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柳 裕也(明治大4年)投手 180/80 右/右 (横浜高校出身) |
「新人王候補」 3月に行われた DeNAとのプロアマ交流戦においては、DeNAの若手野手相手に6回をボテボテの内野安打一本に抑えるなど完璧なピッチングを魅せた 柳 裕也 。その試合では、それまで観られなかったカットボールを駆使して、ピッチングの幅を広げたことを印象づけた。春のシーズンでも順調に成績を残し、6勝1敗 防御率 0.87 で、最優秀防御率にも輝いている。しかしながら大学選手権では、リリーフで登場。延長タイブレークの末に、緒戦で敗れてしまった。 (ここに注目!) ピッチングが上手いとか野球センスがあるということ以上に、ここぞという時の精神面の強さに注目して頂きたい。 (投球内容) 明大の先輩である 関谷 亮太(ロッテ)に影響されているのか? かなり腕を真上から、振り下ろしてきます。 ストレート 130キロ台後半~MAX148キロ ☆☆☆★ 3.5 先発だと130キロ台後半ぐらいから、勝負どころで140キロ台中盤ぐらいといった感じ。しかし大学選手権ではリリーフでの登板であり、コンスタントに140キロ台を超え、勝負どころではMAX148キロまで到達するなどリーグ戦では見られない力強さが感じられた。力で押す彼の姿を観られたことは、この大学選手権1番の収穫だったのではないのだろうか。 特に3年秋ぐらいから、ベース板を通過する時にボールの威力が落ちない強さが出てきたところは評価できる。ストレートは結構バラついたり高めに抜けることも少なくないのだが、甘いゾーンに入って来ないので痛手を食い難い。しかしピンポイントで低めの絶妙なところに決まるという意味では、鈴木 佳佑(奈良学園大)の方が上かもしれない。 変化球 カーブ・スライダー・カットボール・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆☆ 4.0 一つ一つのボールのキレ・変化よりも、その活かし方が非常に上手い。く各球種が無駄なく、コンビネーションの中に収まっている。昨年まで高めに抜けて打たれるケースが多かったスライダーの頻度を減らし、ブレーキの効いたカーブをアクセントに使ったり、左打者内角にカットボールを使うなどしてスライダーに頼らないピッチングができるようになってきた。 またチェンジアップ・フォーク系の縦の変化球を多く使い、両サイドだけなく高低を活かし的を絞らせない。特に速球が高めに集まりやすい球筋なので、余計に低めのフォーク・チェンジアップなどには対応しずらい。 その他 一塁への牽制はあまり入れて来ないが、本気で投げると非常に鋭いターンで投げ込んでくる。また牽制に自信があるのか?二塁牽制を入れるのは上手い。ただし走者を背負うと、意外に走者を観ないで投げてしまうことがあり、あっさりフォームを盗まれることもあるのが気になる。 クィックは、1.10~1.15秒前後とそれなり。フィールディングの反応や動きもよく、投球以外の部分にも優れている。 (投球のまとめ) ストライクを先行させて、自分の有利な状況に相手を引き込むのが上手い。そうかといってピンポイントに決めるとか、そういった繊細なコントロールはない。あくまでも速球の勢いと多彩な変化球のコンビネーションで、相手の狙いを絞らせない。 「間」を充分意識して投げるタイミングを変えてみたり、相手との間合いでイヤなものを感じるとパッとマウンドを外して魅せたりと危険回避の嗅覚にも優れている。何よりここぞというところで踏ん張れる精神的な強さを持っており、プロでも1年目からローテーション入り、二桁勝利を計算できる投手ではないのだろうか。プロ入りすれば、新人王の有力候補として推したい。 (投球フォーム) フォームに関しては、昨秋のフォームを参考にオフの寸評で分析した時と殆ど変わってない。足の甲の押し付けが浮いてしまい、ボールが上吊りやすい点。腕を執拗に真上から振り下ろそうとするので、肩への負担が大きいのではないかという部分はいぜんそのまま。 (成績から考える) 今回は、この春のリーグ戦の成績から考えてみましょう。ちなみにこの春の成績は、 10試合 6勝1敗 72回1/3 41安打 21四死球 87奪三振 防御率 0.87(1位) 1,被安打はイニングの80%以下 ◎ 六大学なんで被安打率のファクターを80%に設定してみたが、地方リーグ同様の70%以下にしても彼の場合は関係なかった。六大学において、被安打率 56.7%は素晴らしい。 2,四死球はイニングの1/3以下 ◎ 四死球率は、29.0%。それほど細かいコントロールはないが、ストライクをいつでも取れ先行できる。そのため常に有利な状況で、打者と対峙できている。 3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ◎ 先発の場合1イニングあたりの奪三振率は、0.8個以上あれば決め手があると評価できる。しかし彼の場合、1イニングあたり1.2個を記録しており、完全にイニングを上回っている。 4,防御率は1点台が望ましい ◎ 防御率は1点台どころか、プロでも即戦力を期待できる0.87をマーク。彼が今まで残してきた数字の中でも、ダントツの内容となっている。 (成績からわかること) ハイレベルな東京6大学の中でも、これだけファクターを文句なし満たした選手は、過去にもほとんどいなかったと言っても過言ではない。日米野球などに参加し秋のリーグの調整が難しいなか、どのぐらいの成績をラストシーズンに残すのか注目したい。先輩である 関谷 亮太(ロッテ)は、ここがピークで秋は調子を落としたので。 (最後に) 何か凄い球があるわけではないが、持ちえる自分の能力を遺憾なく発揮できるだけのセンス・技術には素晴らしいものがある。それにも増して、ここぞの時の精神力の強さは高校時代から際立っていた。その精神面に、肉体が追いついてきた印象を受ける。そしてプロ入り後も、更に自分の可能性を広げて行ける数少ない選手だろう。大きな怪我さえなければ、チームの中心選手として毎年活躍できる。今年の候補の中でも、来年の新人王候補の筆頭候補に位置する選手になるのではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆☆☆ (1位指名に相応しい) (2016年 大学選手権) |
柳 裕也(明治大3年)投手 180/80 右/右 (横浜出身) |
