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宗接 唯人(ロッテ)捕手のルーキー回顧へ







 宗接 唯人(亜細亜大4年)捕手 183/90 右/左 (神戸国際大附出身)





                  「あまり変わっている印象はないが」





 春の時点では、決め手に欠けて指名ボーダーラインだと評価していた 宗接 唯人 。 改めて彼の映像をじっくり見直したが、やはりピンと来るものはなかった。今回は、その理由について考える。


(ディフェンス面)

 大きな身体を小さくかがめて構えようとするなど、ある程度投手に的を大きく見せようとか、審判から低めへの球筋を見やすくしようとする配慮は感じられます。普段から座ったまま投手に返球するのですが、ランナーを塁上に背負ってからもそのことを続けるのは正直いただけません。ランナーがいない時なら、投球リズムを重視し素早く返球する意味でもありでしょう。しかしランナーを背負ってからは、じっくり丁寧にゆかなければいけません。1万回に1回も起きないプレーかもしれませんが、ランナーを背負ってからは丁寧に投手に返球すべきです。そういうところが、必ず大事な場面のプレーにでます。

 ボールを押し込むというよりは、ミットを動かさないように捕球するタイプ。それほどキャッチングが上手いようには見えませんし、低めのボールの際にミットが上から出ることが多いこと。ワンバウンド処理やコースを外れたボールに対する対処は、平均的な捕手という感じがします。大型ですが動ける身体能力があり、打球への素早い反応を魅せる選手だけに高いレベルを追求して欲しい。基本的ワンバウンド処理は少し前に身体を出してバウンド際を抑えることが重要になります。

 リードに関しては、これからという感じでさほど深み感じはしません。スローイングに関しては、ピタッとハマった時は1.8秒台で素晴らしい返球が行きます。しかし少しでもコースが外れた球からへの対応には課題がありますし、踏み出す時のステップが余計な動きが多く、せっかくの強肩が活かしきれていません。最初に送球方向にしっかり一歩を踏み込めば、自然と送球動作に移行できると思うのですが・・・。

 そういった意味では、持っているポテンシャル・地肩などは持っているものの、それを活かしきれてないのが残念な捕手。それだけにプロの指導を受け、細かい部分を追求していって欲しいところ。プロでやって行ける素材の捕手ですが、まだ技術は未熟です。

(打撃内容)

 春の寸評で技術的なことには言及したので、今回は残してきた成績から彼の打撃の可能性について考えてみましょう。

4年間の通算成績は

52試合 126打数 1本塁打 22打点 打率.283厘

 126打数のうち、三振は26個。三振比率は、20.6% だとわかります。この三振比率というのは、その選手がどのぐらいの確率でバットに当てるミート能力を探るに最も参考になる指標だと考えています。通常プロの二軍の選手が一軍投手に対応するには、ファームの三振比率が20%以下であることが望ましい(よほど長打力があるとか付加価値があれば別だが)。当然東都リーグのレベルは、プロの二軍よりも遥かに劣るわけで、その東都で三振率が20%以上というのは、プロの二軍でも対応に苦労することが予想される数字となります。

 もう一つ大きな指標になるのが、四死球率。本人の打撃スタイルにも左右されますが、これはボールを見極める眼があるかを示します。彼の場合通算で6個であり、四死球率は4.8%と極めて少ないわけです。通常プロの二軍で優秀だと10%を超えるようだと有望だと期待できる数字ですが、これが大学レベルで4.8%しかないと考えると、かなり選球眼の部分でも心配になります。

 何処か固く柔軟性に欠ける印象の選手なのですが、ボールを見極める眼の良さ・ボールを捉える能力という根本的な資質の部分でも将来に不安を残します。身体が強く打撃はパワフルで良いですし、けして打撃が弱い選手ではありません。しかしプロレベルの投手に対応できるのか? という不安は残ります。

 ちなみに今年のセ・リーグ新人王となった 高山俊(阪神)の明治大時代の成績を見てみると、三振比率は14.6%。四死球比率は、9.2% でした。またパ・リーグで新人王争いを演じた 茂木栄五郎(楽天)の早大時代の成績を見てみると、三振比率は12.3%、四死球比率は 17.3% ということで、宗接 とは大きな開きがあるのがわかります。中央の大学生レベルならば、三振比率が15%以下、四死球比率が10%前後というのが一つ目安になるのではないのでしょうか。


(最後に)

 こうやって観ると捕手としてのポテンシャルはあるものの、技術的にはこれからの選手。打者としてもパワフルな打者ではありますが、プロでの対応力に不安が残ります。捕手の人材難だった今年、どうしても捕手を一人足しておきたかったというのならばわからなくない指名ではありますが、無理して獲るほどの人材だったのかには疑問が残ります。個人的には、指名リストから外すというのが最終的な評価とさせて頂きます。まだプロに入るのには、時期尚早なのでは? 


