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中尾 輝(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







中尾 輝(名古屋経済大4年)投手 179/79 左/左 (杜若出身) 
 




                 「岩貞祐太(阪神)を一枚ぐらい落とした感じ」





 投げるときに少し背中をそっくり返って投げる、独特なフォームを投げ込むサウスポー。投球スタイルなどを見ていると、まだ本格化する前の、下級生時代の 岩貞 祐太(横浜商科大)の投球を思い出す。プロで一年目からバリバリというよりは、少し育成することも視野に入れての獲得ならば、充分にドラフトを意識できる素材だった。


(ここに注目!)

 何か絶対的なボールがあるというよりも、ボールの活かしたかが上手いなと思いました。特に右打者内角に食い込ませるスライダーの生かし方がうまく、こういうスライダーの使い方ができるサウスポーは、意外に少ないので注目して頂きたい。

(投球内容)

投げる前に少し背中を反ることで、球の出処を微妙に隠そうとする癖のあるフォームです。

ストレート 130キロ台後半~MAX90マイル・145キロ 
☆☆☆ 3.0

 球速は、常時140キロ前後から力を入れた時に140キロ台中盤ぐらいまで出すといった感じ。それほど細かいコントロールはないものの、アバウトに両サイドに散らせてきます。全体的に球が高い傾向があり、力を入れるとよりそれが顕著になります。

 もう少しボールがキレてくると面白いのですが、岩貞の大学時代、あるいは新潟医療大の 笠原 祥太郎 あたりと比べても、ボールの勢い・キレという意味ではワンランク劣る感じはします。そういった意味では、プロに入るサウスポーとしては平均的な速球レベルかと。

変化球 スライダー・ツーシーム・チェンジアップなど 
☆☆★ 2.5

 曲がりながら落ちるスライダーと速球とのコンビネーションで、この球で上手く内角を突くことができます。そのため右打者クロスに、速球とスライダーで攻められるところは良い所。しかし左腕にしては、左打者外角に逃げてゆくスライダーが、あまり上手く使えていないのは気になりました。

 他に右打者外角に小さく外に逃げるツーシーム的なボールと、チェンジアップだかフォーク系の球があります。しかしこの球の精度はまだ低く、抜けてしまったり明らかなボールになることが多く、まだまだ実用的とは言えません。この球の精度を高められるかが、彼の未来を大きく変えると言えるでしょう。

 また左投手ながら、左打者には速球中心であり変化球を上手く制御できていなかったところは気になります。プロ相手になれば、ハイレベルな左打者が多数いるわけで、この点でプロへの対応には少し時間がかかるかもしれないと感じます。

その他

 フィールディングに課題があるのでしょう、ことごとく対戦相手の左打者はセーフティバントをして揺さぶってきました。また打球処理を見ていても、他の野手に任せることが多く、自信がないのが伺えます。

 クィックは、1.15秒前後で標準的。この辺は以前から指摘されていましたが、だいぶ改善されつつあるのではないのでしょうか。牽制もあまり上手い感じはしないのですが、昨日は上手くアウトにしていました。最初は軽い牽制を。次にあまり上手くない牽制。アウトにした時は素早く投げ込むなど、これを意図的にやっていたのかには気になります。すなわち相手に牽制は上手くないよという過去のイメージ植え込みつつ、ここぞの時に鋭いものを投げてアウトにするという頭脳的なことをやっていたのか? たまたま偶然だったのか? それは、普段から見ている投手ではないので見極めるまでには至りませんでした。

(投球のまとめ)

 セーフティバントで出塁を許すなどしても、気持ちがブレずに落ち着いてその後を片付けていたところは印象的。右打者に対するボールの生かし方などを見ていても、けしてただ投げているだけという地方の素材型というのとは違うように感じます。まだ総合的には未熟な部分は感じられますが、今後ハイレベルなものを教えたり、必要に迫られた場合に、それを吸収・修得して行けるだけの選手ではあるように感じます。そういった意味での、選手としての伸びしろを感じます。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばされており、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落ちていて、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に大きく落ちる球を投げるのにも無理はありません。

 「着地」までも、前に足をグイッとステップさせることで、粘ることができています。そういった意味では、身体を捻り出す時間も確保でき、キレや曲がりの大きな変化球を修得しても不思議ではありません。投球の幅は、まだまだ広げて行けるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での押し付けが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまう傾向があります。「球持ち」自体は悪くありませんが、もう少しボールを押し込めるようになると、低めへにも球が来るようになるのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻が落とせるフォームですし、カーブやフォークといった球種がさほど見られないので、肘への負担は心配なさそう。

 腕の送り出しを見ても、けして無理は感じません。少し腕が外回りでブンと振ってくるところがあるので、その辺が身体への負担や細かい制球に影響するかもしれません。しかし全体的には、負担が少なめのフォームだと言えるでしょう。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 着地までの粘りはそれなりにあるので、打者としては合わせやすいフォームではなさそう。更にグラブを斜めに前に突き出し、ボールのでどころを隠すことができています。「開き」自体も抑えられていて、ボールの出処は見にくいはず。

 その一方で、腕が思ったほど振れておらず身体に絡んできません。そのため速球と変化球の見極めがつきやすく、それほどまだ空振りが誘えないのではないのでしょうか。またボールへの体重の乗せも不十分で、打者の手元まで生きた球が投げられていません。この辺が改善されて来ると、フォームが合わせ難いだけに厄介な投手になりそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」にまだ改善の余地がありそう。その他の部分は良いので、体重移動が上手くできるようになると、球質も変化して他の部分が生きてくると考えられます。

 故障のリスクが少ないことは推せる材料であり、あとは足の甲が深く押し付けられると、もっとボールが低めに集まりそう。まだまだピッチングの幅も広げて行けそうなので、発展途上の投手ですが楽しみです。





(最後に)

 精神的なブレも少ないですし、投球フォームも比較的実戦的。経験不足や技術不足のところは残りますが、ファームで一年間ぐらい漬け込めば改善も充分期待できます。

 今年のドラフト候補だと、笠原 祥太郎(新潟医療大)投手ぐらいの位置づけかなと。ボールの威力・勢いでは笠原投手に分がありますが、将来的に実戦的な投球も可能だと考えると、こちらの 中尾 の方が分があります。同じ東海地区の逸材という意味では、濱矢 広大(楽天3位)左腕を思い出します。こちらも濱矢の方が素材としての魅力は感じましたが、実戦的な投手になれそうという意味では、中尾 の方に分があります。こうなると、ドラフトでも3位、4位あたりでは、指名されるのではないのでしょうか。1年目よりも2年目・3年目あたりに、どうなっているのか気になる選手でした。


蔵の評価:
☆☆ (中位以降ならば)


(2016年 秋季リーグ戦)