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九鬼 隆平(ソフトバンク)捕手のルーキー回顧へ







九鬼 隆平(秀岳館3年)捕手 181/82 右/右 
 




                        「高校NO.1の評価」





 打つ・投げる・走る と一つ一つのスペックが高く、高校NO.1捕手だと位置づけられる捕手。特に今年は、大学・社会人含めても捕手の人材が薄く、彼にとっては追い風となっている。


(ここに注目!)

 勝負どころで力を発揮する精神力の強さ、チームをまとめるキャプテンシーなど、単に才能だけに恵まれた選手ではありません。U-18の日本代表チームでも正捕手を任されていたのは、そういった部分も評価されていたからでしょう。


(ディフェンス面)

 松下電器でチームを日本一に導いたり、数々の実績を残してきた 鍛冶舎巧 監督の意図を汲み取れる、中学時代からの師弟関係。昨年よりもミットの存在を投手に示せるようになり、的を大きく魅せるために大きな身体を小さく屈める構えにするなど、投手の投げやすさを重視するなど意識が変わってきました。昨年まではどうもプレーが雑で粗っぽい部分が目立っていたのですが、捕手らしくなってきたというのが率直な感想。

 まだ示したミットを地面に一度着けてしまう癖があるので、ワンバウンド処理などの際に立ち遅れることが見れます。それでも低めへのミットの出し方、反応などはだいぶよくなってきました。ボールが収まる時も、ミットがブレることがなく力負けしません。ボール押し込むほどのものはありませんが、キャッチングもかなり成長してきています。

 多彩な投手陣を上手くリードするなど、けして勘だけでプレーしているわけではないようです。二塁までの到達タイムは、1.8秒台前半~1.9秒台ぐらいとプロレベル。地肩自体は充分プロで通用すると思いますが、投げる時に型を作れないまま投げてしまうので、コントロールが安定しません。

 細かいことを言うとキリがないのですが、捕手としても純粋にドラフト候補として評価できる選手になりつつあるということ。以前は、将来的には他のポジションにコンバートかなと思っていましたが、その印象はだいぶ薄れました。


(打撃内容)

 春までは、癖のある選手でプロでどう直せるか?と懐疑的に見ていました。しかしその辺は改善されて、技術的にも上のレベルでも使えそうな動きを魅せるようになってきました。また身体能力が高いだけでなく、状況に応じた打撃もできる頭の良さも持っています。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 ほぼ両足を揃えカカトを浮かし、グリップは高め脇を閉じて構えます。腰の据わりは悪くはないものの、両眼で前を見据える姿勢・全体のバランスとしてはそれほどでもなく、構え自体はまだしっくり来ません。それでも選抜のときはクローズドスタンスだったのを、この夏はオーソドックスな形に変えていました。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がる途中ぐらいで動き出す、「早めの仕掛け」を採用。これは、アベレージヒッターに多く観られる仕掛けであり、春よりも若干早くなっていました。より粗っぽい打撃の確実性を、上げようという意識があったのかもしれません。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 足の引き上げを小さくして、地面をなぞるようにしてベース側に踏み込みます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には合わせやすいはず。ベース側に踏み出すように、外角を意識したスイングになっています。

 踏み込んだ足のブレは少なく、外角の厳しい球や低めの球にも食らいつけるようになっています。選抜のときは足を大きく引き上げて踏み込んでいましたし、オーソドックスにまっすぐ踏み出していました。

<リストワーク> 
☆☆☆☆ 4.0

 あらかじめバットを捕手方向に引いているので、早めにトップを作れて速い球には立ち遅れません。トップを深く取れているのでは良いのですが、早くからバットを引くと前の肩が後ろに引かれてリストワークの柔軟性を損なわれやすいので注意したいところ。

 バッとの振り出し自体は、上からミートポイントまで振り下ろして来るインサイドアウトの軌道でロスは感じません。真ん中~内角よりの球を引っ張るには、適したスイングだといえます。バッとの先端であるヘッドも下がっていないように見えるので、スイング軌道にロスはないように思います。最後まで、力強く振り抜けています。

 選抜までは、かなり遠回りバットがまわっていたのを夏までに改善してきました。あとは外角の球をしっかり叩けるように、しなりを活かしたスイングを身につけられるかではないのでしょうか。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは小さい割に、自分からボールを追いかけてしまうのか? 頭は結構動いてしまっています。身体の開きは我慢でき、軸足も大きくは崩れていませんでした。

(打撃のまとめ)

 身体に力はあるので、力負けするというよりも脆いとか粗いという感じがします。それでも昨秋から比べると、驚くほど技術的に改善されてきており、悪い癖はなくなってきています。ただそういった基本に忠実なスイングが、彼に合うかどうかはこれから彼が判断してゆけば良いこと。自分あったものは何かを見極められる頭の良さ、センスはある選手だと考えています。

(最後に)

 この夏観ていて驚いたのは、足が想像以上に速いのだということに気がつきました。特に一塁までの到達タイムよりも、ベースランニングなど長い距離を走らせると持ち味が発揮されます。

 これまでは身体能力に頼ったプレーをしていましたが、この一年間でそういった部分も改善されつつあります。また捕手としても、だいぶ捕手らしくなってきたという感じがします。それでもプロの一軍戦力になるには5年ぐらいはかかりそうで、いろいろと学ばなないといけないところは多いでしょう。しかし鍛えがいのある素材であり、少しずつ積み上げて行ける頭の良さも感じます。教えればそれだけ吸収できる選手、それがこの 九鬼 隆平 ではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016夏 U-18アジア選手権)










