高垣　鋭次（智弁和歌山３年）遊撃　１７９／７８　右／右

「素晴らしい感性」

　今年の春季近畿大会・履正社戦で、ドラフト候補にも上がる　山口　裕次郎（３年）左腕の内角の速球をモノともせずにセンター前にはじき返したり、外角の速球を左中間に叩き込んだリストの強さは圧巻だった。昨夏の甲子園も経験しているはずだが、不思議とドラフト戦線ではあまり騒がれることがない。しかしそのバッティングは、どこか　山田　哲人の履正社時代を彷彿とさせる。

（ここに注目！）

　バットをムチのように自在に操る、独特のリストワークに注目して頂きたい。打撃に感性を感じるという意味では、今年の高校生ではNO.1だろう。

走塁面：☆☆★　2.5

　旧チームでは６番、現チームでは４番を務めるように、それほど走力を全面に出す場面はない。一塁までの塁間は、右打席から４．４５秒前後。これを左打者に換算すると、４．２秒前後に相当する。４．２秒という数字は、プロが左打者の基準とするタイムなものの、実際指名される選手の平均は４．１秒ぐらいなので、若干平均より劣る走力となる。けしてプレーにスピード感がない選手ではないが、走力でアピールするという選手ではないように思う。

守備面：☆☆☆　3.0

　打球への一歩目の反応、スピード感などは、上のレベルでもニ遊間を担えるだけのものがある。しかし早くボールを処理しようという意識が強すぎるのか？　慌ててしまいキャッチングミスが多い。もう少し腰を据えてボールを処理してからでも、彼の地肩の強さならば充分アウトにできるだろう。現状は、動きはいいがミスも多いというタイプで安定感に欠ける。

　深いところからでも刺せるだけの、地肩というかスナップの強さを持っている。そういった意味では、ショートよりもセカンド向きのプレーヤーなのではないのだろうか。現時点では守備・走塁に関してはアピールするほどではなく、身体能力を活かしきれているとはいえない。

（打撃内容）

　リストが強く、右にも左へも長打を放つ広角打者。山田哲人同様に、引っ張った時は打球が高く上がり遠くに飛ばせる能力もあります。現状は、広角に打ち返す中距離打者のイメージが強い感じ。

＜構え＞　☆☆☆　3.0

　両足を揃え前足のカカトを浮かし、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスという意味では、平均ぐらいでしょうか。特に構え自体には、特別なものは感じられません。

＜仕掛け＞　早め

　投手の重心が下がり始める時には動き出す、「早めの仕掛け」を採用。早めに動き出し、ボールを　線　で捉える、典型的なアベレージヒッターに観られる仕掛けです。彼が、確実性を重視していることが伺えます。

＜足の運び＞　☆☆☆☆　4.0

　早めに足を引き上げ、回しこんでベース側に踏み込みます。始動～着地までの時間は充分あるので、速球でも変化球でもスピードの変化には柔軟に対応。ベース側に踏み込むように、外角の球を強く意識しているのがわかります。

　素晴らしいのは、踏み込んだ足のつま先が開かず最後までブレないこと。これにより外角の難しい球や低めの球に対しても、壁を壊さずにしっかり右方向に打ち返すことができます。それでいて内角の球に対しても、苦になくバットが出てくるところは素晴らしい。

＜リストワーク＞　☆☆☆★　3.5

　リストを使ってタイミングを取る分、バットを引くのが遅れてトップを作るのが遅い。そのため本当に速い球に対しては、立ち遅れるのではないかという心配はある。

　スイング軌道は、インサイド・アウトに振りぬくタイプのためインステップで踏み込んでも内角の捌きが上手い。外角の球に対しては、バットの先端であるヘッドを上手くボールの下に潜らせ、右方向に長打を放つ。スイングの弧が大きいとかフォロースルーを上手く使うという感じではないが、最後までしっかり振りぬいている。冒頭にも書いたように、柔らかいリストワークを活かしムチのように自在にバットを操るのがこの選手の最大の持ち味でもある。

＜軸＞　☆☆☆★　3.5

　ボールを手元まで引きつけて叩くというよりは、自分からボールに合わせにゆくため目線はそれなりに動く。それでも身体の開きは抑えられており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びるなど、おさえるべきポイントは抑えている。

（打撃のまとめ）

　完全に天才肌の選手であり、この感性を潰さない環境で野球を続けたい。トップの形成が遅れたりするところもあるのと、物凄くヘッドスピードが鋭いとか筋力がある選手ではないので、プロレベルのスピードに慣れるには少し時間はかかりそう。

　それでも打撃の感性はまさにプロという感じの素材であり、ぜひアマチュアではなくプロで感性を磨いて頂きたい。

（最後に）

　こと打つことへの才能、可能性という意味では、今年の高校生内野手でも１，２番の選手ではないのだろうか。守備・走塁に関してはまだまだ改善の余地がありそうだが、根本的な身体能力や動きは悪くないので指導次第でまずまず伸びそう。ショートというよりは、セカンドあたりの方が持ち味を発揮できるのではないのだろうか。

　個人的に今年観てきた高校生では、最も感性というかインスピレーションが一致する選手であり進路が気になるところ。智弁和歌山だと進学というイメージが強いが、彼のような天才肌は高校からプロを目指して欲しい。スカウトや周りの評判はわからないが、私が見る限り今年の高校生野手では、この選手が一番ではないのだろうか。

蔵の評価：☆☆☆　（上位指名でもおかしくない）

（２０１６年夏　和歌山大会）