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生田目 翼(日ハム)投手のルーキー回顧へ







生田目 翼(23歳・日本通運)投手 176/84 右/右 (水戸工-流通経済大出身) 
 




「上位指名は揺らがない」 





 都市対抗予選では、17イニングを投げて無失点で本戦出場に大きく貢献。しかしHONDA熊本との試合にはエースとしてマウンドに上がるも、ピッチャー強襲の打球を足に当てたのも影響して、2回1/3イニングで 5安打・2失点で降板した。社会人最大の大会での登板は、わずかこれだけに留まった。しかし春先から順調に存在感をアピールしてきただけに、この投球で評価が下がるといったことはないだろう。


(投球内容)

 ノーワインドアップから、投げ込んできます。何よりこの選手の良さは、投げっぷりの良さがあります。しかしそれでいて、クレバーな一面も併せ持っています。

ストレート 常時145キロ前後~MAX148キロ 
☆☆☆★ 3.5

 先発だと、常時145キロ前後でキレのあるボールを投げ込みます。春のスポニチ大会で魅せたように、リリーフでは151キロのスピードで押すこともできます。両サイドに投げ分けるコントロールがあり、予選の17イニングでは四死球は5個と投球回数の1/3以下と基準を満たします。

 気になるのは、コースを突いた球が簡単にはじき返されてしまうことがあること。その理由として考えられるのは、ボールの球質がキレ型で球威に欠ける点。もう一つは、「開き」が少し早くいち早く打者から球筋が読まれてしまっているから。そのため好いところに投げても、意外に苦になく合わされてしまうわけです。150キロ前後ぐらい投げないと、プロの打者ならストレートで仕留めるのは厳しいのではないのでしょうか。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく横滑りするスライダーが、この選手の最大の武器。この球をコースに集めることができるが、打者を仕留めれるような絶対的なキレも、ボールゾーンに投げて空振りをさせようという活かし方がうまいわけでもない。単調にならないように、結構頻繁に緩いカーブを使い緩急を。さらにチェンジアップやフォーク系の球もあるが、それほど大きな役割は発揮できていない。そのため左打者にも、結構スライダーを使って投球を組み立ててくる。

その他

 牽制もまずまず鋭く、パッと間合いを外すために軽く入れて来ることもある。クィックも1.05秒前後と素早く、フィールディングは非常に上手い。野球センスがあるというよりも、運動神経に優れているのだろう。それでもランナーを背負えば、ボールをじっくり持って相手を焦らすなど、そういったところまで意識がゆくまでにはなっている。

(投球のまとめ)

 中背の体格の投手でもあり、球筋が平面的なため相手がなかなか打ち損じをしてくれない。また先に書いたようにキレ型で球威に欠けたり、少々合わされやすいフォームでもあり、球速の割には打者が苦にならないのは気になる部分。本人も投球に奥行きがないのがわかっているのだろうが、緩いカーブを使ってアクセントにしたり、ボールを長く持って「間」を重視したりと、投球に工夫の跡は感じられる。

 しかし春のスポニチ大会で見た時と、それほど大きな違いは感じられない。あの時は肘痛だかで病み上がりだったと記憶するが、その時と比べてもパフォーマンスは大きくは変わってはいなかった。そういった意味では、斎藤 友貴哉(HONDA)あたりに比べると、ワンランク劣る印象は受けてしまう。それでも即戦力を期待できる存在ではあるので、ドラフトでは2位前後ぐらいでは消えるのではないのだろうか。


(成績から考える)

 フォーム分析をしてみたが、春先と全く変わっていなかったので、そちらは春の寸評を参考にして頂きたい。今回は、都市対抗予選と本戦での成績から、この選手の傾向を考えてみたい。ちなみに、その成績とは

3試 19回1/3 11安 6四死 9奪 自責点2 防 2.76

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、57.0%「であり、充分基準を満たしている。逆に都市対抗本戦で打ち込まれてもこの数字なのだから、予選では圧倒的な安定感だったということなのだろう。

2,四死球は、投球回数の1/3以下 ○

 四死球率も31.1%であり、投球回数の1/3以下(33.3%以下)を満たしている。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ✕

 意外なぐらいなのだが、1イニングあたりの奪三振数は0.47個と極めて少ない。この辺からも、ストレートは意外に合わされやすく、決め球となる変化球がないことが伺われる。

4,防御率は1点台 △
 
 予選では自責点はなかったが、本戦でのわずかな登板での失点が響いて平凡な数字に。あまり防御率に関しては、参考にしなくても好いかと。

(成績からわかること)

 サンプルとしては僅かなものなので絶対視できないが、被安打の少なさは特筆もので、コントロールもそれなりのものがあることがわかる。気になるのは、これだけのボールを持っていながら極めて奪三振が少ないこと。このへんが、プロの世界でどのような形で出てくるだろうか?


