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瀧中 瞭太(25歳・HONDA鈴鹿)投手 180/90 右/右 (高島-龍谷大出身) | |
昨年の都市対抗では、予選はいまいちでした。しかし本戦では、2回2/3 を投げて6奪三振のパーフェクトリリーフを魅せてくれました。しかしハマっただけという見方も強かったのか? 結局解禁となった社会人2年目も、大学時代に引き続き指名されることはありませんでした。 (投球内容) しかし今年の東海予選では、33イニングを投げて、被安打20・四死球10個・自責点2(防御率0.55)と、文句なしの成績で都市対抗出場を決めます。そして都市対抗緒戦の鷺宮製作所戦では、先発のマウンドを託されます。 ストレート 常時140キロ前後~中盤 ☆☆☆★ 3.5 以前なら140キロ台後半のボールをコンスタントに投げ込んで、ガンガン押してくるのが持ち味でした。しかし今は140キロ前後ぐらいと球速は平凡になりましたが、両コーナーに散らす確かなコントロールを身につけています。力を入れれば140キロ台中盤を出せるのは今回も確認できましたが、右打者のインハイを厳しく突くコントロールの方が印象的でした。特に元々剛球タイプなので、ボール自体にも力があるのは良いところ。 変化球 カットボール・ツーシーム・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5 左打者のインハイには、カットボールを使って詰まらせます。その他にも、ツーシーム的な小さく逃げる球。チェンジアップやフォークのような沈む球に、緩いカーブなども結構織り交ぜてきます。的が絞り難くなっただけでなく、そういったボールをしっかりコントロールできている点は素晴らしいです。空振りを誘えるような変化球には欠けるのですが、微妙に芯をずらしたりタイミングを狂わすことには長けています。速球だけでなく、変化球のレベルも高いのが特徴でしょうか。 その他 クィックは1.05~1.15秒とまずまず素早く、牽制も適度に鋭いものを織り交ぜてくる。少々フィールディングに不安は残るが、許容範囲だと捉えたい。 (投球のまとめ) 昨年あたりから、コースを突いて丹念に投げるような投球にシフトしつつありました。しかし今年は、その投球を自分のものにした感じがします。以前よりも派手さは薄れましたが、今ならプロのローテーションに混ぜても、ある程度試合を作れるのではないかという気がします。元々ポテンシャルのある選手なので、投球には余力みたいなものも感じられます。いい感じに、角が取れてきたのではないかと評価します。 (成績から考える) 投球フォームは、昨年とさほど変わっていなかったので、予選で残した成績から考えてみたい。ちなみに上記でも触れたが、東海予選の成績は 4試合 33回 20安 10四死 21奪 防 0.55 1,被安打は投球回数の80%以下 ◎ 昨年の予選では、投球回数を被安打が上回っていた。しかし今年は、被安打率は60.6%であり、基準を大きく上回る内容でクリアできている。多彩な球種で的を絞らせないだけでなく、投げミスの少ないコントロールも大きいのではないのだろうか。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯ 四死球率は、30.3%で基準を満たしている。ただしこのぐらいだと、厳しいところや微妙なところに投げているイメージに比べると、ややアバウトな結果にはなっている。それでも昨年の予選では51.8%であったことを考えると、大幅にコントロールも改善していることがわかる。 3、奪三振は1イニングあたり 0.8個以上 ✕ 1イニングあたりの奪三振は、0.64個と並の数字に。完全に打たせて取る、詰まらせる投球にシフトしていることが伺われる。すでに昨年の予選でも0.73個とかなり打たせてとる傾向は見られたのだが、本戦でのリリーフでは 2回2/3イニングで6三振を奪う快投を魅せていた。しかし彼の場合も、先発ではなくリミッターを外せば、まだまだそういった投球ができる力は残っていそうだ。 4、防御率は1点台 ◎ 予選での防御率は0.55で、自責点は僅か2点。昨年は2.79と平凡だったことを考えると、この辺も大いに安定感が磨かれたことがわかる。 (成績からわかること) 実際の投球の印象どおり、被安打・四死球を格段に減らし、抜群の安定感を身につけたことは成績からも伺われる。そのぶん力でねじ伏せにゆかなくなったことで、奪三振の比率は下がっていた。しかしリリーフで力一杯投げれば、昨年の都市対抗同様にそういった投球はまだまだ可能だろうという片鱗は、今回の投球からでも伺うことはできた。数字的には、プロでも即戦力を期待できるぐらいの裏付けはとれつつある。 (最後に) 社会人3年目を迎え、けして球威・球速を増すことで評価を高めたわけではない。そういった意味では、高い評価をプロ側から得ることはないのではないのだろうか。その一方でずっと見てきた担当スカウト達からは、今ならば信頼にたる投手として、中位~下位ならば面白いのではないかと評価しているスカウトもいるのではないかと思う。よほど社会人で何かまだやりたいことがあるという将来像を描いているわけではなければ、プロ志望を全面に出して順位にこだわらない姿勢を示しても良いのではないのだろうか。個人的には、今ならばプロの先発でもローテーションに入るぐらいにはなっているのではないかと評価する。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2019年 都市対抗) |
