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森山 恵佑(日ハム)外野手のルーキー回顧へ







 森山 恵佑(専修大4年)右翼 188/92 左/左 (星稜出身)
 




                     「評価づけが抜けていた」






 春のリーグ戦を見た時は、秋の内容次第で評価づけを決めようと思っていた。しかしその評価付けを行う寸評を作成していなかったので、今回は改めてこの選手の最終寸評をを作成してみたい。

 春に、守備・走力・打撃フォームなどの部分は触れているので、今回は今まで残してきた成績から、この選手の可能性を模索してみたい。2年生までは、チームが東都二部に在籍していたので、一部昇格を果たしてからの通算成績で検証してみたい。

48試合 4本 23打点 0盗塁 打率.273厘

アマ球界屈指の飛距離を誇るスラッガーと言われているが、その可能性もついて考えてみたい。

1,本当に長距離打者なのか?

 48試合・183打数で4本塁打を記録。これをプロのレギュラー野手並の500打席に換算すると、実は年間 10.9本 程度のペースでしかホームランを打っていないことになる。当たった時の飛距離には目を見張るものがあるものの、本当に高い確率で打球が上がるかは、かなり疑問が残る。ボールを飛ばせるのと、ボールをスタンドインできる力は、必ずしも比例しないというのが、私の永年の持論でもある。

2、コンタクト能力は確かか?

 183打席で45三振 ということで、三振率は24.6%に昇る。プロのニ軍でも、20%以下じゃないと一軍が見えないことを考えると、東都リーグレベルで25%近い三振比率というのは、かなりボールを捉える能力に課題があることがわかる。

3、ボールを見極める眼はどうか?

 四死球比率は、10.4% と、ボールを見極める眼は悪い数字ではない。しかしこれはあくまでも学生レベルの数字であり、プロレベルの球を、見極めれるかは微妙だろう。通常10%以上の四死球比率があると、かなりボールを見極める「眼」の良さがあると考えられる。ただし所属するレベルによって変化するので、学生野球の数字が単純にプロに当てはまるわけではない。

吉田 正尚 との比較では

 ちなみに、東都一部の通算打率が近い選手がいる。その選手の名前は、吉田 正尚(青学大-オリックス)外野手。今そのフルスイングで、最も今後の飛躍が期待される若手外野手。その吉田の東都一部での通算成績は

72試合 9本 38打点 12盗塁 打率.277厘

 ちなみに吉田のホームラン比率は、500打席換算でプロで年間16.2本だった。ちなみにプロでは、258打席で10本だったので、500打席換算だと19.4本であり、プロに入ってよりホームラン比率を伸ばしている。やはり森山あたりに比べると、ホームランになる確率は、アマ時代からワンランク上だったことは間違いない。

 ちなみに三振比率は僅か11.9%であり、東都のの森山の数字の半分以下の数字。この部分では、ボールを捉える能力が森山と吉田とでは相当違う可能性が高い。同じような通算打率でも、その中味はかなり異なる。しかし四死球率は吉田は9.4%で森山の方が吉田の数字を上回っている。

 単純に数字から判断すると、ボールを捉える能力は格段に吉田の方が高いものの、ボールを見極める眼の良さはむしろ森山の方が優れているぐらいである。ということは、根本的な能力よりも後天的な技術の未熟さであある可能性もあり、今後改善されることもありうるということ。


(最後に)

 本当にプロの球に対応できるのかというぐらいの、ボールを捉える能力の低さが課題。しかしそれは、ボールが見えていないわけではないということ。すなわち、技術的な要因が大きい可能性が。ボールを遠くに運ぶパワーはあるものの、これも確率的には低く、額面どおりプロで自慢の長打力を発揮できるかにも不安が残る。

 元々強肩だけれども守備勘が悪く、走力も期待できない。そう考えるとプロでは左翼・一塁・DHあたりを担うことになりそうで、相当打って打って打ちまくらないと起用されないだろう。そのレベルまで本当に引き上げられるかは不安だが、眼の良さはある選手なので、可能性に賭けてみたい。そう思わせる選手であり、こういった選手を拾って行かないと、なかなかプロで飛距離を売りにする和製大砲は生まれて行かないのではないのだろうか。そういった意味でも、厳しいとは思うが私も指名リストに名前を残してみたい選手だった。


