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オコエ 瑠偉(楽天)外野手のルーキー回顧へ







 オコエ 瑠偉(関東一3年)中堅 182/76 右/右
 




                   「周りの見る目が変わっただけ」





 特にこの春~夏にかけてのオコエ瑠偉は、何か大きく変わったわけではない。自身初の甲子園の舞台で、快速ぶりを遺憾なく発揮。打って走って守ってのパフォーマンスを全国にしらしめることで、周りの見方が変わってきた。そしてU18のワールドカップでも、その能力を遺憾なく発揮。しかし春にも寸評を作成したが、何か劇的に彼が変わったようには思えない。変わったのは、周りの見る目の方だけで、彼は春からこんなプレーを続けてきた。


(走塁面:走塁偏差値 59.5)

 一塁までの到達タイムは、多少緩めて4.1秒強ぐらい。これを左打者に換算すると、3.85秒強ぐらい。しかし本気で走り抜ければ、右打席からでも4.0秒前後で走り抜けられるだろう。このタイムは驚異的で、一年でも右打者でそれだけのタイムを出せる選手は1人出るか出ないかぐらい。その脚力を遺憾なく発揮された三塁打では、脅威の10.75秒前後だから、プロでもトップクラスの脚力であることは間違いない。大きなストライドで、長く走るほど持ち味が発揮される。

 東東京と予選では、6試合で6盗塁。相手が隙を見せれば、すかさず次の塁に突き進む迷いのない走塁。技術云々を無視して、圧倒的なスピード能力で押し通す。いずれにしても、プロでも足を売りにして行けるだろう。

(守備面)

 打球への反応・動き出しが、実に素晴らしい。そのためいち早く落下点に入ることができ、極めて広い守備範囲を誇る。キャッチングが上手いとか、ポジションニングが上手いとか、そういった技術的なことはまだまだも、身体能力の高さをプレーにつなげることが実に上手い。

 気になる点をあげるとすれば、スローイング。肩自体はA級だし、送球の形も悪く無い。しかし中継のいないところに投げてしまったり、守備位置を飛び越えるような後先を考えないで投げてしまう返球が気になる。もう少し他の選手のポジションニングも把握してから、送球できるようになれる視野の広さを養いたい。けしてボールを雑に扱うとか、そういうプレーヤーではないのだが。外野間では指示を出したりと協調を図れるのだが、内野との連携が。この辺は、まだまだ勉強が必要だろう。

 肩・足・守備なども、実に高いレベルにすでにある。彼の素晴らしいところは、身体能力に奢ることなく、誰よりも素早く反応し、そして次の動作に移行できるスピードの速さにある。その分、ボンヘッドも多くなりがち。その辺を一歩引いて、考えてプレーできるようになると良いのだが・・・。けして悪気のある選手ではないが、そういったスタンドプレーは目に余る。それでもその紙一重のプレーこそ、彼の最大の魅力。そういった魅せることのできるプレーこそ、彼がプロから高い評価を最大の理由だとも言える。


(打撃内容)

 春までは無理して引っ張りにかかり、引っ掛けてしまう打球が目立っていた。しかしこの夏は、徹底的にセンターから右への意識が持てており、その辺が実に上手く試合でもハマった気がする。春からの大きな違いは、そういった意識づけが明確にできるようになったこと。

<構え> 
☆☆

 前足を軽く引いて、グリップは高めに。腰の据わり・全体のバランスは並ぐらいだが、両目で前を見据える姿勢が良くない。これだと、目に錯覚が起こって的確にボールを追うことができない。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときには動き出す、「早めの仕掛け」を採用。オコエは、元来ボールをはじき返す、コンパクトヒッターだと私は思っている。それでも体に力があるので、二塁打・三塁打などが必然的に多くなるのだが。その根本を、見失いで欲しい。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足をそれほど上げずまわしこんで、ベース側にインステップして踏み込む。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でも、スピードの変化には対応できるはず。

 ベース側にインステップして踏み込んでくるので、外角に意識があるのがわかります。踏み出した足元もブレないので、外角の厳しい球や低めの球にはついて行けます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形は早めに作れており、速い球に立ち遅れる心配はありません。しかし「トップ」自体はそれほど深くなく、腕っ節や体の力ではじき返している印象はあります。バットの振り出しも極端ではないものの、少し遠回り。更にバットの先端であるヘッドも下がり気味なので、ボールを広い面で捉えられているわけではありません。そのためセンターから右方向への打球は良いのですが、内角の捌きは窮屈になりがち。

 それでも打ててしまうのは、彼のヘッドスピードが鋭く、体の強さがあるだけに、多少ロスのあるフォームでも物ともしないで結果に結び付けられるからでしょう。スイング自体の弧も小さめで、意外にコンパクトに見えるスイング。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げは静かなので、それほど目線は動きません。体の開きは我慢できていますし、軸足にも強さは感じます。軸はシッカリしているので、その辺は高く評価できます。

(打撃のまとめ)

 確かにスイング軌道は外回りですので、プロでは打撃で苦労する可能性は充分考えられます。それでも動作自体はコンパクトでシンプルですし、軸も崩れないので抑えるポイントはおさえられているのかなと。むしろ体の力も強いので、プロのスピードや変化球の切れ・配球などに馴れてきたら、それなりに対応してしまうのかなとも思います。

 あとU-18のワールドカップを見ていて驚いたのが、内角の捌き。技術的にはめちゃくちゃなのですが、天性の反応良さで内角に来たかと思ったら、瞬時に体を開いて対応してしまったところ。やはりこの選手の持つ、瞬時の反射神経と、それを動作に移行できる運動能力の高さは、打撃でも生きるのではないかと実感。プロでも理屈や技術を度返して、いずれはレギュラーに育つ選手ではないかと思います。

