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菅原 秀(楽天)投手のルーキー回顧へ







 菅原 秀(大体大)投手 183/78 右/左 (福井工大福井出身)





                   「ナックルカーブは殆ど見られず」





 菅原 秀 といえば、福井工大福井時代に「ナックルカーブ」という、日本人では滅多に投げないボールを高校生ながら武器にしていた投手だったと記憶している。あれから4年彼の投球をみると、ほとんどそういったボールは見られない。それでもドラフトで4位指名されるまでの投手になったのは、どのような進化があったのだろうか?


(ここに注目!)

 高校時代は、スラッとした投手体型で、ビシッとしてくれば凄くよくなるかもという期待を持たせる投手ではあった。そしていま、その中身が詰まってきて、ビシッとした投手になりつつある。

(投球内容)

 ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。

ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 コンスタントに先発でも140キロ台を刻んで来るスピード能力があり、ボールの勢い・威力には観るべきものを持っている。ストレートで押し切るほどの凄みはないが、この球を魅せておいて変化球で仕留めるというのには効果的だろう。気になるのは、ボールのバラツキが顕著であり、かつ全体的に球が高いことにある。このコマンドの低さが、プロでの即戦力には不安が残る。

変化球 縦・横のスライダー、カーブ、チェンジアップ、カットボールなど 
☆☆☆☆ 4.0

 この選手の良さは、速球派でありながら変化球が良いところ。130キロ台の横のスライダーでカウントを整え、追い込むとフォークのような強烈な縦のスライダーで空振りを誘える。その他にも時々110キロ台のカーブや130キロ台中盤以上のカットボール、チェンジアップ系らしき球も投げるが、基本は2種類のスライダーとのコンビネーションと観て良いだろう。特に三振を狙って奪える、縦のスライダーという武器を持っていることが大きい。

その他

 牽制は執拗に入れるぐらいで、かなり自信を持っているようだ。クィックは、1.1秒~1.15秒ぐらいと平均的。ベースカバーなどのフィールディングは、並ぐらいだろうか。

(投球のまとめ)

 ストライクゾーンの内外角を適度に散らせながら、変化球を織り交ぜて来る投球パターン。細かいコントロールや微妙な駆け引きのできるような投球術はないものの、速球・変化球のボールの威力で討ち取って来る。

 プロの先発を任せられるレベルにあるかと言われると現時点ではNO.という感じではあるが、縦の変化球があり速球にも威力があることを考えると、リリーフならばハマる可能性は秘めている。ただし個人的には、一年ぐらいファームで漬け込むぐらいの感じで、2年目以降が勝負の選手ではないのだろうか。





(投球フォーム)

 コントロール以外に気になるのが、投球フォームがあまり実戦的ではないように感じる部分がある。

<広がる可能性> 
☆☆ 2.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻は一塁側(右投手の場合は)に落ちないフォーム。すなわち体をひねり出すスペースが確保できていないので、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の球種を投げるのには適していない。

 「着地」までの粘りもあまり作れていないので、体を捻り出す時間は確保できていない。こういう投手は、スライダー・チェンジアップ系を中心に投球を広げることが求められるが、まさに彼はそれを実践した形となっている。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで体の近くにあり、比較的両サイドの投げ分けはできている。しかし足の甲での地面への押しつけが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。また「球持ち」も並であり、それほど指先の感覚に優れているタイプではないようだ。何より上体を強く振って投げるフォームなので、コントロールがブレやすい傾向にある。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻を落とせないフォームではあるものの、高校時代の代名詞だったナックルカーブは今はあまり投げない。また縦の変化もスライダーであり、フォークのような体を捻りだして投げる球種ではないので、それほど肘への負担は心配しなくても良いのかもしれない。

 ただし多少腕の送り出しに無理が感じられ、ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がり気味で肩への負担は感じなくはない。更にかなりの力投派なので肉体の消耗が激しく、故障を起こしやすいのは注意したい。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りはいまいちで、打者としては合わしやすい。更にフォームが直線的であり体の「開き」も早く、打者としてはきわどいコースの球でもついて来られる危険性がある。

 良いところは、腕をしっかり振れるので変化球で空振りを奪いやすい点。ボールへの体重の乗せ具合は成長途上という感じで、もう少し下半身が使えるようになり「球持ち」に粘りが出てくると、グッとウエートの乗った球が打者の手元まで投げられるようになるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれも粘りが足りず物足りない。更にコントロールの不安や故障のリスクもあり、そのボールの割に技術的には未熟な部分が目立つ。


(最後に)

 ボールの威力、決め手のある変化球もあるという、その投球だけ見ていると非常に期待を抱きたくなる素材。その一方で、制球力、実戦的なフォームなどの不安はどうしても払拭できず、その点で伸び悩むリスクも捨てきれない。

 まずはファームで基礎をしっかり構築して、一軍で通用する力を養って欲しい。可能性は秘めているが、多大な期待は禁物だろう。焦らず育てて欲しい。


蔵の評価:



(2016年 神宮大会)