瀧中 瞭太(24歳・HONDA鈴鹿)投手 180/90 右/右 (高島-龍谷大出身) |
「ハマっただけなのか?」 龍谷大時代は、関西屈指の剛球投手といった感じで、志望届けを提出していたら指名されたのではないかというぐらいの投手でした。社会人1年目ぐらいまでは150キロ台のボールもバシバシ投げ込んでいたのだが、今は力みなく丁寧に投げ込むスタイルに変わりつつある。確かに勝負どころでは力を入れて148キロまで記録していたが、球速の大半は140キロ台前半に留まった。 (投球内容) マウンドでは大きく魅せる投手だが、上背は180センチほど。それも本格派というよりは、身体を前にサイドハンドのように屈めて来る感じのスリークォーターとなっている。 ストレート 常時140キロ台~MAX148キロ ☆☆☆★ 3.5 大学時代は、ボールが見え始めてから一瞬でズドーンとミットに収まる重いボールを投げ込む投手でした。しかし今は、コースへのコントロールを重視して普段は140キロ強ぐらいとそれほど速球に見栄えがしなくなりました。特にこの投手の球はキレイな回転のボールではなく、球威で打ち損じを誘い詰まらせるタイプ。勝負どころで投げ込むときの、145キロを越えて来ないとあまり速さは感じられません。しかし追い込んでからは、コース一杯にズバッと好い球を決め思わず天を仰ぎます。都市対抗では、わずか2回2/3イニング(8人の打者)の間に6奪三振と圧巻のパフォーマンスを魅せました。しかしこれは、ちょっと出来過ぎの感があります。というのは、東海予選では19回1/3イニングで、14奪三振とそこまで三振を奪う投球ではなかったからです。 変化球 カットボール・スライダー・カーブ・シンカーなど ☆☆☆★ 3.5 腕の振りが好いので、速球と変化球の見極めがつき難いところが好いところ。以前は曲がりの大きなスライダーを投げることが多かったのですが、今は小さくズレるカットボールが非常に有効。ときに緩いカーブを交えたり、縦に沈むシンカーなども織り交ぜてきます。しかし投球の多くは、カットボールが主体だということ。このカットボールが、結構甘いところに入ってきます。それでも速球だと思って振った選手が、どうしてもタイミングが合わず空振りをするケースが目立ちます。しかし三振の多くは変化球で奪うというよりは、速球をズバッと好いところに決めて見逃しの三振を奪います。 その他 都市対抗ではパーフェクトリリーフで、走者を出さなかったのでわかりませんでした。そこでこの部分は、学生時代のものを引用させていただきます。牽制はあまり上手いとは言えず、クィックは1.1秒前後とそれなり。ベースカバーに入るのには遅れず、フィールディングは平均レベルでした。 (投球のまとめ) 予選の数字をみると、19回1/3イニングで20安打と投球回数を被安打が上回っています。また四死球も10個と四死球率は50%以上であり、コントロールが良くなっているとは言えません。上記に記したように三振もそれほどではなく、むしろ都市対抗の投球がハマったという可能性も捨てきれません。 ただし大学時代よりも、力でねじ伏せようといった投球ではなくなりつつあります。要所で、力を入れてメリハリをつけられるようになりました。あまり都市対抗の神ピッチングを鵜呑みにすると危険ですが、リリーフで短いイニングにエネルギーをぶつけたら150キロ前後のボールを連発できる能力は充分秘めていると思います。 (投球フォーム) 都市対抗の投球だけだと不安なので、現状のフォームを分析して本質を探りたいと思います。ランナーがいなくても、セットポジションから投げ込んできます。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 サイドハンドのように前に身体を倒して投げるフォームなので、お尻はバッテリーライン上の残ってしまいます。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に大きく沈む球種は適しません。 しかし「着地」までの粘りは作ることができ、身体を捻り出す時間は確保。カーブやフォークといった球種以外ならば、ピッチングの幅を広げて行ける可能性はあります。大学時代からの一番の成長は、この「イチ・ニ~のサン」の「ニ~」の粘りをしっかり作ることができるようになった点です。