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古谷 優人(江陵3年)投手 176/75 左/左 |
「この夏1番ブレイクした男」 以前から名前は上がっていたが、春はブロック予選で敗れてしまった 古谷 優人 。その鬱憤を晴らすがごとく夏の予選では、MAX154キロまで到達。一躍この夏、全国で最もブレイクした男だといえよう。そんな古谷の最後の投球を確認できた。 (ここに注目!) 大学・社会人含めても、これだけの球速を出せる投手は殆どいない。特に高校NO.1左腕である、寺島 成輝 をも凌ぐ球速には、ぜひ注目して頂きたい。 (投球内容) さすがにこの日は、疲れなのか?本来の出来てではなかったようだ。それでもMAX150キロを記録するなど、その片鱗を伺うには充分だった。イメージ的には、少しゴツゴツさを薄れさせた 辻内 崇伸(大阪桐蔭-巨人)を彷彿とさせる。どうも夏の準決勝の模様を見る限り、疲れからなのか? 下半身の粘りがイマイチ。そのため、身体が突っ込むことも少なくなかった。 ストレート 145キロ前後~MAX154キロ ☆☆☆★ 3.5 おおまかに両サイドに散らせて来る投球だが、細かいコントロールはなさそう。この試合が本来の調子からは程遠かったのもあるのかもしれないが、ストレートで三振を奪うケースは少なかった。投げ込まれる球も確かに速いのだが、球速ほど苦になるとか、打者の手元まで来る圧倒的なものは感じず、似たような投手としては 辻内 崇伸 の投球を思い出す。辻内の場合もっとフォームも身のこなしもゴツゴツしていて、伸びとかキレとかいうものとは無縁だったものの、鉛球がすっ飛んで来るような迫力があった。彼にそこまで迫力があるかどうかは、直に良い時の投球を観てみないとわからない。ただしまだまだ、球速表示見合ったボールは投げられていない。 変化球 スライダー・カーブ ☆☆☆★ 3.5 辻内がひたすら速球に特化した投手だったのに比べると、この古谷は曲がりながら落ちるスライダーを持っており、三振の多くはっこの球で奪っている。速球を魅せてこの球を投げられれば、並の高校生では中々対応できない。キレ・曲がり共に、上のレベルで通用する球種ではないのだろうか。 一方、更に緩いカーブもあるが、こちらは腕が緩む傾向にあり、上のレベルで使えるかは微妙。それでも速球とスライダーのコンビネーションだけでもある程度やっているだけの、絶対的な球種を2つ持っていることは大きい。現状は、シュート・チェンジアップ系の球種は見当たらない。 その他 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいと基準以上であり、牽制・フィールディングの動きも悪く無い。野球センスや高い運動神経を感じるわけではないが、思ったほ素材型というほどでもなかった。 (投球のまとめ) まだ速球の質が、球速ほどではない気がする。それでも145キロをコンスタントに超えて来る、圧倒的なスピード能力は間違いなくドラフト級。更に空振りが誘えるスライダーのキレもあり、この辺はこころ強い。モノにするのには少し時間と育成力が求められるが、ドラフトで指名されるのは間違いないはず。 この夏の46イニングで、四死球は23個と四死球率は50%と制球力に課題が。奪三振率は、1イニング1.30個と破格であり、被安打率も 52.2% と極めて優秀。ストライクゾーンに決まりさえすれば、容易に捉えられないということなのだろう。 (投球フォーム) ではフォームの観点から、その将来像を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 お尻を三塁側(左投手の場合は)落とせないフォームなので、将来的にカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化には適していません。 「着地」までの粘りもイマイチで、身体を捻り出す時間も不十分。そういった意味では、スライダー・チェンジアップなどを中心に、カットボール・ツーシーム・スプリットなどの球速のある小さな変化でピッチングを広げてゆくことが望まれます。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで身体の近くにあり、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けは浮きがちで、どうしても力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」もまだ浅く、指先の感覚はイマイチ。特に腕が少し遠回りまわって外からブンと振ってくる感じであり、細かいコントロールがつき難い。将来的にも、制球の不安に悩まされる可能性は高い。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせないフォームながら、カーブもそれほど投げないし、フォークも使って来ない。現状は、それほど肘への負担は気にしなくても良さそう。 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担もそれほどでも。しかし腕を外からブンと振る強引なフォームなので、角度の割に肩への負担は大きいとは考えられる。極端な感じないが、人並み外れた球速の持ち主だけに故障には充分注意したい。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りがないので、打者としては苦になるフォームではない。身体の「開き」は平均的であり、甘く入らなければ痛手は食らい難いのかもしれないが。 腕へそれなりに振れており、速球と変化球の見極めはつき難い。しかしボールに体重を乗せきる前にリリースを迎えており、打者の手元までは、まだ生きた球が行っていない。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「体重移動」に課題があるように、下半身の使い方に改善の余地がある。お尻を落とせないことや外旋して投げる強引なフォームのために、故障のリスクが感じられる点。足の甲の押し付けや指先の感覚の悪さから来る制球への不安など、あまり技術的には推せる材料は少ない。 それでも、この身体の使い方で破格の球速が投げられるわけで、その潜在能力は計り知れない。更にプロ始動や環境で良くなれば、球界を代表する速球投手になるのは間違いない。 (最後に) プロで使える投手になれるのかと言われると、正直半信半疑というかリスクの高い素材ではあると思う。特にお尻が落とせないことで、ピッチングの幅を広げて行けるか? 「着地」までの粘りの無さからも、合わされやすい投球が改善されるのか? コントロールの不安を改善して行けるのかなど、伸び悩む要素は少なくない。 近年で言えば 塹江 敦哉(高松北-広島3位)に近い力量の投手ではあるが、塹江よりもネームバリューがある点と、スライダーという使える変化球を持っている点では、ワンランク上の評価をしないといけないだろう。ドラフトでも2,3位ぐらいの指名があっても不思議は全然ない。ただしモノにできれば大きいが、ハイリスク・ハイリターンの素材ではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2016年夏 北北海道大会) |