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青山 大紀(オリックス)投手のルーキー回顧へ







青山 大紀(21歳・トヨタ自動車)投手 183/83 右/左 (智弁学園出身) 





                 「結局3年間で一度見られなかった」





 智弁学園時代に甲子園でも活躍し、プロからも注目された 青山 大紀 。しかしプロ志望届けは提出したものの、3位以内が条件だったため、指名がなくトヨタ自動車進む。トヨタ自動車に進んでからも、都市対抗・日本選手権での登板は一度も無し。3年目の今年は、春の静岡大会でリリーフで好投したぐらい。そのため、公式戦では殆ど見られない幻の選手だった。

 しかし今年の春先から、複数の球団から青山に興味を持っているとの情報はあり、今のような状況ならば会社も本人も指名の話があれば、O.Kが出すだろうとは思っていた。そんな中、ドラフト会議ではオリックスから指名される。

 今回は、知り合いから今年の青山を撮影した動画を提供してもらったのでフォーム分析。昨年の公式戦の成績も元に、レポートを作成してみたい。


(投球フォーム)

ノーワインドアップから、スッと足を引き上げてきます。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は、高い位置でピンと伸ばしているわけでも、地面に向かって伸びているわけでもなく、その中間。すなわち甘さは残すものの、お尻はある程度一塁側に落とせてはいます。そのためカーブやフォークのような球種を投げても、無理が生じるというほどではないように感じます。

 高校時代は、あっさり地面を捉えていた印象ですが、以前よりは着地に粘りが作れているように見えます。すなわち身体を捻り出す時間を確保しつつあるので、変化球の曲がりの大きさ・キレにも好い影響が生まれるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられ、両サイドの投げ分けは安定。足の甲でも地面を捉えられており、ボールもそれほど上吊らないようになっているのでは? 高校時代は、足の甲の押し付けが浅かったことを考えると、良くなっているようには感じます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻がある程度落とせるようになり、身体を捻り出すスペースも確保できるようになりました。カーブやフォークといった球種を投げても、肘への負担も少なくなりつつあるのではないのでしょうか。

 元々腕の送り出しには無理はなく、肩への負担は少ないはず。ただし高校時代に脇を痛めてしまった経験があり、その怖さをどこまで払拭できているのかは気になります。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りも出てきて、以前ほど合わされやすいフォームではなくなっているのでは? 体の「開き」も抑えられており、コースを間違わなければ痛手は喰らい難いのでは?

 振り下ろし腕は、それほど身体に絡んできません。もう少し腕が強く振れるのと、変化球と速球の見分けも難しくなり、空振りが誘えるのではないのでしょうか? ボールへの体重の乗せは適度にできており、地面への蹴り上げは悪くありません。

(フォームのまとめ)
 
 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、すべての面で大きな欠点がなくなっており、だいぶ実戦的にはなってきました。特に下半身の使い方が、だいぶ改善されてきたといえるでしょう。

 コントロールを司る動作も好いですし、故障のリスクも軽減しています。バランスの取れた、実戦的なフォームだと言えます。高校時代からの、確かな成長をフォームからは感じます。





(成績から考える)

 今年わかっている公式戦での成績は、JABA静岡大会でのエナジック戦で登板した 3回を1安打・5三振・無失点でのリリーフ登板ぐらい。そして都市対抗予選では、1イニング2安打1失点で終わっており、本戦での登板がないまま終わっていると訊きます。ちなみに14年度の成績は、

6試合 20回 17安打 13四死球 8奪三振 防御率 6.30 

 昨年の成績ではあるが、被安打率85%は平凡。四死球率は、65%に昇り基準のほぼ倍数とコントロールに大きな課題。奪三振は1イニングあたり、0.4個と極めて決めて不足なのも気になります。当然これでは、防御率も6点台になったのは頷けます。今年のサンプルも少ないので、成長しているかの判断は難しい。

(最後に)

 知り合いによると、入社当初に比べると人間的な成長が感じられるという。また投球フォームの観点では、下半身の使い方が改善されており、欠点は解消されつつある。ただそれを存分にアピールできる場が、トヨタにはなかったのは残念。

 そういった経験不足の面もあり、高卒3年目の21歳での指名。そう考えると最初の1,2年は、ファームで漬け込むという可能性も充分考えられるのではないのでしょうか。プロの指導・環境で、何か更に新しいものが見いだされることを期待します。ただ少し観る限り、けして無駄な三年間ではなかったように感じました。今後の飛躍を、期待せずにはいられません。 










