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星 知弥(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







星 知弥(明治大)投手 183/84 右/右 (宇都宮工出身) 





                        「充実の秋」





 宇都宮工業時代から、プロ志望届けを提出すれば上位指名で指名されていただろう 星 知弥 。その圧倒的な才能がありながらも、六大学で初勝利をあげたのは最終学年になってから。そしてこの秋は、神宮大会でチームの日本一に大きく貢献。ヤクルトVS六大学選抜 の試合でも先発し、本気モードのヤクルト主力打者相手に2回無失点で存在感を示した。この秋の星は、これまでの鬱憤をすべて吐き出すような素晴らしいシーズンとなった。


(ここに注目!)

 ず~と一環して言い続けてきたことは、ズバーンとミットに突き刺さる爽快感は今年の候補でNO.1だということ。そしてそのボールを生み出す原動力は、人並み外れた腕の振りの強さと、地面の蹴り上げだと実感させられる。


(投球内容)

 ノーワインドアップからの、フォームの入りは非常に静かで小さい。そこからグ~ンと、加速ゆくフォームは必見。

ストレート  常時145キロ前後~150キロ強 
☆☆☆☆ 4.0

 ミットに突き刺さるボールの威力は、素晴らしいの一言でしかない。そのわりに被安打率が高いのは、フォームが直線的で合わされやすいことと、それほ細かいコントロールがないからだろう。これだけのボールを投げていて、なぜ簡単に打ち返されるのか? その疑問はまさにここにある。この秋は特にボールの走りが素晴らしく、その欠点は陰を潜めたが、根本的には解決していない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ など 
☆☆★ 2.5

 小さく身体の近くで曲がるスライダーで、カウントを整えてくる。余裕が出てくるとカーブを投げたり、時にはチェンジアップのような小さく沈む球を織り交ぜる。しかし打者を仕留めきるほどの変化球はなく、基本的には速球で仕留めにゆくことが多い。

 特にスライダーがうまく制御できず、高めに抜けたり甘く入ることも少なくない。変化球が決まらず、カウントを取り来たストレートを打ち返される場面を過去何度みたことか?

その他

 牽制はややモーションは大きいものの、動作自体は鋭い。クィックも1.05秒~1.10秒ぐらいとまずまず。フィールディングは上手いわけではないが、落ち着いてボールを処理できている。

(投球のまとめ)

 この秋は、自信を持って腕を振れていたことが大きかった。どうしても春までは、結果を恐れて大胆になりきれなかった部分がある。ランナーを出すと浮足だったりして、踏ん張りが効くタイプではなかった。しかしこの秋は、ランナーを背負っても開き直って投げられるようになってきている。何か殻を破ることができたことが、大きな飛躍へと繋がった。

 これだけ常に良い状態が続けられれば、プロでもリリーフならば即戦力になり得るだろう。問題は少しでも勢いが落ちてきた時に、抑えられるだけの技術がないという部分。最終学年に至っても、合わされやすいフォームなどの欠点も、消して改善されているとは思えないからだ。何処までプロの打者相手でも、自分の投球が続けられるかが鍵だろう。


(投球フォーム)

 何か技術的に大きく変わった部分があるのか? 過去のフォームと比較して考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 お尻がバッテリーライン上に残ってしまうフォームで、充分に身体を捻り出すスペースが確保できていない。そのためカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦の変化には適さない。

 前に大きくステップさせることで、身体を捻り出す時間を確保。そういった意味では、カーブ・フォーク以外の球種ならば、それなりに変化が期待できるフォームになってきた。

<ボールの支配> 
☆☆ 2.0

 グラブも投げ終わったあとは身体の後ろに流れ気味で、けして外に逃げようとする遠心力を抑えきれてはいない。その辺は昨年までのフォームの方が、まだ身体の近くに留まった気がする。大胆に上体を使うようになり、この辺はアバウトになっているのかもしれない。

