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千葉 耕太(楽天)投手のルーキー回顧へ







千葉 耕太(花巻東)投手 191/87 右/右 
 




                      「不完全燃焼な3年間」





 新チームからエースナンバーを背負うも、3年春は右肩痛で登板なし。夏の岩手大会では初戦で敗退という戦績で、満足な登板もできないまま終わっている。2年夏の甲子園では7番・右翼手として出場し、7打数1安打という戦績。その潜在能力の高さを買われての指名だが、投手としての実績は極めて乏しい。


(投球内容)

 191/87 の大型右腕であり、まだまだこれからといった投手。それでも荒れ荒れの素材型というよりも、まだ発展途上の投手といった印象を受けた。

ストレート 常時135~140キロぐらいか? 
☆☆☆ 3.0

 ストレートに驚くような球威・球速はないが、思ったよりもコントロールは悪くなく、粗っぽい選手ではない。球速は130キロ台中盤~最速で140キロ前後ぐらいか。この恵まれた体格、バランスの取れたフォームから、これからの上積みを期待しての素材だろう。繊細なコントロールはないが、大方ボールを両サイドに投げ分ける能力は持っている。

変化球 スライダー・フォークなど 
☆☆★ 2.5

 横滑りするスライダーとのコンビネーションで、この球でカウントを整えて来る。フォークもあるということだが、映像を観る限りよくわからなかった。打者を仕留めるほどのボールは見当たらなかったが、変化球でストライクが取れることは大きい。

その他

 クィックは、1.1~1.2秒ぐらいと平均的。大型だが、極端に動きが緩慢ではない。特に走者を背負っても、じっくり相手を観て投げられている。走者にしっかり目配せをして落ち着いて投げている。

(投球のまとめ)

 肉体的に成長途上の段階であることは感じるが、精神的なムラや制球の荒っぽさは感じられない。細かい投球術、球種の多彩さはないが、肉体の成長に伴い結果もついてくるのではないのだろうか。あとは、無事段階を踏んで成長して行けるだけの、壊れない体を持っているかだろう。





(投球フォーム)

限られた投球の映像だけではわからないので、フォームからもその将来像を探ってみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置で伸ばせており、お尻を一塁側に落とせている。そのため体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に大きく落ちる球を投げるのにも無理ははない。

 前に足を大きく逃してステップできており、体を捻り出す時間も確保。そういった意味では、キレや曲がりの大きな変化球の習得も可能であり、まだまだ投球の幅を広げて行けるのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後までしっかり内に抱えられているわけではないが、結果的に体の近くにはある。そのため適度に、両サイドにボールを投げ分けることもできている。足の甲でも地面を捉えているようで、力を入れてもボールを上吊らないのは良いところ。「球持ち」はそれほどでもないが、大まかには狙ったところに投げられるコントロールは持っている。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせており、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのではないのではないのだろうか。カーブは観られなかったが、フォークは投げるということだが、それほど多投しなければ問題はなさそう。

 腕の送り出しを観ていても、違和感もなければ無理な角度も見られない。そういった意味では、そんなに肩を痛めるほどのフォームなのかという疑問は残る。また物凄い力投派でもないので消耗も激しくはないだろうから、成長期に多少無理がかかったのか?という感じで、日頃から体のケアや起用の仕方を気をつければ、そこまで神経質にならなくても良いのではないのだろうか。


<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもあるので、打者としては合わせやすいフォームではないだろう。まして体の「開き」も抑えられており、球筋も読まれ難い。なにより190センチ台の長身の体格をダイナミックに使ってくるのだからだ、打者としては威圧感を感じるのは間違いない。

 腕も投げ終わったあと体に絡んでおり、速球と変化球の見極めも困難。下半身も使えており、ボールも体重を乗せてからリリースできている。そういった意味では、打者の手元まで適度な球威と勢いを兼ね備えたボールは投げられている。


(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に大きな欠点はなく、190センチ台の体格にして「着地」や「体重移動」に優れ下半身を実にうまく使えている点は非凡。

 コントロールを司る動作や故障のリスクも、私が観る限り悪くない。ことフォームにしては、かなり理想形に近い投げ方だと評価できる。



(最後に)

 昨年の 綾部翔(霞ヶ浦-DeNA)や今年のアドゥワ誠(松山聖陵)と同様に、まだボール自体は本格派していないが、これからプロの環境、指導によって見違えるほど良くなるのではないかという期待感を持てる素材。

 その一方で、まだ投げている球が図抜けていないこと。また肩を痛めて3年間満足な実績を残せなかった経緯もあり、プロのより厳しい登板環境で、能力を出せるかという不安を持っても不思議ではない。誰もが好素材だと思える選手だが、それでも育成枠に留まった理由も頷ける。これだけの体格の選手が、これだけバランスの良さ、理に適ったフォームで投げている。実際にコントロールも悪くなく、投手としてのセンスにも破綻がない。あとは、才能が開花するのを待つだけという段階。無事うまくゆけば、育成枠だが、スケールな大きな選手に変貌するのではないのだろうか。



(2015年 秋季大会)