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで身体の近くに抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。しかし足の甲での地面への押しつけは浮いてしまっており、力を入れて投げるとボールが上吊ってしまいがち。この選手の球は、力を入れて投げた時よりも少し力を落として投げたときの方なのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻を落とせない割に、負担のかかるカーブを時々使ってきます。しかし球数としては1試合に10球程度でしょうから、それほど悲観するほどでもないかと。 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少なめ。以前よりも脱力して投げ込むので、疲労も溜め難くなっているのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは作れるようになったので、以前よりも合わせづらくはなっているはず。身体の「開き」自体は並ぐらいので、変化球を見極められやすい可能性はあります。しかしその辺を、腕の振りの良さとカットボールという極めて見極めが難しい球種を磨くことで投球に活かせています。 腕の振りが素晴らしいのが彼の持ち味であり、以前よりも下半身の体重移動が良くなっていることで、無理に速い球を投げなくても空振りが誘えるような球質の向上しているのかもしれません。そのへんが、投球に余裕を生んでいる要因なのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大要素である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に「着地」「球持ち」「体重移動」の各動作に粘りが出てきたことで実戦的なフォームになってきました。 お尻を落とせないことでの肘への負担や、足の甲の押し付けができないことで上吊りやすいなどの課題は残しますが、それほど悲観するほどではなさそうです。特にカットボールを磨くことで、投球に余裕が生まれたことは大きいと考えられます。 (最後に) ちょっと都市対抗での登板は、ハマった感が強いです。しかしリリーフならば、ああいったパフォーマンスを期待できるポテンシャルは元々持っている選手ですし、もっと技術と身体のバランスが整ってくればプロでも再び150キロ前後を連発しつつ実戦的な投球も期待できるのでは? ドラフトでも中位(3~5位)ぐらいならば、充分指名があって不思議ではなさそうです。特に馬力のあるタフなリリーフを欲している球団には、面白い人材ではないのでしょうか。 蔵の印象:☆☆ (中位指名級) (2018年 都市対抗) |
瀧中 瞭太(龍谷大4年)投手 180/85 右/右 (高島出身) |
「馬力は関西屈指」 滋賀の高島高校時代から、スカウトから注目されてきた素材です。高校時代は、ちょっと粗くまだプロには時期尚早だと評価していました。龍谷大に進んでからも、その粗さはあまり変わっていませんが、MAX150キロまで到達し、その球威・球速は関西学生球界でも屈指のものがあるといえます。そして私が観戦した大院大戦では、リーグ新記録となる7者連続奪三振を記録し、俄然注目を浴びる存在になってきています。 (投球内容) 体をサイドハンドやアンダースローのように、前に倒すように折って投げるスリークオーター。高校時代は、しっかり一塁側に落としたフォームだったと記憶しているので、随分とその辺は変わっているのに驚きます。 ストレート 常時140~MAX92マイル(147.2キロ) ☆☆☆☆★ 4.5 この選手の特徴として、ボールが見え始めてからミットに収まるのが一瞬だということ。「開き」自体は早いと思うのですが、そこからズドーンとミットに突き刺さってきます。ストレートの厚み・勢いという意味では、関西ではNO.1の投手で迫力満点のボールを、投げ込んできます。 結構投げやりな投げ方なのですが、この春は大院戦では9回を投げて1四死球、大商大戦でも9回投げて2四死球と、余計な四死球は出さないことに驚きます。ボール一つ一つを見ていても、細かいコントロールこそなくても両サイドに投げ分けるだけのものは持っているということ。球筋は真ん中~高めの高さに集まることが多いので、低めにビシッとくるタイプではありません。 変化球 スライダー・カットボール・シンカー・カーブなど ☆☆☆ 3.0 曲がりが大きなスライダー、小さく変化するカットボール、それに沈むシンカーに、時には緩いカーブなども使ってきます。それほど三振を奪うほどの球はないように思うのですが、大院大戦では15奪三振を奪うなどコンビネーションが冴えました。 その他 牽制はあまり上手いとは言えず、クィックは1.1秒前後とそれなり。ベースカバーに入るのは遅れず、フィールディングは平均レベルでしょうか。 細かい出し入れができるようなコントロールはなく、淡々と投げる込むタイプで投球のメリハリはそれほどでも。