16dy-1
吉川 尚輝(中京学院大4年)遊撃 175/73 右/左 (中京出身) |
「大学選手権でブレイク!」 昨年からずっと1位候補だと言い続けてきた 吉川 尚輝 。そして一躍その評価を確定的にしたのが、先に行われた「大学選手権」。注目されるなか三拍子ハイレベルなプレーを見せつけ、世間に広く知られる存在となった。 (ここに注目!) 三拍子ハイスペックな能力を持っているものの、日本人離れしたスナップスローを織り交ぜた遊撃守備に注目して頂きたい! 守備面 ☆☆☆☆★ 4.5 打球への一歩目の反応が鋭く、フットワーク、グラブ捌きなどキャッチングまでの流れは素晴らしい。身体能力にかまけて派手なプレーをしようとするわけでもなく、打球の正面に回り込んで丁寧に捕球する。地肩が強いというよりも、手首のスナップが強くノーモーションで送球できたりと無駄な動作を無くしてもアウトにできるところが日本人離れしている。アクロバティックではないのに、ちょっと他の選手が真似できないプレーをする、それがこの 吉川 尚輝 の凄いところ。 またプロのニ遊間に必要な、スピード感や細かい動きも兼備。しかし凄いプレーに驚かされる反面、大学選手権では何かしらの毎試合ミスもしており、安定感という意味ではどうなのか? 年間プロの長いシーズンを想定した時に、どのぐらいのミスをするのかという不安も同時によぎってくる。しかしプロに入って野手が1番伸びる部分は、守備だと私は考えている。今の絶対的な動きの中に安定感が備わった時、球界屈指のショートストップになり得る素材、それがこの男の、最大の魅力なのではないのだろうか。 走塁面: ☆☆☆☆ 走塁偏差値60 一塁までの到達タイムは、早い時で3.95秒前後と俊足。これをドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると、60 という上位15%のレベルに入ってくる。積極的に走塁できる勇気を持っている選手でもあり、自分の存在感の示し方も知っている。プロの環境に慣れてくれば、走力でも存在感を示して来るのではないのだろうか。そうれば自ずと、年間20盗塁ぐらいは期待できる能力は秘めている。 (打撃内容) 昨年の時点でも、ドラフト上位候補である 加藤 拓也(慶応大)投手の150キロ級のボールにも対応できる能力はあった。それでもスイングの強さ・鋭さという意味では、まだ物足りなさも残っていた。しかしこの一年で、だいぶ強く叩けるようになり、大学選手権でも5試合で、打率.364厘 を残し、全国レベルでも通用する打力を身に付けている。 <構え> ☆☆☆☆ 4.0 前足を軽く引いて、グリップを高めに添える。腰をあまり沈めず、背筋を伸ばして立つことを心がけている。全体のバランス・両目で前を見据える姿勢もよく、適度な集中力とリラックス感が同居した良い構え。昨年は、もう少し深く腰を据えた構えだったと記憶が。この辺は足を高く引き上げて打つ彼にとっては、よりスムーズに動作に移行しやすくなっているのかもしれない。 <仕掛け> 平均的な仕掛け 投手の重心が沈みきったあたりで、足を大きく引き上げて動き出す。これはある程度の確実さと長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く見られる。始動のタイミングは、昨年からほとんど変わっていない。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 足をしっかり引き上げて回し込み、ベース側にインステップして踏み込んでくる。始動~着地までの間はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。特にファールを打っている間に、徐々にタイミングを修正して来るのが、この選手の持ち味。 ベース側に踏み込んで来るように、外角の球を強く叩くことを意識している。踏み込んだ足元もブレないので、外角の球や低めの球にもシッカリ対応。外角の球を無理せずに、左中間方向に飛ばせる幅広さがある。インステップする分、内角の捌きが窮屈になる欠点は、昨年から変わっていません。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃の準備である「トップ」を作るまでは自然体で力みがないのは良いところだが、少し立ち遅れる場面も見られその辺は気になりなる。スイングは基本的に上からミートポイントまで振り下ろすロスの少ないものだが、少し内から素直にバットが出ない感じで気になっている。その辺が、打ち損じの多いスイングに繋がっているのでは? それでもバットのヘッドは下がらないでスイングできており、広い面でボールを捉えることはできている。外の球に対しては強くボールを叩けているので、外野手の頭を超えるような長打は増えてきている。特にリーグ戦では、打率.490厘・長打率.612厘という自己最高成績で首位打者に輝き、チームを神宮に導いた。 <軸> ☆☆☆☆ 4.0 足の上げ下げは結構ある割に、目線の上下動は少なめなのは良いところ。身体の開きも我慢できているし、軸足の内モモにも強さが感じられ、打球が強かったり遠くに飛ぶようになった理由も頷ける。 (打撃のまとめ) 踏み込む分インコースが窮屈になる点と、そのせいで内からバットが出てこないで打ち損じる欠点がある。しかしそれは、根本的な資という問題よりも、メカニズムの問題であり今後改善は充分可能だと考えられる。 技術的には昨年から大きな改造はしておらず、経験と肉体の成長と共に結果に繋げた言えるだろう。一年目から一軍でレギュラーを任せられるほどかと言われると微妙だが、資質が高いだけにその経験がその後につながってゆく選手だと考えられる。持っている野球人としての資質の高さは、相当高いのではないのだろうか。 (最後に) 細かいことを言えば、課題も欠点も少なくない。しかしそれを補うどころか、遥かに上回る彼ならではの長所・可能性が秘めている。こういう選手こそ私は、プロに入るべき選手だと考えているので、ぜひ彼の個性を活かす環境で光輝かいて欲しいと願ってやまない。球界に久々に現れた、ショートのスター候補だった。 蔵の評価:☆☆☆☆ (彼が1位じゃなくて誰が野手が1位になるの?) (2016年 大学選手権) |
