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仲尾次 オスカル(24歳・HONDA)投手 178/76 左/左 (白鴎大出身) |
「ようやく白鴎大時代の良い時に」 仲尾次オスカルは、白鴎大3年時の投球をできていれば、大学卒業時には指名されていただろう投手だった。しかし4年時の調子はイマイチで、HONDAに進んでからもピリッとしない投球を続けていた。しかしこの秋たまたま見たオスカルは、白鴎大時代3年時に魅せた、ボールの勢いを取り戻しつつあった。調子の波が激しそうな投手には見えたが、コンスタントにこういった投球ができれば、ドラフト指名されても不思議ではないと、この日のレポートで記している。そしてドラフト会議では、カープから6位指名され社会人3年目にして、ようやくプロ入りを果たすことになる。 (投球内容) 腕が突っ張って、遠回り軌道するアーム式のサウスポー。しかしそういった部分を抜きにしても、この選手の投球は魅力的。 ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 この投手のボールは、手元までグ~ンと伸びて来るとか、ピュッとキレて来るとか、そういったボールではない。しかしボール自体には勢いを感じさせ、アーム式でもけして棒球という感じはしない。1球1球は結構バラつきはあるものの、甘いゾーンには入らず適度にストライクゾーンの外に外にと散っている。そのため相手打者としては、的を絞り難いのではないのだろうか? 昨年も30イニングで4四死球と、四死球率は13.3%と極めて少ない。見た目の粗っぽさに比べ、四死球が少ないのも白鴎大の3年時の投球に似た傾向に。 変化球 スライダー・チェンジアップ 彼の一番優れた球は、チェンジアップだと言えます。速球と全く見分けのつかない腕の振りから、この球を投げ込めます。打者の空振りを誘うような、大きな変化ではありません。あくまでも相手のタイミングを崩す球ですが、左打者の内角にこの球を使うことができ、これには左打者は手も足も出ない特殊技術。 スライダーも、空振りを誘うような大きな曲がりではありません。しかし低め膝下に小さくキュッと曲がるので、実に実戦的。変化球が、甘いゾーンの高さに浮いて来ないところも、この投手の良さではないのでしょうか。 (投球のまとめ) 大学時代の良い時でも、ボールに勢いがあっても高めに集まるなど粗っぽい部分がありました。しかし球速が落ちて球が走らない時期を経験し、より打者に痛打を浴び難いようにするのには、どうしたら良いか追求してきた日々だと考えられます。そのため低めに変化球を集めたり、甘いゾーンにストレートを投げないなど、実戦的な術が身についてきたものと考えられます。 HONDAでも今年は、リリーフを任されるケースが少なくありません。それだけ、首脳陣の信頼の厚さが感じられます。昨年の防御率は、1.20 。今年は更に、安定感を増してきた印象があります。今のボールの走り・技術ならば、プロでも全く通用しないということはないのではないのでしょうか。 (投球フォーム) では今度は、技術的な観点で、この選手のフォームを見てゆきましょう。 <広がる可能性> ☆☆☆ 引き上げた足を地面に向けて落としており、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせません。そのためカーブで緩急を利かしたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種には適さない投げ方。 それでも「着地」までの粘りはよく、思ったほど淡白なフォームではありません。体を捻り出す時間を確保できており、曲がりの大きな変化球や鋭い実戦的な変化球を、将来的にも期待できるかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは内に最後まで抱えられており、両サイドの投げ分けは安定。足の甲の地面への押し付けは浮きがちで、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのかもしれません。そのため速い球を投げることはできても、あえてそういった球は使わないことが多いのかもしれません。 腕も体から遠回りに外旋して、ブンと腕を振ってきます。それだけ細かいコントロールは望み難いのですが、上手くボールが散りながらもストライクゾーンには集めてきます。粗っぽくみえて、四死球の少ないのが特徴。 <故障のリスク> ☆☆ お尻は落とせませんが、カーブやフォークといった球種は投げないので、肘への負担は少なそう。 それよりもテイクバックした時に、背中のラインよりも後ろまで肩が入り込むこと。腕の送り出しの際に、かなり角度をつけて無理があること。腕の突っ張ったアーム式であることを考えると、肩への負担は相当大きいのではないか? プロでリリーフで重宝されればされるほど、心配になるのは確かです。ある程度、起用には配慮して欲しい選手です。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 「着地」までの粘りが作れており、打者としては合わせやすくはありません。