15ky-8
茂木 栄五郎(早稲田大)三塁 171/75 右/左 (桐蔭学園出身) |
「一躍上位候補に」 昨秋に六大学のリーグ戦で首位打者を獲得し、この春も5本塁打を含むリーグ2位の打率。更に大学選手権では、大会MVPの大活躍で、一躍上位候補にまで浮上した 茂木 栄五郎 。果たして何がそこまで変わったのか? 改めて考えてみた。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間は、左打席から3.9~4.2秒で走り抜けることが多い。おおよそ4.0秒前後ぐらいと考えられ、プロとしてもまずまず速いレベル。しかしシーズン5盗塁を記録することはあったが、今春は0盗塁。少なくても現時時点では、それほど盗塁を仕掛けてガンガン走力を魅せつけるタイプではない。 しかし場面、場面では、その俊足ぶりを示すことがあり、走塁でキラリと光る時がある。盗塁はそれほど期待できなくても、試合の局面次第ではナイス判断のプレーは期待できるのではないのだろうか。 三塁手としては、打球への反応が素晴らしい。そのため非常に広い守備範囲を誇り、高校時代からショートゴロを横からかっさらってサードゴロにしてしまうケースが多かった。ただしドラフト候補の三塁手としては平均的だが、プロの三塁手としては地肩がけして強い方ではない。難しい体勢からの送球ということが求められる場面になると、その辺は顕著に出る可能性は否定できない。 高校時代からショートとしては物足りなかったが、三塁手としては非常にうまかった。その評価は今も変わることはなく、プロのスカウトは、二塁手としてどうかと考える向きが多い。確かにその反応の良さ、動きの良さからも、守備範囲の広い二塁手になれる可能性は充分にある。その一方で、ある意味ショート以上に地肩の強さが求められる場面が多い二塁というポジションを任せた時に、物足りなさを感じてしまう場面が多くなってしまうかもしれない。あとオレがオレがのスタンドプレーヤーだけに、よりチームプレーが求められるニ遊間というポジションが、彼にとってプラスに出るかと言われると不安の方が大きい。個人的には、センターあたりを任せるのが、一番彼の持ち味が出るのではないかと考えている。 (打撃内容) 今春の一番の成長は、ボールの下にバットを潜り込ませ、打球に角度を付けるのが上手くなったという印象が強い。そのため春のリーグ戦では、5本塁打というスラッガー顔負けの数字を残している。それでいて、率も勝負強さも兼ね備えていたのだから、評価が高くなって然るべきだと言えよう。 <構え> ☆☆☆ ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップを下げて構えている。腰も座らずに、実に脱力してリラックスすることを心がけている。グリップを高く添えて構えていたのを、始動するまではグリップを下げているところが昨年からの違い。両目でしっかり前を見据えられているところは、相変わらず素晴らしい。 <仕掛け> 遅めの仕掛け 投手の重心が下がりきったあたりで動き出し、つま先立ち。そこから「遅めの仕掛け」ぐらいに、再び動き出す。このように一度チョンとポイントを作ってから再度ステップし直す選手に多いのは、二度目の始動のタイミングがリリース直前になり遅すぎてしまうこと。しかし彼は、許容範囲内のタイミングで再始動でき、この春の好調さを支えている。 「遅めの仕掛け」というのは、通常長距離打者か生粋の二番打者が採用するタイミングであり、この春の内容をみれば、彼が長距離の類に入ってきているということになる。 <足の運び> ☆☆☆☆ 足を軽く上げて、ベース側に踏み込んで来る。始動~着地までの「間」はないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められる。しかしそういったバッティングは、彼には合っているのかもしれない。ベース側にインステップすることで、外の球をキッチリ叩ける体勢ができている。そして踏み込んだ足元はブレず、壁をしっかり作りながらスイングできるので、外の球を苦にしない。 ただし左打者がインステップすると、どうしても内角が窮屈になり率が残し難い。実際彼はあまり内角は得意ではないと思うのだが、内角の球の強引に巻き込むので、長打を放ちやすいのだ。