 足の甲の押し付けも地面から浮きがちで、浮き上がろうとする力を抑え込めていない。すなわち力を入れて投げると、ボールが上吊りやすくなっている。「球持ち」は悪くないので、そのへんでなんとかボールを制御できている。ちなみにこの秋の四死球率は、42.1%。アマでもややアバウトな制球なので、これがプロのストライクゾーンや打者のプレッシャーを考えると、さらに悪化することが予想される。制球を司る動作は、明らかに昨年よりも悪くなっている。それだけ、全身をフルに使って投げているのかもしれないが。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻は落とせないフォームではあるが、カーブやフォークを使う頻度は少なそうなので、それほど神経質にならなくても良いだろう。ただし肘への負担を考えると、これらの球を多く使うようになるならば充分注意したい。

 腕の送り出しにそれほど違和感は感じないが、強靭的な腕の振りをしているので負担は大きいように感じる。その辺は、日頃から充分ケアしておいて間違いはないはず。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 前に足を逃がすことができ、着地までの粘りは平均的。身体の開きもなんとか抑えられているが、身体が前に倒れ込むような体重の落とし方で、どうしてもフォーム全体がベースに向かって直線的なので打者が合わせやすくなる。

 それでも腕の叩きは、今年の候補でもNO.1。これだけ腕が振れ球が走れば、変化球も手を出してくれるはず。ボールへの体重乗せができてからリリースできており、打者の手元まで勢いは特筆もの。そしてその証として、地面への強い蹴り上げも今年のNO.1ではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では「着地」までの粘りに成長が見られ、「体重移動」も良くなっている。やや「開き」が合わせやすいところが改善点か。

 全身が使えるようになった分、制球を司る動作が悪くなっている。人並み外れた腕の振りが、大きな負担にならないのかと不安はつきまとう。けして実戦的なフォームではないので、ボールの勢いが鈍ってきた時にどう対処できるのかがポイント。


(最後に)

 この秋のようなボールの勢いを、年間通して持続できるのであれば、技術的に多少問題があっても誤魔化しきれる可能性はあるだろう。しかしながら、より狭くなるストライクゾーン、圧倒的な打力を持つ打者と対峙した時に、何処まで勢いで押すことができるのか? そういった意味では、何処か昨年の 熊原健人(DeNA)と似た系統な投手ということになる。

 逆境に強い精神力、ダメだったときの交わす術などを身につけているわけではないので、心配な部分は大きい。しかしこの素晴らしいパフォーマンスを魅せられると、春よりワンランク上の評価をしないといけないだろう。プロでは、リリーフで押し切ることができるのか注目したい。


蔵の評価:
☆☆ (中位以降なら)


(2016年 ヤクルトVS六大学選抜)


 









 星 知弥(明治大4年)投手 181/85 右/右 (宇都宮工出身)





                  「ミットに突き刺さる爽快感はNO.1」





 ミットにズバーンと速球が突き刺さる様は、今年の候補の中でもNO.1ではないかと思わせる 星 知弥 。宇都宮工業時代にプロ志望届けを提出していれば、上位指名は確実だった関東の逸材。1年春から期待され登板の機会を得てきたが、今春初めて勝利をあげることができた。その秘めたる才能が、最終学年で開花されるか注目されたシーズンだった。


(ここに注目!)

 思わず打者が見逃してしまうような、惚れ惚れするようなストレートを堪能して頂きたい。


(投球内容)

 今シーズンは、先発でもリリーフでも登板。しかし細かいことができる選手ではないので、やはりリリーフでこそ持ち味を発揮するタイプ。特に優勝を決めた立教大戦での登板を見たが、改めてこの投手のボールが素晴らしいことを実感した。

ストレート 常時145キロ前後~MAX154キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 ズバーンと投げ込まれるストレートの見てくれだけならば、☆☆☆☆☆ の満点ぐらいあげたいボールを投げ込んでくる。しかしそのボールを細かく投げ分けるコマンド力と、合わされやすいフォームなどを加味すると、どうしてもマイナス評価になってしまう。

