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佐野 恵大(DeNA)内野手のルーキー回顧へ








 佐野 恵太(明治大4年)一塁 178/82 右/左 (広陵出身)
 




                    「捉えた時の飛距離は凄いが」





 この春の3本のホームランを改めて見直したが、センターからライトスタンド中心に、捉えた時の飛距離には目を見張るものがある 佐野 恵太 。ボールを遠くに飛ばす感覚を持っている選手であり、鍛えようによってはドラフト6位で入団しながら球界を代表する強打者に育った 新井 貴浩 みたいに育つ可能性を秘めている。


(ここに注目!)

 ボールを飛ばす能力は持っているものの、ドラフト9位での指名だったのには、2つの原因があると考えられる。1つは、守備位置が一塁だということ。もう一つは、打撃の幅が狭く打てる球が限られているからではないのだろうか?

走塁面:
☆★ 1.5

 一塁までの到達タイムは、左打席から4.3~4.4秒台ぐらいであり、ドラフト指名される左打者としてはかなり遅い部類だと言わざるえません。むしろそういった部分に目をつぶっても、打撃に期待したいというタイプなのでしょう。

守備面:
☆☆★ 2.5

 広陵時代は、投手・遊撃・二塁を経て最後には捕手として収まっていました。二塁までの送球も1.8秒台を記録するなど、地肩は強い捕手。実際試合を見ていても、一塁手としては俊敏であり動きの良さが目立ちます。また一生懸命プレーする選手なので、一つ一つの動作にメリハリがあるところは買えます。何処か器用貧乏なところがあるのかもしれませんが、むしろ打撃を生かしたいから一塁にというタイプだと考えられます。そのためプロでも鍛えれば、かなり上手い部類の一塁手になると思いますし、三塁手あたりの適性も試されるかもしれません。また高校時代捕手だった経験を生かし、緊急時の捕手という役回りも託される可能性があります。けして動けない選手でもなければ、肩が弱い選手ではないということは覚えておいて損はないでしょう。ただし3年~4年にかけて大幅なウエートトレを行ったのか体つきが全然変わっているので、以前ほどは動けなくなっている可能性はあります。





(打撃内容)

 神宮でも引っ張れば中段~センターバックスクリーン周辺に高く打球を上げることができる飛距離は魅力。あとは、プロでいかにその精度を高めて行けるかではないのでしょうか。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 最終学年になり、少しクロス気味に構えるようになりました。グリップを高めに添えて、腰の据わりも悪くなく強打者の雰囲気が伝わってきます。クロスに構えるせいで、全体のバランス、両眼で前を見据える姿勢は若干損なわれているのは間違いありません。ある一定のコースに山を張った、打撃スタイルと言えるのではないのでしょうか。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が下がりきって前に移動する段階で動き出す、「遅めの仕掛け」を採用。これは、長距離打者や生粋の二番打者に観られる仕掛けです。始動の観点で言えば、極力手元まで引きつけて叩くので、最大のインパクトをぶつけられる天性の長距離打者 だといえます。打球も下かちあげることができ、滞空時間の長い飛球に長距離打者としての可能性を感じます。

<足の運び> 
☆☆☆ 3.0

 足を地面から軽く浮かし、ベース側に踏み込みんで来るインステップ。始動~着地までの時間が短く、完全に 点 でボールを捉えるタイプです。長距離打者としては、狙い球を絞りその球を逃さないというスタイルは良いのですが、まだその精度が低いのが気になります。

 幾つか理由があるのですが、足を下ろすタイミングが早すぎて「間」がとれていないこと。そのため極めて、スイングが出たとこ勝負になってしまっている。もう一つは、踏み込んだ足元がインパクトの際にブレがちで、力をうまくバットに伝えきれなかったり、開きを助長してしまうことも少なくありません。せっかくのパワーをうまく内に留めてから放出できず、力を途中でロスしてしまっています。これだとよほどピタッとハマらないと、良い結果は生まれません。このへんを、プロでいかに改善して行けるのかが課題でしょう。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 「トップ」の形を早めに作ることで、速い球には立ち遅れません。しかしあらかじめグリップをトップに近い位置まで引いていると、リストワークに遊びがなくなり柔軟性が損なわれます。固いというほどではありませんが、けして柔軟性のある打者という感じは受けません。

 バットの振り出しは、インサイド・アウトのスイング軌道ではありません。そのため内角の球を強引に巻き込むというよりは、外の球をしっかり捉えることに重点が置かれています。外の球に対しては、スイング軌道にロスなくインパクト。ボールを捉えるときにも、バットの先端であるヘッドは下がっていないので、タイミングさえ合えば打ち損じは少ないように思います。

 スイング軌道はけして小さくはないのですが、それほど大きな弧を描くとかフォロースルーでボールを遠くに運んでいるイメージはありません。しかしインパクトの時にボールを勝ちあげ打球を上げることができるので、そのへんがホームラン角度で打球が飛ぶ確率を増やしていると考えられます。


<軸> 
☆☆★ 2.5

 足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。しかしインパクトの際に足元がブレてしまうことがあり、開きを充分我慢できずエネルギーが外に流出してしまってロスを感じます。その影響か? 軸足も前に少しツッコミがちで安定した打撃を損ないます。

 飛距離に大きな影響を与える軸足の内モモの筋力には強さは感じられるものの、その力をうまく溜め込んで放出するという動作がまだできていません。


(打撃のまとめ)

 打球は、センターからライト方向への傾向が強い選手。しかし追い込まれると、レフト方向への打撃にも切り替えてきます。しかし今のスイングを見ていると、外角をさばけるのは高めの力のない球なのではないかと危惧します。その割にインサイド・アウトのスイング軌道でもなければ、インステップにベース側に踏み込むことで内角の捌きはけしてうまくはないはず。脇をうまく閉じてスイングはできていますが、打ち損じが多く内角は充分捌き切れないという、非常に打てるコースの幅が狭いことがわかります。これだと、率が残り難いのもわかります。


(最後に)

 プロの一塁手としては問題ないレベルの守備力があると考えられますし、今後他のポジションを担える可能性、身体能力は感じます。実際明治でもオープン戦あたりでは、二塁あたりを守っていたなんて話しも訊いています。

 打撃は確実性には乏しいのですが、けして素材として問題があるというよりも、メカニズムや着眼点の問題であるように思います。良い指導者に導かれれば、そういった幅の無さも改善して行ける可能性があります。「間」がうまく取れないこと、打てるコースが限られていること、これをいかに広げつつ精度を高めて行けるかではないのでしょうか。

 実力的には育成レベルの選手だと思い指名リストに載せることはできませんが、長距離打者になれる可能性を秘めた選手という意味では、面白い素材ではあると思います。気持ちも強い選手でしょうし意識も高そうなので、うまく生き残る術を探れる嗅覚があれば、掘り出しものになれる可能性は秘めているのではないのでしょうか。彼のような選手が、今後どのような選手に育ってゆくのかには大変興味があります。



(2016年 秋季リーグ戦)