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大江 竜聖(巨人)投手のルーキー回顧へ







 大江 竜聖(二松学舎大附3年)投手 171/73 左/左
 




                      「かなり粗っぽいが」





 1年夏から甲子園を経験するなど、その性格は実にプロ向き。物足りなかった球質も、だいぶ一冬を越えて改善されてきた。春季大会の時点で、☆☆ を付けていた投手だが、最後の夏をみて改めて最終寸評を作成したい。


(ここに注目!)

 なんと言っても、最大の売りは気持ちの強さ。ランナーを背負うと熱くなっていた投球が、最後の夏は気合は入っても冷静に投げられるように進化していたことは見逃せない。


(投球内容)

身体は小さいものの、ワインドアップから振りかぶって投げ込む力投派。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 春先よりも、ワンランク球速は増していた印象があります。コントロールはアバウトながら、ポンポンとストライクゾーンに投げ込んで有利な状況を作り出します。ボールは大まか両サイドに散らすことはできるものの、結構高めに甘く入ることは少なくありません。キレ型の空振りのとれる球質なのですが、球威がないので高めに浮くと痛打を浴びます。この辺は、プロの打者は見逃してはくれないでしょう。

変化球 スライダー、カーブ、チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 打者の手元で、曲がりながら沈むスライダーとのコンビネーション。たまに余裕があると更に緩いカーブを投げて、右打者には外角に逃げるチェンジアップも織り交ぜます。

 スライダーの曲がり・鋭さは良いものの、高めに甘く入ることも少なくない。その他の変化球も、まだそれほど精度・キレともに特徴はなく、現状は速球とスライダーの単調なピッチングに陥りやすい。もう少し変化球の精度を高めてゆかないと、速球を狙い撃ちされる危険性を感じる。

その他

 クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的。牽制はそれほど鋭いのは入れないが、下手ではない。フィールディングの反応、動きはよく、この辺はかなり上手い部類。

 特にコントロールや変化球に優れているわけではないのだが、マウンド経験豊富で度胸がよく、相手より精神的に優位に立つのが上手い。

(投球のまとめ)

 生でみていると、ボールの勢いやキレはかなりもの。しかし細かく見てみると、コントロールがかなり粗っぽいのと、球威に欠け甘く入る球を痛打される場面が目立つ。プロでは制球力に苦しみ、自分の思い通りのピッチングを、なかなかさせてくれないで苦しむ危険性も感じられる。


(投球フォーム)

春もフォーム分析しているので、変化があったところのみ触れてみたい。

 春よりも「着地」までの粘りが良くなりつつあり、その分下半身が使えるようになって、足の甲の押し付けも以前ほど浮かなくなった。その分ボールに体重が乗せられるようになったことで、より打者の手元までの勢いは増している。

 ただし腕が外回りに外旋し、ブンと振ってくるタイプ。そのためどうしても、細かいコントロールがつけ難い。それでも課題に対し、少しずつ改善してゆこうという姿勢は感じられ、今後の成長も期待できそう。


(最後に)

 春~夏の短期間でも、更なる成長は感じられた。しかし冷静に投球を見てみると、コントロールの粗さ、更に球威に欠ける投手ということで、プロでは自分の投球が思い通りできず苦労するのではないかという危惧する。

 彼が春より悪くなったから評価を下げるのではなく、私自身がちょっと能力を見誤っていた部分がある気がして、評価は春よりワンランク落とさせて頂く。それでも課題を取り組む姿勢も見られ、まだまだ良くなる可能性も秘めている。ドラフトでは下位指名かもしれないが、本会議の中で指名されるのではないのだろうか。育成ならば、かなりお得感のある選手だと思う。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2016年夏 東東京大会)









 大江 竜聖(二松学舎大附3年)投手 172/74 左/左





                   「球質は良くなっている」





 下級生の頃から140キロ台を記録してきた 大江 竜聖 だが、球速ほどボールが来ているようには見えない球質だった。そのため一冬越えて、球質がどうなっているのかが最大の関心事。そしてこの春季大会を観て、球速に見劣りしないだけの勢いが出てきたことが確認できた。


(投球内容)

ノーワインドアップから、スッと足を上げて投げ込んできます。

ストレート 常時130キロ台後半~MAX89マイル(142.4キロ) 
☆☆☆★ 3.5

 立ち上がりから140キロ前後の速球を投げ込むも、下級生時から140キロ台中盤を記録していた大江の力からすれば驚くことはない。ボールがキレ型で甘く入ると怖いことは否めないが、手元までキレて来るので空振りを誘える。更に観戦した日大鶴ヶ丘戦では打ち込まれたものの、捉えられていたのは高めに甘く浮いたスライダーであり、速球に関してはまともに打たれていなかったことは評価できる。

