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横山 弘樹(広島)投手のルーキー回顧へ







 横山 弘樹(23歳・NTT東日本)投手 187/85 右/左 (宮崎日大-桐蔭横浜大出身)





                    「都市対抗は最悪だった」





 昨年の都市対抗では、3試合に登板し社会人の新人王に値する若獅子賞を獲得。その後もチームのエースとして、NTT東日本の大事な試合を任され続けてきた。しかし都市対抗予選では、チームを本大会に導くことはできず。そのため2年目の今年は、東京ガスの補強選手として、僅か1/3イニング投げたのみで終わっている。またその内容も、極めて悪いものだった。4月終わりの関東選抜リーグでの投球が素晴らしかっただけに、この内容に愕然とした。


(投球内容)

 グラブがしっかり内に抱えられず、腕も少し下がったスリークオーター。何処かまとまりの悪いもどかしさがある投手だったが、ボールの威力が、桐蔭横浜大時代に比べると明らかに違っている。

ストレート 135~140キロ台中盤

 今年の都市対抗では、135~MAXで140キロぐらいと球速が出ない。桐蔭横浜大時代も、出ても140キロちょういぐらいの、微妙な投球だった。しかしこの春の関東選抜リーグでは、コンスタントに145キロ前後を連発、甘く出ていた大田スタジアムのガンでは150キロまで記録している。

 この選手のボールは、手元でグ~ンと伸びるような空振りを誘う球でも、ものすごく球威があって詰まらせるような剛球でもない。何処か オ・スンファン(阪神)のような、硬いボールという表現がもっともしっくり来るのではないのか? 球筋も結構バラつき、この適度な荒れ球こそが、打者の的を絞り難くするタイプという感じだろうか。

変化球 スライダー・フォーク・カーブ・カットボール・チェンジアップ

 ちょっと癖のあるフォームをしているせいか? 変化球も独特の曲がり方をする。横滑りするスライダーやカットボールだけでなく、フォークボールや、110キロ台で変化するチェンジアップが非常に特徴的。彼の良さは、掴みどころのないこの変化球の多彩さではないのだろうか。特にチェンジアップは、あまり見たことのない軌道で変化する。

(投球のまとめ)

 昨年までは、変化球が早く曲がり過ぎていた。そのため速球と変化球のコンビネーションが上手くマッチしていない感じで、何かまとまりが悪いの投球で評価していませんでした。しかし今年は、145キロ前後の速球をコンスタントに投げ込み、それでいて独特の変化球が上手く馴染んでおり、こうなるとプロの打者でもなかなか苦労するのではないかと感じます。

 しかしフォームもそうですが、非常に微妙なバランスの上で成り立っており、好調期間を持続するのは厳しいのかもしれません。特に都市対抗の時期は調子も最悪だったのですが、最近を成績を見る限りは、かなり復調して来ているのではないかと考えられます。できればドラフト後に行われる日本選手権での投球も確認し、そこで最終評価としたいところ。

 関東選抜リーグと都市対抗との内容の差が大きいので、どの辺を評価の落としどころとするのかは難しい判断になります。





(投球フォーム)

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすので、お尻は一塁側に落とせます。そのため身体を捻り出すスペースが確保でき、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化を投げるのにも無理がありません。

 「着地」に関しても、前への一伸びがあり地面を捉えるまでに粘りが感じられます。身体を捻り出す時間を確保でき、独特の変化を生み出すことができています。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブを内に抱えられないので、外に逃げようとする遠心力を抑え込めず、フォームが暴れてしまいます。そのため、両サイドはのえ投げ分けは、どうしてもアバウトになります。むしろ足の甲での地面への押し付けはできているので、ボールが上吊るのを防ぎます。しかし彼の場合、スリークオーターの上に「球持ち」が浅いので、ボールを押し込めず高めに浮いてしまうことも少なくありません。せっかく足の甲で地面を押し付けられているのに、リリースがそれを阻害しています。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻は落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げてても肘への負担は少ないはず。腕の送り出しもスリークオーターでもあり、肩への負担は少ないはず。しかしながらフォームが暴れる分、消耗が激しいかもしれない。その状況で登板過多になると、余計にフォームを乱す危険性は感じます。元来ならば荒れ荒れですが、先発の方が持ち味は生きるのかもしれません。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは悪くないので、けして合わしやすいフォームではないでしょう。しかし体の「開き」はそれほど隠れていないので、コースを突いた球でも打ち返されてしまう危険性があります。

 振り下ろした腕は強く身体に絡んできて、速球と変化球の見極めは困難。しかしリリースが浅いので、ボールにしっかり体重が乗ってから投げているという感じではありません。前に踏み出した足がブロックしてしまい、体重移動の後半部分を邪魔しています。この辺が上手くできるようになると、もっとグッと好い球が投げられそう。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で言えば、「着地」までは悪く無いものの、「球持ち」「開き」「体重移動」に課題を残します。この辺が、あまり実戦的でないところは気になるところ。

 グラブの抱え、球持ちの浅さから来るコントロールのアバウトさは気になりますが、故障のリスクはそれほど高くないように感じます。ただし微妙なバランスの上で投げているので、登板過多でフォームが狂いだすとドツボにはまる危険性は充分考えられます。


(最後に)

 関東選抜リーグで魅せてくれた内容ならば、☆☆☆ ぐらい付けられる内容だったのですが、都市対抗の投球だけでは指名リストに入れられる内容ではありませんでした。そういったことを加味すると、少し評価は割り引かなと行けないでしょう。

 ドラフト後になってしまいますが、もし日本選手権での投球を確認でき、好いようならばワンランク上の評価に戻す可能性はあります(変わってなければ評価は据え置き)。またフォームも微妙な選手だけにリスキーな部分がありますが、実際投げ込まれるボールの威力・変化球の独特さは面白い素材ではあります。あまり過大評価はできませんので、現時点ではソコソコの評価に留めることと致します。


蔵の評価:
☆☆


(2015年 都市対抗)