今シーズンこそイニングを下回る程度の被安打に抑えることができたが、これまでの3年間のシーズンではほとんどイニングと同等とかそれ以上の被安打を浴びてしまう。


変化球 スライダー・チェンジアップ(フォーク)・カーブなど 
☆☆☆ 3.0 

 何やら高速で沈む球を多く投げてくるのだが、これが落ちの悪いフォークなのかチェンジアップなのか、はたまたツーシーム系なのかよくわからない。その他にスライダー、あと緩いカーブなどもたまに投げてくる。

 絶対的なキレ・曲がりはないのだが、ストライクゾーンに投げ込めるコントロール・精度は持っている。ストレートに勢いがあるだけに、こういった変化球も生きてくる。何か、これは!という絶対的な球種があると、全然投球は変わってくるのだが。


その他

 牽制はややモーションは大きいものの、動作自体は鋭い。クィックも1.05秒前後でまずまず。フィールディングは上手いわけではないが、落ち着いてボールを処理できている。総じて大きな欠点がないように見えるが、走者を出すと浮足だって落ち着かない。けしてピンチで踏ん張りが利く、そういったハートの強さは感じられない。

(投球のまとめ)

 春先のDeNAとの交流戦をみても、合わされやすいフォームに改善は観られていなかった。ボールが定まらず、カウントを取りに来るところをガツンと打たれるという下級生までの悪循環を繰り返す有様。そういった学習能力・課題を改善して行けるセンスに疑問が残る。

 それでもシーズンに入り、成績は今までに比べると向上していた。フォームを見る限り、それほど大きな変化は感じられない。しいていえば、以前よりもボールにしっかり体重が乗せられるようになっており、ボールにより勢い・球威が感じられるようになってきた。


(成績から考える)

 フォーム分析はオフの寸評で行っているので、今回は春の成績から傾向を考えてみたい。ファクターは、リリーフでのものを採用してみる。ちなみに今シーズンは

9試合 28回2/3 23安打 10四死球 25奪三振 防御率 2.83


1,被安打はイニングの80%以下 △

 レベルの高い六大学の選手ということでファクターを80%に設定してみたが、被安打率は80.4% 。ファクター前後という数字であり、以前はイニング数前後だったことを考えると、成長の跡は感じられる。

2,四死球は、イニングの1/3以下 △

 四死球率は35.0%で、基準である33.3%以下には若干及ばなかった。細かいコースの投げ分けはできず、ストライクゾーンの枠の中に投げ込んでくるタイプ。それだけならば良いが、時々ボールが先行してカウントを取りにゆく球を打たれるケースも少なくない。この部分は、以前からこんな感じの数字であり大きな変化は感じられない。

3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 △

 1イニングあたりの奪三振数は、0.87個とリリーフでの基準は僅かに満たせず。しかしシーズンでは先発もやっており、先発の基準は0.8個であることを考えると、ほぼファクター前後の数字は満たしていることになる。

4,防御率は1点台以内 ☓

 防御率は2.83であり、この点は他のファクターに比べると大きく見劣る。過去のシーズンの防御率も高めのことを考えると、被安打や四死球以上に、手痛いところでドカンと打たれるケースが多いのではないのだろうか。

(成績からわかること)

防御率以外のファクターは、ほぼ基準前後ぐらいの数字であるので、全くの素材型とは言い切れない。しかしその一方で、例えリリーフであっても、一年目から一軍で活躍できるほどのものがあるのかと言われれば、NO!と言わさずえない。

そのためプロである程度欠点を改善するだけの、育成期間が求められるということ。その覚悟がある球団に指名してもらいたいし、本人もその覚悟で挑んで欲しい。



(最後に)

 多少成績は良化しているものの、根本的に問題が解決しているという風には感じられない。その問題を、プロの指導や環境で簡単に改善できるのか?と言われれば微妙だろう。あくまでも大学生でも素材型の選手を獲ったと割り切り、一年ぐらいはファームで漬け込む覚悟がある球団に指名してもらいたい。