そこが、相手に付け入る隙を与えない大きなアドバンテージになっている。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは自然体で、速い球に立ち後れないで対応できている。元々インサイド・アウトにバットが出てくるタイプではないので、インステップも相まって、内角の捌きは得意ではないはず。 外角の球に対しては、バットの先端であるヘッドを立てて残していられるので、しぶとい打撃を魅せます。内角の球は強引に引っ張り、外角の球にはセンターから左中間方向に素直にはじき返します。 上記でも述べましたが、昨年よりもボールの下にバットを潜らせる感覚が磨かれ、ボールに角度をつけることができました。また非常にヘッドスピードも鋭いですし、スイング後半の孤も大きく取れて打球を運ぶことができています。 <軸> ☆☆☆ 足の上げ下げは大きくないのですが、目線の上下動は平均的。体の開きは我慢できており、軸足には強さこそ感じませんが粘りが感じられます。 (打撃のまとめ) 始動が若干早くなることで、上手く「間」が取れるようになってきました。バット上手く潜り込ませることで、打球に角度が付けられるようになっています。 天性の反射神経が持っており、始動が遅くてもそれを使いこなせる確かな資質があります。技術的には粗っぽい部分もあるのですが、元々持っていたポテンシャルの高さで上手く扱うことができています。ヘッドスピードも速く、フォローのとれたスイングは、まさにプロ仕様だと言えるでしょう。ただし非常に微妙なところでやっているスイングなので、二度目のステップが遅れないことを、常にチェックポイントとすべきではないのでしょうか。それが出きれば、好調期間も長く維持できる可能性が増します。 (最後に) ただしこの選手は、いざ自チームに入れようと考えると使いどころが難しい。プロの三塁手としては、スケール的にどうか(長打力の部分で)。それでいて二塁や外野というコンバートが可能かどうなのか?という不安が残ります。 三塁がウイークポイントの球団であり、即戦力でそこを埋めたいという明確なものを持った球団じゃないと、なかなか実際のところ上位指名はし難いのでは? 能力は誰もが認めるものの未来像が描き難く、結局は3位ぐらいまで残りそういった可能性も否定できません。 一年目はともかく、プロの環境・スピードに馴れた時に、3割・20本ぐらい毎年残せる器があると評価するのであれば、将来的にも三塁として期待できるのではないのでしょうか。それだけの資質は、私はあると評価します。またそういった需要のある球団に、ぜひ進んで欲しいと願います。その高い資質は、更にプロの世界で活きることでしょう。 蔵の評価:☆☆☆ (2015年 大学選手権) |
茂木 栄五郎(早稲田大3年)三塁 171/75 右/左 (桐蔭学園出身) |
「潜在能力は相当高い」 桐蔭学園時代から、体は小さくても持っている資質は相当高いと感じさせる選手でした。あまりにもチームでは突出してしまうスタンドプレーヤーでしたが、その有り余るエネルギーを、ようやく六大学の舞台でも発揮できつつあるように感じます。改めて 茂木 栄五郎 とはどんな選手なのか考えてみましょう。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間を、コンスタントに3.9秒台~4.0秒ぐらいで走り抜ける脚力があります。しかしシーズン最多盗塁は、3年春の5盗塁と、まだまだその脚力が充分活かしているとは言えません。 三塁手としては、非常に動きの良いプレーが目立ちます。そのため打球への反応・守備範囲の広さを誇りますが、地肩があまり強くないのが物足りません。本当ならば、ニ遊間を担って欲しい素材ではあるのですが、そこまで安定感がニ遊間ではなく、結局プロでは三塁手とか外野手という判断になりそう。天性の反応、スピードがある選手なので、外野手としても、それなりの選手にはなるとは思うのですが。 (打撃内容) この秋は、打率.514厘で首位打者を獲得。この秋は、どんな球でも素直にバットが出る、そんな感じがしました。けしてオーバーフェンスを連発するタイプではないのですが、野手の間を抜けてゆき、自慢の快足で二塁打・三塁打が多いタイプだと言えるでしょう。また気持ちを全面に出す、ファイターだと言えます。 <構え> ☆☆☆ ほぼ両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・全体のバランスとしては並ですが、両目でしっかり前を見据えられているのと、打席ではリラックスして柔らかさが感じられるところは良いところ。 <仕掛け> 遅すぎ 一度ベース側につま先立ちし、本格的に動き出すのはリリース直前という、遅すぎる仕掛けを採用。ここまで遅いと打てる球が限られてしまうのが、なんとも気になります。 <足の運び> ☆☆☆ 始動~着地までの「間」がないので、完全に点のスイングになります。あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない決め打ちが求められます。左打者ですが、ベース側にインステップ。このことにより、外角の球を意識しているのがわかります。踏み込んだ足元はブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも喰らいつけます。 気になるのは、左の好打者(アベレージ重視)タイプがインステップすると、どうしても率が残り難いということ。最初の一歩目が遅れる分、足の速さを活かせない。右投手の内角に食い込んで来る球に苦労する、そういった理由かもしれません。 <リストワーク> ☆☆☆ 素晴らしいのは、打撃の準備である「トップ」を作るのが自然体で、リストワークが力みなく使えること。バットの挿入角度は良いとは思わず、トップ~インパクトまでスイング軌道にはそれほど関心はしません。それでもバットの先端であるヘッドを立てて残すことで、外角低めの厳しい球でも上手くフェアゾーンにボールを落とす粘りが観られます。 <軸> ☆☆☆☆ 足の上げ下げは小さいので、目線が上下動が少なくボールを追うことができます。体の開きは我慢出来ていますし、軸足にも粘り強さが感じられます。低めの球に、実に上手く対応します。 (打撃のまとめ) 天性のリストワークの柔らかさを感じますし、けしてひ弱さな選手ではありません。ボールに瞬時に対応できる才能は天性であり、それは高いレベルになればなるほど引き出されるのではないのだでしょうか。ようやく尻に火がついたのは、3年秋ということなのでしょう。問題は、このモチベーションを、最終学年でも維持できるのかということ。爆発力がある分、その反動も大きいのではないのでしょうか。 (最後に) 持っている資質だけならば、早稲田の先輩であるメジャーリーガー・青木 宣親 にもヒケを取りません。問題は、三塁手にしては長打力不足、ニ遊間を守りには安定感に欠けるという評価されずらい状況にあること。 肩があまり強くないので、外野手としての魅力も薄いのですが、将来的には、センターかレフトあたりのポジションンに落ち着くことになるのではないのでしょうか。本人が順位にこだわらずにプロ入りを希望すれば、大学からの指名は充分期待できるでしょう。あまりアマでチマチマというタイプではないので、文句なしの数字を残しプロへと羽ばたいて欲しい一人です。 (2014年 秋季リーグ戦) |
茂木 栄五郎(神奈川・桐蔭学園)三塁 171/65 右/両 |
「俺が俺がのスタンドプレーヤー!」 ノースリーからでも、甘いと思えば積極的に振ってきます。ボールもショート前の打球でも、横からかっさらってゆくようなプレーヤーです。ただそういったプレーを可能にしているのは、彼の野球人としての資質が、チームで図抜けていたからでしょう。けして悪気があるのではなく、その方が結果としてチームのためになる、そう信じているからに違い有りません。それを許したくなるような、高い資質の持ち主なのです。 (守備・走塁面) 一塁までの塁間は、3.9秒台で走り抜けてきます。まして三塁打などになると、11秒台前半という、驚異的なスピードを魅せます。この選手の場合、ベース側に踏み込んで打ちに行くので、最初の一歩目は遅れます。それでもこのタイムですから、実際はこの到達タイム以上の走力があると考えられます。ですから一塁到達は俊足レベルですが、出塁してからの走力はプロでも売りにできるぐらいの快速レベルかもしれません。 通常塁間の目安となるのは、 3.9秒弱 プロで足を売りに出来るレベル 4.0秒前後 足を売りに出来るのかは走塁センスにもよるが、プロでも俊足の部類 4.2秒前後 スカウトが、プロの基準と判断するタイム 4.3秒以下 プロの基準以下となり、割り引いて考える となる。 