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藤平 尚真(横浜3年)投手 185/86 右/右 |
「1位指名は固いのでは?」 持っているエンジンは、涌井 秀章(西武)よりも大きいのではとは昨年から言ってきたが、その能力を活かすことに関してはまだまだ課題が多かった 藤平 尚真 。それでも一冬越えた春季大会では、順調に成長を感じさせ1位指名を意識できるところまで来ている。果たして、どの辺が変わってきたのか考えてみたい。 (投球内容) 昨年までは、引き上げた足を空中で曲げ伸ばしさせるフォームだった。しかしこの春は、足の運びはオーソドックスなスタイルに変わっている。 ストレート 140~MAX94マイル(151キロ) ボールそのものの勢いよりも、腕をピュッと強く振れることに目がゆきます。ボール自体は、まだ上半身と下半身の一致がしていないことが多く、球速ほど凄みは感じられません。それでもコンスタントに145キロ前後を投げ込み、上手くピタッとハマった時のボールには唸るものがあります。 速球は適度に荒れていて、真ん中~高めのゾーンに集まりやすく勢いが鈍ると怖いタイプ。特に物凄い球威があるとか、手元での伸びやキレに優れたタイプではないので、勢いが鈍ると打ち頃になります。また左打者に対してアバウトな傾向も、それほど改善されていません。 変化球 二種類のスライダー・フォーク、カーブ・チェンジアップなど スライダーは、小さく横滑りするカウントをとりに来るスライダーと、低めのボールゾーンに曲がりながら落ちてゆく二種類を使いわけているように思います。更にカーブやチェンジアップを軽く織り交ぜつつ、県大会の決勝では封印していたフォークを使い始めました。少しチェンジアップ気味で落差・キレという意味では発展途上ですが、低めにも打者の意識を活かせることができ、的は絞り難くなったと考えられます。夏に向け、この球の精度・キレをいかに磨いて行けるかが鍵ではないのでしょうか。 またスライダーの曲がりやキレが半端ではないので、並みの高校生だと見極められません。東海大相模も決勝で当たった日大高校も、ミットに収まる時は何故そんなボール球を振ってしまうのかと思われるほど、外角低めのスライダーには威力がありました。150キロの直球に目を奪われがちですが、超高校級のスライダーの持ち主であることは忘れては行けません。 その他 昨年までは、牽制は一息入れる感じの軽いものが殆どでした。しかしこの春では、走者を威嚇するだけの鋭いものも織り交ぜてきます。クィックは、1.1秒前後とまずまず。フィールディングの動きに驚くものはありませんでしたが、打撃の潜在能力もかなり高い選手との印象を受けます。 結構外角の際どいところを突いたり、初回と中盤、後半と配球を変えて1試合でトータルで組み立てたりと、投球の幅は広げつつあります。けして器用な投手でもなければ、微妙な駆け引きができるようなクレバーさはありません。しかし名門の主戦として、必要な技術は備えつつあるのではないのでしょうか。 (投球のまとめ) 課題が大幅に改善しているとかいうことはないのですが、一冬越えて着実にパワーアップしてきた印象があります。昨秋までは、大事な試合は 石川 達也(3年)左腕じゃないと危なっかしいという感じでしたが、今は本当に強いところ相手には、藤平 の絶対能力で圧倒するしかないという雰囲気に変わってきました。夏に関しては、エースナンバーを背負ってマウンドに立つことになるのではないのでしょうか。そのぐらいの成長は、確実に感じます。 (投球フォーム) 足の曲げ伸ばし以外にも、具体的に何処か変わったか見てましょう。オフに作成した寸評でもフォーム分析をしているので、昨年と違った部分に注目して見ています。 昨秋からの1番の成長は、腕の振りが強くなったことではないかと思います。これによりスライダーの曲がりが大きくなり、更に速球との見分けがつき難くなったことが、多くの空振りを誘えるようになった要因かと。 気になったのは、身体の「開き」が少し早いこと。ボールの出処が見やすいと、いち早くコースや球種を読まれてしまい、良いコースに投げても踏み込まれて打たれてしまったり、変化球を見極められやすくなったりします。その辺が、この投手の実戦派になりきれない最大の要因ではないかと。 細かい部分で言えば、腕の振りがやや身体から離れて外旋しているということ。この辺が腕をブンと振りがちなフォームになり、コントロールを乱す要因になっているのでは? 更にフィニッシュなどでの地面への蹴り上げなどを見ていると、作り出したフォームを途中でロスしてしまっていて、最後まで力をダイレクトに伝えきれていない印象を受けます。この辺は、フォームの微調整で済むと思うので、今後修正されることを望みます。 腕がもう少し身体の近くを軌道すること、またステップが広すぎるのか? 力が途中でロスしてしまっている印象があります。この辺が若干修正されるだけで、随分とこの投手の持ちえる能力を、遺憾なく発揮できるようになると思うのですが・・・。 (最後に) このまま素材型で伸び悩むかなと心配していましたが、横浜高校が長年培ってきた育成システムを継承しているのか、こちらの期待値どおりのパワーアップを遂げてきました。涌井秀章のような良い意味での小賢しさを感じないのは気になり、ボールの割に勝ち星が付いて来ないタイプに育つかなという心配もありますが、高校からドラフト上位でプロ入りできるところまで来ていると思います。あとは甲子園の大舞台で、その能力を惜しげもなく披露できれば1位指名も夢ではないでしょう。 蔵の評価:☆☆☆☆ (上位指名に相応しい選手に) (2016年 春季神奈川大会) |