吉川 尚輝(中京学院大3年)遊撃 175/73 右/左 (中京出身) |
「ドラ1だろうね」 先輩の 菊池 涼介 の時は、2位とは想像以上にプロのスカウトは入れ込んでいるなぁと感じたった。しかしこの 吉川 尚輝 の場合は、最終学年が始まる前から、この1年よほど醜いシーズンを過ごさなければ、ドラフト1位は固いだろうという、確信めいたものがある。それぐらいこの選手は、すでに図抜けた能力を示している。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間を計測した時は、左打席から4.2秒前後と平凡なタイム。三塁打のタイムを計測した時も11秒6ぐらいと中の上ぐらい数字。しかし塁間を走るスピード感や、盗塁の時のトップスピードまでの入りを見ていると、もっと速い走力があるのではないかと期待させるものがある。プロでも、環境にさえ慣れれば20盗塁ぐらいは期待できるのではないのだろうか。 彼の最大の魅力は、やはりショートの守備だろう。余裕があると、それほど強い返球は見られない。しかし状況に応じては、深いところから刺せる確かな肩がある。打球への一歩目の反応、フットワーク、スピード感などを見ていても、プロでショートとして勝負できる素材ではないのだろうか。ちょっと気が抜けたようなプレーを魅せる時もあるが、持っている資質・能力はまさにプロのショートストップという感じがする。 (打撃内容) 先輩の菊池涼介を見た時は、けしてひ弱ではなく打球は強いのだという印象が残った。しかしこの吉川の場合は、ボールを捉えるセンスがあるなということに感心させられる。アウトになっても、ミートポイントでボールを捉えている確率が実に高い。 <構え> ☆☆☆☆ 前足を引いた左オープンスタンスで、グリップは高めに添えられている。腰を深く据わらせ、全体のバランス・両目で前を見据える姿勢も悪く無い。安定した下半身を元に、はじき返して来る。 <仕掛け> 平均的 投手の重心が沈みきった時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。これは、ある程度の確実性と長打力を兼ねそねた、中距離打者やポイントゲッターが多く扱う仕掛け。彼の場合、オーバーフェンスするような当たりは見られないが、外野手の間を抜けたり、頭を越えるような、二塁打・三塁打は少なくない。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を引き上げて回し込み、ベース側にインステップして踏み込んでくる。始動~着地までの時間はそこそこあり、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。ベース側に踏み込んでくるので、外の球を強く意識したスタイル。踏み込んだ足元もブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも喰らいつけます。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」の形を作るまでは自然体で、力みは感じられません。逆に立ち後れないように、普段から注意したいところ。 バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではないものの、外の球にはロスなく素直にバットが出てきます。特にバットの先端であるヘッド下がらないで、綺麗な軌道で振り抜けています。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げ下げもありますが、それほど目線も上下動していません。体の開きも我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びており、軸は安定しています。 (打撃のまとめ) 真ん中~外角よりの球には、素直に左中間方向に打球を飛ばします。内角よりの球には、引っ張る打撃が見られます。しかしインステップするのと、けしてインサイド・アウトの振り出しではないので、内角の捌きには少し窮屈に見えます。個人的には、左のアベレージ打者は、真っ直ぐからアウトステップにすべきだと思っています。今のようなインステップだと、率が残り難いのではないかと危惧します。彼の場合は、真っ直ぐ踏み出すぐらい感じにすると、もう少し内角の捌きが楽になるのではないのでしょうか。 ボールを捉えるミート能力は高く、加藤拓也(慶応大)投手の150キロ級のボールにも充分対応できていたので、スピードボールへの眼の良さも感じました。ただし現時点では、まだスイングの強さ・バッティングの鋭さという意味では、凄みを感じられる領域ではないので、最終学年には内から湧き上がるような、隙無しの凄みが出てくるようだと、いよいよ本物かと。 しかし岐阜リーグで見てきた、野間 峻祥(広島1位)や 菊池涼介(広島2位)の先輩たち以上に、打撃での部分で個人的には魅力を感じます。打撃の潜在能力では、彼らを上回るものがあると評価します。 (最後に) 菊池涼介なんかは、チャラいのにちゃんとプレーできてしまうという天才肌の選手でした。しかしこの吉川は、しっかり考えて作り上げてきた秀才タイプであるように感じます。まだまだ守備・走塁・打撃でも甘さを残す部分もあるのですが、持っている資質は文句なしですから、プライドを持って最終学年を過ごして頂きたい。やることをやって一年間過ごせば、高い評価でのプロ入りを実現するでしょう。 (2015年 平塚合宿) |