(最後に)

 常識的にみると、2位指名で即戦力が欲しい球団が指名して来るのではないかとみている。特に今年も高校生野手を狙う球団が多いので、そこで高校生を獲得できた球団が2位では計算できる即戦力投手に走るのではないのだろうか。しかし昨年、鍬原 拓也(中央大-巨人)投手が1位で消えたことを考えると、それ以上の力量がありそうな生田目が状況次第ではハズレ1位で指名して来る球団が出てくるかもしれない。そればかりは各球団の入れ込み具合で左右されるのだが、2位前後というのが妥当な評価ではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2018年 都市対抗)









生田目 翼(23歳・日本通運)投手 176/84 右/右 (水戸工-流通経済大出身) 





「怪我から順調に回復」 





 流通経済大時代は、中背の体格から150キロを超えるストレートを投げ込み注目された。しかし3年秋・4年春と肩・肘の故障のため思いどうりの投球ができず。さらに順位縛りなどもあり、指名されることなく社会人に進むことになる。日本通運に進んでから、順調に復調。秋には、社会人日本代表の一員としても選抜。そして一冬越えたスポニチ大会では、3月の寒い時期にも関わらず最速94マイル(151キロ)を記録するまでに回復していた。


(投球内容)

 中背の体格から、投げるたびに「おりゃ」の声が聞こえてくる力投派。上背がないうえに上から叩けないフォームなので、ボールが平面的に見えてしまう欠点がある。

ストレート 常時145キロ前後~MAX151キロ 
☆☆☆★ 3.5

 上記にも書いたように、ボールに角度がないのと体格の無さからか? 140キロ台後半ぐらい出ていないと、ボール自体に凄みが感じられない。特に代わりっぱなはボールの走り・コントロールにもバラツキが顕著なので、打ち込まれてしまうケースが多い。それでも打者の内角を厳しく突いたり、指にかかり出した時の150キロ前後のボール素直に凄いと思う。ただし打者としては、よほどボールが走っていない限りは合わせやすいタイプの投手だと言えよう。

変化球 スライダー・カーブ・カットボール・チェンジアップ・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 横滑りするスライダーとのコンビネーションが基本で、その他に小さくズレるカットボールや緩いカーブ、それに縦の変化も織り交ぜては来る。球種自体は多彩なものの、それを生かして的を絞らせないという奥行きのある投球をするわけではない。絶対的なボールはないのだが、追い込んでからはボール球を投げて空振りを誘う技術は持っている。

その他

 牽制もまずまず鋭く、パッと間合いを取るために軽く入れて来ることもある。クィックも1.05秒前後と素早く、フィールディングの非常に上手い。野球センスがあるというよりも、運動神経に優れているのだろう。

(投球のまとめ)

 遠くから見ていても、ブルペンで投げているのは生田目だろうわかるような俺様キャラは相変わらず。しかし一見すると気合で押し切ろうというタイプ見えるが、実は結構冷静だったりクレバーな一面も兼ね備えている。ただしキャパの無さが、プロに混ざってしまうと露骨に出てしまうかもしれない。

 元来は先発の方が持ち味が出るタイプだと思うが、プロに混ぜてしまうとリリーフ向きだと判断されそうで怖い。自分のリズムを掴む前に、ポポポ~ンと集中打を浴びてしまうことも少なくないかもしれない。それでもその気合の入ったマウンド捌きで、傾いた試合の流れを自分の方に手繰り寄せる力を持っている。序盤に5点リードされたパナソニック戦では、生田目が登板してから得点を許さず見事に逆転勝ち。彼の性格を理解し、上手く引き出してあげられる環境ならば、多いにその能力を発揮されるのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 スポニチ大会ではフォームを撮影できなかったので、秋の台湾ウインターリーグ時のフォームを元に分析したい。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻は甘さを残しているものの、一応一塁側にはお尻を落とせてはいる。そういった意味では、カーブやフォークを投げても窮屈さはそれほど感じられない。

