16dp-27


 




坂本 光士郎(ヤクルト)投手のルーキー回顧へ







坂本 光士郎(24歳・新日鉄広畑)投手 180/74 左/左 (如水館-日本文理大出身) 
 




 「素材は惚れ惚れする」





 スラッとした投手体型で、滑らかな体重移動から切れ味抜群のストレートを投げ込む 坂本 光士郎 。しかしアバウトなコントロールなど、実戦ではいまいち結果を残せない投手だった。特にこの一年は、目立った活躍もないままドラフトを迎えてしまった。ドラフト後に行われた、日本選手権で久々にその勇姿をみた。


(投球内容)

ストレート 140キロ前後~中盤 
☆☆☆★ 3.5

 打者の空振りを誘えるストレートのキレには、良いものを持っています。昨年よりも、全体的に球速が上がってきているのか? ボールの勢いも悪くありません。ボールの質・勢いという意味では、プロでも一軍打者相手に通用するのではないかと思わせるほどです。その一方アバウトな制球は相変わらずで、本当にストライクが欲しい時に取れなく苦しむのは変わりません。またキレ型の球質で球威に欠けるため、高めに甘く入った球を捉えられると長打を喰らいやすい傾向にあります。

変化球 スライダー・カットボール・ツーシームなど 
☆☆★ 2.5

 変化球のほとんどは、スライダーとのコンビネーションで組み立てられています。他にはカットボールなどもありますが、むしろ速球を多めに使っている印象。以前はカーブやツーシーム系のボールも時々観られましたが、今回の登板ではよくわかりませんでした。何やらフォークらしき縦に落ちる球も投げていたのですが、それがチェンジアップなのか縦スラなのか?フォークなのかよくわかりません。それほどまだ、絶対的な精度はないようです。

 この球を投げていればカウントが確実にとれるとか、相手の空振りを誘えるといった頼れる変化球がないように見えます。あくまでも苦しくなると、ストレートで押すしかなくなるところに不安は感じます。

その他

 大学時代はクィックができない投手でしたが、今は1.05秒前後とかなり素早く投げこめるようになりました。牽制は走者を刺すといった鋭いものは観られませんでしたが、間を外す程度には使ってきます。元々は投球フォームとの見極めが難しいほどの牽制ができていたので、使おうと思えば使えるはず。

(投球のまとめ)

 現状はあくまでも、ゲームメイクするといった先発タイプではなく勢いで押すリリーフ型でしょう。問題は、よりストライクゾーンが狭くなり打者の打力も上がるプロの世界において、このアバウトな制球で自分の投球を貫けるられるのか?といった部分が気になります。

 今の内容のままだとプロでは厳しいと思いますが、そのへんはプロの指導でどの程度課題を改善できるのかに懸かっています。即戦力を期待というよりも、素材の良さを活かして1,2年後にどうなっているのかという部分に魅力がある投手だと認識しています。


(投球フォーム)

オフシーズンの寸評でもフォーム分析をしましたが、そこから何か変わったのか検証してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足は高い位置でピンと伸ばされているのだが、その足を二塁方向に送り込み過ぎている。そのためお尻はバッテリーライン上に残りがちで、身体を捻り出すスペースが充分には確保できていない。したがってカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種を投げるには適していないのではないのだろうか。

 「着地」までの粘りはそれなりで、身体を捻り出す時間も並ぐらい。しかし実際のところは、安心して任せられるほどの変化球は習得できておらず、その効果を得ることはできていない。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ分けはできている。足の甲での地面への押しつけが浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。さほど「球持ち」もよくなく、指先の感覚は良くないのだろう。何より気になるのは、頭と腕が離れてブンと振られてくるので、どうしてもコントロールをつけ難いフォームになっていることだろう。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、元々カーブやフォークといった球種はほとんど投げないので気にしなくても良いのではないのだろうか? 今後こういった球種を多く投げるときは、腕の送り出しが窮屈になり肘への負担が増すことに注意したい。

 腕の角度をみる限りスリークォーターで、送り出しにも無理は感じない。そのため肩への負担は大きくはなく、故障のリスクは少ない投手なのではないかと思う。また物凄く力を入れて投げる力投派でもないので、疲労を溜めやすいといったかこともなさそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並ぐらいで、とくにタイミングが図り難いタイプではないだろう。それでも球の出どころは隠せており、見えないところから急にボールが出てきて、ピュッと差し込まれやすいはず。

