16kp-17
吉川 貴大(開星3年)投手 180/79 右/右 | |
センバツではコンスタントに140キロ台を記録し、最速147キロを記録。今大会出場した選手の中でも、平均球速では一番だったのではないかというぐらいの内容だった。しかしその割に、苦になく相手から打ち返されてしまうのは何故なのだろうか? (投球内容) 上体を強く振ることで、速い球を生み出す馬力はたいしたもの。 ストレート 常時140~MAX147キロ ☆☆★ 2.5 ボール自体球速ほどに速くは感じさせない球質で、特に合わせやすいフォームなのか?打者が苦にせず対応している。そのため打者の空振りは少なく、勢いで詰まらせて打ち取るタイプ。ボール自体は、適度に両サイドに散っているものの、高めに浮いた球をヒットされることが多い。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク・ツーシームなど ☆☆★ 2.5 圧倒的に、スライダーとのコンビネーションが目立つ。スライダー自体は曲がりも鋭くブレーキは効いているものの、曲がりが早いのか見極められてしまうことが多い。またフォークなのか? チェンジアップのような沈む球も結構使ってくる。けして落差が悪いわけではないものの、その精度や活かし方に課題を残している。 その他 クィックは、1.0秒前後~1.15秒前後とまずまず。フィールディングは、それほど機敏だとか上手いといった感じはしない。野球センス、運動神経に優れたタイプではない。 (投球のまとめ) ボール一つ一つは悪く無いものの、合わされやすい見極められやすいフォームに欠点がある。更に、その球を活かすセンス・技術に課題があり、せっかくの高い能力を活かしきれていない。現状は、資質は高いものの高校からのプロ入りは厳しい印象は否めない。 (投球フォーム) 実際技術的に、どの辺に問題があるのか考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足は高い位置で伸ばされており、お尻は一塁側に落とせている。すなわち体を捻り出す時間は確保できており、カーブやフォークといった捻りだして投げる球種を投げるのにも無理はない。 しかし「着地」までの粘りが不十分で、体を捻り出す時間が足りない。これによって曲がり早すぎたり、武器になるほどのキレを生み出せない要因になっている。 <ボールの支配> ☆★ 1.5 グラブが投げ終わったあと抱えられず、フォームが暴れてコントロールがつき難い。足の甲の押し付けも浅く、力を入れて投げる球が上吊りやすい。「球持ち」も良いようには見えないものの、その割にはボールをある程度制御できているのは不思議なぐらい。こういった一つ一つの動作の甘さが、投球全体の不安定さに繋がっている。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても窮屈さは感じられない。そのため肘への負担は、けして大きくはないはず。 腕の送り出しも無理はなく、肩への負担は少ないのでは。そういった意味では、故障のリスクは少なく、リリーフなどでタフな活躍が期待できそう。 <実戦的な術> ☆ 1.0 「着地」の粘りに欠け、イチ・ニ・サンのタイミングになりやすく、「ニ~の」の粘りが生まれない。また体の「開き」も早くコースを突いた球でも打ち返されがち。更に変化球をいち早く見極められてしまうのも、この部分の影響が大きい。 上体の振りが強いはずなのに、投げ終わったあと身体に絡んで来ない。腕が振れておらず、どうしても速球と変化球の見極めもつきやすい。「球持ち」が浅く、体重を乗せきる前にリリースを迎えてしまっており、打者の手元まで生きた球が投げられない。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、すべてに課題を抱えている。これらを改善して行かないと、ただの球の速い奴で終わってしまう。 コントロールを司る動作の割には制球がきくのと、故障のリスクが少ない点は推せる材料。 (最後に) けしてコースも甘くないし、スピード能力はA級なのに打ち返されてしまうのは、やはりフォームに大きな欠点があるからだとわかってきた。この辺は、高校の間の修正は厳しく、次の指導者に託す形になるのではないのだろうか? 優れたスピード能力を持っているだけに、なんとも惜しい。高校からのプロ入りは厳しいが、今後の導きかた次第ではいずれプロになっても不思議はないだろう。少し長い眼で、見守って行きたい。 (2016年 センバツ) |