青山 大紀(智弁学園 3年)投手 183/73 右/左 





                 「ビッグ3にライバル心を燃やすなら」





藤浪晋太郎(大阪桐蔭)・大谷翔平(花巻東)・濱田達郎(愛工大名電)の選抜ビッグ3の中に、自分が入っていないのが悔しくてしょうがなかったという 青山 大紀 。私自身、彼らに勝るとも劣らない素材だと評価していたが、選抜では彼らと並ぶ評価は、残念ながらその投球からはできなかった。元々ビッグ3に入らなかった最大の要因は、秋に右脇腹を故障して十分なアピールができなかったから。もし神宮大会でその存在感を示せば、彼らと共に並び称されていただろう。

(しかし選抜では)

昨夏の時点で、コンスタントに140~145キロを超えるような伸びのある速球を連発していた。それ故に一冬超えれば、140キロ台後半を連発してくるのでは?そんな淡い期待を抱いていた。

ストレート 130キロ台後半~MAX141キロ

それほど力を入れなくても、手元までシッカリ伸びのあるストレートが行くのが彼の持ち味。しかし昨夏甲子園で魅せたパフォーマンスよりも、明らかに球威・球速が物足りなく、一冬超えた成長は感じられなかった。力みなく丁寧にという意識だったのかもしれないが、もっとガンガンアピールしなければならない彼の立場を考えれば、これは消極的なアピール方だ。これでは、怪我で持ち得る能力が低下したのではないか?そう思われて致し方ない。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォークなどなど

かなり球種は多彩で、この他にもカットボールやツーシームなども、結構織りまぜてきます。最大の変化は、縦の変化球で三振を奪う場面が目立ったこと。狙って空振りを取れる球を身につけたことは、投球にも余裕が生まれ大きな成長であるように思えます。

その他

それほど鋭い牽制を入れてくるタイプではありませんが、クィックやフィールディングは、中々上手いものがあります。特に落ち着いて、自分のペースで淡々と投げ込んでくるタイプです。

(投球のまとめ)

キャパを落として丁寧に投げているというよりは、現状このぐらいの球しか投げられないかもしれません。というのは、結構甘い球も多く、また甘くない球でも踏み込んで打たれるケースが目立ちました。けして実戦的な投球に、徹しきれていたとは言い切れません。両サイドの投げ分けも、以前の方が良かったくらいです。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて、お尻を一塁側に落とせないフォームです。それでもフォークやカーブなどを、結構使って来るので、体への負担も少なくありません。実際に右脇腹を痛めたというのは、体を捻り出すスペースが確保できていないのに、こういった球種を投げ続けたことにも、少なからず原因があったのではないかと考えます。

それでも着地までの粘りがアレば良いのですが、それもないので尚更だと思います。フォームからして、曲がりが小さな速い変化球中心に、投球を組み立てて行くタイプだと考えられます。

<ボールの支配>

グラブは内に抱えられているので、元来両サイドの投げ分けは安定しています。しかし足の甲の押し付けが浅く、ボールが上吊る要因を作ります。ただ昨夏よりは「球持ち」がよくなり、指先の感覚は良くなってきたように思えます。もう少し重心の沈み込みができると、もっと低めにボールが集まりそうです。

<故障のリスク>

お尻が落とせないことで、体を捻り出すのに必要なスペースが確保できていません。「着地」の粘りの無さが、体を捻るのに必要な時間を確保できません。ただ振り下ろす腕の角度には無理がないので、肩への負担という部分は少ないと考えられます。ただ右脇腹を痛めてしまったという恐怖からか、あまり体を使って投げられなくなっています。

<実戦的な術>

「着地」までの粘りの無さが、打者からはタイミングが合われやす淡白さを作っています。また「開き」も自然と早くなり、球筋がいち早く見破られてしまいます。それゆえ甘くないコースを突いた球でも、踏み込まれて打たれてしまうわけです。

腕の振りも鈍くなり、速球と変化球の見分けもつきやすくなりました。「体重移動」も発展途上であり、ボールにしっかりウエートが乗せられているとは言えません。

(投球フォームのまとめ)

どうも球速を落としていたのは、制球を重視していると言うよりも、怪我の影響で能力が損なわれていたからと考えるべきではないのでしょうか。少なくても技術的には、昨夏の頃の方が良かった気が致します。その辺は、実際の投球にも、如実に現れています。

(最後に)

昨夏に比べると、球威・球速・コントロール・投球フォームなど、すべてにおいて、やや劣化した感は否めません。資質的にはドラフト中位級ぐらいの力はあると思いますが、現在はその力を充分出せていない気が致します。

指名の有無は、この選抜の内容よりも、夏までに上積みが見られるのか?ということ。それが見られないようならば、やはり大学や社会人あたりでワンクッション置いた方が得策だと考えます。ただ話を訊いていると、大学などの体育会系よりも、プロの世界の方が良さそうなタイプです。できればぜひ、高校からプロに入って欲しい選手。ただそのためには、何か訴えかけてくるものが欲しいですね。それを、夏までの課題にして欲しいと思います。


蔵の評価:追跡級!


