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今井 達也(西武)投手のルーキー回顧へ







今井 達也(作新学院3年)投手 180/72 右/右 





                    「更にワンランク上に」





 夏の栃木大会の模様をみて、素晴らしかったのですぐに寸評を作成。しかし甲子園に来た彼は、更に県大会を凌ぐ内容で、ワンランク上の投球を魅せてくれた。そこで改めて甲子園の模様から、寸評を作成したい。


(ここに注目!)

 一見線は細く見えるものの、ピンチでもブレない精神力と確かな体力があり、芯の強さに注目して欲しい。その辺が、甲子園優勝まで昇りつめた、大きな原動力ではないのだろうか。

(投球内容)

県大会を終了しリフレッシュして出てきた彼は、もうワンランク上の投球を魅せてくれた。

ストレート 145~MAX152キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 回転の良いボールを投げ込める投手なので、打者の空振りを誘えます。右打者には安定して外角に集められる制球力はあるのですが、左打者には多少アバウトになる傾向があります。彼の素晴らしいのは、けして無理しなくても、安定して質と球速ゆたかななボールを投げられるという、平均レベルの高さにあります。けして瞬間風速で凄い球を投げられる、そういった投手ではありません。

変化球 スライダー、チェンジアップ、カットボールなど 
☆☆☆☆ 4.0

 身体の近くでキュッと曲がるので、実に実戦的な変化球の使い手。高速で小さく横に曲がるのは、スライダーというよりもカットボールのような気がします。その他に縦に切れ込むスライダー、その他チェンジアップ系の沈む球を結構多く投げ込んできます。この球はカウントを取れるものの、少し見極められる傾向にあり、これがもっとフォークのように打者の空振りを誘えるような精度になってくると、落差はあるので面白いのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.0秒前後と極めて高速。牽制も適度に鋭く、結構入れてきます。フィールディングも落ち着いて処理できており、特に大きな欠点は見当たりません。

 マウンド捌きもよく、要所でもしっかり踏ん張れる投手なので、投球のメリハリも悪くないのではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 U-18では、ボールが走らないときでもそれなりに試合をまとめることができていました。とにかく気持ちがブレないという部分では、高校生離れしていて、こういう投手が甲子園で優勝するのだと改めて強く実感。さすがに激戦のすぐ後に招集されたU-18では疲れは感じさせフォームにもばらつきが出始めていたものの、なんとか崩れなかったのはさすがです。プロで1年ぐらい基礎体力・筋力を養ったら、2年目ぐらいからはローテーションに入ってきても不思議ではありません。



(成績から考える)

 前回の寸評では、フォーム分析を行ないました。今回は、甲子園で残した成績から傾向を考えてみましょう。

5試合 41回 29安打 17四死球 44三振 防御率 1.10

1,被安打はイニングの80%以下 ◯

 被安打率は、70.7%。甲子園ということで、ファクターは80%に設定。70%を僅かに超える程度であり、けして球威でねじ伏せるタイプではない割に、被安打が少ないのはそれだけボールが走っていたということだろう。ちなみに寺島成輝(履正社)は、脅威の47.6%という数字を残している。

2,四死球はイニングの1/3以下 △

 これはむしろ意外で、四死球が基準の33.3%をかなり上回っていたこと。けして四死球で苦しむタイプではないが、確かに左打者中心に収まりの悪いところが観られた。この辺は、プロの狭いストライクゾーンへの対応に苦労する危険性を感じる。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、イニングを上回る 1.07個 。先発をする右投手としては充分合格ラインであり、それだけストレートの球質が優れていたのだと考えられる。この辺をプロ入り後は、変化球でも奪えるように精度を高めたい。

4,防御率は、1点台以内 ◯

 防御率は1点台でも、1.10 ということで、極めて0点台に近い数字。甲子園での安定感、パフォーマンスは見事だった。問題はプロの長いシーズンを想定すると、こういった投球を長く持続させるだけの体力がどこまであるのかというのがこれからの課題。特に春季大会は登板せず、夏も準々決勝からの投球ということで体力を温存して夏の大会に挑んでいたので。

(成績からわかること)

 ちょっと心配になったのは、プロの狭いストライクゾーンを想定するとコントロールの部分がまだ高校生レベル。この傾向は、栃木予選でも、21回2/3イニングで9四死球であり、四死球率は41.7%とやはり高かった。あとは、春は故障で投げられなかった投手でもあり、年間を通しての調子を維持できるのかどうかという部分ではないのだろうか。


(最後に)

 そういった不安はあるものの、甲子園での見せたパフォーマンスは圧巻だった。スカウトも夏前までは2位以内と言っていたわけだが、甲子園での内容で各球団1位ランクに引き上げたことは間違いない。

