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松本 直晃(西武)投手のルーキー回顧へ







松本 直晃(25歳・香川OG)投手 179/78 右/右 (東海大翔洋-環太平洋大-養和会出身) 





                        「良いとは思わなかったが」





 7月に、四国アイランドリーグ選抜の一員として関東に遠征。2試合・3イニングを無失点で抑えるなど、まとまりのある投球を披露した。しかしそのボールに光るものはなく、どうしてリーグでこれだけの成績を残しているのか、むしろ不思議なぐらいだった。しかしドラフトが近づくにつれ、各球団の評価も高騰。10位とはいえ、本会議での指名となった。


(投球内容)

 ノーワインドアップながら、足を勢いよく高い位置まで引き上げてくる。フォームだけ見ていると、リリーフタイプの投手なのがわかる。

ストレート 常時135~140キロ台中盤

 生で観戦した時の球速は、135キロ~MAXで87マイル(139.2キロ)ぐらいだった。実際に見ている感じでもその程度であり、特にストレートに魅力を感じる投手ではなかった。9月に行われたソフトバンクとの交流戦では、ボールの勢いが違っていた。この時の感じだと、常時130キロ台後半~140キロ台前半ぐらいかなという感じ。別の試合の映像を見ていたら、140キロ台中盤まで球場のガンで記録している。

 この選手のボールは、いわゆるキレ型。そのため打者の空振りを誘える反面、球威に欠け甘く入ると痛打を浴びやすい。またボールも、真ん中~高めのゾーンに浮きやすいので、よほどキレていないと怖いなという印象は残る。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど

 大きく横に曲がるスライダーに特徵があり、この球が変化球の軸。左打者には、チェンジアップだかツーシーム系の逃げながら沈む球があり、この球も有効。他にも、ブレーキのあるカーブを投げることもある。変化球の曲がり一つ一つは優れており、またこの曲がりの大きな変化球を、うまくコンビネーションの中で活かすことができている。

その他

 クィックは、1.05~1.20ぐらいと基準以内であり、フィールディングも平均的。牽制に関してはよくわからないが、積極的には入れて来ない

(投球のまとめ)

 速球も変化球も、両サイドに投げ分けるコントロールがあるが、ストレートが全般的に高いのが気になる。凄みがある投手ではないが、大崩れしないまとまりがあり、イニングの最初から投げさせてあげれば、それなりに形にするだけの力はあるのではないのだろうか。

(投球フォーム)

では実際の投球だけでなく、フォームの観点からはどうだろうか?

<広がる可能性> 
☆☆☆☆

 引き上げた足は高い位置でピンと伸ばせており、お尻はは一塁側に落とせている。すなわち身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球を投げても無理がない。

 「着地」までの粘りは平均的なため、身体を捻り出す時間は並。それでもスライダー・チェンジアップなどの変化球の曲がりの大きさ・キレも確かで、良い変化球を投げられる投手との印象を受ける。

<ボールの支配> ☆☆

 グラブを最後まで内に抱えられていないので、両サイドの投げ分けが心配。足の甲での押し付けも甘く、力を入れてしまうとボールが上吊ってしまう。しかし「球持ち」はよく前でボールを放せており、指先でうまくボールを制御できている。細かいコントロールはないが、ストライクゾーンに安定して集めるだけの制球力はある。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせるフォームであり、カーブは滅多に投げないし、現状フォークなど肘に負担のかかる球種も少ない。腕の送り出しにも問題なさそうで、肩への負担も少なそう。球歴的にも肩の消耗も少なそうな選手だけに、そういった故障のリスクが少ない点が、この選手の大いなる売りなのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆

 「着地」までの粘りは特に感じないものの、体の「開き」も平均的で、合わせやすいわけでも打ち難いわけでもないオーソドックスなフォーム。

 振り下ろした腕は強く振れており、速球と変化球の見極めは困難。ボールのへの体重の乗せ具合も悪くはないので、力を入れて投げた時のボールの質は悪く無い。


(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」に関しては、「球持ち」がよく、あとは並ぐらいだろうか。

 コントロールを司る動作に不安はあるものの、「球持ち」の良さで補っている。また故障のリスクが少ないことが、この選手の大いなる強味となっている。






(データからわかること)

 では最後に、残した成績から傾向を考えてみたい。今シーズンのアイランドリーグでの成績は

41試合 4勝1敗6S 72回 51安打 23四死球 64奪三振 防御率 1.00(リーグ2位)


1,被安打は、イニングの70%以下 △

 アイランドリーグ出身の選手で、NPBで過去活躍した選手は数えるほどしかいない。そのためファクターは、厳しめに設けることにした。被安打率は、70.8% と僅かに条件は満たしていないが、この厳しい条件でもファクターギリギリなのは一定の評価はできる。

2、四死球は、イニングの1/3以下 ◯

 四死球率は、31.9%と基準を満たす数字は残している。ただしこの数字は、四死球で自滅することはないものの、精度の高いコントロールの持ち主ではないことを示している。圧倒的な打力を誇るNPBの打者相手だと、このコントロールを維持できるかには疑問も残る。

3、奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 △

 奪三振率は、1イニングあたり0.89個と、この数字も僅かに満たしていない。しかしこの数字も僅かな差異なので、かなりの割合で三振を奪っていることはわかっている。ストレートの威力を、もう少し増したい。

4,防御率は、1点台以内 ◯

 防御率は、1.00 であり、僅かな差で0点台には入って来なかった。それでも、充分合格ラインの数字。突き抜けてはいないが、優秀な実績の持ち主ではある。

(成績からわかること)

 ファクターを満たすものにも絶対的な数字がなかったものの、ファクターを満たせなかったものも僅か差でしかなかった。それだけに、全体の総合力をもう少しだけ引き上げられれば、NPBでも通用する可能性を秘めていることがわかる。

(最後に)

 実際見るとストレートの物足りなさはあるものの、変化球の威力もあり、フォーム技術・制球力、残した実績などからもNPBの二軍ならば通用する可能性を秘めている。更に何かプロの指導によりキッカケを掴むとか、更に総合力を引き上げることができれば、一軍でも活躍できる可能性は秘めている。

 25歳という年齢の割には、使い減りしていない肩も魅力であり、まだ伸びる要素も秘めている。実際見た時の物足りなさから、指名リストには名前を記さないものの、あと僅かな成長が見込めれば一軍で通用しても不思議ではない。10位での指名を考えれば、充分ありの指名なのではないのだろうか。



(2015年 プロアマ交流戦)