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榊原 翼(浦和学院3年)投手 180/80 右/右 |
「スケールよりまとまり」 高校からプロに入る選手にしては、スケールで魅了するというよりも、まとまりを売りにする好投手。これから更に上積みがあれば、投球の土台がしっかりしているだけに更なる上積みも期待できる。 (ここに注目!) 名門のエースらしく、総合力に優れたタイプ。昨年よりもボールに勢いは出てきたが、ここから更に上積みできるかがポイントだろう。 (投球内容) ポンポンとストライクを先行させ、自分のペースに相手を引き込んできます。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台前半 ☆☆☆ 3.0 昨年見たときは、まだプロを意識するのには球威の面で物足りなさがありました。しかし今年は安定して勢いのあるボールを投げられるようになってきて、コンスタントに140キロ前後を記録。その球速以上に、打者が差し込まれる勢いがあります。ボールもコースに投げるコントロールがあり、質の好い真っ直ぐを高い確率で投げられるようになってきました。ドラフト指名される右投手としては、球威・球速共に平均以下ですが、ボールの質とコマンドの高さでは平均以上であり、トータルでドラフト指名される平均レベルを満たせるようになっています。ただし立ち上がりを中心に、ボールがやや上吊るのが気になりました。 変化球 カーブ・スライダーなど ☆☆☆ 3.0 小さく横滑りするスライダーと、縦に割れる二種類のスライダーを中心に組み立てているように見えます。この球でカウントを稼ぐことができている一方で、結構高めに入ってくるのでその辺が怖いところか。縦に切れ込むスライダーを、低めに集めて空振りを誘います。高校レベルの打線相手ならば、ほぼイニングと同数の奪三振は奪っています。この辺は、低めのスライダーを振らせたり、速球の質が好いからではないのでしょうか。また、結構緩いカーブも投球に織り交ぜてアクセントにしています。 その他 クィックは、1.15秒前後と平均レベル。フィールディングの動きはまずまずで、マウンド捌きや投球術などにはセンス型投手の片鱗を感じます。 (投球のまとめ) 腕の振りが柔らかく、強く振れるところは良いところ。さらにマウンドセンスやコントロールなども良く、更にストレートなどに上積みが持てるようだと期待できます。ストレートの伸びは良いので、ボールの芯である球威がもう少しついてくると面白いものがあります。なんとなくフォームは、高校時代の 大竹 寛(巨人) を彷彿とさせます。 (投球フォーム) それでは今後の可能性を、フォームを分析して考えてみましょう。セットポジションからスッと足を勢い良く高く引き上げ、軸足の膝にも力みがなくバランス良く立てているところに、投手としての筋の良さを感じます。 <広がる可能性> ☆☆☆☆★ 4.5 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、自然とお尻が一塁側に落ちて来るフォーム。そのため身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急を利かせたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種を投げられる下地があります。 「着地」の粘りも悪くなく、適度に身体を捻り出す時間も確保。腕の振りも柔らかく、将来的にはいろいろな球種を覚えて行ける可能性を感じ、好い変化球が投げられるフォームに。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けが安定。足の甲での地面への押しつけもできており、力を入れてもボールは上吊りません。「球持ち」にはまだ改善の余地はありますが、もっと前で放せるようになると、コントロールやボールの質共に手がつけられなくなるかも。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻を落とせるフォームの上に、カーブなどもあまり投げて来ないので肘への負担も少ないでしょう。腕の送り出しにさほど無理は感じませんが、肘を立てて投げようとするので、その際の動作に多少違和感が感じられるのが気になります。それでもさほど力投派でもなく、消耗は少ないのではないかと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りも悪くなく、打者としては合わせやすいわけではないでしょう。身体の「開き」も抑えられており、球筋がいち早く読まれる心配もありません。 振り下ろした腕も身体に絡んできますし、速球と変化球の見極めも困難。適度に体重は乗せられていますが、更にもう少し「球持ち」が我慢できると、体重がグッと前に乗って球威が更に増しそうです。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありませんが、しいて言えば若干「球持ち」に課題がある感じでしょうか。また故障のリスクも少ないですし、コントロールを乱す要素もないはず。あとは肉付けができれば、それが素直に現れて来ると考えられます。指導者としては、フォームをいじるところは殆どないという未来像が描きやすいタイプ。 (最後に) 投球センス、フォームの土台、制球力などに問題がないので、あとはいかに速球をレベルアップして行けるか、決め手になる球を身につけられるかではないのでしょうか。土台としてはしっかりしているので、育成枠でも将来一軍主力投手へと育っても不思議ではありません。将来性は高いのですが、高校からプロに入るまでの完成度・凄みは感じられません。できれば大学や社会人などで、ワンクッション置いてからのプロ入りの方が良かったと思います。まだ「旬」ではないと判断して指名リストには名前は載せませんが、将来性を秘めた楽しみな素材。プロの育成力が、求められることになりそうです。 (2016年夏 埼玉大会) |