(2016年 大学選手権) 










宗接 唯人(亜大4年)捕手 183/91 右/右 (神戸国際大附出身) 
 




                      「身のこなしが固い」





 この選手の動きを見ていると、身のこなしが硬く滑らかなな動作ができないのが気になる。確かにハマった時は、塁間1.8秒前後の送球を見せるし、ボールもしっかり捉えれば強烈な打球を放つことができる。しかしその条件は、限られているのではないのだろうか?


(ディフェンス面)

 彼の最大の売りは、塁間1.8秒前後で送球できる抜群のスローイングにある。しかしこの送球ができるのは、ボールが投げやすい場所にしっかり来た時であり、その送球能力の割には刺せる精度が低いのではないかと考える。どんな球にでも、ある程度安定した送球につなげる、そういった動作の移行に課題があるのではないのだろうか?

 ミットをしっかり投手に示すというタイプではないが、グラブ自体を地面に着けるような癖はない。また大きな体を小さく屈めて構えるなど、的を大きく魅せるように心がけている。そういった意味では、投手に気遣い・配慮ができる選手との印象は受ける。

 また打球へのとっさの反応などは、大型の割に素早い。しかし気になるのは、ワンバウンドするような低めの球に対し、ミットが下から出てこないキャッチングにある。普段のボールの押し込みなどは悪くないだけに、低めへの対応が一番の課題になってきそうだ。

 ディフェンスだけ見れば、指名される可能性を秘めている。身のこなしに柔軟性に欠けるので、送球をスムーズに行えるボールが限られているのと、ワンバウンド処理に課題を残す。この辺が、今後改善されてくるのか注目したい。


(打撃内容)

 秋は19打数8安打ながら、打率.421厘。捉えた打球は、実に強烈な球足で飛んでゆく。全体にフォームが硬く、率が残り難いように見える。

<構え> 
☆☆★ 2.5

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを高めに添えた強打者スタイル。腰はあまり沈まず、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスとしては並ぐらい。その構えからは、何処か硬そうという印象は否めない。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。早めに動き出しいろいろな球に対応しようとする、アベレージヒッターが多く扱う仕掛け。この選手は、それだけ確実性を重視していることがわかる。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を大きく引き上げまわしこんで、少しベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの時間は充分あるので、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応しやすい。軽くアウトステップするように、内角寄りに意識があるのがわかる。それでも踏み込んだ足元はブレないので、甘めの外角球高めの球ならば充分対応できるはず。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形を作るのは自然体で、リストワークに力みは感じられません。バットの振り出しは少し遠回りで素直に出てこない感じはするものの、バットの先端であるヘッドは下がらず幅広い面でボールを捉えることはできています。最後まで、力強く振りぬきます。内角を意識しているのは、得意からではなく苦手のためではないのだろうか。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げは大きいので、目線の上下動はそれなり。体の開きは我慢できており、軸足の形も大きくは崩れません。

(打撃のまとめ)

 ボールをしっかり捉えさえすれば、強烈なな打球で抜けてゆきます。しかし柔軟性に欠けるだけに、低めの球への対応などはどうだろうか? 打席で力が入りすぎて力んでいるのか?元々体が柔らかく使えないのか? 私は後者のタイプに思えてならない。

(最後に)

 大学球界屈指の実戦派と言われた 嶺井 博希(DeNA)の学生時代に比べると、ツーランクぐらい落ちる印象は否めない。ただしスローイングに関しては 嶺井 よりも上だろうということ。そして学生球界でも、指折りの存在であることは間違いない。

 打撃も打てる球が限られそうに見えるが、意外に対応できているのは気になるポイント。最終学年で、どのぐらいの成績を残すのか注目される。現状は指名ボーダーレベルの選手だと思うが、今年は極めて捕手の人材が乏しい年。もう何試合かドラフトまでにチェックして、その能力を見極めてゆきたい。


蔵の評価:
追跡級!


(2016年 春季リーグ戦)