 体力的な部分ではプロでも見劣らない可能性は感じるが、精神的な部分では周りのフォローが不可欠。そういった意味では、入る球団、出会う人によって将来が大きく左右される可能性は否定できない。そういった意味では、かなりリスキーな選手であるのは間違いない。

いずれにしても上位指名でゆくには怖い選手であることを考えると、下位指名でならば拾う球団もあるのかなと。ドラフト的な位置づけでいえば 白村 明弘(慶大-日ハム)的な存在であり、指名の最後あたりならば狙ってみてもというタイプではないのだろうか? しかしボールそのものは一級品なだけに、それを活かせるようになればプロでも上位のリリーバーになっても不思議ではない。こういう選手を使えるようにするのが、プロ野球なのではないかとも思ったりする。



蔵の評価:
 (下位指名級)


(2016年 春季リーグ戦) 











 星 知弥(明治大3年)投手 181/85 右/右 (宇都宮工出身)
 




                    「課題解消されないまま」





 宇都宮工業時代に、プロ志望届けを提出すれば上位指名で指名されたであろう素材。しかし明大入学後は、殻が破れないまま3年間の月日が流れた。今回は、高校時代と比較しながら、現状の 星 知弥 について考えてみよう。

(投球内容)

 今時めずらしい、ワンインドアップで振りかぶる。軸足一本で立った時に、。軸足の膝がピンと伸びきって、背中のラインと一直線に直立して立つ。そこから、前に倒れ込むような感じで滑り出して来る。

ストレート 常時145キロ前後~MAX154キロ

 星のストレートは、ボールが見え始めてからミットに収まる時間が極めて短く感じる、ズバーンとした球。このボールの勢い・迫力は、今年の候補でも屈指のレベルがある。しかし彼は、イニング数に近い数の被安打を浴びる。このボールの割に合わされうやすいのは、高校時代から変わっていない。まさに彼の一番の課題は、この合わされやすいフォームにある。

 彼のストレートは結構暴れて、1-3とか2-3 とかボールが先行する場面が多い。しかしその割に、四球はそれほど多くない。その一つは、カウントが悪くなると力を抜いてストレートを制御できることにある。また普段は、両サイドにボールを散らすコントロールもある。また状況に応じては、打者の内角を意識的に突くこともできる。

変化球 スライダー・チェンジアップ・フォーク・ツーシーム・カーブなど

 変化球自体の球種は豊富なものの、曲がりが小さく、空振りを誘える球が少ない。また投球自体に、あまり緩急が使えない。そのためどうしても仕留めきれず、結局ストレートで押したところを打たれることが少なくない。それでも毎シーズン、イニング数前後の奪三振は奪えている。

その他

 牽制はややモーションは大きいものの、動作自体は鋭い。クィックも1.05秒前後で、まずまずうまい。フィールディングは上手いわけではないが、落ち着いてボールを処理できている。総じて大きな欠点がないように見えるが、走者を出すとやや浮足だって見える。けしてピンチで踏ん張りが利く、そういったハートの強さは感じられない。

(投球のまとめ)

 けして四死球を多く出すわけではないが、ボールが先行しやすい。そのためカウントを取りに行ったりして、甘く入ったストレートを打ち返される場面が目立つ。ストライクが先行できれば、勝負どころで更に力を入れたり、変化球を使って来ることができるのだが、結局カウントを悪くして、後手後手で勝負する悪循環に陥っている。できれば早めにストライクを先行させ、思いっきり力を入れて投げたり、変化球を振らせるような状況を作りたい。

(投球フォーム)

では何故課題が改善できないのか? 投球フォームを見ながら考えてみたい。

<広がる可能性> ☆☆

 身体を前に倒しこむように滑り出してゆくので、お尻は一塁側に落とせない。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような身体を捻り出して投げる球種には適さない。