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九鬼 隆平(秀岳館2年)捕手 181/78 右/右 





                    「数少ない捕手の注目選手」





 今年の高校球界には、プロ注目の捕手が不足している。そんな中、この 九鬼 隆平 は、センバツで数少ない注目捕手。父は、松下電器で活躍した 九鬼 義典 。 監督は、元松下電器監督の 鍛冶舎巧 。大阪のオール牧方時代からの、師弟関係だという。

(ディフェンス面)

 投手にミットを示さないので、的をつけ難いのではないかと気になります。更にグラブを、地面につけるクセがあるのが気になります。しっかり捕球体勢を整えないまま捕球しにゆくので、どうしてもミットがボールの勢いに力負け。今のままのキャッチングならば、上のレベルの投手の球には通用しないでしょう。ただしハンドリングや反応は良い選手なので、ワンバウンド処理はうまい。すなわちストライクを導くようなキャッチングは期待できませんが、ワンバウンドするような球を後ろに逸らすことは少ないという、あまりいないタイプの捕手です。

 スローイングも捕ってから素早く投げるので、塁間1.8秒前後と極めて速い。しかししっかり型を作って投げられないので、送球は安定しないし、ミットに収まるまでのボールの勢いが弱く意外に刺せないのではないかと。実際に神宮大会の東邦高校戦では、たびたび盗塁を許していました。

 ボールへの瞬時の対応、送球への素早い動作など、持っている資質自体は高い。しかし技術的には課題が多く、持ちえる能力を充分にまだ活かしきれてないところが気になります。スローイングなどをみていると、高校時代の 小関 翔太(東筑紫学園-楽天)捕手を彷彿とさせます。





(打撃内容)

 打撃も同様に、技術的には課題が多い選手。しかしヘッドスピードの速さなどを見ていると、持っている資質の高さを感じます。高校通算18本塁打ということで、パンチ力はありますが長距離打者ではありません。またこの選手、ツーストライクに追い込まれると、全然違う打ち方に切り替えてきます。

<構え> 
☆☆

 スクエアスタンスで前の足のカカトを浮かせ、後ろ足に重心を預けて構えます。グリップは高めに添えて、捕手側にあらかじめ引いて添えます。腰の据わり具合・全体のバランス・両目で前を見据える姿勢もイマイチで、けして理に適ったフォームと思えません。

 ツーストライク追い込むと一変、重心を深く沈め、クローズドスタンスに切り替えてきます。無駄な動きをなくし、ミート中心の打撃に切り替える狙いだと考えられます。

<仕掛け> 早め & 遅め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。始動~着地までの充分な時間があるため、速球でも変化球にも対応しやすい、確実性を重視した打ち方。そのため、アベレージ打者に多く観られる仕掛けとなる。

 しかし追い込まれると、投手の重心が沈みきって前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。通常この打ち方は、始動が遅い分いろいろな球に対応し難く、狙い球を絞って叩く長距離打者に多く観られる仕掛け。

<足の運び> 
☆☆☆

 普段は、足を大きく引き上げて、真っ直ぐ踏み込んできます。彼の場合足を早めに上げるのは、いろいろな球に対応するためというよりも、強く踏み込むのためのもの。そのため始動が早くても、それほど確実性は上がりません。逆に大きなアクションを無くし、目線も上下動しないようにして、当てにゆくのが追いこんでからのノーステップ打法をする理由なのでしょう。

 真っ直ぐ踏み出すということで、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足元は、インパクトの際にもブレません。そのため外角の厳しい球や、低めの球にもついてゆくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 あらかじめグリップを捕手側に引いているので、打撃の準備である「トップ」を作るのは遅れません。しかしその割に、「トップ」がキッチリ決まらないまま振り出すので、中途半端な印象は否めないのですが。

 バットの振り出しは、上からミートポイントまで振り下ろされており、ボールを捉えるまでのロスは感じません。気になるのは、インパクトの瞬間にバットの先端であるヘッドが下がってしまっているので、ボールを捉えるときの面積が少なくなり打ち損じが多いこと。また、無駄なヘッドの走りをすることになります。

 それでも大きな弧を描いて、最後まで力強く振りぬきます。このスイングの大きさからも、捉えた打球は強烈。しかしフォロースルーを使うわけではないので、ボールはそれほど上には上がりません。

<軸> 
☆☆☆ 

 追い込まれるまでは、足の上げ下げが大きすぎて目線が上下に動き過ぎます。これでは、ボールを的確に追うことができません。それでも踏み込んだ足元はブレないので、体の開きは我慢できています。しかし軸足の形も崩れがちで、体軸が安定しているとは言えません。

(打撃のまとめ)

 現状、無駄なアクションが大きすぎる普段のスイング。その一方で追い込まれると、無駄を極力排する極端なスタイル。あまり両極端なため、メリット・デメリットがそれぞれに存在します。

 全く打者としての感性を感じないのですが、ヘッドスピードが早く肉体の資質は一級品であることがわかります。もう少し、的確にボールを捉えられるようになれればと感じます。

(最後に)

 ワンバウンドの瞬時の反応、捕ってから素早く返球できるスローイング、ヘッドスピードの速さという、資質の高さは感じます。しかし技術的な部分や、それを広げてゆこうという感性の部分には大いに疑問が残るところです。

 一冬越えて、こういった荒削りなところがどのぐらい改善されているのか注目してみたいところ。個人的には疑問な部分が多い選手ですが、資質の高い数少ない捕手であることは間違いありません。評価は、センバツを確認してからでも遅くはないでしょう。


(2015年秋 神宮大会)