「手元まで勢いが変わってきた」 今までは、何処か大人しく綺麗にまとまってしまっていた印象の強かった 柳 裕也 。しかし強く腕を振ることを意識するようになり、打者の手元まで生きた球が投げられるようになってきた。それは、今までの成績と比べ、被安打率の少なさと三振の多さに如実にあらわれている。 (投球内容) ノーワインドアップから、腕を真上から叩くことを重視するようになりました。 ストレート 常時140キロ前後 球速は、常時130キロ台後半~出ても140キロ台中盤がやっというぐらいで変わっていません。しかし腕を上から強く振ることで、グッと打者の手元まで生きた球が投げられるようになってきました。以前の淡々とピッチングをまとめて来るイメージから、ボール1球1球に自己主張が感じられるボールを投げ込んできます。 右打者には内外角厳しく投げ分けるられる一方で、左打者には結構狙っても決まらないケースが多くあります。そのため四死球こそ最後は出さないのですが、ボールが先行して投球が苦しくなる。そこでカウントを取りにゆく、力のない球で長打を浴びるという悪循環をよく観ます。コントロールが凄く良いイメージがあるのですが、実際はそうでもないことがわかります。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ・フォークなど 横滑りするスライダーを中心に、緩いカーブも結構使ってきます。それにチェンジアップ、秋はフォークらいき縦の変化球も良く投げていました。カーブが良いアクセントになって、コンビネーションで投球を組み立ててくるタイプ。 打たれるのは、高めに甘く浮いたスライダーが多い。またフォークだか縦の変化は、打者に見極められやすく空振りは誘えない。この球がもう少し打者の手元で落ちて空振りを誘えるようになると、またピッチングの特徴も変わってきそう。 その他 秋の試合を見ていると、あまり鋭い牽制は投げて来ない。しかし元々は、ターンの鋭い牽制を使えていた。クィックは、1.1秒~1.3秒ぐらいと幅広く、状況に応じて使い分けている。フィールディングの反応や動きもよく、投球以外の部分にも優れている。 (投球のまとめ) 腕を強く振ることを重視したせいなのか? ボールが先行するようになったのは気になる材料。これをいかにストライク先行させ、自分のペースに相手を引き込めるかが、今後の課題ではないのだろうか。 あと柳を語る上で外せないのが、その精神力の強さ。ここぞの場面の底力こそ、この選手の最大の持ち味だけに、苦しい状況でどんなピッチングを魅せてくれるのか、最終学年は注目して見ていて欲しい。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から、問題点を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 元々引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側には落ちていません。しかし重心を前にせり出す段階ぐらいには、かなり一塁側に落ちて来る。そういった意味では、甘さは残すものの体を捻り出すスペースは確保できているのではないのだろうか。 「着地」までのタイミングも並ぐらいで、体を捻り出す時間も並。お尻が落とせることもあり、多彩な変化球は身につけられそう。しかし着地の粘りが平凡なので、武器になるほどの変化球のキレや曲がりの大きさを身につけられていないのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定しやすい。しかし実際には、左打者相手にはアバウトになりがち。足の甲での地面への押し付けも完全に浮いてしまうので、力を入れて投げるとボールが上手く制御できないのかもしれません。 それでもそれを、「球持ち」の良さと真上から角度を付けて投げ込むことで、上吊るのを最小限に防ぐことはできています。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻はある程度落とせるので、カーブやフォークといった体を捻り出して投げるボールも、窮屈になることはありません。そのため肘への負担は、少なめだと考えられます。 むしろ気になるのは、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下るぐらい極端に角度を付けて投げていること。この腕の送り出しに無理があり、肩を痛めないか心配。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、打者としてはそれほど合わせ難いフォームではありません。体の開きも並ぐらいであり、打者としては予測のつきやすいはず。しかしボールに角度をつけることで、微妙なズレを生みます。またボール自体に勢いが出てきたことで、フォームに影響されることがなくなりました。 腕は強く上から叩けており、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも足の甲で地面は捉えていないものの、体を覆いかぶせるように前に体重を預けて来る。そのため打者の手元まで、勢いと球威のある球が投げられるようになっている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「球持ち」がよく、後の動作も平均的だろうか。 足の甲での押し付けができないことから、力をセーブしないとボールが制御できない可能性が。また腕の送り出しに無理があり、故障の可能性が心配される点など、マイナス材料も少なくありません。メリットとデメリットがあるフォームなので、どちらを取るかといったフォーム。 (最後に) ストライクを先行させることができれば、もっと有利に事を運べ良い方向に投球も循環して行きそう。それができるかが、今年の最大のチェックポイントではないのでしょうか。 すでに完成度の高い投手であり、アマの時点での力がプロでの成績に直結しそう。いずれにしてもスケールで魅了するタイプではないので、1位で獲得するような選手ではないと評価する。3位ぐらいで指名して、順位以上に使えてラッキーというところで妙味の出るタイプといった気がする。社会人からも引く手あまただろうから、上位指名以外は社会人入り、そういった条件で内定を出す会社も出てくるのではないのだろうか。明大の先輩の 関谷 亮太(JR東日本-ロッテ2位)と似た匂いがする選手だが、果たして卒業後の進路は変わって来るのだろうか? (2015年 秋季リーグ戦) |