 昨年までは、ストライクゾーンの枠の中にポンポン投げ込んで来るリズム感が目立った。しかし今春は、アバウトながらもボールを両サイドに散らせるようになっている。強気に打者の内角を突く投球も健在で、球筋が少し高くなるのは気になるものの、確かな成長は感じられる。


変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ(フォーク) 
☆☆★ 2.5

 打者の手元で曲がりながら沈む、スライダーとのコンビネーション。それに少し緩いカーブでもカウントを取ったり、たまにチェンジアップだかフォーク系の球もあるものの、それほどカーブ・チェンジアップ系の精度は高まっていない。

 スライダーの曲がりは鋭いものの、高めに甘く浮いて打たれるケースが目立った。彼の信頼できる武器である一方で、打たれる最大の要因でもあり、諸刃の剣といった印象は否めない。

その他

 クィックは、1.2~1.3秒ぐらいとじっくり投げることを重視。昨年までは、1.0~1.2秒ぐらいで投げていたことを考えると、動作自体は遅くなっている。また牽制も軽く投げるだけ、走者を威嚇しようとか刺そうという意識はない。あくまでも、一息間を入れるためのものとなっている。昨年よりも走者を出しても、投球に集中しようといているのがわかる。

 走者を出しても、ボールを意識的に長く持ったりと相手を焦らす技術は持っている。熱いハートの持ち主だが、そういったクールな一面も兼ね備えていることは忘れてはならない。だてに一年生から、甲子園で活躍してきた選手ではないということなのだろう。


(投球のまとめ)

 まだ甘い部分や粗っぽい部分が残ることは否定できないが、球速に見合った球になりつつある。どうしても使える変化球がスライダーぐらいなので、余裕がなくなると単調に陥りやすい。その時により投球が慎重になれれば良いのだが、力んで甘く入ってしまうことも少なくない。その辺が今後改善されるかで、内容は変わってきそう。それでも全国的にこれだけ投げられる高校生左腕は、数えるほどしかいない。体格の物足りなさはあるものの左腕であることを考えると、高校からプロを意識できる素材だと評価する。

(投球フォーム)

 オフに細くフォーム分析をしたので、今回は変わった点を。昨年までのフォームでは、「着地」までの粘りに欠け淡白な投球フォームでした。

 今回観る限り、「着地」までの粘りは多少良くなっているように感じます。それにしたがって、「球持ち」や「体重移動」も更に良くなっているように見えます。しかし実戦では、まだ効果が充分出ているとは言えません。あくまでもこの辺は、発展途上といったところでしょうか。

 あまり変わっていなかったのは、足の甲での地面への押し付けが浅いこと。これにより力を入れて投げると、ボールが上吊るという欠点が改善されていません。その辺が、速球やスライダーが高めに甘く浮き痛打を浴びる要因だと考えられます。この部分を、夏までに改善できるのかチェックしたいポイント。



(最後に)

 劇的に成長しているわけではないのですが、こちらが心配していた部分は改善されつつあります。特に球質が球速に見合ってきたことで、高校からのプロ入りも見えてきました。性格的にもプロ向きの選手であり、身体は小さいのですが、あえて高校からプロに行って欲しい、そう思わせてくれます。今後どのぐらいの伸び代が残されているかは微妙ですが、指名リストに名前を残してみたい選手でした。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2016年 春季東京大会)



 








大江 竜聖(二松学舎大附2年)投手 172/74 左/左 





                     「マインドはプロ級」





 今年の関東の高校生には、左腕の好投手が多い。そんななかドラフト候補となると、この 大江 竜聖 を推したくなる。まだまだボール自体は高校生なのだが、ハートの部分が実にプロ向き。一冬越えて、ボールが変わってくるようだと面白い。





(投球内容)

 ノーワインドアップから、足をスッと勢いよく引き上げてきます。こういったところを見ると、本質的には、リリーフタイプなのかと感じます。

ストレート 130キロ後半~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 すでに140キロ台も結構刻んで来るなど、左腕としてはAの級の球速があります。しかし実際見ていると、ボールに訴えけて来るものがなく、球自体にインパクトがありません。コントロールも細かいコースの投げ分けというより、ストライクゾーンの枠の中に、ポンポンと投げ込むというもので、真ん中近辺に甘く入ることはありませんが、結構アバウトな印象。それでも強気に右打者の内角を突いて来る、気持ちの強さは感じられます。