 腕の振り自体に勢いがあり空振りは誘いやすいとは思うが、ボールには充分体重は乗せられる前にリリースを迎えてしまっている。腕や上体の鋭い振りでキレを生み出すことはできているが、打者の手元まで球威のある球は投げ込めていない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」以外の部分にはまだ良化の余地が残されているということ。極端に悪いわけではないが、そこに伸び代が残されているはず。今後の意識と努力次第では、もっと粘っこい実戦的なフォームになるはずだ。

 制球を司る動作に課題があり、今後投球の幅を広げて行けるのか?という不安は残る。しかし身体への負担は大きなフォームではないので、いろいろ試行錯誤して感覚を身につけていって欲しい。実戦的というよりは、まだまだ発展途上の投手といった印象だ。


(最後に)

 まだまだこれからの選手であり、プロでいかに成長してゆけるかに懸っている。昨年よりも腕の振りは強くなり、球速・ボールの勢いは増しているのではないかという印象は受けた。アバウトな制球力や変化球などの課題が多いのは変わりないが、少しずつだが年々良くなっている。

 特に大学時代課題であった、クィックができないとか身体がビシッとしていなかったという違和感は改善されつつある。緩やかな成長を続けている点は買えるところであり、即戦力としては計算しづらいものの、2,3年後ぐらいには見違えるようになっているかもしれない。タイプ的には、砂田 毅樹(DeNA) に近い左のスリークォータ。彼よりも変化球やコントロールの部分では劣るものの、ストレートの勢い・キレではそれ以上ではないのだろうか。その素材の良さを買って、指名リストに名前を残してみたい。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2018年 日本選手権)









坂本 光士郎(23歳・新日鉄広畑)投手 180/70 左/左 (如水館-日本文理大出身) 





                    「日本文理大時代から期待」





 日本文理大の3年生の時に、柔らかい腕の振りから140キロ台中盤の球を投げ込んでいて気になっていました。最終学年では、大学選手権や神宮大会でも登板し、一躍全国区に。新日鉄広畑に進んだ昨年は、社会人日本代表に選出。BFAアジア選手権では、リリーフを中心に8試合に登板し安定した成績を残しました。


(投球内容)

 手足の長い投手体型から、スリークォーターで投げ込んでくるサウスポー。左打者にとっては、背中越しから迫って来る球筋で厄介なタイプだと言えます。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 普段は140キロ前後ぐらいの球速で、ドラフト候補としては平均的。キレ型で空振りが取れるのですが、球威に欠ける分甘く入ると長打を浴びやすい傾向にあります。コントロールが結構アバウトな部分があり、ストライクゾーンの枠の中に投げ込むといった程度。

変化球 スライダー・カーブ・ツーシームなど 
☆☆☆ 3.0

 投球の軸は曲がりながら沈むスライダーで、さらにもっと緩いカーブ。それに右打者の外角低めに小さく逃げる、ツーシーム系のボールがあります。大学時代は、速球とスライダーという単調なコンビネーションだったのに比べると、投球の幅は広がりつつあります。カーブでもカウントが取れますし、右打者にはツーシーム系の精度も悪くありません。スライダーも左打者にとっては背中越し大きく変化して来るので、厄介な球筋。絶対的な球はないにしろ、変化球のキレ・精度ともに悪くはありません。

その他

 大学時代は、見分けの難しい牽制ができる選手でした。クィックは、1.05~1.15秒ぐらいと平均的。それでも大学時代はクィックができていなかったことを考えると、格段の進歩です。投球を組み立てたりまとめる能力は高くなく、プロならばリリーフ向きではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 特に速球でも変化球でも、プロとなると絶対的なものはありません。ただし左打者には強さを発揮するタイプなので、左の中継ぎが欲しい球団が触手を延ばして来る可能性はあります。ただし指名となると、もうワンランクボールの勢い・変化球のキレなどに特徴が欲しい気がします。しかし大学時代よりは、球種が増てピッチングの幅が広がったことは評価できるのではないのでしょうか。