蔵の評価:
(下位指名級)


 








森山 恵佑(専修大4年)右翼 189/95 左/左 (星稜高校出身) 
 




                      「東都随一の破壊力」





 昨秋のリーグ戦でライトへの文句なしの1発を放ち、その後もセンターに2本はじき返し文句無しの打撃を魅せつけられて以来、私はこの 森山 恵祐 をこう評してきた。今春のリーグ戦では、スカウトが集まるなかバックスクリーン横に突き刺さる圧倒的な飛距離を見せつけ、一躍ドラフト候補として注目されることになる。


(プレースタイル)

 星稜高校時代から、同じ左打ちの先輩「松井秀喜2世」として注目されてきた。釜田 佳直(金沢-楽天)からレフトスタンドに叩き込むなど、当時からその打撃は一目置かれる存在だった。専修大進学後は、2年春からレギュラーになり2部ながら好成績をあげる。1部に上がってからは、調子の波もあり打率は低いものの、好調時の打撃は手がつけられない。基本的には、どの方向にも叩き込める広角打者。ボールを飛ばす飛距離は、今年のドラフト候補でも屈指だと評されている。

走塁面 
☆☆ 2.0 走塁偏差値:36

 一塁までの塁間は、左打席から4.35秒前後と遅い。ここまでのリーグ戦でも、盗塁を決めたことはない。基本的に走力に関しては、多くは望めないだろう。ちなみにこのタイムを、プロ入りした左打者で偏差値化すると、36 になる。

守備面 
☆☆★ 2.5

 普段はライトを守るのだが、打球への反応、落下点への入りなどを見ていると、やや危なっかしい。少なくても上手い外野手とは言えず、将来的にはレフトでどうだろうといったタイプ。高校時代も、投手や一塁をやっていてソツのないプレーを見せていた。

 ライトをやっているのは、高校時代から140キロを記録する地肩の強さがあるから。送球までの動作はそれほど機敏ではないが、地肩はさすがに強い。プロでも中の上~上の下ぐらいの強さは、あるのではないのだろうか。


(打撃内容)

 好調時には長打だけでなく、固め打ちをして来る印象が強い。逆にダメな時は、ボールを引っ掛けることが多く脆さを露呈する。そういった好不調の波が激しいタイプではあるが、どの方向にも1発を打てる広角打者。

<構え> 
☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いた左オープンスタンスで、グリップは少し下げ気味に構えている。腰を深く沈め、両目で前を見据える姿勢は悪く無い。全体のバランスは並だが、打席では力まないようにリラックスを心がけている。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が沈み込んだ底の段階で動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。これはある程度の確実性と長打力を、バランスよく兼ね備えたスタイル。主に中距離ヒッターや、ポイントゲッタータイプの打者に多く観られる。こうやって見ると、この選手は当たれば大きいが、生粋のスラッガーとは違うのかもしれない。

<下半身> 
☆☆☆ 3.0

 足を軽くあげて回し込み、ベース側にインステップして踏み込んでくる。始動~着地までの時間はそこそこあり、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側にインステップして来るように、外角の球を叩くことを重視している。

 踏み込んだ足元が十分我慢し切れていないこともあり、外角を重視している割に打ち損じも少なくない。もう少し足元がブレずに我慢できれば、ミスショットも減って来るのではないのだろうか。恐らくレフト方向へ流すのは、外角球でも真ん中よりの甘い球や、高めの球ではないかと考えられる。内角の捌きは窮屈で、基本的に素直にバットは出てこない。

<上半身> 
☆☆☆☆ 4.0

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、リストを柔らかく使えている。バットの振り出しは、けしてインサイド・アウトではない。しかし外角の球を捌くときには、ロスなく振り出せている。スイングの弧も大きく、フォローするーを使ってボールを遠くに運ぶ後押しができている。この点が、身体のパワーと相まって、非凡な飛距離を生む原動力になっているのではないのだろうか。

