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鶴田 圭祐(帝京大4年・準硬式)投手 180/84 左/左 (藤井学園寒川出身) |
「力の抜き加減を掴んだのでは?」 硬式球よりもマイナス5キロ程度遅くなると言われる準硬式野球の世界で、MAX149キロを叩き出す左腕がいると昨秋から話題になっていた。しかし相当荒れ荒れの素材であり、話を訊く限りただただ速いだけの投手という評判も多く耳にしていた。しかし私が観戦したリーグ戦終了後の東洋大との入れ替え戦。その前々回の登板が2安打・前回の登板が1安打・私が観戦した試合も2安打で完投している。明らかにリーグ終盤から、何かを掴んだのではないかと思わせる結果が続いていた。 (ここに注目!) 準硬式でも、掛け値なしにコンスタントに140キロ台~力を入れると後半を投げ込んでくるスピード能力に注目して頂きたい。 (投球内容) 少しゴツゴツした、スリークォータで投げ込んできます。フォームや体型は違いますが、巨人の 山口哲也 を彷彿とさせる左腕です。 ストレート 常時140キロ~MAX92マイル・148キロ ☆☆☆★ 3.5 この日の鶴田は、何かコントロールに気をつけて丁寧に投げている感じがしました。少なくてもボールが制御でき、四死球を連発という荒れ荒れの内容ではありません。確かに細かいコントロールはなく身体も突っ込むことも結構あるので、見ていて微妙なところで投げている感じはしましたが。 準硬式のボールの特徴なのか? 彼の球質なのかわかりませんが、重そうな球を投げる投手でした。少なくてもボールが手元でグ~ンと伸びるとか、ピュッとキレるような空振りを誘う球質ではありません。アバウトながら、両サイドにもボールが散っていました。普段は140キロ前半ぐらいですが、勝負どころでは力を入れて145キロ以上の球を投げ込んできます。 変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 それほど曲がりが大きいとか切れ味が鋭いわけではないですが、速球以上に制御できる横滑りするスライダーでカウントを整えることができます。この球でいつでもカウントが稼げるために、大胆に速球を使うことができるのでしょう。 また最近になってチェンジアップを投げ出したようで、この球が思いのほか良くて上のレベルでも使えそう。更に精度を高めれば、充分武器になるのではないのでしょうか。スライダーでカウント、チェンジアップが決め球という投球の形は作れています。 その他 牽制は、本当に軽く一息つくためのもの。フィールディングは平均的で、クィックは1.25秒前後と左投手としては平均的でしょうか。右投手に比べると、左投手は全体的にクィックが0.1秒ぐらい遅い投手が多いです。 (投球のまとめ) まだ本当のコントロールがないので、じっくり観られたり、粘られたりした時に、自分の投球が保てるのか疑問は残ります。しかし硬式よりも5キロは遅くなると言われる準硬式で、左腕からこれだけのボールを投げられる資質は相当なもの。思ったほど滅茶苦茶でもなかったので、秋のドラフト会議では指名されるのではないのでしょうか。 即戦力としては期待できませんが、プロの指導・環境に対しどのような化学反応が起こすのか観てみたい。そう思わせるだけの素材であることは、間違いないといえます。 (投球フォーム) 今度は技術的に、上のレベルで通用するものがあるのか観てみましょう。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足はそれほど低い位置で伸ばされているわけではないものの、かなり二塁側に送っているせいかお尻は三塁側(左投手の場合)には落ちていない。したがって身体を捻り出すスペースは充分ではなく、カーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない。 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間も並。そのため変化球の曲がり幅やキレに特徴がでずらく、武器になる変化球の修得には苦労するかもしれない。しかしチェンジアップに威力があったので、この球をまずは磨くことに期待したい。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えている。そのためボールを浮き上がるのを抑えることができており、高めに抜けたりはしてきません。「球持ち」は並なのと、指先の感覚に優れたタイプではありませんでしたが、言われているほど見た試合ではノーコンではありません。そういった意味では、力みなく投げるコツみたいなものを掴んだ可能性があります。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種は投げません。したがって肘への負担も少なく、悲観することはなさそう。 腕の送り出しにも無理がなく、肩への負担も問題なさそう。それほど力投派という感じのフォームではなかったのですが、しいて言えばちょっと腕が遠回りまわってブンと振るので、肩で投げているのが気になるぐらいか。この辺が、制球にも影響している可能性はあります。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが平凡なので、打者としてそれほど苦になるフォームではないはず。それでも身体の「開き」は抑えられているので、コントロールを間違わなければ痛手は食らい難いはず。 問題は、腕が身体に絡みつくような粘っこさがないところ。この辺は、球持ちやしなり腕の長さにも要因があるが、棒球になりかねない要素となる。またボールへの体重の乗せも不十分なため、手元まで生きた球が行かない。こうなるとプロの打者ならば、簡単に合わして来る危険性がある。 (フォームのまとめ) 投球の4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点みると、物足りないのは「体重移動」の部分。これは、ボールの質に大きく影響を及ぼす要素。より実戦的な球を投げるためにも、この部分の改善が望まれる。 それ以上に大きかったのは、思ったほど制球を司る動作がよく、故障のリスクが高くなかったということ。これは、この選手がこれから鍛える上では大きな材料となるはず。 (最後に) 確かにサンプルが少なく未知数な部分が多いこと、更に素材型の域を脱していないことは否めない。しかし私が当初想像していたのに比べれば許容範囲内であり、素材としての魅力を考えれば指名リストに名前を残してみたい。実際このランクに位置する左腕は今年多いのだが、その中ではこの選手はイチオシしたい選手だった。 ドラフト本会議での中で指名されても不思議ではないし、悪くても育成会議では指名されるのではないのだろうか。本人もプロ志向が強いというので、期待して秋のドラフト会議を待ちたいところ。けして単なる、噂先行の選手ではなかった。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2016年 春季入れ替え戦) |