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鈴木 昭汰(法政大4年)投手 175/81 左/左 (常総学院出身) | |
昨年オフに作成した寸評でも、140キロ出るか出ないかぐらいの球速が140キロ台中盤を出せるようになっていると、その変化を伝えた 鈴木 昭汰 。しかし最終学年になると、コンスタントに145~150キロぐらいになり、さらに昨年よりも5キロ程度速くなっていたことに驚かされる。 (投球内容) 大幅に球速アップを遂げた4年春(8月開催)のリーグ戦では、1勝0敗 防 1.54(4位) 。続く秋のリーグ戦では、1勝3敗 防 1.95(3位) という成績だった。春と秋のリーグ戦では、間隔も短かったので大きく変わった印象はない。 ストレート 常時145~150キロ ☆☆☆★ 3.5 球速は格段に上がっているが、それほど凄みを感じさせる速球ではない。そのためストレートだけで押しても、なかなか六大学の相手校を抑え込むことはできていない。全体的に制球はアバウトで、大まかに両サイドに散らせる感じ。時々甘く入ってくる球もあり、そういった球は見逃してくれない。この秋は、37イニングで30安打。被安打率は、81.1% と。やはり左腕から150キロのボールを投げ込む割には、70%台にゆくほど圧倒的ではないことがわかる。ちなみに同じ六大学の左腕である 早川(早大)は、39.1% なので、鈴木の半分以下という驚異的な数字を残している。 さらに四死球率は45.9%であり、投球回数の1/3以下という目安を大きく上回ってしまっている。多少アバウトでも、学生球界の広いストライクゾーンを考えると、40%以下にはとどめたい。ちなみに早川では、この数字も 17.4% と鈴木の半分以下になっている。 変化球 スライダー・ツーシーム・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 130キロ台の曲がりながら沈むスライダーを軸に、140キロ近い小さく逃げるツーシームが投球の基本。たまに沈みの大きなチェンジアップを織り交ぜてくるといった配球になっている。奪三振に関しては、37イニングで45奪三振と投球回数を遥かに上回っている。制球はアバウトでも、変化球にも威力があるのは間違いない。 その他 クィックは1.25~1.30秒と遅めだったのが、今は1.15~1.20秒ぐらいと標準レベルまで引き上げることに成功。しかし、セットポジションになると制球を乱すことが多いのは気になる材料。牽制は、左腕らしく見分けが難しい。フィールディングも落ち着いていて、なかなか動きは良い。そういった持って生まれた野球センスの高さ、運動神経の良さは感じさせる。 高校時代から全国大会で揉まれてきており、マウンドさばきに優れている。ただし、意外に繊細さに欠け、むしろプロレベルでは粗っぽく見えてしまう。早くから高いレベルで揉まれてきた選手には、こういった選手が意外に多い。 (投球のまとめ) 着実にパワーアップには成功してきたが、投球の繊細さはこれからといったタイプに。特に自慢の外れのストレートがアバウトで、スライダーを中心にカウントを整えている。このスライダーで空振りも誘えるが、ツーシーム系のボールを扱うことで、課題だった右打者への投球にも余裕が生まれてきたのではないのだろうか。それでもまだまだ、先発で計算できる投手かと言われると微妙なレベル。そのへんは今秋のリーグ戦でも、1勝3敗という数字にも現れている。 (投球フォーム) そのアバウトの投球の何処に問題があるのか? フォームを分析して考えてみたい。まずワインドアップで振りかぶり、勢い良く足を引き上げてくる。軸足の膝にはさほど余裕は感じられないものの、バランスは適度に保って立てている。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足をかなり投手側に送りこむので、高い位置でピンと伸ばしている割にはお尻の三塁側(左投手の場合は)の落としは甘くなる。それでも身体を捻り出すスペースが充分ではないほどではなく、カーブやフォークといった球種を投げられないことはないのだろう。 「着地」までの粘りもそれなりで、適度に身体を捻り出す時間は確保できている。そのためキレや曲がりの大きな変化球も習得可能で、実際に曲がりながら沈むスライダーでは空振りが奪えている。 <球の行方> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。そのため、両サイドへの投げ分けはつけやすい。また足の甲の地面の捉えも深いとは言えないものの、適度に地面を捉え続けている。制球はアバウトだが、浮き上がろうとする力を抑え込めずにいるといった感じではない。「球持ち」自体も、それほど悪くは見えない。 それではなぜ制球を乱しやすいのか考えると、やはり執拗に速い球を投げようとして力が入りすぎているのではないかということ。