藤平 尚真(横浜2年)投手 186/78 右/右 |
「涌井より上なんじゃないのか?」 先輩である 涌井 秀章 よりも、この藤平の方が、将来的にはスケールでは上回るのではないのか? そんな期待を抱きたくなる。現時点では、全国の右投手の中でも、その位置づけは筆頭にいる選手だと言えよう。 (投球内容) ノーワインドアップから足を引き上げ、足を曲げ伸ばしするフォームから投げ込んでくる。 ストレート 常時140キロ台~MAX151キロ 現時点では、ボールが手元でグ~ンと伸びてくるというほどではない。それでもピタッと決まった時のボールは、なかなか高校生では容易には捉えられないものがある。特に右打者クロスに決まる球筋は見事で、その一方で左打者への投球に課題がある。私がチェックした2試合では、圧倒的に左打者から打たれる場面が目立った。実際に左打者相手の時は、コントロールが乱れている。 変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど 打者の手元で小さく鋭く曲がる実戦的なスライダーを中心に、左打者にはチェンジアップのような沈む球でカウントを整える。更にストライクゾーンからボールゾーンに落ちるフォークもあるが、この球はまだ発展途上といった感じ。現状空振りを誘えるほどの絶対的な球種はないが、右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップがあり、投球は組み立てられている。あとは、追い込んでからのフォークの精度が、今後どこまで上がって来るかだろうか。 その他 走者を刺すような鋭い牽制は観られず、現時点では一息間を入れたりといった使い方。クィックは、1.1秒前後とまずまず鋭い。フィールディングも、可も不可ないといった感じ。 物凄く投球センスやマウンド捌き、身体能力の高さは感じない。適度に、それなりにできるといった感じだろうか。 (投球のまとめ) 前チームからあれだけ主戦としてやっていた投手だけに、同世代相手にはもう少し力が圧倒できるかなと思っていた。しかし実際はそこまでのことはなく、発展途上の印象を受ける。一冬越えて、一体どのぐらいビシッとして来ているのか注目。 高校からプロ入りすることはほぼ間違いないだろうが、やはり世代のトップクラスの投手として、高いものをあえて望みたい。当然彼に期待するものは、1位指名に相応らしい投球だ。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆☆ お尻を一塁側に落とせるフォームであり、カーブで緩急をつけたり、フォークのような腕を送り出すボールを投げても無理がない。 「着地」までの粘りは平均的で、可も不可なし。体を捻り出す時間は並で、もっとキレのある変化球、曲がり幅の大きな球を身につけるには、「着地」までの粘りをもう少し確保したい。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けも安定。足の甲でも深く地面を捉えられており、ボールもそれほど上吊りません。「球持ち」も前で放されており、あとはもう少し指先の感覚を磨きたい。股関節の柔軟性は、下半身の強化に務め、投げ終わったあと一塁側に流れないようにしたい。しかし以前に比べると、その辺もだいぶ矯正されている。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担は少ないはず。 腕の送り出しをみても、肩への負担も少ないように見える。特に無理をしなければ、故障の可能性はけして高くはないだろう。あとは、日頃から体のケアを入念にやって行けば問題ないのでは? <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りが並で、体の「開き」も平均的。特に合わせやすいわけではないが、けして嫌らしさがあるフォームでもない。 「球持ち」が良さそうに見えて、腕があまり身体に絡んで来ないのも気になる。ボールへの体重の乗せ具合は良いので、ボールの質そのものは悪く無い。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、どれも平均的で、特に悪い部分はない。その代わり、極めて優れている部分もない。 しかし制球を司る動作や故障のリスクも少ないフォームであり、その点は推せる材料。フォーム全体に粘っこさが出て来れば、申し分ないのだが。 (最後に) まだ持ちえる能力を、充分に発揮できているとは言えない。しかし土台になるフォームはしっかりしているので、素直に各動作の細かい部分まで意識がゆきたい。球持ちや着地や腕の絡みなどに粘っこさが出てくると、手がつけられなくなる可能性が。 一冬越えて一体どのぐらいの選手に育ってゆくのか、期待せずにはいられない。久々に、神奈川からドキドキさせられる右腕が出てきた、今はそんな感じがする。 (2015年秋 神奈川大会) |