そういった投球センスは、あまり期待できません。あくまでも、馬力で圧倒するタイプの投手だと言えるでしょう。 (投球のまとめ) 現状プロを想定すると、細かいことができるわけではないので、球威・球速で圧倒できるリリーフなのではないのでしょうかプロの打者でも、短いイニングならば、結構手こずるぐらいのボールは投げています。 性格的にも、あまりあてにできなそうには見えるものの、上手く導いてあげれば、短期間なら爆発的な活躍をするかもしれない。タフなリリーバーとして考えるならば、指名もありの選手ではないのでしょうか。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点からプロでの可能性を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばしおり、お尻は一塁側に落とせません。したがって体を捻りだして投げる、カーブやフォークといった球種には適しません。 「着地」までの粘りも充分とは言えず、粘りがなく淡白に感じられます。そのため将来的にもキレのある球や曲がりの大きな空振りを誘えるような変化球を修得できるのかは疑問。速球に近い小さな変化で、バットの芯をズラすような投球が持ち味になりそう。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブの抱えは、最後後ろに解けてしまっているものの、両サイドの投げ分けは悪くありません。足の甲の地面への押し付けも短く見え、充分に浮き上がろうする力をおさえ込めているかは疑問が。「球持ち」も良いようには見えませんが、細かいコントロールはないものの、四球連発という危なっかしさはなくなりました。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻は落とせませんが、それほどカーブも使いませんし、フォークのような球も多くは投げていません。ただしシンカー系に見えるボールがフォークだったとしたら、少し事情が変わってきますが。 腕が下がったスリークオーター気味なフォームのため、送り出しに無理はないでしょう。そういった意味では、肩への負担は少ないはず。現状は、それほど肩・肘への負担はなさそうで、タフな活躍が期待できます。 <実戦的な術> ☆☆ 2.0 「着地」までの粘りに欠けるので、打者としては合わせやすいはず。体の「開き」も少し早めなので、コースを突いた球を狙い打たれてもおかしくはないでしょう。その辺は、並外れた球威・球速があるので誤魔化せますが、プロレベルの打者をも誤魔化せるかと言われれば微妙です。 腕は強く振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールへの体重の乗せは、前の足がブロックしてしまい上半身で投げているイメージが強い。そういった意味では、打者の手元まで生きた球が行っているというよりも、勢いがあるので誤魔化せているといった方が的をえているのかもしれません。プロレベルの打者ならば、ついてこられる危険性もあります。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、いずれに部分にも課題を残し実戦的とは言えません。コントロールを司る動作も良いとは言えないわりには制球は悪くなく、故障のリスクは現時点では高くはなさそう。 勢いで押せる状態・相手レベルの時は良いですが、プロの一軍打者に通用するだけのものがあるのかは微妙だと言わざるえません。 (最後に) かなり粗っぽい馬力型という感じで、現状はリリーフならば通用するかもといった感じでしょうか。イメージ的には、龍谷大の先輩でもある 齊藤 信介(元中日)を思い出します。力量的にも近いものがあり、彼のように社会人経由かもしれません。かなりリスキーな素材でもあるので、指名リストには入れますが強く推せるというほどではありませんでした。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2016年 春季リーグ戦) |
瀧中 瞭太(高島)投手 180/80 右/右 |
「昨年観たことすら忘れていた」 MAX145キロのストレートで、関西のドラフト候補としてスカウト達からも注目されていた 瀧中 瞭太。結局確認できまま終わってしまったのだが、実はこの選手、昨年の滋賀大会の模様を観たことがあったのだ。全くそんなことを忘れていたが、今回はその時の試合の内容と今年の動画を加えながら、レポートを作成したいと思う。もちろん今回も、実際に今年確認できた投手ではないので、具体的な評価づけは行わない。 (投球内容) 重心を沈ませるときに、一塁側に倒れ込むようなフォームで投げ込んできます。一昔前までは、こういったフォームの投手が多かったのですが、最近はこうした投手は減ってきました。 ストレート 常時135キロぐらいでは? 昨夏の試合では、常時125~130キロ強ぐらいの球速でした。