もう一つは、普段はワインドアップで振りかぶって投げているので、走者出してセットポジションに変わるとフォームの再現性に乏しく、コントロールを乱しやすいのではないかと考えられる。その2つに注意すれば、球速は多少落ちてもそこまで制球を乱すフォームではないような気がする。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種はほとんど観られないので悲観するほどではないのだろう。腕の送り出しは、多少ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がっているものの、これも極端ではない。むしろ現在かなり能力を越えて速い球を投げようと力投しているので、疲労が溜まりやすく故障しやすいのではないかと心配になる。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」までの粘りは適度に作れ、合わされやすい感じではない。ましてボールの出どころも隠せているので、打者としては差し込まれやすいのではないのだろうか。それ故に、三振も多いと考えられる。 腕の振りも強く勢いがあるので、打者としては吊られやすい。ボールにも適度に体重が乗せられており、地面の蹴り上げも素晴らしい。こういった投手は、体重がしっかり前に乗っている現れなのだ。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、大きな欠点は見当たらず、全てで平均以上の内容でまとめられている。課題である制球力に関しては、フォームの問題よりもワインドアップとセットポジションの再現性や執拗に速い球を投げようと身体を振りすぎているからではないのだろうか。 この辺は故障のリスクの部分でもそうで、そこに無理が無くなれば負担も減るのでフォームの問題ではないように思える。将来的に武器になるほどの決め手に関しても、スライダーとストレートが水準以上で三振が奪えているので問題は無さそうだ。技術的には、かなり実戦的なフォームと言えるのではないのだろうか。 (最後に) 制球力が不安定で勝ち味にも遅いことを考えると、即戦力の先発投手としては、何処まで計算できるのかは疑問が残る。チームでもまず先発での適性が試されそうだが、現時点で即戦力となるとリリーフからではないかと思う。ただしマウンドさばきの良さ・天性の野球センス・そして無理に速い球を投げようと力まなければ先発で活躍できるようになっても不思議ではない。そういった意味では多大な期待は一年目からはできないが、うまく環境に慣れ能力を出せるようになれば、数年後には存在感を示せる存在になるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2020年 秋季リーグ戦) |
鈴木 昭汰(法政大3年)投手 175/80 左/左 (常総学院出身) | |
常総学院時代と比べると、鈴木 昭汰 の球は、ワンランク速くなっている。高校時代は、常時135~140キロぐらいだった。しかし今は、常時130キロ台後半~140キロ台中盤まで出せるようになっている。3年秋のリーグ戦では、どの試合でも最速では140キロ台中盤以上を記録していた。 (投球内容) オーソドックスなサウスポーで、テンポ良く投げ込んできます。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 左のドラフト候補としては、平均的な球威・球速だと言えます。しかしボール自体にキレがあり、コントロールも安定。そういった実戦的なストレートは、左腕であることも加味すると高く評価できるのではないのでしょうか。ちなみに3年秋のシーズンでは、16イニングで被安打は10本と、被安打率は六大学で62.5%と優秀でした。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 変化球の多くは、スライダーとのコンビネーションです。このスライダーが、左打者の外角低めに切れ込むので、思いのほか空振りが奪えていました。このスライダーが、あまり高いところに浮いて来ないのが良いところではないのでしょうか。常総学院時代は、結構シュート系の球を投げていたこともあるのですが、今はチェンジアップのような沈む球はあるものの、あまりそういった球を使う頻度も減っているようです。課題は、右打者に対する投球だとみています。 その他 牽制は、左腕らしく見分けが難しい。フィールディングも落ち着いていて、基準レベル以上。クィックは、1.25~1.30ぐらいと少し遅め。それでも高校時代は 1.30~1.40秒ぐらいなので上手くはなっている。 低めやコースに集められるコントロールがあり、間を使って駆け引きするというよりも、テンポ良く投げ込んで自分のペースに相手を巻き込むのが上手いタイプではないのでしょうか。 (投球のまとめ) 凄みはないのですが、安心して観ていられる好投手。四死球も16イニングで5四死球と投球回数の1/3以下に留められています。また三振は13個で、1イニングあたり 0.81個 と、それほどアマチュアの左腕としては多いというほどではありません。プロの打者相手だと長いイニングは厳しいかもしれませんが、中継ぎならば一年目から戦力になれるだけの下地は持っています。 (投球フォーム) ワインドアップで振りかぶり、足を引き上げる勢い高さはそれなり。軸足一歩で立ったときに、軸足の膝には力みは感じられないものの、全体のバランスとしては並ぐらいでしょうか。引き上げた足を、曲げ伸ばしして投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 お尻の一塁側(左投手の場合は)の落としに甘さは残すものの、適度には落とせている。したがってカーブやフォークといった球種も、投げるのに無理はなさそう。また着地までの粘りも適度に作れており、身体を捻り出す時間も確保。武器になる変化球の習得も、期待できるのではないのだろうか。現状は、スライダーのキレが良くこの球で空振りが誘えていいる。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を抑え込めている。したがってブレが少なく、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲の地面への捉えがやや浅いので、力を入れて投げるとボールが高めに集まりやすい。「球持ち」も悪くなく、抜けるような球は少ない。繊細なコントロールがあるかは微妙だが、大方狙ったゾーンに集められている。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻もある程度落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げてもそれほど窮屈にはならなそう。カーブは投げるが、フォークような球は観られないので、肘への負担は気にしなくても良さそうだ。 ある程度角度を付けて投げているが、腕の送り出しに負担は感じられない。そのため肩への負担も、さほど大きくはないのではないかと考えている。けして力投派でもないので、比較的故障のリスクは低いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも隠せている。そのためピュッと来る感じで、打者は差し込まれやすいのではないのだろうか。腕の振りもコンパクトで鋭く、ボールにも適度に体重を乗せて投げることができている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は見当たらない。また故障のリスク、制球のを司る動作もまずまずで、将来的に武器になる変化球の習得も期待できそうなフォーム。ずば抜けて良い部分はないが、トータルバランスに優れた実戦的なフォームになっている。 (最後に) 特にボールが凄いとか、フォーム技術が極端に優れているとか、物凄くピッチングが上手いとは思わないが、実戦的で総合力に優れた好投手だと評価している。プロの先発となるとスケール不足かもしれないが、ことリリーフならば大崩れしない左腕として重宝される可能性は高いのでは? 高校時代も書いたが、イメージ的には 大洋・横浜などで活躍した 野村弘樹 タイプのサウスポーと言えるのではないのだろうか。順調にゆけば、大学からのプロ入りも充分意識できる位置にいるとみている。 (2019年秋 松山合宿) |
鈴木 昭汰(常総学院)投手 176/77 左/左 | |
昨秋~選抜の間には、ボールに球威が出て球質がプロ仕様になっていた 鈴木 昭汰 。そのため大学タイプの好投手のイメージから、ドラフト候補としてマークできる存在に成長。夏までに更なる上積みがあれば、高校からのプロ入りも可能ではないかと引き続きマークすることにした。そしてこの夏の大会、その投球を観る限りは、春からの大きな上積みは感じられなかった。 (投球内容) ストレート 135~MAX141キロ ☆☆★ 2.5 選抜でのMAXが140キロ。この夏のMAXが、141キロということで殆ど球威・球速が変わった印象はない。しいて言えば、上半身と下半身のバランスがアンバランスだった投球が、だいぶ良くなってきた感じはする。ピンポイントで決める高い精度はないが、内外角にボールを散らせるコントロールはある。更に真ん中近辺に甘く入ることは少ないものの、ボール全体が高い傾向が観られる。 春にはだいぶプロ仕様に近づいた球質も、まだプロと考えると球威・球速の面では物足りない。それでも左腕だということも考慮すると、合格ラインなのではないかという気もする。しかしこの夏甲子園では、27回1/3イニングを投げて30安打とイニングを上回っており、心配と言えば心配ではある。 