16dp-5


 




畠 世周(巨人)投手のルーキー回顧へ







畠 世周(近畿大4年)投手 186/74 右/左 (近大福山出身) 
 




                     「ピリッとしなかった」





 2016年度の関西学生球界の中でも、その実績、テイクバックを大きくとったフォームのスケール感、将来性を秘めた素材と、関西NO.1の大学生と目されるのが、この 畠 世周 だった。しかしその期待とは裏腹に、今季の畠はいまいち調子が乗りきらない。そんな畠の現状を考えてみる。


(投球内容)

 スラッとした投手体型から、体を大きく使って投げ込んできます。しかしまだ体も発展途上であり、完成された投手との印象はうけません。観戦したのは、彼がこの春最初に公式戦で登板した・関西学院大戦の模様。

ストレート 常時140キロ~MAX92マイル(147.2キロ) 
☆☆☆ 3.0

 この日の会場であった、ほっともっと神戸のガンは厳しく正直参考にならない。マイガンや前にいたスカウトのガンなどを見ていても、明らかに5キロ以上は違っていたからだ。私のガンではコンスタントに140キロ台を越えており、最速92マイル・147.2キロを記録するなど145キロを超える球も少なくなかった。そういった意味では、スピードが出なかったということではないはず。

 元々畠の速球は、手元でグ~ンと伸びるとかピュッとキレるような空振りを誘える球ではない。両サイドにボールを散らせて、相手を詰まらせて打ち取るやや汚い回転。それでいてそれほど細かいコントロールはないが、右打者には両サイドに散らすことはできていた。左打者には多少アバウトになるものの、悲観するほど苦手にしている感じはない。

変化球 スライダー・チェンジアップなど 
☆☆☆★ 3.5

 右打者の外角には横滑りするスライダーを集め、最大の武器はチェンジアップの威力にある。この球は、間違いなくプロで使える代物。右打者にも使って来るが、左打者への投球には効果的。スライダーはあくまでもカウントを整える球であり、チェンジアップは相手を仕留める球になっている。

その他

 牽制は適度に鋭く基準以上だし、クィックも1.1秒前後とまずまず。フィールディングも平均的で、けして野球センス・運動能力に優れたタイプではないものの、投球以外の部分で大きな欠点は持っていない。

 まだ微妙な出し入れや駆け引きをするとか、間を意識した投球をするとか、そういった奥深い投球はできていない。

(投球のまとめ)

 まだ肉体的にも完成しているとは言えない選手であり、今後の上積みも期待できるはず。それでいて、ある程度実績を重ねてきているのは、彼の能力の高さゆえともいえる。しかし全国大会で活躍するほどの総合力には物足りないし、ましてプロで即戦力を担うというほどの完成度はまだ備わっていない。プロ入り後は、一年ぐらいファームでみっちり漬け込んで、2年目以降の爆発に期待したいタイプかと。


(投球フォーム)

 オフに作成した寸評では、フォーム分析を行わなかったので、今回はやってゆきたい。ノーワインドアップから、ゆっくりと足を引き上げて来る先発タイプ。軸足一本で立った時に力みがなく、バランスの良い立ち方になっている。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばせており、お尻は一塁側に落とせています。したがって体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化球を投げるのに無理はありません。

 「着地」までの粘りも悪くなく、体を捻り出す時間も適度に確保。キレのある実戦的な球や、曲がりの大きな変化球の修得も期待できます。将来的には、もっと球種を増やしピッチングを広げてゆくことが期待できそう。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えており、ボールも低めに集めやすいはず。ただし現状は、左打者相手になるとボールが上吊ることが少なくありません。もう少し体がビシッとして来ると、この辺も変わって来るかもしれません。将来的には、もう少し球筋も安定して来るのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせるフォームですし、カーブやフォークといった球種をあまり使って来ないので、肘への負担も心配なさそう。

 腕の送り出しの際に、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩は少し下がり気味ではあるものの、悲観するほど無理は感じません。まして力投派でもないので、消耗も激しいタイプではないと考えられます。無理をしなければ、故障のリスクは高くはないと考えています。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りも悪くはないので、それほど合わせやすいフォームではなさそう。体の「開き」も適度に抑えられており、コースを間違わなければ痛手は食らい難いはず。

 長い腕は、投げ終わったあと体には絡んできます。しかし腕の振りがまだ弱いので、速球と変化球の見極めは微妙。それでもチェンジアップの際には、見極めがつかないので効果的。ボールへの体重の乗せ・体重移動も悪くないので、更に「球持ち」が粘れるようになると、体重を乗せてからリリースできるようになり、球威がグッと増して打者の手元までボールが来るようになるのではないのでしょうか。この辺は、まだ肉体的に発展途上の段階という感じはします。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はありません。土台となるフォームは悪くないので、体の柔軟性を養いつつ、筋力を補い、「粘り」を意識して取り組めば、まだまだ良くなる余地が残されています。

 故障のリスクも制球を司る動作も悪くはないので、この辺も体ができてくると更に良くなってくる可能性が。まだまだ発展途上の選手ですが、格段に良くなる余地が残されています。


(最後に)

 この春の不調で、ドラフト戦線ではやや後退した印象を受けます。昨年から思ったほど伸びておらず、プロで即戦力を担うのにはまだ厳しいかという印象は受けました。逆に一年ぐらいファームで基礎を磨けば、2年目以降ローテーションに入ってくる可能性は充分秘めています。そういった素材としての魅力は、けして損なわれていません。