 まだ線の細さや筋力の無さもあるわけで、この辺がしっかりして来るとフォームの土台は確かなので、制球の問題は改善できそう。ただしこの投手、今後更に球速を高めて成長してゆくというよりも、もう少し球速を落とす形で実戦的な投球に磨きをかけて来るタイプではないのだろうか。イメージ的には、高校時代の 前田 健太 のように、2年目ぐらいからはローテーションに入って来るのではないかという未来像が描けるタイプ。精神的にはしっかりしているので、将来チームのエースへと育って行ける選手ではないのだろうか。1位指名にふさわしい選手に甲子園で育ったと、素直に評価できそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (上位指名にふさわしい選手に)


(2016年夏 U-18アジア選手権)


 









 今井 達也(作新学院3年)投手 180/70 右/右





                  「この夏1番の衝撃」






 春季大会は怪我のため登板がなかったが、夏に合わせてきた 今井 達也 。春先からスカウトの間では話題になっていたが、正直ここまで凄いとは思わなかった。けして無理して投げているような感じがなくても、コンスタントに145キロ以上をマーク。夏の緒戦となった宇都宮高校戦では、149キロまで到達した。この夏見た中では、1番衝撃的な選手だと言えるであろう。

(投球内容)

 スリークオーター気味の腕の振りのため、もう少し上からしっかり叩けたらなと思える感じはします。

ストレート 常時140キロ台~MAX149キロ 
☆☆☆☆★ 4.5

 けして無理して投げているわけではないのですが、平均してボールの勢いが違います。コンスタントに145キロを超えてきますし、ボールの質・勢い共に素晴らしい。球威で押すというよりは、キレで勝負する快速球タイプ。ピンポイントで良いところというほどコマンドは高くはないものの、外角にはある程度狙って集められている。

変化球 スライダー・チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 スライダーと高速で小さく沈む球があり、これがどうもチェンジアップのようです。むしろスプリットとかツーシーム的な球であり、高校生でこの球を初めての対戦で見極めるのは難しいかもしれません。けして速球だけでなく、こういった見極めの難しい変化球を織り交ぜてくる、実戦力があります。

(投球のまとめ)

 元々センス型の選手がスピードアップしてきたように、ちょっと華奢なタイプで更に春の故障なども影響があり、大会が進んで来るとパフォーマンスの低下が心配されます。しかしこれだけのボールを投げ込んでいながら、荒々しさがなく変化球も良いのでそういった点では素晴らしい投手だと言えるでしょう。





(投球フォーム)

セットポジションから、それほど力むことなく投げ込んできます。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 前に倒れ込む感じのフォームのため、お尻は一塁側には落とせません。そのため身体を捻り出すスペースは確保されず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く沈む球には適しません。

 「着地」までの粘りもそれほどではなく、身体を捻り出す時間が充分とは言えません。そういった意味では、将来的にキレがあったり、曲がりの大きな変化球の修得には苦労するかもしれません。現時点でもスライダーやスピードのある沈む球を武器にしており、自分のフォームの特徴をよく理解した投球だと言えるでしょう。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで身体の近くで抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を押し付けられており、ボールは上吊り難いはず。ただし腕が上から叩けない分、ちょっと球筋がしっかりしないのは気になります。それでも「球持ち」もよく前で放せているので、コントロールで自滅するような荒々しさはありません。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークなどの球種を投げると肘に負担がかかります。しかし沈む球がフォークではなくチェンジアップやツーシーム系ならば悲観するほどではないでしょう。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少なそう。またけして力投派ではないので、消耗が激しいタイプではありません。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがそれほどでもないので、打者としては苦になるフォームではありません。また「開き」も少し早く、それほど甘くない球でも打ち返される危険性は感じます。

 それでも腕は振れており、速球と変化球の見極め困難。またボールに体重を乗せてからリリースを迎えているので、打者の手元まで生きた球が投げられます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「開き」の部分で若干甘いところがあり、そのへんが改善ポイント。

 縦の変化を結構使うので、肘への負担がかかりやすいフォームなのが少し心配な点。しかし制球を司る動作は良いので、コントロールに不安がないところは推せる材料でしょうか。


(最後に)

 恐らく全国でも、5本の指に入る高校生だと思います。けして馬力型ではないのと故障明けなどの不安はありますが、そういう問題をクリアできそうならば、ドラフトでも2位前後の指名があっても不思議ではありません。春の故障であまりクローズアップされてきませんでしたが、これから大いに注目される存在だと思います。関東では、間違いなく 藤平(横浜)や島(東海大望洋)などと双璧をなす存在です。大いに期待して今後の勝ち上がりを見守りたいと思いますし、ぜひ甲子園に出てその名を全国に知らしめて欲しい選手でした。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名に相応しい選手)


(2016年夏 栃木大会)