変化球 ☆☆★ 2.5 春はもう少しシュート系の、右打者外角に逃げて行く球を多く混ぜていたような記憶がある。しかしこの夏は、ほとんどが速球とスライダーとのコンビネーションで、単調な印象は否めなかった。しかし春は、もっとスライダーが高めに抜けて甘く入ることが多かった。その点は、春よりもスライダーの精度が高まり投げミスが減った点は評価したい。 その他 牽制は多く織り交ぜてくる選手で、自信を持っているのだろう。フィールディングも落ち着いていて、基準レベル以上。春から指摘するように、クィックがあまり見られない。おおよそ1.3~1.4秒ぐらいであり、この辺が今後の課題ではないんだろうか。 (投球のまとめ) 目に見えて球威・球速を増していない点をどうみるか? スライダーの精度が上がっていたことは評価できるものの、その分シュート系が陰を潜め、単調な印象は否めなかった。そういった投球の浅さみたいものを、各球団どう見るかは意見が別れるところ。普通に大学進学ならば、六大学や東都など大学トップクラスの学校に入学できるであろう素材だから。 (投球フォーム) 選抜の時にフォーム分析した時は、大きな欠点はなく極めて高いレベルでまとまっている実戦的なフォームだと評価した。しいていえば、もう少し「球持ち」がよくなればと書いたが、この夏はその点は改善されており粘っこいフォームになっている。春~夏にかけての1番の成長は、この部分ではないのでしょうか。 (最後に) もうすでに、持ちえる能力をほぼ出しきっているのではないのか? そういった今後の、上積みの無さを感じます。それだけに、今の技量で通用しないと、プロでは相当苦労することが予想されます。それならば大学などでしっ かり実績を残し、投球の幅を広げてからという選択肢を選ぶのが一般的なように思えます。 しかしこの選手をみていると、何か強烈ななプロ志向を感じずにはいられません。本人がどんな条件でもプロ入りしたいという明確なものがあるのならば、私は高校からプロを目指しても良いのではないのか? 特に「コントロールの良い左腕は買い」ということで、左腕ならばこの球威・球速でも、上手く立ち回れる可能性も感じます。 選抜でも書きましたが、イメージ的にはプロでも100勝以上をあげた 野村 弘樹(PL学園-大洋)を思い出します。高校時代の野村は、面白味のないまとまった左腕との印象でした。しかしプロ入り後は、想像以上にボールに威力があり、キレのある球とピッチングの上手さで大洋の左腕エースとして活躍。その高校時代の野村と比べても、今の鈴木はひけを取らない力量の持ち主だと評価します。 下位指名でもプロ入りしたいと思うのならば、ぜひ志望届けを提出してプロで勝負して欲しい! その基準は、満たしている投手だと評価します。特に野球に対する熱い思いと、投手としてのセンスの良さは高く評価したいと思います。 蔵の評価:☆ (下位指名ならば) (2016年夏 甲子園) |
鈴木 昭汰(常総学院3年)投手 175/76 左/左 | |
センバツでは、緒戦で破れてしまった 鈴木 昭汰 。しかし今までのセンスが勝っていて、頼りなかった頃の投球に比べると、一冬越えて明らかに変わってきた。球速は変わらなくても、打者の手元までの球威は大幅に向上。私はこの選手を初めて、ドラフト候補と意識することになる。結果は伴わなかったが、一冬越えた成長を実感した大会だった。 (投球内容) いかにも正統派のサウスポーといった感じの投手で、凄みよりもセンスが目立っていた投手でした。 ストレート 常時135キロ前後~MAX140キロ 昨年のセンバツで投げていた頃と、球速的にはほとんど変わりません。夏の予選でも生で見たのですが、ボールに勢いはあったものの、キレ型の球質の投手でした。しかし一冬越えて、ボールに厚みが感じられるように成長。実際に打たれたストレートは、詰まっていた打球ばっかりで、クリーンヒットと呼べるものは殆どありません。 両サイドに投げ分けるコントロールもあるのですが、しいて言えば全体的に高い。そのため詰まらせても、ヒットになってしまうケースが多いように感じます。あとは左打者に対しては結構アバウトなところがあり、左投手ですがあまり左打者を得意としている感じがしてきません。 変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 右打者の内角膝下に食い込んできたり、左打者の外角低めのボールゾーンに切れ込む、曲がりながら沈むスライダーを武器にしています。この球が、気持ちもう少し身体の近くで変化すると面白いと思います。あと外角に投げるスライダーが高めに浮いてしまい、この球を打たれるケースが目立ちます。 右打者の外角に投げるチェンジアップの精度は高く、微妙な出し入れで投げることができます。現状コントロールできるということに関しては、スライダーよりもこちらの球の方が精度は高いかもしれません。ただし微妙なところに投げることは出来ますが、あくまでもタイミングを狂わせる球であり、空振りは誘えません。