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福 敬登(中日)投手のルーキー回顧へ







 福 敬登(23歳・JR九州)投手 178/85 左/左 (神戸西出身)





                    「打順一回りまでは素晴らしい」





 今年の都市対抗・日本新薬戦で先発し、序盤素晴らしいボールを投げ込んでいた 福 敬登 。しかし交代した4回あたりから、ガクッとボールの勢いが落ちるなど、スタミナの無さを露呈した。序盤戦のボールは、まさに社会人NO.1左腕ではないかと思わせるものがあったが、危うい一面も同居している。


(投球内容)


 ランナーがいなくてもセットポジションから投げ込み、非常にオーソドックスなフォームのサウスポー。

ストレート 常時140キロ台~MAX146キロ

 球威と勢いを兼ね備えた、素晴らしいストレートを両サイドの投げ分けています。ボールもそれほど上吊りませんが、甘くない球でもはじき返されてしまうように、合わせされやすいのが欠点。特にボールの勢いが落ちて来ると、一気に捉えられてしまうのでしょう。

変化球 スライダー・チェンジアップ

 切れ味鋭い、スライダーとのコンビネーション。この球が良いのは、曲がりだけでなく低めに集まり浮かないところ。投球のほとんどが、速球とスライダーで組み立てられるのも、このスライダーのキレが良いからでしょう。

 他に130キロ台のシュートのようなボールを投げ込んできます。一応チェンジアップとの話ですが、ほとんど変化は感じません。そのためあまり、この球を使ってきません。フォームが合わされやすい以上に、球筋が右打者の中に中にと限られるので、打者としては山が張りやすいのかもしれません。しかし都市対抗で打たれていたのは、実は右打者ではなく、左打者に対する高めに甘く入ったストレートだったのです。

その他

 特にランナーを背負っても、鋭い牽制を入れてきたりはしません。それでいってクィックもできないので、走者を出すと走られてしまいます。こういった投球以外の基礎が、思いの外できていないところが気になります。

(投球のまとめ)

 ボール自体は素晴らしいのですが、スタミナの無さが気になります。またクィックができないなど、思いのほか基礎的なことが出来ていないのかな?という意外な感じがしました。元々この投手は、130キロ台のまとまったタイプの好投手。それだけに、そういったセンスには優れていたと思っていたからです。

 そういった意味ではプロ入りしても、一年ぐらいはファームでじっくり基礎的なことを教え込まないといけないかもしれません。ドラフトにおける位置づけとしては、公文 克彦(大阪ガス-巨人4位)みたいな感じではないのでしょうか。





(投球フォーム)

次はフォームを分析してみて、彼の将来像について考えてみたい。

<広がる可能性> 
☆☆☆

 引き上げた足は、比較的高い位置でピンと伸ばされており、お尻は三塁側(左投手の場合)に落ちている方だとは思います。そのため体を捻り出すスペースはそれなりで、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化球おを投げることも無理がないとは考えられます。しかし実際には、そういった球は観られません。

 また「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらいでしょうか。それほど捻り出すことなく投げられる、スライダーのキレには見るべきものがあります。しかしその他の変化球がイマイチなのは、こういった理由があるからかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆

 投げ終わったあと抱えていたグラブが後ろまで抜けてしまっていますが、両サイドの投げ分けは悪くはありません。ただし時々、甘く入ることがあります。また足の甲での地面の押し付けも浅く、力を入れて投げてしまうと上吊りそうですが、そういったこともありません。「球持ち」がよく、意外にボールを押し込むことができているからではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆

 お尻はある程度は落とせますし、カーブやフォークといった球種も投げないので、肘への負担は少ないでしょう。

 振り下ろす腕の角度はありますが、それほど送り出しに無理は感じません。そういった意味では、肩への負担も少ないのでは?それほど力投派という感じにも見えませんし、故障のリスクは低いのではないかと考えます。

<実戦的な術> 
☆☆☆

 「着地」までの粘りは早過ぎることはないと思いますが、体の「開き」はやや早く見えます。この辺が、いち早く球筋を読まれてしまい、苦になくはじき返されてしまう要因ではないかと。

 腕は振れてはいるのですが、手が短い体型なので体には絡んできません。しかしながらボールには、上手く体重が乗せられており、打者の手元まで生きた球が投げられています。

(フォームのまとめ)

 投球の4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」の観点で、「開き」に課題があり、「体重移動」に良さがあるフォームだと言えます。すなわち合わされやすいけれど、ボールの質・勢いには良さがあるということ。

 故障のリスクは低く、コントロールを司る動作は良く無い割には、球筋は安定しているように見えます。しかし左打者に対する高めに浮いたストレートを打たれるケースが目立ちます。


(最後に)

 極端に失速するスタミナの無さ、合わされやすいフォーム、クィックができないなどの基礎的な能力不足が気になります。また左投手ながら、左打者が苦にならないところは、残念でなりません。

 持っているボール自体は素晴らしいのですが、一年ぐらいファームで漬け込む必要がありそうです。このJR九州というチームは、1位じゃないと選手を出さないなど、選手を出すのに条件が厳しい会社だとも言います。現状の彼の場合、恐らく4位前後ぐらいが妥当の評価ではないかと。果たしてその条件で、会社からのO.Kは出るのでしょうか?


蔵の評価:
☆☆ (下位指名なら)


(2015年 都市対抗)