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山崎 颯一郎(敦賀気比3年)投手 188/85 右/右 |
「まだまだこんなものではないだろ」 昨夏~神宮大会~選抜と、目に見えて球速が変わっているわけではない 山崎 颯一郎 。しかしながら非常にゆるやかに、それでいて着実に成長しているように感じる。彼の持っている潜在能力からすれば、今のピッチングなどその能力の半分も出していないのではないか、そんな気さえしてくるのだが。 (ここに注目!) 藤浪 晋太郎(阪神)のスケール・球速を落としたような投手ではあるが、非常にクレバーな一面を持っている。マウンドでも落ち着いて、常に冷静に相手と対峙できる精神面に注目して頂きたい。 (投球内容) ノーワインドアップから、大きな身体をゆったりと使って投げ込んでくる。 ストレート 130キロ台~MAX144キロ ☆☆☆ 3.0 選抜の青森山田戦では、コントロールミスをしないようにと丁寧に投げている感じがした。しかし130キロ台でも、とてもそうとは見えない球だった。元々自己主張するような球ではなく、淡々と投げ込んでくる感じ。それほど細かいコース投げ分けではないが、四死球で自滅するような危うさはない。力を入れた時の140キロ台のボールの勢いには、思わず おっ! と思わせるだけの迫力も秘めている。まだドラフト候補としては、球速・コマンド・球質的にも平凡ではあるが、力を入れた時のようなボールが安定して投げられるようになると面白い。 変化球 スライダー・カットボール・チェンジアップ、カーブ ☆☆☆★ 3.5 110キロ台のカーブが一つ大きくアクセントになっており、130キロ台投げ込む小さくズレるカットボール、それに縦に大きく落ちるフォークのような縦スラを持っている。この縦スラが将来的にもっとモノになりそうだが、速球は高めに縦スラは低めにという高低の投げ分けができており的が絞り難い。 その他 クィックは1.05~1.10秒と基準以上で、牽制はそれなりに鋭い。フィールディングも素早さはないが落ち着いて確実にボールを処理してくる。またパッと間合いが悪いとマウンドを外すなど、危険回避の嗅覚にも優れ投手としてのセンスの良さが感じられる。 (投球のまとめ) 目に見えて球速が変わっているわけではないが、軽く投げてでも容易には捉えられないほどにボールの質が上がってきた。秋までは何か無機質に淡々と投げている感じだったが、一球一球に意志とか魂がこもるようになってきている。 ストライクゾーンの中でも細かい投げ分けは得意ではないが、四死球を出さない力の入れ加減がわかっている。また変化球のレベルも速球以上に完成されており、試合をしっかりゲームメイクできる能力を持っている。現時点の力ではまだまだ一軍で活躍するような内容ではないが、プロ入り後秘めたる才能が爆発しても不思議ではない。順調に行けば、近い将来プロのローテーションを担って行ける選手ではないのだろうか。 (成績から考える) オフシーズンで作成した寸評では、フォーム分析を行った。今回は、選抜2試合で残した成績を元に傾向を考えてみたい。 16年選抜 2試合 18イニング 13安打 3四死球 20三振 防御率 0.90 1,被安打はイニングの80%以下 ◯ 高校生でも最高の舞台である甲子園の舞台だけに、ファクターは80%とした。被安打率は、72.2%であり、このファクターは満たしている。彼の投球を見ていればわかる通り、現時点での速球・変化球などのボールの威力には絶対的なものではまだない。そう考えると、この数字は妥当なのかと思えてくる。 2,四死球はイニングの1/3以下 ◎ 四死球率は、僅か16.7%と驚異的に少ない。しかしその内容をみると、ストライクゾーンの枠の中には簡単に集められるものの、細かいコースの投げ分け、コース一杯にとかそういった繊細さはない。あくまでも枠の中ならば、いつでも投げられるという類のコントロールであることは覚えておきたい。ただし野球で大切なのは、ピンポイントで決められるコントロールよりも、どんな状況でもストライクが取れるコントロールではないのだろうか。 3,奪三振は、1イニングあたり 0.8個以上 ◎ 選抜での奪三振は、イニングを上回っている。そのため1イニングあたりの奪三振は、1.11個。先発としては、申し分ない。ストレートの質の向上に加え、縦スラなど空振りが取れるボールを持っていることも大きい。 4,防御率は1点台以内 ◎ 選抜で残した防御率は、0.90 。全国大会で、この安定感は素晴らしい。昨年秋の公式戦の防御率が、1.90 であるから、だいぶ安定感に磨きがかかってきているのかもしれない。 (データからわかること) 被安打の部分が若干弱いのは、まだ投手として成長途上であり、ボールの威力が本格化していないから。しかし後の部分のファクターは見事なぐらいにクリアできており、極めて安心して指名できる類の選手だということ。更にその上が望める素材だけに、余計に頼もしい数字となっている。 (最後に) 目に見えてここが良くなっているとか、そういった成長には乏しい。しかし数字には現れ難い球質の向上などもあり、変化球一つ一つの精度・キレも増している。 まだまだ持っている力はこんなものではないだろと思わせる奥行きがあり、そういった部分を加味するとドラフトでも、3位ぐらいまでには指名されるのではないのだろうか。まだ上位指名というほどのインパクトには欠けるが、夏にはそれに相応しいだけの投球を魅せて欲しい。クレバーなだけでなく野球への意識も高さそうで、近い将来チームのローテーションを支える投手になるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2016年 選抜) |
山崎 颯一郎(敦賀気比2年)投手 188/85 右/右 |