左打者には、このチェンジアップを使えないので、どうしても速球とスライダーという、単調な配球になりがち。それならば緩いカーブなどを、もう少し上手く使えると良いのですが。 その他 牽制は自信があるのか、多く織り交ぜてきますし見分けもつき難い。フィールディングも実に冷静で、的確な判断で処理できています。クィックは、あえて走者をじっくり観るためなのか? 1.3秒台と遅いのが気になります。しかし走者への目配せは、けして忘れません。こういった野球センスの高さは、ある意味天性のものを感じます。 (投球のまとめ) 一冬越えて、ボールのひ弱さがなくなりました。またセンスが勝ったタイプとの印象が強かったのですが、右打者の内角足元にぶつけそうになったスライダーを投げたあとに、内角にズバッと速球を投げ込んで来るあたりに、度胸の良さを感じます。センスだけでなく、ハートもプロ向きの選手だと感じます。 ミート力に優れた打撃センスも抜群の選手ですが、夏まで投手のドラフト候補として追い掛けてみたいと思わせるものがあります。通常この手のタイプは、春の時点で大学タイプだと切り捨てるところなのですが、この選手は違いました。 (投球フォーム) <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を高い位置で伸ばせており、お尻は自然と三塁側に落とせています。身体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブやフォークといった捻りだして投げるボールを投げても無理がありません。 「着地」までの粘りも早過ぎることはなく、適度に身体を捻り出す時間を確保。将来的には、更に投球の幅を広げて行けるでしょうし、もっと武器になる変化球を身につけても不思議はありません。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲も地面を捉えており、元来ならばもう少しボールが低めに集まっても良いはず。その辺もう少し球持ちを意識して指先の感覚を磨けば、ボールを押し込めるようになるのではないのでしょうか。将来的には、かなり精度の高いコントロールが期待できるタイプだと思います。 <故障のリスク> ☆☆☆☆★ 4.5 お尻も落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても窮屈さは感じないはず。しかしまだ、そういった球種は殆ど観られません。肘への負担は、少ないフォームだと言えるでしょう。 腕の送り出しを見ていても、肩への負担も少なそう。それほど力投派でもないので、消耗も少ないのではないのでしょうか。そういった意味では、故障のリスクの少ないフォームだと評価できます。 <実績的な術> ☆☆☆☆ 4.0 「着地」の粘りも悪くはないので、それほど合わせやすいわけではないでしょう。また体の「開き」も抑えられているので、甘く入らなければ打ち込まれる可能性は低いはず。あとは、不容易に高めに甘くなる欠点を改善したいところ。 腕はしっかり身体に絡んでおり、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも適度に体重が乗せられており、打者の手元まで球威のある球が投げられるようになっています。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。しいて言えば、もう少し「球持ち」を意識して、粘っこい投球ができればと感じます。 足の甲の押し付けが浅かった欠点も、かなり改善されてきました。故障のリスクも少ないですし、実戦的な良いフォームだと言えるでしょう。素直に肉付けしてパワーアップして行けば、結果に結びつきやすいフォームだといえます。 (最後に) パワーアップした分、上半身と下半身のバランスが微妙につかなかったのかという気はしました。その辺は、一冬越えて初の公式戦・それもセンバツという大舞台。ランナーを背負っていない時は、そういった課題が表に出ることはなかったものの、走者を背負いプレッシャーのかかる場面だと、まだ微調整が充分できる状況ではなかったのかもしれません。 しかし一冬越えて、身体・ボール共に厚みを増してドラフトを意識できる投手になってきました。センスが勝ったタイプとの印象を受けていましたが、繊細さだけでなく大胆さもあることを知り、精神面でもプロ向きかと感じます。イメージ的には、大洋で100勝以上をあげた左腕・野村弘樹 の現役時代に近いものを感じます。力量的にも、高校時代の彼と大差のないところまで来ていると感じました。 イメージ的には、強豪・名門大学に進んでゆくような印象を受けます。しかしこの選手は、高校からプロを目指すべき選手ではないかと思いました。自分の可能性を信じて、夏まで精進を続けて欲しいと思います。私も、最後まで追い掛けてみたい一人でした。 蔵の評価:追跡級! (2016年 センバツ) |