ただその球速表示以上には、感じさせるボールを投げていたのは確かです。今年の動画で観た投球では、135キロでしょうかね?確かに、昨年よりはストレートの球威・球速は増している印象は受けました。もし140キロ台をコンスタントに投げていたとするならば、この一年間で10キロぐらい球速を伸ばしたことになります。 ただそれほど細かいコントロールがないのと、ボールが球威型で打者を詰まらせる球質。そのため、空振りを誘える球ではないように思います。 変化球 カーブ・スライダーなど 昨年は、腕の振りが明らかに緩くなるものの、100キロ前後のカーブで緩急をつけたり、カウントを稼いだりしていました。しかし敗れた今年の試合の模様を見る限り、変化球はスライダーのみだったように思います。実際にこの夏の長浜農業戦では、全107球中カーブを1球投げただけだったそうです。 敗れた試合では、小さく横滑りするスライダーが高めに甘く入り痛打される場面が観られました。実際に彼の投球を見ていると、ストレートを打たれるケースよりも、甘く高めに浮いた変化球を狙い撃ちされるケースが目立ちます。カーブを1球しか投げなかったというのは聞こえはいいのですが、変化球のキレ・精度に信頼を寄せられない裏付けでもあったように思えます。 その他 牽制に関しては、平均的でしょうか。クィックは、かなり素早く基準以内で投げ込んできます。ただ制球力・マウンド捌き・間のとり方などに特別なものは感じず、淡々とボールを投げ込んでいるだけといった印象は受けます。打ち込まれている時も、相手の勢いをかわそうと意識は感じられず、相手の波に飲み込まれてしまっているように見えました。 (投球のまとめ) 例え140キロ台の球威・球速を連発できるようになっていたとしても、素材型の域は脱していないように思います。制球力・マウンド捌き・変化球などなど、これから学ばなければ行けないことは、山ほどありそうです。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から、彼の可能性について考えてみたいと思います。 <広がる可能性> 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、緩急を効かせるカーブを投げたり、フォークのような縦の変化球には適しておりません。昨年多投していたカーブも、体を捻り出すスペースが確保できていないので、投げようとすると腕が緩んで相手に読まれてしまいます。 ただ「着地」に関しては、前にステップできており、けして粘りがないようには見えません。そういった意味では、小さな変化でも球速のある変化球中心に、投球の幅を広げてゆくことが期待されます。 <ボールの支配> グラブを最後まで内に抱えきれていないので、どうしても両サイドの投げ分けがアバウトになりがちです。足の甲の押し付けは悪くないので、ボールは高めには抜けません。「球持ち」もけして悪くはないので、グラブを収められるようになれば、もう少し安定して来るように思います。ただストライクゾーンにボールを集められないような、荒れ荒れな制球ではありません。問題は、ストライクゾーンの枠の中での制球力。特に、変化球のコントロールに課題を残します。 <故障のリスク> お尻は落とせませんが、現状あまりカーブを無理に多投したり縦の変化を投げないことで、肘への負担は少なくなったものと思われます。振り下ろす腕の角度も、スリークオーターであり、肩への大きな負担は感じません。体に馬力はありそうなので、タフな活躍は期待できそうです。 <実戦的な術> 気になるのは「着地」までの粘りは悪いと思いませんが、体の「開き」が早くボールが見やすい傾向にあります。いち早く球筋が読まれてしまうので、コースを突いた球でも踏み込まれて打たれてしまうケースが多くなります。こうなると、せっかく球威・球速が増しても、その効果は半減してしまいます。 ただ腕は体に絡むように、上体は振れています。問題は、ボールに体重を乗せられていないので、打者の手元まで生きた球が行きません。打者の空振りを誘えない一つの要因に、体重移動の不十分さがあげられます。 (投球フォームのまとめ) 「着地」「球持ち」は悪くありませんが、「開き」「体重移動」に課題を残します。この部分を改善して行かないと球速を増しても効果が薄いですし、球速表示に見合うだけの生きた球が行かない可能性が高まります。 実際の投球だけでなく、フォームの観点からも、まだまだ発展途上の投手であることが伺えます。 (最後に) 最後の夏の大会でも、複数の球団がマークしていたと訊いています。しかし動画を見る限りは、まだまだ課題を十分に改善できたとは思えません。確かにこの一年で、球威・球速は格段に増したのでしょう。しかしその球を生かす術は、まだまだ未熟です。実際試合を観たわけではないので、具体的な評価はできません。しかし、高校からプロへは、時期尚早なのではないか、そんな印象を持ちました。実際、ドラフト会議でどのような評価を受けるのか?注目して見守りたいと思います。 (2012年 夏) |