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長坂 拳弥(東北福祉大)捕手 173/78 右/右 (健大高崎出身) |
「基本はできている」 石原慶幸(広島)など、捕手の育成には定評がある東北福祉大。健大高崎時代からプロに注目されきた捕手が、この4年間で更に磨きがかけられた。久々にじっくりみた長坂は、非常に基本ができている選手という印象を持った。 (ここに注目!) 東北福祉大の選手は、地方リーグということもあり打撃成績が凄い選手が少なくありません。しかしこの長坂は、3年春こそ首位打者を獲得しているものの、他には3割台が一度あるぐらいで打撃でのアピールには欠けていることは覚えていて損はないでしょう。 (ディフェンス面) ガンガン投手を叱咤激励して引っ張るタイプでもなく、それでいて物凄く投手の心理を察して配慮する感じの選手でもありません。しかし状況をじっくり観察し、最善の策を見出すという洞察力には優れた選手、そんな印象があります。 ミットをしっかり示し、的を付けやすくして構えます。特に素晴らしいのは、一球一球しっかり補球できる点は評価できます。グラブを下げる癖もなく、低めの球には自然とミットが下から出る。そのためワンバウンド処理など、実にうまく対応できています。ことキャッチングに関しては、ドラフト指名選手の中でも上位だと言えるでしょう。 普段は座ったまま軽く返球しますが、走者が出ればしっかり立って慎重にボールを返します。リードもそれなりに考えられていて、かなり周りをみてプレーができる考える力があります。スローイングに関しては、捕ってから小さなモーションで送球でき、コントロールは安定。少々腕が横から出るところはあるのですが、球筋は安定しており1.9秒台前半でコントロールできています。高校時代はもっと強肩で刺すイメージがありましたが、今は制球重視で送球しアウトにします。そのためプロの捕手という意味では、見た目では平均的で、物凄い強肩には見えないでしょう。それでも実戦の中では、それなりに刺して来るのではないのでしょうか。 ディフェンス全体で見ると、スケール感はありませんがよくまとまっています。大きな欠点はありませんし、総合力は高い捕手です。昨年指名した 坂本 誠志郎(明大)と割合似た系統の捕手という感じがします。ベースカバーに入るのも怠りませんし、プレーに雑なところがないところが見当たらない捕手らしい捕手だといえます。 (打撃内容) 大学選手権では、左中間スタンドにホームランを放っていました。しかし今年の選手権で打った唯一のヒットであり、確実性という部分では課題を残します。打力がないというよりも、守備にエネルギーが注がれており、打撃への意識が薄いからではないかとも考えられます。 <構え> ☆☆☆☆ 4.0 ほぼ両足を揃えて構え、グリップの高さは平均的。腰の据わり、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢もよく、構えた時にピタッとハマっているところは評価できる。 <仕掛け> 早め 投手の重心が沈み始めた時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。早めに動き出し、速球や変化球などいろいろなスピードに対応しやすいアベレージヒッターに多く観られる始動。彼の打撃は、確実性を重視していることが伺える。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足を引き上げ回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、ボールを 線 で追うことができています。また真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足元のブレも小さく、身体の開きを我慢できています。そのため外角に逃げてゆく球や低めにも我慢して対応できるはずなのですが、意識が引っ張り中心なので、この点が率が残らない要因ではないかと考えられます。メカニズム的には右方向への打撃も充分可能なので、外角の難しい球は右方向への意識が持てれば率は変わってくると思われます。 あとボールを呼び込む際に、少し膝を内側に閉めてしまうので、これがタイミングを狂わしている原因になっている可能性はあります。こういった部分さえ修正できれば、打撃はプロの環境になれるにしたがって最低限の打力を身につけられる可能性はあります。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 あらかじめグリップを引いており、「トップ」に近い位置に添えられています。そのため速い球に立ち遅れる心配はありませんが、リストワークに力みが生じやすくグリップに遊びがなくて柔軟性に欠ける心配はあります。 バッとの振り出しは、上から叩くインサイド・アウトのスイング軌道。真ん中~内側の球を引っ張るには実に優れたスイングできていますし、最後までしっかり振り抜けています。問題は外角の強い球や厳しい球に対しては、もう少し遠心力を活かしたスイングじゃないと、プロレベルの投手の球を打ち返すのは厳しいのではないかと心配します。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げはありますが、それほど目線の上下動はありません。身体の開きも我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて、キレイな軸回転で捌けています。そのため引っ張って巻き込むには、非常に良いスイングだと言えるでしょう。 (打撃のまとめ) 技術的には、かなり無駄が削ぎ落とされており完成度の高いものを持っています。しかし無駄を削ぎ落とす動作は、アマでは通用してもプロの球に対応するのにはパワー不足になる恐れがあります。それ以外にも、技術は高くても打撃への意識・傾けが低いのではないかと。更に引っ張る意識が強く、センターから右方向への打撃に欠けるので、この辺が打率の低さに繋がっている用に感じます。 (最後に) 打撃の技術は高いけれど、アマであまり打っていなかったのが、小林 誠司(巨人)捕手。彼のように長坂も意識さえ傾ければ、プロで必要な最低限の打撃を身につけられるだけの下地はあるように感じます。 ディフェンス力もかなり完成されていて総合力はあるものの、プロの正捕手というほどのスケールは感じません。チームの競争を煽る、捕手層を厚くするための補強としては良いですが、将来の正捕手候補なのかは疑問が残ります。この辺は、ドラフト7位での指名というところからも伺えます。しかしドラフト7位で、ある程度早い段階からプロの試合に順応しうる素材を確保できた、そういった意味では悪い指名ではなかったのではないかと思います。 蔵の評価:☆ (2016年 大学選手権) |