変化球 カーブ・スライダーなど 
☆☆★ 2.5

 基本は、横に大きく曲がりながら少し沈むスライダーとのコンビネーション。更にもう少し緩いカーブも、時々投げてきます。更にチェンジアップだかフォーク系の球もありますが、現状それほど際立つものはありません。

 スライダーはカウントも整えますが、まだ空振りを誘うほどの威力はありません。カーブもアクセントにはなっているものの、大きな武器にはなっていないですし、ましてチェンジアップだかフォーク系の球は更にと言う感じ。あくまでも速球有りきの投手という感じで、上のレベルを意識するのには決め手不足かと。

その他

 クィックは、1.0~1.2秒ぐらいと幅広く、ランナーを出すと投げるタイミングを変えている可能性があります。またボールを長く持って、走者や打者を焦らすなど、そういったことまで意識がゆくぐらいの投球術は持っています。

(投球のまとめ)

 まだまだボールの質・変化球のレベルは低く、一冬越えてどのぐらい変わって来るかではないのでしょうか? マウンド捌きは良く、間を意識したピッチングはできています。

 細かいコントロールはないものの、打者の内角を強気に攻めたり、勝負どころで力を入れる強弱が付けられるタイプ。特にランナーを背負ってからの気持ちの強さは、この投手の一番の魅力となります。このハートこそ、私が彼がプロ向きだと評する部分です。





(投球フォーム)

では具体的に、フォームのどの辺に問題があるのか考えてみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は、比較的高い位置でピンと伸ばせています。ただしかなり二塁方向に足を送り込んでいるので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは、少し甘めかと。それでもカーブで緩急を利かしたり、フォークのような腕を送り出して投げる球種を投げても、負担は少ないのでは。

 むしろ気になるのは、「着地」までの地面を捉えるまでに粘りがないところです。この時間が短いと、身体を捻り出す時間が短く、キレのある変化球や変化の大きな球を習得し難いわけです。変化球にあまり特徴がないのは、このせいだと考えられます。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くにあるので、両サイドの投げ分けは安定しやすい。しかし足の甲での地面の押し付けは浮きがちで、力を入れて投げてると、ボールが上吊りやすくなっている。また腕の軌道を見ていると、少し体から離れてブンと振られているフォームであり、細かいコントロールがつき難い。「球持ち」自体も並であり、まだ指先の感覚に優れているというほどではない。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 ある程度お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても窮屈さは少ないはず。腕の送り出しにも無理は感じないので、肩への負担は少なめでは。多少力投派で消耗は激しそうなものの、適度に間隔を明けて投げている分には問題なさそう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りがないので、打者からは合わされやすい危険性はある。そのため投球が一辺倒になって、相手に合い出すと集中打を浴びる危険性は感じる。それでも「開き」自体は平均的なので、コースが甘くならなければ大丈夫か。そういった淡白な部分を、投球の「間」を変えることで避ける意識は持てている。

 手足が短い体型ではあるものの、腕は最後まで強く振れ身体に絡んできている。そのため速球と変化球の見極めは、つき難いのでは。ボールへの体重の乗せ具合はまだ甘く、もう少しリリースを我慢して乗り切るまでボールが持ててくると、グッと打者の手元までの質が変わってきそう。まだ踏み込んだ足がブロックしてしまっていて、前にグッと体重が乗り切る前に投げてしまっている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動に関しては、「着地」に課題を残している。また「球持ち」「開き」「体重移動」も並みレベルであり、今後の鍛錬次第では、まだまだ良くなる余地が残されている。

 足の甲の押し付けが甘くボールが上吊りやすかったり、腕が外旋して細かいコントロールがつけ難くアバウトになりがち。それでも故障のリスクが低いところが、推せる材料。投球フォーム全体に言えるのは、もっと 粘り を意識したいということ。

(最後に)

 1年生の頃から活躍してきた選手であり、どのぐらい伸び代が残されているのか?という心配はあります。そのため一冬越えて、速球の球質・変化球のレベルアップがどのぐらい果たせているかということではないのでしょうか。

 身体は小さいのですが、左腕ということもあり、それはあまり気にしなくても良いのでは。持っている ハート は素晴らしく、その点はプロ向きだと高く評価します。春季大会から、その成長を確認しに行きたい一人です。


(2015年 秋季東京大会)