「とてもクレバー」 190センチ近い体格から投げ下ろして来る、高低の揺さぶりが武器。現時点では、驚くような球を投げる機会はまだ少ない。むしろ私の関心を誘ったのは、そのクレバーさにある。イメージ的には、藤浪晋太郎(阪神)の大阪桐蔭時代に似た雰囲気を感じる。 (投球内容) ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX144キロ 神宮大会では、常時135キロ~140キロソコソコの球速。しかし大会を通じて感じたのは、スピードガンj表示の厳しさ。それを考えると、青森山田戦のリリーフで登場してきた時のボールなどは、昨夏甲子園の花巻東戦で記録した144キロと同等、あるいはそれ以上のボールを投げていたのではないかと感じられた。特に最後の打者であった 三森 大貴 に投じた高めのストレートなどは、ファールこそされたが、おっ! と思わせるだけの勢いがあった。 それでも平均時のボールは、まだ自己主張の強いボールは投げて来ない。ストレートのコマンドも、大まかに両サイドに散らす程度で高めに抜ける球も少なくない。一冬越えて、どのぐらいの割合で、おっ! と思わせてくれる球が増えて来るのか注目したい。 変化球 カーブ・スライダー・フォーク 110キロ台の縦に割れるカーブを、結構使ってくる。120キロ台の横滑りするスライダー、それに追い込むと130キロ台のフォークなども落とせるようになってきた。現状、ストレートとそれぞれ球速の違うこれらの変化球を巧みに使い分けて、緩急で討ち取って来る。しいて言えば、カウントを取りにゆくスライダーが甘く入ることが多く、この球を打たれるケースが多い。 変化球一つ一つの精度も、この時期の高校生としてはレベルが高い。一冬越えて更に精度を高め、速球がグッと良くなって来ると更に生きてくるだろう。 その他 打者との間合いを嫌うと、ぱっとマウンドを外せるセンスがある。牽制もそれなりに鋭く、フィールディングの動きは素早くはないものの、落ち着いてボールを処理できている。クィック自体は、1.05秒前後で安定して投球。大型だが、けして各動作にぬかりはない。 (投球のまとめ) まだ手元まで来るようなストレートの割合は、極めて少ない。その辺が、投球全体がピリッとしない最大の要因ではないのだろうか? それでも変化球を上手く織り交ぜたり、投球センス・投球術などには優れ、投手としての頭の良さが感じられる。 このセンスに、肉体が伴って来ると、なかなか厄介な投手になるだろう。特に変化球が、カーブ・フォーク・などの縦への変化が多く、角度のある球筋とあいまって、狙いが絞り難い。高校生では、なかなか試合の中で高低の攻めに対応しきるのは難しいだけに、攻略が難しい投手だと言える。 (投球フォーム) 現状ボールが物足りないのは、上手くボールに力を伝えきれていないからだと考える。今回は、具体的にどの辺に問題があるのか考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻の一塁側への落としはできていない。すなわち体を捻り出すスペースが確保できておらず、体を捻りだして投げるカーブやフォークといった球種を投げるときに、とても窮屈になって適さない。 「着地」までの粘りもなく、あっさり地面を捉えているところが物足りない。体を捻り出す時間を、確保できていないのだ。こうなるとキレのある球や、曲がりの大きな変化球の習得は厳しく、伸び悩む要因になりやすい。しかし山崎の場合、このフォームでも各変化球の曲がりはハッキリしており、そういった部分での心配は皆無なのかもしれない。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉え続けており、ボールが高めに抜けにくくなっている。「球持ち」自体も前で放せていて悪くは見えないのだが、現状まだコントロールのばらつきは感じられる。 この辺は、もう少し下半身が安定してブレが少ないフォームになること。もっと指先まで力を伝えられるようになれば、フォームの動作はしっかりしているので、将来的には精度の高いコントロールが期待できるはず。 <故障のリスク> ☆☆ お尻が落とせない割に、カーブやフォークといった球種を投げるので、腕を送り出すときに窮屈になり肘への負担は大きいはず。そういった意味では、将来的に肘を痛めないか心配になる。 腕の角度などを見ていると、肩への負担には無理を感じないので、その点は心配ない。肘への負担に注意しながら、入念にケアをして欲しい。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りがなく、打者としては合わせやすいフォーム。それでも体の「開き」は並程度なので、コースを間違わなければそれほど痛打を浴びないかもしれない。角度や高低のコンビネーションを活かし、このフォームの欠点を上手く補っている。 長い腕はまだ強くは振れてはいないものの、投げ終わったあと体には絡んで来ている。もっと強く叩けるようになれば、速球と変化球の見極めも困難になり、更に変化球が効果的になるはず。ボールへの体重の乗せはまだ甘く、打者の手元まで生きた球が行かない。上手く力が最後まで伝えきっていないのがわかるのは、投げ終わったあとの地面の蹴り上げが殆ど見られないから。また足の形を見ても、外に力が逃げていてロスが感じられる。この辺を、一冬の間に修正できるのか?注目したい。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に課題があり、「開き」は平均ぐらいで「球持ち」自体は良いように見える。ようは、打者の手元まで生きた球が行かない構造になっているということ。 コントロールを司る動作には優れていている一方で、肘への負担が心配される。良い部分と悪い部分が、入り混じったフォーム。 (最後に) 現状は、球速を落とした藤浪晋太郎(大阪桐蔭)といった印象で、まだまだボールが自体は物足りない。しかしそこがよくなる可能性を秘めているところと、頭の良さも感じられるところは推せる材料。 一冬越えて、どのぐらいストレートが変わってくるかにかかっているが、そこが良くなっていれば一気に上位候補に浮上して来るだろう。そこはかなり育成力・指導力のしっかりしている学校の選手だけに、期待せずにはいられない。センスに肉体が備わった時、この選手は「旬」を迎えるのではないのだろうか。 (2015年秋 神宮大会) |