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野田 昇吾(西武)投手のルーキー回顧へ







 野田 昇吾(22歳・西濃運輸)投手 167/73 左/左 (鹿児島実業出身)
 




                   「厳しいと思うけれどなぁ」





 独特のインステップから繰り出す球筋と高校時代から培ってきたマウンド度胸に特徴 がある左腕で、経歴的には鹿実の先輩 杉内 俊哉(巨人)左腕に似た選手との印象を受けます。しかし実戦力・実績という意味では、社会人時代の杉内と比べると、大きく見劣りします。


(投球内容)

 今年の都市対抗では、僅かな登板でした。また高校時代は、マウンド捌きの好い好投手タイプでした。

ストレート 130キロ台後半~MAX144キロ

 独特のインステップして投げ込んでくるので、左打者にとっては身体に近いところから腕が出てくるので恐怖感を覚える球筋。ボールも両サイドに散らすコントロールはあるのですが、ポンポンとアウトを取ったあとにアッサリ四球を出してしまうなど、本当のコントロールはないなという感じ。じっくり観られた時は、正直どうなのか? という不安はよぎります。

 ボールの勢い・球速も特筆すべきものはなく、このインステップの球筋を左から投げ込むことに価値のあるタイプではないのでしょうか。

変化球 スライダー・チェンジアップなど

 小さく横滑りするスライダーとのコンビネーションで、その他にチェンジアップ系のボールがあるように思います。高校時代は他に、カーブなども投げていた記憶があります。殆どの変化球はスライダーで、特に相手を仕留めるような絶対的な球種はありません。

その他

 高校時代上手く見えた牽制も、モーションが大きくあまりイマイチ。クィックは、1.20~1.25秒ぐらいとやや遅いのですが、左投手なのでこのぐらいでも問題はありません。フィールディングもまずまずで、元々野球センス・運動神経には優れたタイプだったと記憶します。しかしレベルがあがると、けして上手い部類ではなかったのだなと痛感させられました。

(投球のまとめ)

 高校時代のマウンド捌きの良さ、マウンド度胸は健在ですが、より実戦的になったというよりもパワーアップしたぶん粗っぽくなった印象。高校時代は典型的なゲームメイクできるタイプの先発投手でしたが、今はショートリリーフタイプの勢いで押すサウスポーといった感じでしょうか。

 その投球がまだファームレベルであり、ある程度プロで1,2年漬け込んで使えるようにするという、西武お得意のパターンを想定した上での指名だとは思います。即戦力としては厳しく、まだ若いので数年先を見越した指名としか思えません。



(投球フォーム)

現状まだ厳しいのですが、フォームを分析して将来像を考えてみたいと思います。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻は三塁側(左投手の場合は)には落とせず、カーブで緩急を使ったり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種は厳しいと考えられます。

 前にステップさせることで、「着地」のタイミングは多少遅らせることができていて平均的。体を捻り出す時間としては並ですので、今後どのような特徴を出してゆくのか注目されます。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 グラブは最後まで内に抱えられているので、両サイドの投げ分けは安定。しかし足の甲の地面への押し付けが浮いてしまっているので、力を入れて投げると上吊りやすい。それでも「球持ち」が好いので、ある程度指先のコントロールが効くことで、四球連発という事態は防げているようには思えます。

<故障のリスク> 
☆☆☆

 お尻は落とせませんが、カーブやフォークなどは殆ど投げないようなので、肘への負担は少なそう。

 腕の送り出しを見ていても、それほど無理は感じず肩への負担も少ないのでは。力投派には見えますが、悲観するほどではないように思います。

<実戦的な術> 
☆☆

 「着地」までの粘りは平均的ですが、体の「開き」が早く、コースを突いた球でも打ち返される危険性を感じます。

 また腕が短いのもあると思いますが、振り下ろした腕が身体に絡んで来ないなど、速球と変化球の見極めという意味でも心配が。踏み込んだ足がブロックしてしまい、前への体重移動を阻害して、充分にボールに体重が乗せられていません。そのため打者の手元まで、思ったほど好い球が行っていないように見えます。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に課題があります。しかしながら、「球持ち」の良さには好いものがあります。

 故障のリスクはそれほど感じませんし、足の甲の押し付けが浮いてしまうところを、「球持ち」の良さを活かした指先の感覚でコントロールを補ってはいます。高校時代の実戦派というイメージでしたが、社会人・プロレベルだと課題も多く、むしろ素材型のまま来てしまったのかなと思えてしまいます。


