良いところ。全体のバランスとしては、少し癖のある構えとなっている。 <仕掛け> 早め 投手の重心が沈みはじめてから動き出す「早めの仕掛け」を採用。これは、対応力重視のアベレージヒッターに多く観られる始動。 <足の運び> ☆☆★ 2.5 足を引き上げ回し込み、ベース側に離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」は充分取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には対応しやすいはず。アウトステップを採用するように、内角の球を強く意識しているのがわる。恐らく長打は、この内角の球を引っ張った時に発生するのではないのでしょうか。 その一方で外角の球を捌く際に、足元がブレてしまっています。これだと身体の「開き」は抑えられず、ボールにもしっかり力が伝えられないスイングになってしまいます。そのため配球の7割を越える、外角への対応に課題を残している。 <リストワーク> ☆☆☆ 3.0 打撃の準備である「トップ」を作るまでは自然体で、ボールを呼び込む際に力みがないところは良いところ。ただしバットを引くのが遅れ気味で、一定レベル以上のスピードには立ち遅れる心配があります。 足元のブレがある内角に特化したスイングなのかと思ったら、スイング軌道はインサイド・アウトではなく逆に外角の球をしっかり叩く感じのスイングになっていてチグハグです。バットが上手く抜けて来ないので、内角の捌きはけして上手くなさそう。アウトステップを採用しているのも、その苦手な内角の振りを上手く促すためなのかもしれません。 外角の球に対しては、インパクトまでロスはありません。しかし下半身の方が開いてしまっていて、手打ちになってしまうわけです。それでもバットの先端であるヘッドを立てようという意識があるので、スイングが遠回りになることはなくボールを当てることはできているのですが腰が入りません。 <軸> ☆☆ 2.0 足の上げ下げがあり、目線の上下動は結構見られます。更に身体の開きも我慢できず、軸が安定しません。良い点をあげるとすれば、軸足の内モモの筋肉が発達していて、捉えた打球が強烈になる理由は頷けます。 (打撃のまとめ) 内角を捌くにも、外角を叩くのにも欠点があり、非常に打てる球が限られるのではないかと危惧します。アテ勘が悪いというよりも、メカニズムの問題であり、今後の改善は望める部分だと思います。 特に物凄く振りが鋭いとか、当てるのが上手いとか、ボールを見極める「眼」が素晴らしいという感じでもなく、この試合を観る限りは野手としても微妙というのが率直な感想でした。 (最後に) 守備・走塁ではよくわからない部分もあり、打撃でも非凡さがあまり伝わってきませんでした。そういった意味ではオリックスのスカウトが、左腕として可能性を求めたのもわからなくはないのかという感じが。この試合を観る限りは、投手でダメなら野手でもという、積極的なコンバートを前提にできるのかは微妙だと思いました。果たしてプロで、どのような爪痕を残すのか注目してみたいと思います。 (2016年夏 茨城大会) |