春は、遊撃手として試合に出ていました。ただ遊撃手としては、身のこなしはイマイチ。やはり三塁手向きなのだと思います。打球への一歩目が非常に素早く、三塁手としては極めて広い守備範囲を誇ります。三塁手としては非常に上手い部類だと思うのですが、地肩があまり強くない。その辺が、三塁手としても外野手としても、少し残念なところです。小回り・スピード感があるタイプなので、将来的には二塁あたりが担えると面白いと思います。 (打撃内容) 振り出しが遅いのですが、物凄いヘッドスピードで振り抜きます。かなり体ごとボールに向かって来るような、攻撃的なスイングをします。スタンドインのパンチ力を秘めますが、本質的には中距離打者なのでしょう。 <構え> ☆☆☆ 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップの高さは平均的です。腰の沈みは浅く、両目で前を見据える姿勢や全体のバランスも平均的。ただ打席では、リラックスして構えられているのが好いところ。 <仕掛け> 遅すぎる仕掛け 投手がリリースを迎えるあたりで始動する「遅すぎる仕掛け」を採用。そのため打てるタイミングは限られており、いろいろな球に瞬時に対応できるタイプではありません。あらかじめ狙い球を絞り、その球を一気に振り抜きます。 <足の運び> ☆☆ 小さくステップした足は、ベース側にインステップしてきます。そのため左の俊足選手でも、しっかり踏み込んできますので、最初の一歩目の走りだしは遅れます。ただその分、外の球でもキッチリ叩けます。 ただ残念なのは、インパクトの際に踏み込んだ足元が早く地面から離れてしまうこと。そう考えると、本当の意味で外角の捌きは、得意ではないように思えます。外角低めの球や外角低めに落ちるシンカー系には、充分ついて行けるのかは微妙でしょう。 <リストワーク> ☆☆☆ 打撃の準備である「トップ」を作るのは平均的。バットの振り出しも平均的なのですが、それを強靭的なヘッドスピードで補うタイプです。このヘッドスピードの鋭さは、高校球界でも指折りと言えるのではないのでしょうか。 <軸> ☆☆☆ 足の上げ下げは小さいのですが、自分からボールにぶつかってゆくタイプなので、けして頭の動きは小さくありません。体の開きも充分に我慢できているわけではありませんので、調子の波は激しいタイプではないかと考えます。 (打撃のまとめ) 一見粗そうに見えるのですが、レベルの高い投手相手でも確実にボールを捉えてきます。そういった対応力と、強靭なヘッドスピードなどを誇るポテンシャルは、相当高い資質の持ち主だと評価します。 ただ技術的には課題が多いので、六大学などでは最初苦労するかもしれません。そういった壁にぶち当たった時に、どのように乗り越えてゆくのか、個人的には大変興味があります。 (今後は) 全国大会には縁がありませんでしたが、その資質は全国トップレベルの打者です。足も高校球界トップクラスの能力があり、あとは守備や地肩などの問題があります。 そういった中で、いかに自分の付加価値を高めながら、技術の粗さを改善して行けるのか、彼の4年間は見物です。毎年優秀な人材が集まる桐蔭学園の中でも、久々に現れた大物ではないかと思います。ぜひ早稲田での4年間を、注視して見守りたいです。 (2011年夏 神奈川大会) |
県下を代表する強打者の一人。この日は、左中間を破るスリーベースヒットや一二塁間を破るヒットなど、幅の広い打撃を魅せてくれました。遊撃手としては、身のこなし、地肩共にそれほど光るものはないので、将来的には三塁あたりの選手だと思います。ただ二塁あたりがこなせるようだと付加価値が加わって良いのではないのでしょうか。また三塁到達まで11.2秒前後と言う俊足ぶりは、想像以上に走力もあるのだなあと言う印象。むしろその走力を活かして、将来は中堅手あたりも良いかもしれません。 ただ全体に気になったのが、守備でも打撃でも身のこなしが固い点。この辺が素材としてはモノ足りません。彼も有力大学などに進んで、野球を続けて行ける素材です。また今年の神奈川県下を代表する強打者だけに、今後は全国レベルでの活躍が期待されます。 (2011年 春季神奈川大会) |