 もう一つ気になるのは、ボールを捉えるときにバットの先端でるヘッドが下り気味になること。これによりボールを捉える面が少なくなり、フェアゾーンに打ち返す確率が減ってしまう。気持ちバットの先端を立てる意識でスイングしたら、もっと打ち損じは減るのではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げが大きくない割に、目線の上下動は平均的。身体の開きも十分我慢できているわけでもないが、軸足は地面から真っ直ぐ伸びて安定はしている。ただしこれだけの飛距離を誇る強打者の割に、あまり内モモの筋肉に強さを感じないのはスラッガーとしては気になる要素。

(打撃のまとめ)

 足元のブレとヘッドの下がりが観られるので、打てる球を打ち損じる確率が高いように思う。それが、独特の脆さ・粗さにつながっているのかもしれない。
 
 「仕掛け」としては中距離の型であり、強烈な打球を生み出すのに不可欠な内モモの筋肉にあまり強さが感じられないのは気になる材料。フォロースルーを使えることと元々の身体の強さでボールを飛ばすことはできるが、安定して打球が上がるタイプかと言われると疑問が残る。


(最後に)

 他の選手との比較となると、昨年の 谷田 成吾(慶大-JX-ENEOS)外野手とよく似た位置づけの選手になるのではないのでしょうか。スラッガーの資質という意味では、スイングの弧の大きさ、美しいフォロースルー含めて 谷田 選手の方に魅力を感じます。精神的に甘さが残った谷田に比べると、森山の方が荒っぽくても強さを感じずにはいられません。

 どちらがいいかは好みや評価の仕方で変わってきますが、現時点では同じような位置づけになるかもしれません。個人的には谷田選手の才能を推しますが、この森山も条件を付けなければ指名される可能性は十分あるでしょう。指名確実なレベルではまだないので、秋まで追い掛けてみたい一人でした。


蔵の評価:
追跡級!


(2016年 春季リーグ戦)










森山 恵佑(星稜)投手&一塁 186/80 左/左 





                   「松井秀喜の再来?」





 1年生ながら石川大会に颯爽とデビューして、母校の大先輩「松井秀喜の再来」とも騒がれた強打者。投げても左腕から140キロを越えるストレートを投げ込むなど、投打に高いポテンシャルを秘めています。そこで今回は、彼が「松井二世」になり得る素材なのか?打者としての可能性を検証してみたい。


(この日の森山は)

 夏の石川大会準決勝・相手はライバル金沢高校。ピッチャーは、甲子園を沸かし楽天に2位指名される 釜田 佳直(金 沢)投手。その釜田相手に、第一打席から、いきなり外角高めのストレートをレフトスタンドに。続く第二打席は四球。第三打席は、レフト前ヒット。四打席目は、レフトファールフライと、全国トップクラスの好投手相手に、3打数2安打1四球 と、けして力負けすることなく打ち返した。

(守備・走塁面)

 残念ながら、走力に関しては、タイムのみならず走力を推し量るプレーも殆ど見られなかった。ただ186センチの体格、普段の所作からすると、足を売りにするような高い走力があるようには見えなかった。

 一塁手としても、可も不可もなしといった感じ。格別反応や動きが鋭いわけではなく、無難にこなしていたという印象しかない。将来的には、一塁手もしくは強肩を生かして右翼あたりが候補になるのだろう。ただ守備範囲は、あまり広そうではないので、野手としてならば左翼あたりかもしれない。





(打撃内容)

 この選手を評価するとなると、左腕投手としてか、打撃についてということになるだろう。松井秀喜の下級生時代も、まだ粗さというか脆さの残る選手だった。それでも彼の場合、2年夏の甲子園後に行われたAAA選手権では、その年のドラフト1位で指名された 萩原誠(大阪桐蔭-阪神1位)などを押しのけ、すでに2年生で全日本4番に座るなど、モノの違いを魅せつけていた。それじゃ今年のAAA選手権に森山が出場していたら、4番に座っていたかといえば、さすがにそこまでの圧倒的なものはまだない。ただ長距離砲としての可能性は、感じさせるのに充分な試合だった。


(打撃フォーム)