また体の「開き」も抑えられており、甘く入らなければ痛打を浴び難いのではないのでしょうか。 また腕を非常に強く振れるので、速球と変化球の見極めは困難。実際チェンジアップは、相当プロの打者でも苦労するのでは?またボールにもしっかり体重が乗せられており、腕のしなりがなくても勢いのある球を投げ込むことができています。 (フォームのまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の部分において、大きな欠点はありません。特に「開き」「着地」「体重移動」の部分には優れており、実戦的なフォームだと言えます。 気になるのは、肩への負担が大きいフォームなこと。そしてコントロールも粗っぽいフォームに見えますが、実際の成績を見る限り、許容範囲内であり、その点は気にすることはないのでは。 (最後に) カープは、オスカルの状態が復活ことを見極め、先入観無しに指名したのは興味深い指名だったと思います。肩がどのぐらい持つのかという不安はありますが、今の状態をキープできれば、意外に即戦力としてやれるんじゃないの? という期待は抱きます。1年目から、どのぐらいの成績を残すのか、密かに期待してみたいオススメ選手です。 蔵の評価:☆☆ (下位なら面白いと思う) |
仲尾次オスカル(白鴎大)投手 178/75 左/左 (カントリーキッズ出身) |
「ボールの勢いは一級品!」 それほど体は大きくないのですが、左腕から非常に勢いのあるボールを投げ込んできます。そういった素材としての魅力はあり、今年はドラフト候補として春先から注目を集めることになりそうです。 (投球内容) ストレート 常時140キロ前後~MAX90マイル(144キロ) 私が観戦した秋の平成国際大戦では、多くの球が140キロ台を記録するなど、非常に速く感じられる球を投げ込んでいました。ただその球筋は安定せず、高めに集まることが多いのが気になります。ただボールに勢いがあるので、返って打者にとっては厄介な球筋になっていました。 変化球 スライダー・シュート系 変化球にも、細かいコントロールはなく、その曲がり・活かし方もレベルが高いとは言えません。特に外に逃げて行くシュート系の球は、スクリューのように沈むわけでなく、落ちずに少し逃げる程度。現状は、ストレートに押すピッチングスタイルに、否応なしになってしまいます。これとは別に、横浜市長杯では、縦の変化球も投げていました。 その他 こう考えると、ボールの勢いで押せるレベルの相手ならばよいが、見極めが出来たり、スピードボールに対応できる打線だと、正直厳しいのではないのだろうか。 制球だけでなく、投球も駆け引きや「間」を意識するといったことはなく、淡々と勢いのあるボールを投げ込むタイプ。現状は、素材の良さを買って、育成枠レベルの選手なのかなといった感じはしてくる。 (成績から考える) 今度は、実際にこの秋に彼が残した成績を元に、特徴を考えてみたい。この秋の成績は 9試合 4勝1敗 38イニング 13安打 7四死球 48三振 防御率 1.18 1、被安打は、イニングの70%以内 ◎ 被安打率は、34.2% と圧倒的な少なさを誇っている。ボールの威力が勝り、相手につけいる隙を与えなかったのだろう。これだけ低い被安打率は、そう簡単には見られない。 2、四死球は、イニングの1/3以下 ◎ 四死球率も、18.4%。と、この数字も極めて低い。ストライクゾーンの枠の中ではアバウトでも、四死球で自滅するような脆さはないことを示している。 3、奪三振は、イニングの1.0前後 ◎ 先発投手ながら、1イニングあたり1.26個と破格のペースで三振を奪えている。私が観た試合では、三振を奪えても高めの勢いのあるストレートといった感じだったが、これだけの奪三振を奪えていることをみると、もう少し変化球でも三振が奪えているのかもしれない。横浜市長杯のメモでは、フォークのように縦の変化球も投げていたと記してあった。 4 防御率は、1点台が望ましい ◯ この秋の防御率は、リーグ1位の 1.18。 まあプロを決定づけるならば、0点台ぐらいの絶対的な領域も望みたいが、それは今年に期待したい。 (データからわかること) データから見ると、実際の投球以上に、この秋の彼の投球が凄かったことが伺える。リーグレベルの関係もあるが、これほど絶対的な数字を残せる投手は、中々お見受けできない。関甲新学生野球連盟では、ここまでの成績を残す選手が、最近ではいたのだろうか? ただ残念なのは、神宮代表決定戦だった横浜市長杯では先発することなくチームが破れてしまい、全国の舞台に立てなかったこと。最終学年では、ぜひ大学選手権出場を実現して欲しい。 (今後は) 彼の残した成績をみると、私が観た試合よりも普段はまとまっているのかな?という印象は受けた。ボールの勢いと残した実績の素晴らしさは確かであり、これで大学選手権あたりで好投したら、一躍上位候補にまで浮上するかもしれない。 ただ私の観た試合では、素材の良さは認めるものの、まだまだ素材型の域は脱しておらず、このままだったら育成枠レベルぐらいかなという印象だった。その辺の能力の見極めを、今年は春先から行なって行きたい。いずれにしても、プロを意識できる選手であるのは間違いないだろう。 (2011年 秋季リーグ戦) |