 「着地」までの淡白そうに見えるが、着きそうなところからの粘りは一応ある。そういった意味では、体を捻り出す時間も早過ぎることはない。現在もそうだが、多彩な球種を投げる器用さもある。しかし動作に甘さが残ることから、絶対的な決め球を修得できないままでいる。

<ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、ボールは両サイドに散らすことができている。足の甲での地面への押しつけもできており、本当なら高めに抜けにくいはず。しかし腕を上から叩け無いので、高めには集まりやすい。「球持ち」や指先の感覚は、並ぐらいではないのだろうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻はある程度は落とせているので、カーブで緩急を付けたり、フォークのような捻り出して投げる球種を投げても窮屈さは感じ難いはず。

 また腕の送り出しにも無理のないスリークォーターなので、肩への負担も少ないはず。これで肩・肘を痛めてしまったのは何故なのかわからないが、現在のフォームならば故障のリスクは少ないのではないかと。しいて言えば力投派なので、消耗が激しい。それほど体格にも恵まれていないので、登板過多で無理がたたったのかもしれない。


<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 極端に「着地」までの粘りがないとか「開き」が早すぎるということはないが、試合を見ている限り打者が苦にせずスピードボールを捉えているのは気になる。けして打者にとっては、合わせ難いフォームではないということなのだろう。

 振り下ろした腕は強く振れているので、投げ終わったあと身体に絡んでくる。腕の振りに勢いがあるので、打者も思わず振ってしまうことは少なくないのだろう。しかしボールへの体重の乗せは、力が流れてしまってダイレクトにボールに伝えられていない。その証に、投げ終わったあと地面を強く蹴り上げるような動作が見られない。球速ほどボールに威圧感・凄みがないのは、この動作が影響しているのではないのだろうか。


(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端に悪いところも良いところもない。それだけに、余計に細部まで動作の粘りを追求して欲しい。そうじゃないと、せっかくのストレートが生きて来ないので。

 制球を司る動作も故障のリスクも少ないはずなのに、実際のパフォーマンスにはそれが生かされていないのは何故か? 制球はある程度球数を投げて落ち着いてくれば、安定してくるタイプ。故障のリスクは、大学時代の登板過多がたたったからではないかと考えられる。投球の幅を広げてゆくことも期待できるが、動作を追求してより変化球のキレを増して欲しい。



(最後に)

 元来は、イニングが進むにつれ持ち味を発揮するタイプ。気持ちが勝ったリリーフタイプに見えるが、私は先発でこそ持ち味が出ると思っている。しかしスケールで魅了するタイプではないので、プロで先発を任されるほどまでかは入る球団に大きく左右されるのではないのだろうか。結局リリーフで起用され、持ち味を発揮する前に打ち込まれてしまうという悪循環を繰り返しそうで怖い。

 この選手は、進む環境によって大きくその未来は変わるのではないのだろうか。上手く引き出して上げれば、爆発的な活躍が期待できるかもしれない。逆に環境が合わないと、打ち込まれて全く活躍できないで終わる可能性も多分に秘めていると思う。いずれにしても現時点では、上位で指名するのには怖い選手という印象は強く受けた大会だった。



蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2018年春 スポニチ大会)








生田目 翼(流通経済大)投手 174/76 右/右 (水戸工出身) 
 




                      「意外に実戦的」





 水戸工業時代から、茨城では投打で注目されている選手でした。流通経済大に進んでからも、順調に実績を積み上げてゆきます。そして昨年は、リーグ戦で9勝0敗。チームを大学選手権に導き、MAX152キロのストレートを投げ込み一躍その名を全国に知らしめました。

 そんな生田目選手「将来は公務員にでもなって」という発言で注目されましたが、その口ぶりとは違い、これだけの投球を続けてもスタミナが落ちないところをみると、相当体をイジメ抜いていることがわかります。また投げっぷりの良さから、強気の投球ばかりが目を惹きますが、パッと牽制を挟んだりと実に冷静。投手としてのセンスも、兼ね備えています。


(投球内容)