 また前に倒れ込む身体を受け止めようと、どうしても「着地」が早くなりがち。前にステップさせて足を逃がすことで、なんとか平均的なレベルには留められているが。身体を捻り出す充分な時間が確保できず、曲がりの大きな変化球やキレのある球が習得し難い。球種が多彩でも、絶対的な変化球がないのは、このせいだろう。


<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは後ろに抜けそうなところを、なんとか体にくっつけるようにして我慢している。このおかげなのか? ボールは両サイドに散っている。

 足の甲の地面への押し付けもできており、ボールもそれほどは上吊らない。それでも「球持ち」がもう少し押し込めるようになると、もっと低めに集まって来るのではないのだろうか。あと腕の送り出しが、やや遠回りに外旋すしてブンと振られているので、フォームがブレやすくコントロールに狂いが生じているのではないのだろうか?


<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻を落とせないフォームの割には、カーブやフォーク系のボールも投げているように見え、肘への負担が若干心配。

 更に腕の送り出しにも無理がないように見えるものの、体が遠いところを腕が軌道してブンと振っているおり、肩への負担は多少大きいのではないかという心配はよぎる。それでも、悲観するほどではないのだが。


<実戦的な術> 
☆☆☆

 前に足をステップさせて時間は稼いでいるものの、「着地」の粘りは並ぐらい。更に体の「開き」も平均的。それ以上に被安打を喰らいやすい理由は、お尻を落とすのではなく、前に倒れ込むフォームのため、投球フォームが外人ように打者に向かって直線的な動きになって、ボールが見やすいからではないのだろうか。少なくてもこのフォームだと、イチ・ニ~のサンの ニ~のの粘りが作れず、イチ・ニ・サンで合わされやすい。

 腕は強く振られており、速球と変化球の見極めは難しい。またボールへの体重乗せも、けして悪い選手ではない。しかしできれば、もう少しステップの幅を取ると、グッとボールに勢いと球威を増すことができるだけに惜しい。今のフォームでは、作り出したエネルギーを残ってしまっている。

 しかしこれをするためには、日頃から股関節の柔軟性を養い、さらに下半身強化を取り組んで来ないといけなかったわけで、そういった計画性・意識がこの三年間に渡ってなかったことは、残念でならない。


(投球フォームのまとめ)

 投球フォームの「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、極端に悪すぎるものはない。しかし格別優れているものはなく、フォーム全体に粘りがなく淡白だという、高校時代からの欠点を解消できていない。

 コントロールを司る動作は、腕が少し遠回りなのと球持ちの押し込みが物足りない。そのためおおよそはコントロールできるが、細かい投げ分けができない。お尻が落とせないことで、肘への負担。少し遠回りにブンと腕を振ることでの肩への負担も感じなくはない。しかしこれに関しては、無理をしなければ悲観するほどではないのだろう。

 お尻が落とせないゆえの矛盾が、フォーム全体に大きな影響を及ぼしている。しかしこれを、今のフォームから改善するのは不可能に近い。すなわち今のフォームでも、できることから取り組んでゆきたい。


(最後に)

 速い球を投げるという資質・才能は、今年の候補でも指折りであるのは間違いない。特にボール自体の勢い・迫力は、ある意味 田中 正義(創価大)以上だと思わせるものがある。

 しかしその反面、高校時代からボールの合わされやすさが改善できなかった。だからこそ成績も、入学時から大きな変化が観られないのだろう。自分のボールに酔うのではなく、自分のボールを速く効果的に使うことを、そろそろ意識すべきではないのだろうか? もしそのことに早く気がついていたら、何かしらの形が3年間の月日の中で現れたはず。その跡が見られないということは、漠然と3年間を過ごしてきたと言われても致し方ないだろう。