(投球フォーム)

力量的には指名ボーダーレベルぐらいの投手なので、フォームが実戦的なのかどうか考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は比較的高い位置でピンと伸ばされているものの、二塁側に足を送り込み過ぎている。そのためお尻は、三塁側(左投手の場合)には落ちずバッテリーライン上に残りがち。そういった意味では、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さないのではないのだろうか。

 「着地」までの粘りはそれなりであり、身体を捻り出す時間もまずまず。キレや曲がりの大きな変化球を、修得して行ける下地はある。実際のところ曲がりながら落ちるスライダーは、空振りを誘える代物。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けはつけやすい。足の甲の押し付けは甘さは残すものの、ある程度地面を捉えている。そのため、高めに抜ける球は多くは見られない。指先の感覚があまり良いようには見えないが、「球持ち」自体は前で放せていて悪くない。ただし動作の割には四死球は多く、投球回数の半分ぐらいは出してしまう。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻を三塁側に落とせず、身体を捻りだすスペースは確保できてはいない。それでもカーブの頻度はそれほど多くない上に、フォークのような球種は投げない。そういった意味では、今の頻度でカーブを使うのならば悲観しなくても良いだろう。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担は少ない。それほど力投派でもないので、疲労を貯めやすいタイプでもないだろう。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは作れているので、打者としては合わせやすくないはず。さらに「開き」も抑えられており、見えないところからピュッと出て来る感覚には陥るのではないのだろうか。それだけに甘いところに入らなければ、心配はいらない。

 腕が長い体型の割には、振り下ろした腕が絡んで来ない。そのためフォームに勢いがないので、思ったほど空振りが誘えないのではないかと。ボールへの体重の乗せは悪くなさそうで、キレ型なのでどうかと思っていたが、ボールに体重を乗せてからリリースできている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれの部分にも欠点はなく実戦的。故障のリスクも高くなく、コントロールもそこまで悪く無さそうな土台ではある。しかし実際には、細かい制球に課題を残している。投球の幅は、フォークなどでなければ広げて行ける可能性を持っている。


(最後に)

 左のリリーフタイプであり、プロで言えば 砂田 毅樹(DeNA)のようなタイプ。左打者には強さを発揮しそうなタイプだけに、プロ側の需要はそれなりに高いと考えられる。実際の投球ではボールの力・制球など微妙なレベルではあるが、もう一押しのプラスαが見込めればプロ入りも充分期待できるだろう。そのプラスαを、実感できる年になることを楽しみにしている。


(2017年 BFAアジア選手権)










坂本 光士郎(日本文理大4年)投手 180/70 左/左 (如水館出身) 
 




                 「西日本の大学生左腕では1番気になっていた。」





 昨秋神宮大会九州代表決定戦で 坂本 光士郎 をみて、西日本の大学生左腕では最も気になる存在であった。当時は、日本文理大の細切れの投手陣の1人でしかなかったが、左腕から繰り出すキレの良い球が印象的。来年大事なところを任されたら、面白い存在になるのではないかと密かに期待していた投手だった。


(ここに注目!)

 手足の長い投手体型で、柔らかい腕の振りを活かしたスリークオーター。昨年は短いイニングの登板だったので、左腕から140キロ台中盤を連発するなど、力を入れた時のボールには注目して頂きたい!


(投球内容)

 最終学年になった今年は、チームでも先発を必ず任される存在に。そして3回~4回ぐらいまで投げ、試合を作る役割に。この坂本の安定した投球も手伝って、チームを大学選手権に導いてみせた。

ストレート 130キロ台中盤~MAX145キロ 
☆☆☆ 3.0

 先発ということもあり、ガンガン力で押してくることはなくなった。ゆったりしたモーションから、130キロ台が中心であり、ランナーを背負って必要なときに140キロ台中盤を記録します。昨年見た時は、コンスタントに140キロ台を超えて、MAXで91マイル・146キロまで到達。そういった意味では、ボールの球威・球速・勢いなどは昨秋から大きくは変わっていない。

 基本的にコースの投げ分けなどはなく、ストライクゾーンの枠の中に投げ込んで来るというアバウトなもの。四球で自滅するような危うさはないが、細かい制球力・投球術は特にない。また左のスリークオーターの割には、緒戦で対戦した中京学院大の左打線も、さほど苦にしているようには見えなかった。