(2012年 選抜)


 






青山 大紀(智弁和歌山)投手 183/73 右/左 
 




                     「これが本当のビッグ4」





私自身選抜までは 大谷翔平(花巻東)・藤浪晋太郎(大阪桐蔭)・濱田達郎(愛工大名電)に、この 青山 大紀 が、センバツまでの全国ビッグ4だと考えている。青山の評価が、そこまで上がらなかった最大の理由は、近畿大会の途中で右脇腹痛になり、神宮大会で登板できなかったことが大きかった。恐らく今春センバツでは、150キロ近いストレートを披露してくれるはず。また打っても、非凡な才能を持っている。

(投球内容)

スラッとした投手体型から、ワインドアップで振りかぶる正統派右腕。

ストレート 常時140キロ台~MAX146キロ

ビシッとキャッチャーミットに突き刺さる、球筋の良さは素晴らしい。まだボールが高めに集まりやすいが、右打者外角クロスへの制球は安定。もう少し左打者へのコントロールが良くなると、ピッチングも安定してきそう。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・フォーク・カットボール・ツーシームなど

基本的に、球速のある変化球を得意にしています。特に右打者の内角には意識的にツーシームで食い込ませます。更に外角には、スライダーよりも135キロぐらいのカットボールを多く使います。その他にも110キロ台で沈む球と、120キロ台で高速で落ちる球などがあり、たまに緩いカーブを投げますが、抜けてあまり使えません。現状は、カットボール・ツーシームと、小さく曲げてくる球の威力が目立ちます。

その他

打者への警戒は致しますが、あまり鋭い牽制は見られません。ただクィックなどは、1.1秒で投げ込むことができ、動作に緩慢なところはありません。またフィールディングなどの身のこなしは、結構上手いように思えます。

(投球のまとめ)

右打者へは、両サイドへの投げ分けがシッカリできます。ただ左打者にはボールは散っていますが、やや的が定まらずに、安心してカウントが整えるといった球筋がないように思えます。

ゆったりしたモーションには見えますが、それほど「間」や駆け引きで勝負するわけではなく、現時点では球の威力で押すピッチングスタイル。ただ四死球で自滅するといった荒々しさは、それほど感じません。そういった破綻のないまとまりは、すでにあるように思います。

(投球フォーム)

<広がる可能性>

引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、腕の振りの緩まないカーブや縦に鋭く落ちるフォークのような球には適していません。また「着地」までの粘りの無さを見ていると、大きな曲がりよりも、速球に近い小さな変化で勝負するタイプだと考えられます。

<ボールの支配>

グラブを最後まで内に抱えられており、両サイドへの投げ分けは安定。足の甲での地面の押し付けは良いのですが、実際にはボールが上吊ることが多いです。けして「球持ち」が浅いとは思いませんが、センバツまでにリリースが押し込めるようになることを期待します。

<故障のリスク>

お尻が落とせない割に、フォークやツーシーム系のボールを使って来るので、体への負担は少なくありません。ただ降り下ろす腕の使い方には無理がないので、肩への負担は小さいように思えます。選抜では、万全の状態で甲子園に戻ってきて欲しいところ。

<球の行方>

「着地」までの粘りが作れないので、投球フォームが淡白な印象は受けます。それでも体の「開き」は、けして早すぎることはありません。そのため、ボールが見やすいフォームではないと考えられます。

腕の振りは体に絡んできて良いと思うのですが、ボールにはまだ充分体重が乗せられているわけではありません。もう少し「体重移動」がシッカリできたら、どえらいボールが投げられるようになりそうです。

(投球フォームのまとめ)

投手として物足りなく感じるのは、「着地」までの粘りの無さから来るのだと思います。この辺が改善されて来ると、フォーム全体へも様々なところで、良い循環が生まれそう。この冬の間に、そういった意識で取り組んでこられるのかが、投手 青山 大紀 の今後の可能に大きく影響を及ぼすと考えます。

(今後は)

投手としての持っている器は、同校の先輩である 秦 裕二(元横浜)よりも上だと思います。ただ秦の高校時代と比べると、ピッチングセンスという意味ではおとります。ただその先輩と比較できる、あるいはそれ以上になり得る素材だというのは、現時点で間違いないでしょう。

選抜の内容次第では、ドラフト上位候補としてお大いに話題になることだと思います。あとは、万全の状態で成長した姿を、魅せつけるだけではないのでしょうか。今から選抜での登板が、ワクワクさせられます。

(2011年夏 甲子園)