(最後に)


 3位という高い評価ですが、即戦力として一年目からバリバリに活躍というのは厳しいように思えます。高卒4年目とまだまだ若いので、西武の育成力で実戦的な投手に仕上げてゆくということを狙った指名だと考えられます。

 そのため真価が求められるのは、2年目、3年目といったところであり、その時にどのぐらいの投手に育っているのかというのがポイント。個人的にはまだ「旬」ではないので、アマに残った方がと思いました。しかし足りないところを、プロの育成力に託すというのもありなのかもしれません。しかしながら個人的には物足りなく、指名リストには載せないことに致します。


(2015年 都市対抗)









野田 昇吾(鹿児島・鹿児島実)投手 167/63 左/左 

最終寸評へ

2011年 選抜レポート




(どんな選手?)

 夏の甲子園に続いて、神宮大会でも九州代表として全国大会に駒を進めてきました。ただ夏の大会では、常時135キロ級の球を投げ込んでおりましたが、神宮大会では先発と言うこともあり、常時120キロ台後半程度に留まりました。以前よりも少し大人しくなってしまった感じです。

(投球内容)

 キレのある速球も常時125~後半程度で、以前ほどボールに勢いを感じませんでした。変化球は、カーブ・スライダー・スクリューと一通りものがあります。牽制も鋭く、フィールディングの動きもまずまずで、クィックも1.2~1.25秒前後と一応ものはあります。そういった野球センス・マウンド捌きには優れたものを持っています。

 ただ真ん中近辺には集まりませんが、結構球速を抑えている割に、ボールが高めに浮いたり細かいコントロールはないのかな?と言う印象は受けます。その辺は、公式戦・練習試合共に、イニングの1/3を超えるペースで四死球を出しているところからもわかります。

(投球フォーム)

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしているので、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としは悪くありません。ただ着地までの間が取れておらず、粘りがあまりないところが、見分けの難しいカーブの切れ味や縦の変化の今後の修得を考えると不安要素ではあります。

 内に抱えていたグラブが最後ほどけてしまい、両サイドの制球を微妙に狂わせます。また足の甲の押しつけが、つま先のみとなっており、ボールが高めに浮きやすい要因を作ります。また腕も無理に高い位置から振り下ろそうとしており、身体への負担も大きく故障の可能性も大きいと考えます。

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、「開き」こそ悪くありませんが「着地」までの粘りや「球持ち」「体重移動」と課題を抱えており、けして実戦的なフォームとは言えません。上のレベルを意識すると、まだまだ技術的に多くの課題を抱えていることがわかりました。

(今後は)

 170センチ弱で、キレはあっても球威のあるタイプではないので、ドラフト候補と言うよりは大学などに進んで、実戦力を磨きたいところです。また制球力や実戦的なフォームと言う観点でも、まだまだ課題の多い選手。一冬超えて、この辺の欠点をいかに改善できるのか注目したいところです。


(2010年 神宮大会)



(どんな選手?)

 小柄な左腕投手なのですが、非常にボールにキレと勢いを感じさせる投手です。九州大会を制して神宮大会にやってくるので、その成長した姿を見られることになるのではないのでしょうか。

(投球内容)

 甲子園ではリリーフでの登板で、コンスタントに135キロ級のストレートを投げ込んでおりました。変化球は、左腕らしいカーブとスライダー。球に切れがあり、ボールに勢いのある実戦型です。

 制球はアバウトなのですが、ポンポンとテンポよくボールを投げ込んで来るマウンド捌きの良さがあります。左腕らしく牽制は上手く、クィックは投球によって波はあるのですが、速い時は1.2秒前後と基準レベルで投げ込んできます。投球センスがあると言うよりは、野球センスの高い選手なのだと思います。

(今後は)

 詳細なピッチングは、恐らく神宮大会の時にハッキリすると思います。先輩でエースナンバーだった用皆峻投手も、同じように小柄で実戦的な左腕でした。そういった投手から学んだことは少なくなかったはずです。この時期の高校生だと、なかなか攻略は困難な投手だと思いますが、更に進化を続けて行って欲しいと思います。高卒プロとかそういったタイプではないと思いますが、大学や社会人など、これからもトップアマでやって行ける可能性を秘めた素材です。全国のレベルを肌で感じて、更なる高嶺を目指して欲しいと思います。

(2010年 夏)