15sp-19
野川 拓斗(24歳・鷺宮製作所)投手 170/73 左/左 (川口青陵-城西国際大出身) |
「横浜市長杯での快投が忘れられない」 野川拓斗といえば、城西国際大4年秋の横浜市長杯での快投が忘れられない。ドラフト後に行われた、神宮大会関東代表決定戦。こんな投手が、城西国際大にはいたのかと。何故ドラフト戦線では、もっと話題にならなかったのかと驚いたことがある。140キロ台中盤の切れのあるボールを連発し、ハードに曲がるスライダーとのコンビネーションは、まさに衝撃的だった。 そんな野川は、社会人・鷺宮製作所に進む。ルーキーイヤーの静岡大会の優勝に貢献。しかし肘痛を発症して、秋口まで戦線から離脱する。2年目の今年は、春先のオープン戦で確認したのが唯一の観戦となった。スポニチ大会に参加しない鷺宮だったので、野川もまだ3月のオープン戦では調整段階だった。それだけにシーズン中での登板が見たかったが、最後まで観戦運には恵まれなかった。 (投球内容) 足を勢いよく足を引き上げて投げる、典型的なリリーフタイプ。 ストレート 130キロ台後半~MAX146キロ 今年のオープン戦では、まだ調整段階ということで130キロ台中盤~MAXで87マイル(139.2キロ)程度。しかし球速以上に感じさせるボールの勢いがあり、暖かくなってくれば楽しみという印象は受けました。城西国際大時代の、140キロ台中盤の速球を見たものかすれば、期待せずにはいられません。 ただし今年見た人たちの話を総合すると、あまり芳しい評判を訊きません。やはり肘を痛めたことで、大学時代ほどの勢いのあるボールは陰を潜めてしまったのでしょうか? ボールはかなりの荒れ球で、細かいコントロールはありません。ただしボールがストライゾーンの端に散る傾向があり、打者としては的が絞り難いのではないのでしょうか。それでも時々甘く入った球を、痛打されるのだと思います。特にキレ型の球質なので、甘く入ると長打を食らいやすい傾向に。球筋全体が、高めに浮きやすいのも気になる材料。 変化球 スライダー・チェンジアップ 野川といえばストレートの勢いと、もう一つスライダーの曲がりがハードなのが特徵としてあげられます。この球は、制御されできれば充分プロでも通用するでしょう。もう一つのチェンジアップも投げるのですが、この球の印象はややインパクトに欠けます。スライダーを、右打者内角に使って、食い込ませて来るのも興味深い配球。 その他 クィックは1.0秒前後と高速ですが、それほど鋭い牽制は入れません。フィールディングでは、ボールに喰らいつくように捕りにゆくガッツマン。気持ちを全面に出したマウンド捌き・テンポの良い心地良いリズムが魅力。 (投球のまとめ) 粗っぽいので、ボールが走っていない時は正直厳しい。短いイニングにエネルギーを爆発させ、いかに勢い・キレで圧倒できるかにかかっています。そういった場面では、力を発揮する可能性があります。 逆に重宝されて疲労が蓄積すると、悪い時に悪いなりにかわす術には欠けるので、その点でいっきに成績を落とす危険性を感じます。長いイニングをダラダラ投げさせるのには向いておらず、役割をしっかり与え、そこだけはキッチリ抑えて欲しい、そういう使い方に徹っしられれば面白いと思います。 (成績から考える) もう少しこの選手の本質に迫るために、昨年のデータですが、残した成績から彼の特徵を考えてみましょう。 14年 10試合 33回1/3 25安打 12四死球 30奪三振 防御率 2.97 1,被安打は、イニングの80%以下 ◯ 昨年の成績ではありますが、被安打率は75.1%であり基準を満たしています。先発・リリーフと半々ぐらいでの登板でも、この基準を満たしていた意味は大きいのでは。 2、四死球は、イニングの1/3以下 △ 四死球率は、36.0%であり、基準である33.3%以下には若干届かず。いずれにしても、細かいコントロールがないというのは、実際の投球を観ての印象と同じ。それでもマウンド捌きはよく、四死球で自滅するというほどではありません。じっくりボールを観られた時が、一つ勝負の別れ目になりそう。 3,奪三振は、1イニングあたり0.9個以上 ◯ あえてリリーフでの起用が想定されるので、リリーフの基準で考えてみました。奪三振率は、1イニングあたり 0.90個でありギリギリ基準を満たします。この数字も、半分以上のイニングを先発をやっての数字ですから、充分合格ラインではあると考えられます。空振りを奪いやすい球質と、ハードな曲がりをするスライダーという武器があり、決め手のある投手という結果になっています。 防御率は、2点台以内 △ 残した防御率は、2.97 。プロでも信頼できるリリーフの目安は2点台以内ですから、その数字をギリギリクリア。しかし相手がプロの打者に変わることに考えると、この数字はやや物足りません。短いイニングに登板に徹した場合に、どの程度の成績を残すのか注目されます。 (成績からわかること) だいたい投球でのイメージどおりの成績を残しており、コントロールのアバウトさ、ダラダラ投げさせると防御率が悪化する傾向があることが伺われる。逆に言えば、使いかた次第では非常に力を発揮するのではないかと思っている。 (フォームから考えると) では最後に、フォームを分析して課題や長所を考えてみたい。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて投げるので、お尻は三塁側(左投手の場合)にはあまり落ちません。