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アドゥワ 誠(広島)投手のルーキー回顧へ







 アドゥワ 誠(松山聖陵3年)投手 196/86 右/右
 




                      「凄く良くなりそうだが」





 196センチの恵まれた長身、ナイジェリア人の父を持つ血統、まだまだ肉付き可能な体型などを観ていると、この選手の身体ができたら、どれだけの投手になるのだろうか? という期待は誰もが抱くのではないのだろうか。


(ここに注目!)

 現時点では驚くようなボールは投げないものの、秘めたる能力は計りしれない。その能力の片鱗を魅せるのが、フィールディング、牽制などの動きの良さ。とても196センチの大型投手とは思えない、俊敏な動きを見せてくれる。

(投球内容)

非常にゆったりと、静かに動き出すフォーム。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆★ 2.5

 196センチの上背を生かし、角度のある球筋に特徴がある。ボール自体の球速、手元までの勢いや伸びに特別なものは感じられないが、角度があるためにどうしても打者は芯で捉えることができない。まだそれほど細かいコントロールはなく、ボールが抜けたりすることも少なくはない。それでも淡々とストライクゾーンに集めてくるタイプであり、夏の愛媛大会では41回2/3イニングで四死球10個とストライクが入らずに苦しむことはなさそうだ。

変化球 チェンジアップ、スライダー、カーブ、シュートなど 
☆☆★ 2.5

 左打者の外角に沈む、チェンジアップ系のボールに威力がある。その他にも外角に小さく逃げたり、右打者の内角に投げる球が小さくシュートして来る。これを意識的に投げているかはわからないが、130キロ前半であり明らかに速球とは違っている。

 また右打者にはスライダーなどを使ってくるが、精度・キレともそれほど突出したものはない。さらに余裕があると、もっと緩いカーブを投げてくる。現在は変化球でカウントは奪えるものの、打者の空振りを誘うような決め手のある球は持っていない。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとまずまず。フィールディングも、中学時代ショートをやっていたとのことで、思いのほか動きは良い。牽制はあまり走者への目配せがなく走者がスタートを切りそうなタイミングで、実に上手く入れてくる。超大型の投手ではあるが、投球以外の能力に優れている高い身体能力を持っている。

(投球のまとめ)

 下級生のときは、ストラクゾーンに投げる込むのもやっという感じでした。しかし夏は落ち着いて、ボールを制御できていたように思います。何よりピンチでも、淡々と自分の投球に徹することができ、気持ちのブレが少ないところには好感。ランナーを出しても、パッとマウンド外して、嫌な空気を変えるセンスの持ち主。けして荒々しい素材型なのではなく、未完成のセンス型投手なのだ。



(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、外人特有の突っ立ったフォームになりお尻は一塁側に落とせません。そのため身体を捻り出すスペース確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に落ちる球には適しません。

 「着地」までの粘りは粘っこくはないものの、平均的。身体を捻り出す時間は並で、けして投球の幅を広げてゆくことは不可能ではありません。あとは、キレのある球や決め手になるほどの曲がりの大きな変化球を修得できるのかと言われると疑問が残ります。


<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは身体の近くにはありますが、内で抱えられているわけではありません。そのため両サイドへの投げ分けも、ややアバウトなところがあります。足の甲の地面への押しつけも少し浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいところが。ボールは前で放せており球持ちは悪くないので、ある程度は狙ったところには集められます。

<故障のリスク> 
☆☆★ 2.5

 お尻は落とせないフォームですが、カーブやフォークといった球種は殆どみられません。そのため、肘への負担は心配しなくても良いのでは?

 しかし腕は角度よく振ってきて、多少肩への負担も感じます。それほど力投派ではないので消耗は少なそうですが、登板過多にならないように注意したいところ。


<実戦的な術> 
☆☆ 2.0

 「着地」までの粘りは並なのですが、ボールにありえない角度があるので、その分打者は捉え難いはず。身体の開きも少し早めであり、コースを突いた球でも打ち返される危険性は感じます。

 また長い腕なのに、投げ終わったあと身体に絡んで来ないなど弱いのが気になります。ボールにも充分体重が乗せられていないので、打者の手元まで生きた球が来ている感じはしません。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外には課題を残します。更に足の甲の押し付けが甘く上吊りやすかったり、腕の角度にも負担がかかる可能性があり、推せる材料に欠けています。

 この未完成さがまだ伸びしろが沢山残っているともいえ、今後の指導・導き方次第では、別人のように生まれ変わっても不思議ではないでしょう。


(最後に)

 まだまだ発展途上の選手ではあるものの、精神的にブレが少なく高い身体能力も持ち合わせており、伸び代を大いに感じさせる素材です。その一方でフォームに課題が多く、伸び悩む危険性も否定できません。
 
果たしてプロの世界でどうなってゆくのか、いずれにしても技術的にしっかり指導できるコーチがいるチームに入ってもらいたいもの。どえらい投手に育つのか、思ったよりも伸び悩むのか未来が想像できません。4位以降であれば、その可能性に賭けてみたいと思わせる投手でした。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016年夏 甲子園)










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