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佐藤 拓也(立教大4年)中堅手の個別寸評へ







 佐藤 拓也(浦和学院3年)投手&中堅 172/74 右/左
 




                「将来性では、野手だと思うのだが・・・」






 高校1年秋に初めて見たときは、投手ながら一番打者として活躍。2年時には、イップスを患い投手から遠ざかっていた。しかし最終学年では、それを克服して再び投手として復活。高校球界随一の、出し入れできる投球術とマウンド捌きを誇る野球センスは群を抜いていた。ただ投手としては、すでに完成されている印象で、今後の伸びしろは皆無。私は彼の高い野球センスを活かすには、野手ではないかと考えている。今回は、野手・佐藤 拓也 の視点で考えてみたい。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、大体4.2秒前後とドラフト候補としては平均レベル。埼玉大会予選では、7試合で3盗塁。塁に出れば、積極的に盗塁を試みる。実際、もう少し速いタイムも出せそうには見えるが、プロで足を売りにできるのかは微妙だろう。

 投手としてマウンドに上がらない時は、中堅手として出場。守備範囲の広さは感じさせるが、打球への一歩目の反応や打球への回り込みなどを見ていると、中の上レベルの外野手かなと思えてくる。投手としても130~135キロぐらいと、驚くような球速はない。実際外野からの返球を見ていても、中の上レベルといった感じのスローイングだった。

 こと守備・走塁に関しては、ドラフト候補として中~中の上ぐらいのレベルであり、ポテンシャルもそこまで図抜けてはいない。ただフィールディングの動きの良さ、投球で魅せる野球頭脳の良さなどを見ていると、この選手はできれば遊撃手あたりで見てみたいと思わせる抜群の野球センスの持ち主。ただイップスにかかった過去の経験を考えると、そういった決断をするのには勇気がいる。

(打撃内容)

 右に左へと、幅広く打ち返すアベレージヒッター。右投げ左打ちの選手らしく、引っ張る打球には長打力があって、流す打球は盛らず上手く三遊間にはじき返す。ただこの選手、あまりボールを転がすよりも、打球が上がってしまうことが多い。しかしボールを捉えるセンスには、非常に光るものを持っている。

<構え> 
☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・全体のバランスは平均的で、両目ではシッカリ前を見据えられています。それほど構えに力みは感じられませんが、自分でリズムを刻むなどの動作が観られず、、少し動作が受け身なのかなという印象を受けます。

<仕掛け> 早めの仕掛け

 投手の重心が下るときに始動する、「早めの仕掛け」を採用。そのため、典型的なアベレージヒッターであることがわかります。実際のプレースタイルも、そういったタイプかと思います。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を早めに引き上げ、回しこんで踏み込んできます。始動~着地までの「間」が取れているので、ストレートでも変化球でも合わせやすい打ち方です。真っ直ぐ踏み出して来るように、内角でも外角でも幅広く対応したいという、彼の意思が感じられます。踏み込んだ足元はインパクトの際にブレないので、外角や低めの球にも、シッカリついて行けます。緩急への対応・コースへの対応もできる、極めて幅の広い打撃ができる選手です。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」は、早めに作れています。バットを少し寝かせて振り出しますので、けしてインサイド・アウトの最短距離で振りぬくというタイプではなく、ある程度弧の大きさを保ちながら振りぬきます。

 それでもバットの先端のヘッドも下がりませんし、遠回りな印象は受けません。ある程度バットのしなりを活かせるスイングなので、非力な印象は受けません。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げがありますが、目線は安定しており、球筋を狂いなく追えます。身体の開きも我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて、綺麗な軸回転で振れています。

(打撃のまとめ)

 技術的には完成されており、かなり高いものをすでに身につけています。ただ身体は小さく、それほど筋肉質な体型ではないので、高校からプロの選手というよりは、センスの良さを感じさせる典型的な大学タイプという感じには見えます。

(野球への取り組み)

 非常に動作がきめ細やかで、さらに丁寧なところを見ていると、イケイケな野手というよりは天性の投手なのかもしれません。

 またネクストでもジックリプレーを観察しているように、よく考えてプレーをするタイプなのでしょう。ただプレー全体から、少し受け身な印象を受けます。自分からガンガン行くタイプではなさそうで、その辺も野手としてはどうかな?と思える部分も感じました。

 ただ全力で一塁まで諦めないで駆け抜けたり、投球練習の最後まで手を抜かないように、プレーへの貪欲さは感じられます。そういった努力できる、なんとかしたいという気持ちが伝わって来るので、上のレベルでも奢ることなく精進してくれることは期待できそうです。

(最後に)

 体格・走力・守備力などの観点からすると、高校からプロに入る程の圧倒的なポテンシャルは感じられません。ただ稀に見る野球センスの良さと頭の良さは感じられるので、その点では非常に気になるところ。

 今後投手を続けるのか、野手を続けるのかはわかりませんが、もし野手ならば、内野手の適正をぜひ見てみたい。ただ非常に楽しみな素材だとは思いますが、現状は突き抜けたものがないので、ここは様子見と考えた方が妥当なような気が致します。ぜひ一度、遊撃手としてのプレーを見てみたいなぁというのが、正直な感想です。今年の投手候補の中では、一番内野手に転向させてみたい選手でした。

(2012年・夏)








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佐藤 拓也(埼玉・浦和学院)投手 171/71 右/左
 
(どんな選手?)

 1年生ながらチームのエースを任され、打っては核弾頭でチームの斬り込み役を担う高い野球センスが自慢です。今回は、投手として取り上げますが、個人的にはシュアな打撃に将来性を感じさせる選手でした。

(投球内容)

 小柄でオーソドックスなフォームから、常時130キロ強ぐらいのストレートとブレーキの効いたスローカーブに、スライダー・フォークなど一通りの球種を投げ込みます。クィックも1.15~1.30強でまとめられており(基準は1.2秒)、牽制もまずまず鋭いものがあります。それほど細かい制球力はありませんが、両サイドに適度に散らすことができ、ストライクゾーンの枠の中に集めるのは苦にしません。ただそれでもイニング数の1/3強のペースで四死球は出しているので、本当の意味での制球力があるかは微妙です。

(投球フォーム)

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしており、お尻の一塁側への落としはできています。また大きく前へステップさせることで、着地のタイミングも遅らせることに成功。そのため見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークなどを無理になく身につけられています。

 ただグラブの抱えが甘く、両サイドの制球は少し乱れ気味。特に投げ終わったあと、一塁側に流れるバランスの悪さが、制球の不安定さを感じさせます。また足の甲の押しつけはできているように見えるのですが、重心が深く沈み過ぎて膝小僧に土が着いてしまうほどで、これだとエッジが上手く使えず、その効果は半減されます。もう少しステップを狭くして、重心の沈み込みを緩和してもいいのではないのでしょうか。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の部分では、やや「開き」が早いのが気になります。その他の部分では、それなりであり実戦的なフォームではあるのですが。

(今後は)

 体格も小柄で、投手としてもまとまっており、すでに完成されつつある投手との印象が強いです。そのため正直まだ1年生ですが、あまり面白味は感じさせません。むしろ走力は、4.2秒前後の走力と並でしたが、シュアな打撃の方が将来的には面白そうだと感じました。選抜では投打両方の視点からみたいと思いますが、野手としての可能性に注視してみたいと思います。

(2010年 神宮大会)