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竹内 諒(早稲田大4年)投手の個別寸評へ








 竹内 諒(松阪 3年)投手 180/81 左/左





                       「良い時は知らないけれど」





 長い手足をムチのように使い、140キロ台のストレートを投げ込んで来ると評判だった 竹内 諒 。春先から多くのスカウトが、この男の投球に注目した。しかし夏の大会では、その球速は135キロ前後ぐらいがやっとで、本当にこの投手は、140キロ台を連発する能力があるのかと初めて見たものは思ってしまう。私も彼の良い状態を知らないが、彼の今後の可能性について考察してみたい。


(投球内容)

 左のスリークオーターで、長い腕を外からブンと振って投げ込んできます。むしろ私には、勢いで抑える投手というよりは、打ち難さで勝負するタイプなのかなという技巧派のイメージが先行する。

ストレート 常時130~MAX136キロぐらい

 ストレートも格段切れるとか、手元でグーンを伸びるとか、球速以上のプラスαがあるわけではない。その辺は、三重予選の段階でも47イニングを投げて、奪三振は26と極めて少ないことからも、この夏は本調子からは程遠かったかもしれない。むしろコースにキッチリコントロールしてくる、制球力を買いたい。こちらは、47イニングで14四死球だから、イニングの1/4以下とかなりの精度だ。

変化球 カーブ・スライダー

 変化球は、カーブ・スライダー。それほどこの球もカウントを稼いだり、目先を狂わす球であって、相手を仕留める球とは違う。左腕の割に、シュート系の球も使わない。ただその変わり、右打者外角一杯のストレートの精度は高い。

その他

 牽制も、左腕の割りには平均的。クィックも1.15~1.20秒ぐらいと基準レベル。フィールディングは、あまり上手くない。そういった意味では、投球以外の部分は中の下~中ぐらいと、さほど野球センスは感じられない。

(投球のまとめ)

 両コーナーにボールを散らすコントロールはあり、四死球で自滅するタイプではない。ただこれといったボールがなく、現状は相手の打ち損じを誘うのが、この投手のピッチングスタイルなのだろう。

 逆にこのコントロールのまま、140キロ台の球を連発できるようならば、高校生としては厄介な投手になり得るのも頷ける。フォームも打ちにくそうなので、これからは技巧派として、何処まで追求できるのか注目したい。

ただ技巧派というほど、ピッチングに駆け引きや「間」などの、マウンド捌きにセンスは感じられないのだが・・・。





(投球フォーム)

では、今度は投球フォームの観点から、今後の可能性を模索してみたい。

<広がる可能性> 
☆☆

 地面に向けて足を伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合)に落とせません。こうなると見分けの難しいカーブや縦に鋭く落ちるフォークのような球種には適しません。それでもカーブを多投するのは、右バッターだと身体の陰に隠れて、腕の緩みが見極め難いからだと思います。あまり左打者に対しては、カーブは有効ではないのでしょうか。

 また「着地」までの粘りが全くないので、打者としては合わせやすいフォームです。それでも肩の可動域が非常に柔らかいので、身体の「開き」自体は非常に遅い特殊な構造にあります。これで、打ちやすさを上手く消しています。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブ最後まで内に抱えられており、実際両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押しつけも深く、ボールも高めには上吊りません。ただ腕を外からブンと振り「球持ち」や指先の感覚はあまり良くないので、大まかに投げ分けられますが、微妙な制球力があるといったタイプではありません。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻が落せず身体を捻り出すスペースを確保出来ていないのに、カーブなどを多投するのは多少気になるところです。それですが、肩の可動域が柔らかく、特殊な柔らかさが負担を軽減しているようにも思います。

 振り下ろす腕の角度には無理はなく力投派ではないので、肩の消耗は激しいタイプではないのでしょう。ただ春伝え聞いた内容とは程遠かったことを考えると、何処かの痛みを誤魔化し誤魔化し投げていたのかもしれません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りがないアッサリしたフォームを、肩の柔らかさで「開き」を抑えるという特殊な構造で、打ちやすさを抑えています。

 長い腕は、適度に身体に絡むので、速球と変化球の見分けは困難。彼のムチのような腕の振りこそ、彼の最大の特徴です。ただボールに体重は乗せられていないので、打者の手元まで、活きた球は行きません。こういったタイプだけに、いかに球質を向上させるのかが求められます。

(フォームのまとめ)

 「開き」こそ抑えられていますが、「着地」「球持ち」「体重移動」と課題を残し、技巧派にしては実戦的なフォームとしては課題が多く残ります。速球派にしては、ボールの質・躍動感がないのも気になります。一体どういった方向を今後目指すのか、自分の中で整理して今後の取り組みにつなげて行ってもらいたいものです。


(最後に)

 例え140キロ台の球を連発したとしても、上のレベルでは苦労するタイプだろうなと思います。というのは、技術的に、中途半端な部分が目立つからです。

 面白い素材ではありますが、課題が多くこれを改善してゆくのは至難の業。よほど志しを高くもって取り組んで行かないと、そのまま大学で埋もれてしまうかもしれません。自分の進むべき方向を見定めて、そこに邁進する貪欲さを求めたいです。それができるようならば、大学でも頭角を現し、4年後は大いに期待出来るのではないのでしょうか。まずは、ワンクッション置いてからプロを目指してください。


(2012年 夏)