変化球 スライダー・カットボール 
☆☆★ 2.5

 変化球は、横滑りするスライダー。それに130キロ台の小さく変化する、カットボールぐらい。左腕らしい大きなカーブや、チェンジアップ系のボールは観られない。もう少し右打者が多い打線ならば、チェンジアップ系のボールがあったのかもしれないが。スライダーやカットボールは、安心してカウントを稼げるものの、打者を仕留めきるほどの絶対的なキレや活かす術はない。特に左打者に対し、真ん中近辺に甘く入ったスライダーを打たれるケースが多い。

その他

 左腕らしく、見分けのつき難い牽制は投げられる。しかしその反面クィックはできないようで、これからの大いなる課題だと言えそう。微妙な駆け引きや、微妙なところを突いて勝負してくる選手ではけしてない。

(投球のまとめ)

 如水館高校時代も控え投手であり、そういったマウンド経験や大事なところを任されてきた経験が不足している。長い腕を柔らかく使え左腕としての素材は買えるが、プロ入りするにはもう少し高いレベルの野球を経験してからでも遅くないのでは。現状プロのスカウトも気になる存在ではあるだろうが、指名となると微妙なラインだと言わざるえない。





(投球フォーム)

 技術的にはどの辺に問題があるのか? フォームを分析して考えたい。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足をかなり二塁側にまで送り込んでいるため、お尻は三塁側(左投手の場合)には落ちてこない。すなわち身体を捻り出すスペースは確保されておらず、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない。

 「着地」までの粘りを観ても平均的で、身体を捻り出す時間は並ぐらい。キレのある変化や大きな曲がりをする球を修得するという意味では微妙であり、決め手に欠ける理由も頷ける。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 最後まで身体の近くにグラブを抱えており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。しかし実際は、あまりコースの投げ分けは見られない。足の甲でも地面を押し付けられているので、浮き上がろうとする力を抑えこみボールは上吊り難いはず。しかしかなり腕が下がってく出てくるために、実際には真ん中~高めぐらいに集まっている。

 それでも「球持ち」も良いので、もう少し細かいコントロールがつきそうなもの。しかし指先の感覚が悪いのか? 繊細なコントロールは有していなく、あくまでもストライクゾーンの枠の中に安定して投げ込んでくるといったレベルにとどまっている。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は落とせないフォームではあるが、カーブやフォークが見られないことを考えると、肘への負担は少なそう。腕の送り出しも腕を下げて投げるスリークオーターであり、肩への負担も少なめ。それほど力投派でもないので、消耗が激しいということもなさそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的であり、打者としては特に合わせやすいわけでも苦になるフォームでもない。それでも「開き」は抑えられているので、コースが甘く入らなければ痛打を浴び難いはず。

 気になるのは、これだけ腕が長い体型の割に投げ終わったあと身体に腕が絡んで来ないこと。そういった意味では、腕を強く振れていないのと「球持ち」が思ったほど粘り強くないのではないかと不安になる。逆にキレ型の球質の割には、ボールに適度に体重が乗せられているように見える。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも大きな欠点は見当たらない。また今後の意識次第では、もっと粘り強くなり、嫌らしいフォームになっても不思議ではないだろう。

 制球を司る動作の割にコントロールがアバウトなのは、まだ身体がビシッとしておらず安定していないからではないのだろうか。お尻を落とせないフォームではあるが、カーブやフォークなどは見られないので故障のリスクはそれほど高いとは考え難い。


(最後に)

 投球を見る限り、細かい部分での未熟さが残る。特に、クィックができないところは改善したい。更に年齢の割に、身体ができていないところもあり、社会人などを経て身体を完成させることが求められる。

 そういった意味では、まだ基礎技術・土台が未完成でしある、プロ入りには時期尚早ではないのだろうか。また彼自身社会人志向が強い選手のようなので、まずはしっかりした身体を作ってからプロを目指すべきではないのだろうか。素材としては魅力ある左腕だけに、2年後に期待してみたい。基礎ができれば、一気に上位候補に踊り出ても不思議はない。


(2016年 大学選手権)