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横田 哲(22歳・セガサミー)投手の個別寸評へ







横田 哲(上武大・4年)投手 171/70 左/右 
 




                   「意外に面白いじゃないか?」





 通常ならば135キロ前後の球速だけに、スカウティングの枠には入って来ない選手かもしれない。しかし大学選手権で、全国の猛者達が何故この投手を打ち崩せないのか考えてみた。その最大の理由は、ストレートと全く見分けがつかない腕の振りから、変化球を投げ込んで来られるということ。この見極めの難しこそが、この選手の最大持ち味なのだ。

(投球内容)

 重心を前に倒すような感じで沈んで来るので、投球フォームとしてはサイドハンドに近い動き。しかし肘はしっかり上げて、それほど腕の振りは横から出てこない。

ストレート 常時135キロ前後(MAX138キロ)

 殆どのストレートは、常時135キロ前後と球威・球速は物足りません。左腕であり適度にキレもあるので、球速ほどは物足りなさはありませんが、ドラフト候補としては見劣ります。

 コントロールは、それほどピンポイントで決める制球力はなく、結構バラつきはあります。ポンポンとテンポよくストライクを先行して有利な状況を作り出し、変化球で仕留めるのが彼の持ち味。

変化球 スライダー・スクリュー・カーブなど

 最大の武器は、ストレートと見分けがつかないスライダー。この球を右打者の内角膝下に食い込ませて、空振りを誘います。また外にスクリュー系のボールも使えるので、幅広いピッチングができます。変化球は、膝下から低めに行くことが多く、あまり浮きません。時折投げるカーブが、高めに浮くのが気になる程度か。

 逆に左打者に関しては、外角中心に投球を組み立ててきます。思ったよりも腕が上から出てくるので、それほど左打者にとって厄介な球筋ではありません。特に右・左に得意・不得意はないように感じます。

その他

 牽制は左投手らしく、非常に鋭くかつ誘い出される上手さがあります。クィックも0.9秒台で投げられる超高速クィックを使えますし、ベースカバーなども素早く投球以外の部分のレベルは極めて高いのが特徴。

(投球のまとめ)

 凄みのある球も投げませんし、思ったほど細かいコントロールはありません。また左投手ながら、それほど左打者に優位性があるわけでもありません。しかし自分のペースに相手を引き込むのが上手く、早めに追い込んで低めの変化球で上手く振らせることができています。

 マウンド捌き、安定感も素晴らしく、見極めの難しい腕の振りも加味すると、この球威でもプロの打者は苦労するのではないのでしょうか。個人的には、打者一巡ぐらいまでなら充分通用するように思います。





(投球フォーム)

では技術面からみて、プロで通用するだけのものがあるのか検証してみましょう。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばし、更に前にサイドハンドのように背中を折って行くフォームなので、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落ちません。そのためカーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭い変化球には適しません。

 しかし地面に着きそうなところまで足を降ろし、そこからグゥ~と前に足を逃がすので、「着地」までの時間は充分稼げます。これにより体をひねり出す時間を確保できるので、カーブやフォークといった球種以外ならば、キレのある球をものにできる可能性が広がります。現に、見極めの極めて難しい変化球を投げることができています。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 四球で自滅するようなことはありませんが、意外に細かいコントロールはありません。グラブも最後まで体の近くにありますが、最後後ろに抜けて行けそうで抱えが甘いです。また足の甲での地面の押し付けも浅く、ボールが上吊りやすい要因があります。それでも「球持ち」の感覚の良さで、なんとかボールをコントロールしている印象があります。本当にボールを見られた時に、どういったピッチングになるのか気になります。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、それほどカーブも多投するわけではないので、悲観するほどではないでしょう。腕の角度にも無理がある振り下ろしではないので、肩への負担も大きくはないはず。特に力投派でもないので、それほど故障の可能性は高くないと考えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りが非常にあるので、打者としてはタイミングが合わせ難いはず。それでも「開き」自体は平均的で、ボールの出処自体は普通です。

 腕は体に絡みつくほど振れていますので、速球と変化球の見極めは困難。踏み込んだ足が突っ張って、前への体重移動を少しブロックしていように見えます。そのため、打者の手元まで球威のある球はあまり投げられないのではないのでしょうか。あくまでも上体を鋭く振ることで、キレのある球を生み出します。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」の粘りは特筆しますが、あとの3つは平均的。そのため凄く実戦的に見えて、そこまでではないことがわかります。

 制球を司る動作にも甘さが残るので、まだまだ細かいコントロールが物足りません。それでも負担の少ないフォームでしょうから、故障の可能性は低いのは明るい材料。

(最後に)

 とにかく自分のペースに相手を引き込む投球術と見極めの難しい球筋は、プロでも通用する技術かと。左投手ということもあり、短いイニングなら今すぐにでも通用するのではないかと評価する。

 しかしこの球威・球速、絶対的なコントロールやキレもなく、左対左の優位性もそれほどでもないことを考えると、社会人で様子を観る、そういった判断に落ち着くように思います。俺が関係者なら、下位指名で話をつけて指名したいところですが、そこまでの球団は出てこないでしょう。まずは、強豪社会人チームで、躍できるか様子観ることになりそうです。それを示すことができれば、2年後は文句なしのドラフト候補となっているはず。


蔵の評価:



(2013年・大学選手権)