 中背の体格から、少しスリークォーターぽいフォームで投げ込んできます。

ストレート 常時145キロ~MAX152キロ

 ファーストストライクから、149キロを記録するなどスピード能力は突出しています。ボール自体は比較的キレ型で、それほど球威があるわけではありません。空振りをバシバシ奪うというよりは、相手の手の出ないところにズバッと投げ込み、見逃しの三振を奪うタイプでしょうか。

 右打者へのコマンドは高いものの、左打者のへの制球は結構バラついて暴れる傾向にあります。左打者には、大まかに内外角を投げ分けて来るという感じでしょうか。

変化球 スライダー、カーブ・カットボール・チェンジアップ・フォークなど

 球種は実に多彩ですが、基本的に小さく横滑りするスライダーとのコンビネーションです。それに余裕が出てくるとカーブを混ぜたり、カットボール・チェンジアップ・フォークなどを微妙に織り交ぜてきます。まだ変化球に、絶対的に空振りを誘える球はありません。ただし追い込んでから、ストライクゾーンからボールゾーンに切れ込むのを振らせるのは上手く、そういったセンスには長けているように見えます。

その他

 牽制もまずまず鋭いですし、パッと間合いを取るために軽く投げる時もあります。クィックは1.0秒前後で投げ込めるなど高速。元遊撃手だけに、フィールディングの動きも悪くありません。

 この選手は、非常に運動神経がよく、野球センスも兼ね備えている選手だと考えられます。けしてただ速い球を投げるだけの、粗っぽい選手とは違います。

(投球のまとめ)

 球速に頼ることなく、スライダーを中心に他の変化球を織り交ぜ上手くピッチングを組み立てています。けして素材型なのではなく、投球センス・技術にも優れた選手だと言えるでしょう。

 投げっぷりの好いハートの強さだけなく、冷静さも兼ね備え、また野球に向かう姿勢にも確かなものがあると評価します。例の公務員発言は、彼なりの照れなのではないのでしょうか。



(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばしているので、お尻は一塁側に落ちている。そのため体を捻り出すスペースは確保できているので、カーブやフォークのような腕を送り出して投げる球種を投げるのにも無理がない。

 「着地」までの粘りは平均的で、それほど体を捻りだす時間は確保できていない。ある意味、一通りの変化球は投げられるものの、絶対的な決め球がないのもこのせいかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、両サイド野投げ分けは安定しやすい。しかし実際には、左打者に対しては上手く制御できていないのだが。

 足の甲の押し付けは、最初押し付けられているものの、途中で完全に浮いてしまうという特殊なフォームになっている。この辺力を入れて投げると、ボールが上吊ったり、バラつく要因になっているのかもしれない。「球持ち」は平均的で、特別指先の感覚に優れているようには感じない。しかし右打者の外角いっぱいには、かなり精度の高いコントロールを魅せる。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても無理はない。それにそれほど多くはこれらの球種を使って来ないので、肘への負担は少ないのでは?

 腕の送り出しを見ていても、無理がなく投げられている。そういった意味では、肩への負担も大きくはないだろう。ただし本人のコメントを訊く限り、肘への不安は抱えているようだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、けして合わせずらいフォームではない。また「開き」も平均的で、ボールが走っていないと厳しいタイプではないのだろうか。

 腕をしっかり振れるのは魅力で、速球と変化球の見極めは困難。しかし足の甲が浮いてしまうなど、ボールへの体重の乗せはもう一つで、その辺が打者の手元までの球威の物足りなさにつながっているのでは?投げ終わったあとも、地面を蹴り上げるような動作は見られないで、力をロスしてしまっている。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作ある「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」「開き」「着地」と並で、「体重移動」に課題を抱えている。もう少し下半身の使い方が上手くなると、打者の手元までグッと来るような凄みが生まれて来るはずなのだが。

 コントロールを司る動作は、足の甲の押し付けが課題。故障のリスクは感じないが、本人は肘への負担を口にしている。フォームに関しては、可も不可もなしといった感じだろうか。


(最後に)

 けしてスケール感溢れる素材ではないが、持ちえる能力を存分に発揮できており、投球センス・テクニカルな部分でも想像以上の選手だった。順調にこの一年間を過ごせば、上位12名の中に収まる可能性は高いだろう。

 田中正義(創価大)との投げ合いの日には、今までにないぐらいの観客が、リーグ戦に殺到するのではないのだろうか?二人の投げ合いが、今から楽しみで仕方ない。


(2015年 大学選手権)