 今春にその跡が見られるかどうかで、ドラフトでの評価も定まって来るはず。今までと同じことを繰り返せば、ドラフト指名も危ういかもしれない。その一方でそこに変化が見られた時、上位12名の中に、名前を連ねてきても何の不思議もない才能の持ち主。あえて先発でどうこうしようとするのではなく、大石 達也(早大-西武1位)のように、リリーフで絶対的なものを示しアピールして欲しい。何か投球に一工夫加えられるのか、まずは春の投球に注目したい。



(2015年 秋季リーグ戦)










星 知弥(栃木・宇都宮工3年)投手 180/74 右/右 





                  「秋もこんな感じだったよね」





関東NO.1右腕と呼び声が高かった 星 知弥 。春季関東大会のマウンドでは、立ち上がりからピリッとしない内容に、スカウト達はクビを捻った。しかし私が観た昨秋の投球からは、こういう投手だよなと改めて実感するだけで、別に特別悪いとも思わなかった。現にこの試合の後の本人のコメントにも「調子は良かった」と述べているように、けして内容が悪かったのではなく、相手レベルが高かったから、自分の投球に徹しきれなかっただけではなかったかと思うのだ。


(投球内容)

残念ながら、途中で球場を移動しなければならなかったので、観られたのは最初の3イニングまで。それでも秋のピッチングを見ていたので、それほど長く見る意味はないかなと思っている。上半身や腕を強く振ることで、ボールにキレを生み出すタイプの快速球投手。ただ投球に一辺倒になることが多く、ボールが揃い出すと打者に一気に打ち込まれる傾向が秋からありました。

ストレート 常時140キロ台~MAX91マイル(145.6キロ)

立ち上がりから、殆どのストレートが89マイル(142.4キロ)を面白いように刻んでおり、コンスタントにこの球速のボールが投げられることを証明。上体を強く振ることで、非常に勢いのあるボールを投げ込んで来る。ただ球自体は勢いを感じるのだが、フォームが合わせやすいのか? 意外に打者が苦にしなく合わせて来る。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど

右打者の外角にはスライダーを集め、左打者の外角にはチェンジアップを落とします。たまにカーブのような球もあるようですが、基本はスライダーとチェンジアップ。特に左打者外角へのチェンジアップは、悪くありません。

特に絶対的なキレや曲がりはないのですが、ストレートも変化球も両サイドに散らし投げ分ける制球力はあります。チェンジアップには落差があり、上手く低めに決まれば空振りも誘えます。

その他

この試合ではそれほど鋭い牽制は魅せませんでしたが、秋は結構鋭い牽制を混ぜてきました。またクィックは、1.0秒前後で投げ込める高速クィックの持ち主であり、秋よりも更に素早くなっています。フィールディングは、ちょっと手投げのところがあり、制球の部分で不安は残ります。それでも冷静に対処できているので、極端に下手ではありません。

(投球のまとめ)

速球派ですが、四死球で自滅するような荒々しさはありません。適度にボールを散らすコントロールはあるのですが、フォームが合わせやすいのと、緩急に乏しい配球のため一挙に打ち込まれてしまいます。ボールにも勢いとキレはあるのですが、球威型ではないのでシッカリ捉えられると長打に結びつくケースが目立ちます。

ただこの投手、まだまだ発展途上の体付きであり、これから球が速くなったり、投手としての資質を伸ばして行けそうな、素材としての可能性は感じさせます。そういった意味では、まだまだ絶対的な力はありませんが、その将来性は高く買えます。

(投球フォーム)

では今度は、秋のフォームと比べて、この冬の間大きく変わった部分があるのか考察してみたいと思います。投球的には大きな変化が観られませんでしたが、果たしてどうでしょうか?