そのため体を捻り出すスペースは充分ではなく、カーブやフォークといった球種には適さないフォーム。 着地までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間も並。特に変化球のキレ・曲がりに特徵が出難いタイプなものの、実際には鋭い腕の振りを活かして、曲がり鋭いスライダーを投げることができています。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで体の近くにあるものの、後ろに解けてしまっており、充分外に逃げようとする遠心力を押さえ込めていません。そのため、コントロールが定まりにくいのでしょう。足の甲の押し付けはできていますが、「球持ち」が浅く充分ボールを押し込めないのが、ボールが浮きやすい原因ではないかと考えられます。 <故障のリスク> ☆☆ お尻は落とせないものの、カーブやフォークといった肘に負担のかかる球種はあまり投げません。しかし腕の角度は執拗に高いので、肩への負担は少なくないはず。ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がっているのは、まさにその証だと言えます。そのため登板過多になると、肩を痛める危険性を感じます。特にそれほど頑強そうな体つきではありませんし、力投派なので消耗も激しいと考えられます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 「着地」までの粘りは平均的で、特に打者が合わせやすいわけでも嫌らしいわけでもありません。体の「開き」も平均的で、それほど問題は感じません。 腕は強く振れているので、速球と変化球の見極めは困難。ただし腕が身体に絡んで来るような、粘っこさはありません。あくまでも鋭く強く腕を振ることで、キレを生むタイプ。 ボールへの体重の乗せは素晴らしく、投げ終わったあとに地面を強く蹴り上げることができます。そのため打者の手元まで、活きた球を投げられることができ、躍動感のあるフィニッシュに現れます。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に課題があり、粘っこさに欠けるところがあります。その反面「体重移動」に優れ、打者の手元まで来る感じの、球速以上に体感させるボールを投げ込みます。 肩への負担の大きさと、コントロールの動作に課題があり、この辺が今後への不安要素。いかに技術に欠けるところを、ボールの勢いで抑え込めるかにかかっています。 (最後に) 城西国際大時代の投球ならば、☆☆ ぐらいつけたい内容でした。しかし今年は、調整段階での内容しか確認できず。実際にシーズンでの投球も、話を聞く限りそれほど芳しくはなかったようです。 しかしこの投手は、本当に生かし方次第では変わって来るかと。対左打者の時だけとか、このイニングだけはとか、ゴールを明確にしてあげられれば、勢いで押すピッチングが期待できます。特にコントロールの粗ささえ出なければ、ピンチであるほど力を発揮してくれそうな期待は抱けます。 今年に良い内容を観られなかったので、指名リストには名前を記しませんが、ハマれば面白いと思います。良いほうが全面に出るか、悪い粗さの方が全面に出てしまうのか、どう転ぶかの判断は難しいのですが、7位指名の左投手ということを考えれば、美味しい指名になっても不思議ではありません。スケールで魅了するタイプでもないので、1年目からあえて結果にこだわって欲しいと期待します。40試合登板・防御率 3.00前後 を期待したいですね。 (2015年 春季オープン戦) |
野川 拓斗(埼玉・川口青陵)投手 170/65 左/左 |
(どんな選手?) 秋季埼玉大会で注目された、左スリークオーターの実戦派左腕です。その洗練されたマウンド捌きが、一冬超えてどうなったのか期待されておりました。 (投球スタイル) 常時125~130キロぐらいの速球に、カーブ・スライダーなどを織り交ぜるオーソドックスな左腕です。元来キレのある速球や変化球で相手を翻弄するタイプなのでしょうが、高めに甘く入る球を痛打される場面が目立ちました。左投手にしては、それほど鋭い牽制も魅せませんし、クィックも1.4秒台と出来ておらず、意外に課題の多い投手だなと言うのが正直な感想でした。 昨秋の内容を見ていないので、なんとも言えないのですが、プロ云々と言う選手ではないです。そのことは、第三試合まで残っていた多くのスカウトが、2回を終えると同時に、一斉に帰り始めたことからも伺うことが出来ます。 個人的も、球威・球速がないのは致し方ないにしても、制球力のアバウトさや、フォームが見やすいのか、対戦した越谷の打者達にスコンスコンと振り抜かれていたのはどうなのかな?と思いました。 (今後は) やはりすべてに関して、総合力を引き上げて行かないと、上のレベルでの活躍も厳しいかなと思います。典型的に秋季大会のレベルだから討ち取ることが出来た投手であり、一冬超え成長してきた各チームの打者達を、抑えるだけの要素に欠けます。 志しを高く持って、自分の投球スタイルを見つめ直し、日々向上して行こうとして行かないと、もうここまでで終わりになってしまうでしょう。夏までの巻き返しに期待したいと思います。 (2009年・春季大会) |