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白石 翔樹(長崎・大村工)捕手 175/75 右/右
 




「鍛えがいはある」 





 小学生時代は、対馬でソフトボール。中学時代は、ソフトテニスをやっていたという 白石 翔樹 。本格的に硬式野球を始めたのは、高校に入ってからだという。そんな男が、瞬く間に九州を代表する捕手へと成長した。まだまだ粗っぽい選手だが、実に鍛えがいのありそうな選手なのである。


(ここに注目!)

 九州の捕手にありがちな粗っぽいプレーをする選手かと思ったら、プレーに雑なところがないところが魅力。とかく強打に目が奪われがちですが、きっちりとプレーする捕手としての動きにも注目して頂きたい。

(ディフェンス面)

 ミットをしっかり投手に示し、投手がリリースするまでグラブを動かさないなど、投手に対しては最後まで的が定まりやすい。身体も小さくかがめ構えているので、よりキャッチャーミットが大きく見え、狙いが定まりやすいはず。そういった捕手や審判から、ボールが見やすい姿勢を心がけるなど、捕手としての気遣い・周りに意識のゆく選手だと考える。こういったことは、捕手として一番大事な要素ではないのだろうか。

 またキャッチング一つ一つをとっても、しっかりボール押しこむように捕球しており、審判からストライクカウントを導きやすい。ただし低めの球へのミットの出し方が時々違ったりなど、捕手経験の浅さを垣間見せるときもある。

 バント処理の際には、しっかり投手へと指示。ちょっと構えた時に深く腰を落とし過ぎているので、次の動作への移行が遅れそうなのが気になった。そのため長い距離への送球が、乱れやすいのではないかと心配になる。それでも捕ってからも素早く、速球までのスピードは速い。捕ってから小さなモーションで投げることができ、ハマった時の送球は、1.9秒前後とまずまず。地肩はかなり強いので、しっかりした体重移動・送球方法を指導者に教われば、まだまだ速くなるに違いない。上のレベルでも、強肩を売りにやって行ける素材ではないのだろうか。

 総じてまだ経験不足は否めない部分もあるが、鍛えようによってが伸び代が大きく残されている。将来的には野手にコンバートされるタイプかなと思っていたが、じっくり見てみると捕手として鍛えてみたいと思わせるものがあった。



(打撃内容)

 準々決勝から決勝までの3試合ほど試合の模様をみたが、打球はすべて引っ張りによるもの。よその記事には、右方向にも大きなのが打てるという話を聞いていたが、この3試合を観る限りはステップも狭く腰の回転を活かしたプルヒッターとの印象を受けた。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 前の足を軽く引いて、カカトを浮かして構えます。グリップは平均的な高さで、あらかじめ捕手側に引いて添えています。腰の据わり・全体のバランスとしてはイマイチですが、両目でしっかり前を見据えて立てています。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

投手の重心が沈みきった時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる仕掛けです。


<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を引き上げて、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの時間はそれなりにありそうなのですが、いち早く地面を先に捉えてしまうので、あまり「間」がないように見えます。こうなると早めに下半身が固定されてしまい、タイミングが合わないと手打ちで引っ掛けてしまったり、打ち損じが多くなりそうなのは気になります。

 真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも打ちたいタイプか。しかしステップの幅が狭いので、腰の回転を活かして引っ張る打撃を好む打者のように見えます。それでも踏み込んだ足のつま先が開かず、インパクトの際にもブレていません。むしろ引っ張る時は、早めに開いて身体の抜けを良くしてもと思うぐらいです。まぁこれならば壁をギリギリまで崩さずに対処できるので、理論的にはセンターから右方向にはじき返すことも可能でしょう。


<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 あらかじめグリップを引いて構えているので、打撃の準備であるトップの形は取れています。これにより、速い球に立ち遅れる心配はないでしょう。そのかわりバット早くから後ろに引くことで力みが生じやすく、リストワークの柔軟性は損なわれやすくなります。

 バットの振り出しは少し遠回りですが、悲観するほど癖はありません。インパクトの際には、ヘッドも下がっておらず広い面でボールを捉えることができています。フォロースルーはそれほどでもないのですが、大きな弧を描きながら振るスイングは、格好いいものがあります。


<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは大きめで、上下の動きも少し激しい。自分から、ボールを追ってしまう傾向が観られます。身体の開きは我慢できていますが、踏み出すステップの幅が適正ではないようで、軸足の形が崩れがち。この辺が、安定した打撃を損なう原因になっているかもしれません。

(打撃のまとめ)

 広角に飛ばせる打撃が持ち味だということでしたが、夏は結果を求めて引っ張りにかかっていたのかもしれません。スイング自体に大きな癖はないのですが、気になるのは柔軟性に欠け、対応力に劣る部分があるのではないかと。しっかり捉えさえすれば、大きな弧を描くスイングで、ボールを遠くにも飛ばせます。

 ヘッドスピードが物凄く速いとか、ボールを捉えるセンスが抜群に優れているということはなく、むしろ打撃に関してはまだ荒削りな印象を受けます。この辺も、本格的な野球環境やしっかりした指導者の元磨けば、まだまだ伸び代は残されています。特に捕手というポジションを続けるのならば、求められる打撃の比重は少ないはず。少し気楽に、打席に入れるようになるのではないのでしょうか。しかし元々長崎屈指の強打者としてのポテンシャルもありますから、環境になれれば徐々に打撃でも頭角を現して来ると期待します。



(最後に)

 攻守にまだプロの水準に達しているのか?と言われると微妙なラインではあると思いますが、非常に鍛えがいがあり伸び代を秘めた素材ではないかという部分で期待が持てます。更に思ったよりもプレーが雑ではないところにも好感が持て、導き方次第では良い捕手になれるかもという部分も買いです。

 プレースタイルを見ていても、アマでチマチマというよりは、プロ向きの選手という大物感は漂います。育成枠ぐらいになってしまうかもしれませんが、話があれば高校からのプロ入りを実現して欲しいかと思わせる選手でした。



蔵の評価:
 (高くは評価できないが素材としては面白い)


(2016年夏 長崎大会)