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは捕手側に下げながら、体の近くに添えられている。腰の座り具合は好いが、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては平均的だろうか。ただ適度に体を動かし、自分のリズムで打席に立てているのは好いだろう。

<仕掛け> 遅すぎる仕掛け

 投手の重心が下がるときに、開いていた足をベース側に持って行き爪先立ち。実際に始動し始めるのは、投手がリリースを迎えるあたりと、極めてその始動は遅い。そのため打てる球は、非常に限定される仕掛けとなる。ただ遅く始動するということは、それだけボールを手元まで引きつけて叩くスタイルであり、長距離打者の仕掛けだとも言えるのであろう。ただ上の野球を意識するのならば、始動を早め、もう少し打撃に余裕を持ちたい。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動が遅い分、足の上げを小さくして踏み込んで来る。足を上げてから下ろすまでの「間」がないので、打てるタイミングは一点。そのため狙い球を絞っておいて、その球を逃さないで叩く「鋭さ」が求められる。彼は狙い球が来ると、初球からガンガン振って来る。

 強打者らしく、ベース側にインステップして踏み込む。外の球を強く意識したスタイルで、実際にこの試合ではレフト方向にしか打球は飛ばなかった。ただステップの幅が狭いこと、踏み込んだ足元が地面から早く離れることなどを加味すると、元来は引っ張りを得意とするタイプではないのだろうか。その彼が、レフト方向にもスタンドインできるパワーを持っているところは素晴らしい。もっと踏み込んだ足元がブレないようになれば、打ち損じもグッと少なくなり、打撃の精度も飛躍的に増すだろう。

<リストワーク> 
☆☆☆☆☆

 始動の遅すぎるの補っているのは、あらかじめ打撃の準備である「トップ」の形を早く作れているから。この選手は、長距離砲にしては珍しく、バットを上から振りおろしてくる。そのためバットのしなりや遠心力を活かすスイングではなく、ミートポイントまでに最短距離で捉えるという、ロスのないスイングを行なっている。

 ただここからが、彼ならではの技術が発揮される。ボールを捉えた後には、ボールを物凄く押し込めるのだ、そしてバットを下にもぐりこませてからは、高い位置まで引き上げられる豪快なフォロースルーによって、ボールを遠くに運んでゆく。この非凡なまでの押し込みとフォロースルーの技術は、ちょっと全国見てもいない特殊な技術だといえよう。彼が長距離砲になり得ると評価するのは、まさにこの部分に集約される。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが小さいので、頭の動きは小さい。ただ体の開きが我慢しきれないのが気になるが、軸足には強さを感じさせる。内ももの強さは、まさに彼が長距離打者になり得る素材だということを裏付ける。

(打撃のまとめ)

 現時点では、打席での雰囲気・ボールを捉えるセンス・ヘッドスピードの凄みという意味では、それほど突出しているわけではない。

 ただ全国屈指のスピードを誇った釜田のスピードを苦にしない対応力と、このロスのないスイング軌道・ボールの押し込み・豪快なフォロースルー・内ももの強さなどからすると、天性の長距離砲になり得る資質は充分あると考える。


(今後は)

 ただ気になるのは、地肩は申し分ないのだろうが、守備・走塁での潰しがきかない点。先輩の松井は、あれで俊足であったし、守備もけして下手ではなかった。現に巨人では、センターを担ったりしていた程だったのだから。

 また打席から漂う雰囲気は、森山はまだ普通の高校生でしかない。しかし3年になった松井秀喜は、他を全く寄せ付けないなんとも言えない凄みがあり、私が「迷スカウト活動」をしていて、初めて出会った感覚の打者だったし、その後も二度とそういった打者には出会わないほどの心身の成熟さを身につけていた。

 むしろイメージ的には、同じく長距離打者の資質は秘めていたが、プロで大成出来なかった 北野良栄(ダイエー5位)に近いのかなという気もしなくはない。ただその程度までの成長ならば、投手としての才能がもっと買われて高い順位で獲られることになるのではないのだろうか。

 ただ特殊な能力を秘めている選手なので、この一冬の間に、どのぐらいの選手に育つのか注目してみたい。ひょっとすると、どえらいスラッガーに育つかもしれない。


(2011年夏 石川大会)