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竹安 大知(21歳・熊本ゴールデンラークス)投手 183/80 右/右 |
「あの竹安が・・・」 竹安 大知 を知ったのは、彼が伊東商の時だった。知り合いのスカウトが、オススメの選手として教えてくれていたのが、この竹安 。高校時代の竹安は、肘痛の影響もあり、なかなか全国的には知られた存在ではなかった。まさに、夏の大会に向けての隠し玉的存在だった。しかし夏の静岡大会に足を運んだが、やはり肘の調子が芳しくないのか? 常時120キロ台後半~MAXで84マイル(134.4キロ)止まりでしかなく、プロ入りを意識できる状態ではなかったのを覚えている。 そんな竹安が、熊本ゴールデンラークスに進み、存在感を示していることを知る。そして社会人2年目には、HONDA熊本の補強選手として、都市対抗に1/3イニングながら登板。確かその年の春先のソフトバンク3軍との交流戦でも登板を確認したと思うが、社会人3年目の今年は確認できずじまいだった。 訊くところによると、昨年秋に手術をし、復帰したのはこの秋からという状況だという。その内容が素晴らしかったのか? あるいは、その前のパフォーマンスで彼の素材の素晴らしさを買ってでの指名なのかわからない。しかし阪神は、3位指名という高い評価で彼を指名したのは、期待の現れだろう。 (投球内容) 手足の長い投手体型から、ゆったりとしたモーションで投げ込んで来ます。非常に柔らかさと奥行きが感じられる素材で、イメージ的には、岩隈 久志 に似たものを感じます。 ストレート 常時140キロ台~MAX145キロ 肘の不安が無くなっていたのか、都市対抗での登板では140キロ台のボールを連発。伸びのある球を、バシバシ投げ込んできます。高校時代のイメージからしても粗っぽいタイプではなく、バランスの取れたフォームから枠の中に投げ込んで来るイメージがあります。 変化球 スライダー・カーブ・シンカー? 都市対抗では観られませんでしたが、伊東商時代は横滑りするスライダー、ブレーキの効いたカーブを投げ込む筋の好いタイプ。また都市対抗で見せた、独特の沈む球はシンカーなのでしょうか? ちょっと、面白い変化をしています。 (投球のまとめ) 素材としては素晴らしいものを持っており、阪神がこの状況でも3位指名したのは頷けます。来年回復しアピールしてしまったら、上位指名じゃないと獲れないという危険性を感じたからではないのでしょうか。しかし現状、どのぐらいのパフォーマンスを示せるかは不明です。 あと高校時代のレポートに、このようなことを書きました。 「キャッチボールなどの時の投げ方が、実にいい加減な部分。一つひとつの動作がが、好きでやっていると意味を噛み締めてやっている感じがせず、仕方なくやらされている感が強く感じられた。野球で飯を食ってゆこうという選手のボールの扱い方ではないなと思えた部分が、今後の彼の成長にどうかかわって来るのか注目したい。」 これを読む限り、高卒選手にありがちな意識の浅さみたいなものが、何処まで社会人で解消されているのか? その辺の不安も残ります。 (投球フォーム) これだけではサンプル不足なので、社会人2年目の映像ながら、フォーム分析をして将来像を考えてみます。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ お尻の落としには甘さは残るものの、比較的高い位置でピンと足を伸ばせており、それなりに体を捻り出すスペースは確保できています。カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球の習得にも無理はありません。 「着地」までの粘りもそれなりで、体を捻り出す時間も確保。ブレーキの好いカーブや独特のシンカー系のボールを投げ込むように、好い変化球を習得して行ける下地は整っています。 <ボールの支配> ☆☆☆ グラブは最後まで内に抱えられており、両サイドの投げ分けは安定しやすいはず。足の甲での地面への押し付けが遅く、ボールが上吊りそう。それを「球持ち」の良さで、上手く抑え込んでいる感じはします。実際細かいコントロールがどの程度なのかはわかりませんが、コントロールで苦しむといったタイプではないのでしょう。 <故障のリスク> ☆☆☆ お尻はある程度落とせるフォームではあったのですが、高校時代から肘痛に悩まされ、故障の回復に苦労しました。フォーム的にはそれほど肘への負担を感じませんが、天性の柔らかさが仇になってしまったのかもしれません。 腕の送り出しをみても、肩への負担も少なそう。ゆったりとしたモーションから投げ込むように、消耗も大きくはないように思います。あとは、肘の影響がどのように出るかではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆☆ 「着地」までの粘りも悪くないので、オーソドックスなフォームも合わされやすいことはなさそう。体の「開き」も抑えられているので、コースを間違わなければ、痛手は食らい難いと考えられます。 長く柔らかい腕は、投げ終わったあと身体に絡みます。そのため、速球と変化球の見極めは困難。ボールにも体重を乗せられており、打者の手元までしっかりボールが伸びてきます。 (投球のまとめ) 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点では、すべてに欠点がなく実戦的なフォームであることがわかります。 コントロールを司る動作には、足の甲の押し付けが遅いこと。肘を故障したことへの不安という部分が、マイナスポイントか。 (最後に) 残念ながら今年の投球を確認できていないので、現状どのような状態なのかわかりません。そのため、評価付けはできないことをご了承ください。 しかしこのような状況でも、あえて3位指名に踏み切ったのは、彼の素材の良さと高卒3年目という若さに賭けたのだと思います。もう一つ心配なのは、プロとしての気構えがどの程度養われているのかという部分。阪神の指名となると、タイプは違いますが、田面 巧二郎 の時を思い出します。 果たして阪神の育成力で、その才能を爆発させることができるのか、密かに期待して見守りたい一人。一年目からバリバリにというよりも、少し長い目で見守って欲しい選手です。 (2014年 都市対抗) |