 現在の内容は、上位指名としては心許ないものの、素材としての可能性も加味すると、中位指名前後の指名は期待できるのではないかと思います。3位ぐらいで獲得できる球団があるのならば、面白い指名になりそうです。この春の状態で、見限る必要はないでしょう。やはり素材としては、関西NO.1の大学生だと改めて思いました。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2016年 春季リーグ戦)









畠 世周(近畿大3年)投手 186/74 右/左 (近大福山出身) 
 




                      「関西屈指の素材」





 今年の関西の大学生で誰が一番良いかと聞かれたら、迷いなく私は、この 畠 世周 をあげたい。186センチの恵まれた体格から投げ下ろす投球は、まだまだ素材型だが伸び代を秘めた素材。最終学年でのアピール次第では、岡田 明丈(大商大)同様に、上位12名に入ってきても不思議ではないと評価している。


(投球内容)

 まだ恵まれた体格を活かしきれているとは言い難いが、秋季リーグ戦では6勝をあげ、そのうち4勝は完封勝利。いよいよ最終学年に向け、本格化しつつあるのではないのだろうか。

ストレート 常時140~MAX150キロ

 春季リーグ戦、わかさスタジアムで見た時は、コンスタントに140キロ台中盤を叩き出し、MAXで147キロまで記録。しかし私のガンでは、89マイル(142.4キロ)止まりと、驚くようなボールは投げていなかった。彼の場合、空振りを誘うというよりは内角に力のある球を投げて詰まらせて打ち取るタイプ。

 両サイドにボールを散らすコントロールがあり、特に右打者の内角には意識的に厳しく突くことができる。細かいコントロールがあるわけではないのだが、おおよそ両サイドには投げ分ける制球力がある。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 春見た時は、スライダーが抜けることが多く精度の低さが目立っていた。秋でも時々コントロールミスはあるのですが、春見た時よりも制御できています。特に右打者の外角、左打者の内角に食い越せることを意図的に行ってきます。このスライダーも、それほど曲がりが大きなスライダーではなく、あくまでもカウントを稼ぐ、内角でも詰まらせるといったもの。

 彼の中で一番素晴らしいのは、速球との見分けが難しいチェンジアップにあります。これを左打者には多く使ってきて、とても効果的。この球は、精度も高くプロでも使える球種ではないのでしょうか。

その他

 牽制は、平均的。フィールディングもそれほど上手くはないのですが、無理なく確実にアウトにしてきます。クィックは、1.0~1.1秒ぐらいでまとめてまずまず。

(投球のまとめ)

 素材型といっても、おおよそ意図どおりピッチングを組み立ててきます。むしろまだ伸び代を秘めているという部分で、成長途上の投手との印象。細かいコントロールと勝負どころの詰めの甘さなど、全国レベルを意識すると、まだ物足りない部分が。その辺を最終学年で改善して、自らの力でチームを大学選手権に導いて欲しいものです。


(成績から考える)

 では今回は、本格化したと考えられる、この秋の成績から傾向を考えてみたいと思います。

15年秋 9試合 6勝3敗 65回2/3 47安打 19四死球 54奪三振 防御率 1.78(リーグ6位)

1,被安打はイニングの70%以下 △

 65回2/3イニングで被安打は47本、被安打率は71.6%。地方リーグの選手なのでファクターを70%と厳しく設けたので、僅かにそれを満たすまでには至らなかった。しかしこの僅かな甘さこそ、彼がまだ全国に行けない未熟な部分なのかもしれない。

2、四死球はイニングの1/3以下 ◯

 四死球は19個であり、四死球率は29.0%。基準である33.3%以下になっており、基準を満たしている。素材型だといっても、コントロールはそれほど荒れ荒れではない。しかし春は37.2%だったので、この辺は成長した部分でもあるのだろう。

3、奪三振は、1イニングあたり0.8個以上(先発の場合) ◯

 1イニングあたりの奪三振率は、0.82個。これは、先発投手の基準をクリアしている。どちらかと言うと打たせて取るイメージが強いが、それでもかなりの割合で三振が奪えていることがわかった。一つは、チェンジアップによるもの。あとは、ストレートでも見逃しの三振が多かったのかもしれない。

4、防御率は1点台以内 ◯

 大学からプロを目指すのならば、防御率は1点台には到達しておいて欲しかった。そういった意味では、1.78 と基準を満たすものがある。ただしプロでも上位を目指す選手ならば、0点台、せめて1.0前後ぐらいの数字を、春のリーグ戦では望みたい。そのぐらい絶対的なな安定感がないと、なかなか上位指名は厳しいだろう。


(データからわかること)

 被安打こそファクターが厳しく若干数字を満たせなかったが、あとは合格点の与えられる内容ではあった。しかしどの数字も突出しているわけではなく、プロで即戦力・あるいは上位指名されるためには、まだもう一歩絶対的なものが欲しい。その辺の物足りなさは、実際の投球を見ての感想と同様なところ。


(最後に)

 いよいよ満を持して、最終学年を迎える。できれば開幕週あたりに、ぜひ確認に行ってみたいほどの選手。投球と成績の物足りなさを、どのぐらいの素材の上積みで埋めることができているのか、大いに注目してみたい。順調に段階を踏んで伸びてきた選手だけに、その日が訪れることを今から楽しみにしている。


(2015年 リーグ戦)