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野元 浩輝(楽天)投手のルーキー回顧へ



野元 浩輝(佐世保工業3年)投手 181/73 右/右 
 




                        「正統派投手」





 夏の長崎大会のテレビ中継にもなく、試合の動画もなくてこの選手のレポートをどうしようかと悩んでいた。そんなおり長崎大会は、テレビ中継で放送されなかった試合でもバックネット裏からの撮影がなされたDVDが販売されており、それに野元のこの夏のピッチングが収められていたのを知る。その注文したDVDがようやく届いたので、早速彼の投球を確認してみた。

(投球スタイル)

 最後の夏はやや調子を崩していたそうで、元来の投球ではなかったのかもしれない。しかし敗れた長崎商との試合では、速球だけでなく変化球をうまく交えたコンビネーション投手だということがわかった。時々「おっ!」と思える球もあり、その素質の片鱗を伺うことができた。

(投球内容)

ワインドアップから、大きなテイクバックをとってスケールの大きさを感じさせる。

ストレート 135~140キロ前半ぐらい 
☆☆★ 2.5

 スピードガンの表示はわからなかったが、バックネット裏からの映像を観る限り130キロ台中盤~速い時で140キロを超えて来るかなという感じ。驚くような球威・球速はないが、指にかかった時の球には時々「おっ!」と思える球もあるし、この球が内角やコーナーに決まると、並みの高校生が捉えるのは難しいかもしれない。ただしそういった球の割合がまだ少ないのと、ストレートのコマンドはそれほど高くない。特に大方内外角に散らせるといった程度で、アバウトな部分も否めない。

変化球 スライダー、カーブ・フォークなど 
☆☆☆★ 3.5

 横滑りするスライダーで、カウントを整えて来る。たまにカーブでアクセントをつけたり、左打者を中心にフォークを交えて来ることがある。どの変化球も悪くないのだが、まだ絶対的な決め球は存在しない。今後フォークの精度が高まってくれば、この球が武器になってゆくのだろう。

その他

 牽制なども鋭く、特に二塁への牽制がうまい。クィックは、1.0~1.1秒ぐらいと素早く、フィールディングの動き、判断力も悪くない。運動神経に優れるというよりも、野球センスが良いのだろう。

(投球のまとめ)

 まだ凄みを感じるような球はないが、変化球を織り交ぜ筋の良さを感じる。現在の投球にストレートが化けて来ると、非常に面白い投手にはなるだろう。特にリリーフでどうというよりも、本格化したら先発を期待したい引き出しの多さがある。

 マウンドでも気持ちはあまりブレなそうだし、投手としてのセンスも感じる。こういったタイプは、ストレートに芯が入るかどうかではないのだろうか? そこさえうまくゆけば、ドラフト7位でも将来ローテーションを担っても不思議ではない。

(投球フォーム)

ワインドアップで振りかぶり、少し背中を丸めて投げ込むフォーム。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は高すぎず低すぎずという感じで、お尻の一塁側への落としは甘さは残すものの落ちている。そのため身体を捻り出すスペースはそれなりで、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く球種を投げるのにも無理は感じない。

 「着地」までの粘りもそこそこで、身体を捻り出す時間も適度にカバー。そのためキレのある変化球や、曲がり幅の大きな球を身つけられる可能性は秘めている。現在も変化球のキレ・曲がりは悪くないので、その片鱗は感じられる。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押しつけもできているので、ボールもバラツキはあっても上吊りは少ない。「球持ち」も適度にできているので、身体がビシッとして安定して来ると、球筋も良くなりコントロールはもっとよくなりそう。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークを適度に投げても肘への負担は少ないのではないのでしょうか。

 腕の送り出しは、多少ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩が下がる場面も観られるものの、それほど違和感は感じられない。無理をしなければ、肩への負担もそれほど気にしなくてもと思うのだが。特に力投派でもないので、消耗も大きくはないだろう。登板過多になった時に多少心配な部分は残すが、その辺は日頃からケアには充分務めて頂きたい。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りが適度にあるので、打者としてはそれほど合わせやすいわけではないだろう。身体の「開き」も適度に抑えられており、コントロールが甘く入らなければ痛打は食らい難いのでは。

 腕は強く振れて身体に絡んで来るので、変化球でも空振りを奪いやすい。「球持ち」もボールに体重が乗せるまで我慢できているので、打者の手元までの勢いも悪くないはず。この辺は、今後の下半身の強化や股関節の柔軟性を磨けば、もっと良くなる可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、極端に際立つ部分はないが大きな欠点はない。コントロールを司る動作に優れ、故障のリスクも無理をしなれば大丈夫そうな印象。そういった意味では、土台となる部分はしっかりした投手だと言えよう。

(最後に)

 良い時のボールの勢いがわからないのでなんとも言えないが(3年間テレビ中継とは無縁)、この夏の投球を観る限り、まだストレートの強さという部分では物足りない。しかし変化球、投球センス、フォームなどの土台はしっかりしており、本格化したときには大いに期待が持てるタイプ。フォームの違いはあれど、飯塚 悟史(日本文理-DeNA)投手と似た雰囲気は感じる。

 あとは、いかにボールがプロで変わるかだという部分と、まだコントロール含めて総合力が高校生の域を脱していない。多大な期待は抱けないが、好素材の一人なのは間違いないだろう。ドラフト7位ならば、納得の指名ではないのだろうか。


蔵の評価:



(2016年夏 長崎大会)