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばし、お尻は一塁側に落とせません。そのためカーブのような球で緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭い変化は期待し難いものがあります。実際その投球も、スライダー・チェンジアップ中心に組み立てられています。

「着地」までの足の逃し方は悪くなく、けして「着地」が早すぎる印象はありません。そういった意味では、カーブやフォークのような球種でなければ、球速のある変化球中心に身につけ投球の幅を広げて行くことは期待できます。ただ秋からは、この部分は殆ど変わっていません。

<ボールの支配>

グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の押し付けも悪くないので、ボールも高めに抜けることが少なくなりました。秋はもっと球全体が高かった印象でしたが、リリースでボールを押し込めるようになり、以前よりも球筋全体が下がった気が致します。この辺は、一冬越えての成長を感じます。

<故障のリスク>

お尻の落としはできませんが、それほど肘に負担のかかるボールは投げません。また振り下ろす腕の角度にも無理はないので、肩への負担も考えにくいです。秋よりもゆったり投げるようになり、力投派だったフォームにも、だいぶ余裕を感じます。先発を意識して、消耗の激しいフォームへの脱却を図ろうとしているようです。

<実戦的な術>

前に足を上手く逃し「着地」のタイミングは悪くないように見えます。しかし実際には、投げ終わったあと必ず一塁側に流れているように、ステップの位置が適性でないことがわかります。更に打者から合わせやすいフォームを見ていると、やはり粘りが足りないということになるでしょう。

「着地」の時点での「開き」を見ていると、けしてボールの出処は見えていません。そのため「開き」が早いことはなく、ボールに合わされにくい理由がよくわかりません。

振り下ろした腕は体に絡んでくるように、腕の振り・上体を鋭く振ることに関しては非凡です。ただその反面、「体重移動」は上手くできておらず、ボールにウエートを乗せることができていません。そのため球威に欠けますし、打者の手元まで思いのほか来ていないのではないのでしょうか。

(投球フォームのまとめ)

「着地」には、その見た目以上にまだ課題があるようです。そのため打者からは、タイミングが合わされやすい部分は改善できておりません。しかし「開き」は抑えられており、この部分は合格点。

また腕の振りもよく、「球持ち」も秋から最も改善されたポイント。そのためボールが上吊ることも、だいぶ減りましたし、リリースは安定してきたように思います。あとは「体重移動」に欠けるフォームの改善で、この部分が改善されないと、いくら球速を増しても、その効果は充分発揮されないものだと考えられます。

(最後に)

投球自体に大きな変化は観られませんでしたが、投球フォームには努力の跡が見て取れました。まだ発展途上の技術と肉体の完成度で、図抜けたパフォーマンスは示せませんが、このまま順調に夏まで伸びれば、全国有数の投手になれる存在です。

まだまだ伸びるはずの素材なので、更に成長の余地が感じられれば、秋のドラフトでも中位前後で指名されても不思議ではないと判断します。個人的には、その内容以上に、実際見てみていい感触を得た内容でした。快刀乱麻のピッチングで、ぜひ夏は甲子園まで駒を進めて欲しい一人です。


蔵の評価:
☆☆


(2012年 春季関東大会)


 






星 知弥(栃木・宇都宮工2年)投手 180/74 右/右
 




                   「北関東随一の速球派」





MAX146キロと言われるストレートの勢いは本物で、秋の文星芸大附戦の模様を観たが、そのストレートの勢いは本物だと思った。特に上半身を強く振れるフォームで、その腕の振りと地面の蹴り上げは、高校生では中々お見受けできない代物。


(投球内容)


ストレート 常時130キロ台後半~MAX146キロ

ボールは、手元まで非常に勢いのある球を投げ込みます。ただ腕の振りは凄いのですが、腕のしなりで投げる投手ではないので、打者の空振りを誘うような伸びやキレはありません。そのため打者を詰まらせたり、ズバッと見逃しの三振を奪うタイプの球質。

またボールが上吊ることが多く、球が高めに集まります。ただ外角クロスへの制球は確かで、左打者には徹底的にインハイに集めますし、右打者には外角高めでカウントを整えます。そのためボールは上吊りますが、それほど四球で自滅するといったことはありません。

変化球 スライダー・チェンジアップ

投球の多くは、スライダーとのコンビネーションで組み立てられています。ただそれほどスライダー自体の曲がり・キレはないので、あくまでも緩急やカウントを稼ぐ球であり、空振りを誘う球ではないようです。

