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藤谷 洸介(阪神)投手のルーキー回顧へ







藤谷 洸介(20歳・パナソニック)投手 194/90 右/右 (周防大島出身) 
 




                      「まだピリッとしないが」





 190センチの長身を生かし、大きく振りかぶって投げ込んで来る大型右腕。まだボールのそのものの勢い、身体のキレなどに物足りなさはあるが、ファームで少し育成することを意識しての指名ではないのだろうか。


(ここに注目!)

 驚くような球威・球速はないものの、ランナーを背負ってからもボールを長く持ったりと相手を焦らすことができます。それだけ相手をみて投球ができる、ピッチングセンスに注目して頂きたい。


(投球内容)

ストレート 135~140キロ強 
☆☆★ 2.5

 変化球を交えながら、ビュッと速球を投げてこんで来るギャップは適度に感じます。しかしその速球の球威・球速はプロレベルだと基準以下であり、何より高めに甘く浮くので打ち返されてしまうことが多い。まだまだ投球に、ピリッとしたものが感じられません。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆★ 2.5

 小さく横滑りスライダーで、確実にカウントが整えられるのは好いところ。時折チェンジアップを混ぜたり、緩いカーブも使ってきますが、現状驚くような威力はあらず。特にまだ決めてのある球はなく、スライダーとのコンビネーションが中心です。

その他

 大型ですが、牽制を入れるタイミングが上手い。クィックも0.9秒台と高速であり、大型でも投球以外の部分にも優れています。

(投球のまとめ)

 現状は荒々しい速球派ではなく、相手をじっくりみて「間」を取りながら投げるセンス型。四死球で自滅するような危うさはないものの、ストライクゾーンの枠の中でのコントロールが甘く打たれるケースも少なくありません。

 何かをきっかけにボールがすごく速くなるとかあると良いのですが、プロの育成で見違えるようになれるのか? この体格にしてバランスが取れており、運動神経にも優れた印象があります。動作にキレが出て来るようだと、化けるかもしれない成長期。基礎体力はついてきたので、技術的なことはプロでという感じの育成考慮での指名だと考えられます。





(投球フォーム)

非常に、ゆったりとしたモーションから投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けがちで、お尻の落としは甘めです。それでもその後、一塁方向に落ちてゆくので、身体を捻り出すスペースは適度に確保できているものとみます。そういった意味では、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球を投げるのも、それほど負担はないと考えられます。

 「着地」までは、上手く足を前に逃しステップできており、身体を捻り出す時間を確保。将来的には、もっといろいろな球種を、自分のものにして行ける可能性は感じられます。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えられており、ボールが高めに抜け難いように感じます。それでもまだストレートが高めに甘く入ることが多く、低めに集まってきません。もう少し「球持ち」を良くし、ボールを押し込めるようになると更に精度が高まりそう。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻の落としは甘さが残るものの、カーブやフォークを投げても肘への負担は少ないのでは? 実際にそういった球も、ほとんど投げませんし。ただし高3の時に肘を骨折したことがあるので、その辺は少し気がかりではありますが。

 ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がり気味ではあるのですが、極端ではないので肩への負担もそれほど気にしなくて良いのでは。日頃からケアに気をつければ、悲観することはないでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 大型ですが下半身が使え、「着地」のタイミングも悪くありません。そのため打者としては、タイミングが合わせやすいということはなさそう。ボールにも角度があるでしょうい、身体の「開き」も抑えられており見やすいこともないはず。あとは、高めに甘く入るコントロールが改善されれば、結構打者にとっては厄介な存在になれそう。

 大型ゆえに、身体のキレ・腕の振りの強さにまだ物足りないものはあります。それでも投球のメリハリを意識して投げられているので、必要に応じて強く腕を振ろうという意志は感じます。ボールへの体重の乗せも悪くないので、筋力や体重の増加次第でまだまだボールの力も増すでしょうし、もっと前で放せるようになれば打者にとって厄介なはず。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大型ですが極端な欠点はありません。「球持ち」あたりがもっと粘っこくなってくると、更に嫌らしい投手になれそう。この体格で、このバランスで投げられる点は高く評価できます。

 コントロールを司る動作も悪くありませんので、あとは故障に気をつけながら資質を伸ばして行ければと思います。大型ゆえにゆったりとした成長曲線かもしれませんが、素材としての奥行きがあります。


(最後に)

 社会人出身の選手ですが、まだ高卒3年目の発展途上の選手。阪神の投手育成力の高さを生かし、大化けを期待したいところです。レベル的には好素材ではあるものの、育成枠レベルの選手だと思います。社会人の選手なので、育成枠が使えない分、指名の最後に指名した、そんな感じではないのでしょうか。

 一軍の戦力になるまでには、数年かかると思います。しかしこの体格の割にボディーバランスは素晴らしいですし、細かいところまで意識のゆく野球センス、動ける身体能力は魅力。あとは、あまりに相手を見て投球をしすぎるので、ランナーがいないときはテンポを意識して投げられると好いと思います。まだ「旬」だとは思わないので ☆ は付けませんが、投手の育成力がある阪神なら面白い指名ではないのでしょうか。


(2016年 プロアマ交流戦)