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南川 忠亮(西武)投手のルーキー回顧へ







 南川 忠亮(23歳・JR四国)投手 180/84 右/右 (高松工芸出身)





                「何が良くなったわけでもないような」





 南川 忠亮 は、2012年度の日本選手権に登場以来、毎年のように全国大会で登板するような、四国を代表する投手。そのため毎年のように見ているのだが、特に今年大きく成長したという感じは受けない。良いものは持っていても、何かピリッとしない、そんな感じの投手だった。


(投球内容)

本格派というよりは、少し肘の下がったスリークオーター。

ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ

 ちょっと腕が下がって出てくるせいか? ボールがナチュラルシュートしたりして動く球質。両サイドにボールを投げ分けて、相手の打ち損じを誘う。ボール自体の勢いはあるものの、球威でねじ伏せるとか空振りを誘うというよりは、バットの芯をズラしたり、内角を厳しく突いて詰まらせる投球を得意としている。ストレートのコマンド自体は、けして低い選手ではない。しかし今年の都市対抗は、際どい球をボールと言われたりしてリズムが掴めず、1回2/3で降板している。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 小さく横滑りするスライダーとのコンビネーションで、特に打者の空振りを誘うほどの球ではない。右打者外角一杯にこの球を決めてきたり、左打者内角を食い込ませてきたりと、この球のコントロールも悪く無い。むしろもう一つの変化球であるチェンジアップが、抜けることが多く決まらないことが多い。この球は右打者には使えず、左打者のみに使うことになる。そのため、右打者相手だとスライダーとの単調な配球でしかなくなる。

その他

 ランナーを背負っても、鋭い牽制を織り交ぜて来ることはない。クィックは、1.1~1.2秒と平均的。特に投球以外の技術に優れているということもない。

(投球のまとめ)

 特に微妙な駆け引きや投球術で勝負するタイプではなく、ボールをコーナーに散らせて来る。フォームが合わされやすいのか、コースに散った球でも打ち返されてしまうのは気になる。現状は、まだ二軍レベルの投手であり、プロの育成で味付しないと、戦力としては厳しいのではないのだろうか。





(投球フォーム)

即戦力としては厳しいだけに、どの辺を修正したら良いのか考えてみた。

<踏み出し> 
☆☆☆

 引き上げた足を、比較的高い位置でピンと伸ばしている。そのため、お尻の一塁側への落としは悪くない。身体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球にも無理がない。しかし腕の振り下ろしがスリークオーターなので、こういった球種が上手く変化しない可能性が考えられる。

 「着地」までの粘りは平均的で、身体を捻り出す時間は並。カーブやフォーク以外の変化球の曲がり・キレに特徵がないのは、この辺にも原因があるのかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブが最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。足の甲での地面への押し付けが浅い割には、ボールはそれほど上吊らない。その辺は、「球持ち」含めて、上手く制御できている気がする。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻を落とせていて無理がない上に、カーブ・フォークといった球種も投げて来ない。しいて言えば、シュートを無理に投げようと多投しなければ、それほど肘への負担は考え難い。

 腕の送り出しにも無理はなく、肩への負担も少ないはず。プロでは、タフなリリーフでの活躍などが想定され、そういった役割には極めて適している。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは平均的で、特に合わせやすいわけではない。しかし体の「開き」が早く、球の出処が見やすい。そのため球筋がいち早く読まれやすく、コースを突いたような球や球種が見破られやすいのではないのだろうか。

 振り下ろした腕は身体に絡んで来るなど、速球と変化球の腕の振りの違いは問題なさそう。ボールにも適度に体重が乗せられており、「体重移動」に大きな課題を抱えているようには見えない。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「開き」に大きな課題を抱えており、それ以外は並ぐらいだろうか。

 制球を司る動作は、足の甲の押し付けが甘い部分はあるものの、それだからと言って高めに浮くわけではないので気にしなくても。故障へのリスクが非常に少ないフォームだけに、ここは彼のフォームで1番推せる材料。


(最後に)

 現時点では、一軍で即活躍するというのは厳しいのではないのだろうか。そこを大学・社会人出の選手に一手間加えて使える戦力にするのが得意な、西武の育成力が試される。よりプロで特徵を出すために、腰が横回転なのを生かしサイドスローへの転向も、いずれは視野に入れているのかもしれない。

 まだまだ高卒5年目の23歳と若いだけに、1,2年後の成長に期待したい。個人的には指名リストに入れるほどの魅力は感じないものの、今の環境での大幅な上積みは望み難いだけに、プロ入りという選択は良いのではないのだろうか。


(2015年 都市対抗)