むしろ威力だけならば、左打者の外角に落とすチェンジアップのような球の方があるように思えます。ただそれほど、この球も多くは投げてこないので、まだまだ決め手に欠ける印象があります。特にストレートで空振りが誘えない分、変化球で三振を奪いたいのですが。

その他

牽制は、中々鋭いものを魅せますし、ランナーへの意識は神経質なぐらいです。クィックも1.05~1.15秒ぐらいと素早く投げ込みますので、中々モーションを盗んで盗塁は難しいのではないのでしょうか。フィールディングは少々手投げで制球が心配ですが、冷静に対処できているように見えます。

(投球のまとめ)

非常に力投派なので、投球ができないタイプかと最初思っていました。しかし適度にマウンドを外したり、ランナーを背負ってから、打者や走者を焦らすように、「間」を長くとって投げ込んで来るなど、投球センスを感じます。単なる力投派では、けしてないと考えます。

ただランナーを背負うと、神経質な一面があり、何処まで平常心が保てるかは気になりました。冷静に投げられているときはいいのですが、そうでないとガタガタと崩れてしまうかもしれません。


(投球フォーム)

ワインドアップから、ゆっくりと足を引き上げて来る静かな入りのフォームです。途中から、グンと加速する躍動感のあるフィニッシュにつなげます。特にフィニッシュの凄さは、特筆ものだと言えるでしょう。

<広がる可能性>

引き上げた足を空中で伸縮させますが、地面に向けて伸ばします。そのため、お尻は一塁側へは落とせません。基本的に、腕も真上から投げ下ろすというよりは、スリークオーター。そう考えるとカーブで緩急をつけたり、縦に鋭く落ちるフォークのような球種は向きません。実際の投球も、スライダー・チェンジアップ系の球種で、組み立てています。ただ「着地」までの粘りは悪くないので、球速の速い変化球を中心に、投球の幅を広げて行くことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配>

グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの制球は安定。足の甲でもシッカリ地面を押し付けられているのですが、実際にはボールが高めに集まります。その最大の理由は、ボールを押し込めない「球持ち」の浅さにあります。スリークオーターで更にボールを押し込めないので、どうしてもボールが上吊るのでしょう。もう少し指先の感覚を磨かないと、細かいコントロールは将来的にも厳しいかもしれません。

<故障のリスク>

お尻は落とせませんが、肘に負担のかかる球種は投げていません。腕の角度にも無理がないので、肩への負担も少なそう。ただ物凄い力投派なので、体への負担はどこかしらに出てきそうな気は致します。体の手入れには、日頃から充分注意して欲しいと思います。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りは平均的ですが、体の「開き」は早くありません。「開き」の早いスリークオーターが多い中、珍しいタイプかと思います。そのため打者としては、それほど合わせやすいわけではないと思います。

とにかく腕の振りが強く、体に叩きつけるように絡んできます。これだけ上半身を強く振れる投手は、秋の時点では全国でも屈指ではないかと思います。それだけ速球と変化球との見分けは難しいと思いますが、思いのほか変化球はイマイチです。

また「体重移動」は素晴らしく、ボールに上手く体重が乗せられていると思います。そのため打者の手元まで、勢いのある球が行きます。特に地面の蹴り上げが素晴らしく、久々にこれだけ強く地面を蹴り上げる投手に出会いました。


(将来に向けて)

夏までには、150キロの期待も高まるほどの速球派です。その割に、マウンド捌きも良いのが貴重な存在。ただボールが上吊る点・変化球レベルが低い点などで、総合力では課題を残します。

春季大会から、ぜひチェックに行ってみたい素材であり、間違いなくドラフト候補として名前が上がって来ると思います。あとは、指名されるほどの総合力を夏までに身につけられるのか、それでも非常に楽しみな素材ではないのでしょうか。


(2011年 秋季栃木大会)