(最後に)

 現状は、外角の球を真ん中~右方向に打ち返すことに特化したスイング。内角を打つときに、いかに対応して行けるのかが最大の課題でしょう。盗塁の技術・癖を盗む習慣、守備での返球などの課題もありますが、圧倒的なポテンシャルで、これらの問題を凌駕して行くような選手に育つのではないかと期待します。

 しかし現時点では、そこまで絶対的な評価はできないかなというのが率直な感想で、この選手を上位指名してまで欲しいかと言われれば、個人的にはNO.です。まぁ春までは下位指名なら美味しい選手だなぁという感じでしたが、ここまで全国で実績を残し、また打撃でもセンターから右方向への打撃に徹しきれた姿をみると、もう少しは評価を高めないと行けないかなとは思いました。将来的には、2割8分・15本級でも、守備・走塁で魅了するような選手に育つことを期待します。


蔵の評価:
☆☆☆


(2015年 U-18ワールドカップ)











 オコエ 瑠偉(関東一・3年)中堅手 183/85 右/右





                     「柔軟性がねぇなぁ」





 ショートゴロ・ショートフライ・サードゴロと、ボールを引っ張りにかかり、創意工夫なく凡退を繰り返す彼の姿を観て、正直そう思って見ていた。しかし四打席目に、その意識が変わったことを直感。神宮第二球場の打ちっ放しの屋根の上を遥かに越えてゆく、特大のファールを打つ。続く真ん中高めの甘い球を、逃さずセンター前にはじき返す。更に次の五打席目には、右中間を深々と破るツーベース。それまでの強引なイメージが、一変される瞬間だった。


(守備・走塁面)

 オコエが現時点で最も評価できるポイントは、中堅守備ではないのだろうか。打者一人一人によってポジションニングを変え、常に他の外野手に声をかけながら連携を図っている姿をみて、昨年よりも考えてプレーするようになっている。それも試合最初だけかと思っていたが、試合終盤までその意識を持続させていた。昨年までは、何処か身体能力に頼ったプレーをしている、そんな感じに見えていたので、その辺は心身ともに大きく成長しているのではないのだろうか。

 また打球への反応、落下点までの入り方を見ていても、余計な動きがなく打球勘も悪くない。特に快速を活かした広い守備範囲は確かで、前に落ちたかと思った打球を何なくアウトにして魅せる。またライトフライの打球でも、補球できるところまで追いついているなど、その守備範囲の広さ・打球処理は想像以上のレベルに。また地肩も強く、外野フェンスから中継の内野手まで強い返球が出来ており、かなり地肩が強いのは間違いない。こと守備に関しては、プロの外野手として充分やって行ける素材。

 逆に走塁に関しては、昨年よりもかなりウエートが増したせいか?走っている姿を観てもどこか重苦しい。それでも右打席からの一塁到達タイムは、4.25秒前後(左打者換算で4.0秒前後に相当)であるから、昨夏計った時と変わってはいない。これをドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 53 程度で、平均を少し上回っているぐらい。

 しかし4打席目に出塁し二塁走者になった時には、捕手から二塁送球されると迷いなく三塁へ向かい次の塁を陥れるなど試合後半ではその俊足ぶりを発揮。更に最終打席の右中間を破るツーベースでは、二塁到達8.4秒ぐらいと、加速するとかなり速いことを印象づけた。この選手は大型故に、走りだしから加速までの時間はかかる。しかし二塁打・三塁打など長く走る場合は、その脚力は遺憾なく発揮される。盗塁をバシバシ決められる技術があるかは今でも疑問だが、相当な走力は秘めていそう。

(打撃内容)

 全体的に「硬く」柔軟性に欠けるため、打てるポイントはかなり限定されるのではないかと考えられます。スイングスピードが際立って速いわけではないのですが、腕っぷしの強さを活かし、打球が強いのが特徴。その辺の体の強さは、ニ打席目のショートフライの時に中々打球が落ちてこなかったこと。第四打席に魅せた、ゴルフ場の打ちっぱなしの屋根を遥か上を越えてゆく特大のファールをみて、この選手のパワーは相当なものなのだということを強く実感しました。

<構え> 
☆☆☆

 前の足を少しだけ引いた形になっており、グリップは高めに添えます。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスは並ぐらいでしょうか。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下がりきった時に動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。これは、典型的な中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターが扱うタイミング。ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えますが、アベレージヒッターなのか長距離打者なのか、特徴が見えづらく中途半端な選手が多いのもこの仕掛け。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」はそれなりで、速球でも変化球にもソコソコ対応。ベース側にインステップして踏み込んでくるので、外角を強く意識しているのがわかります。踏み込んだ足元はブレないので、外の球をしっかり叩くことも出来ますし、「開き」を我慢出来ているのでセンターから右方向への打球も可能です。

<リストワーク> 
☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」に近い位置にグリップを添えているので、速い球に立ち遅れる心配はありません。しかしあらかじめグリップを引いていると、どうしても前の肩が後ろに引っ張られて力みやすくなってしまいます。そうするとリストワークに遊びがなくなり、スイングが硬くなってしまいます。彼の打撃に柔軟性を感じないのは、素材としての固さだけでなく、こういった打ち方にも大きく影響しているのではないのでしょうか。

 バットの振り出しも、けしてインサイド・アウトではありませんが、それほどロスなくボールを捉えることが出来ています。スイングの弧は小さくコンパクトで、フォロースルーを活かすことはありません。スイング自体は強打者ではないのですが、腕っぷしの強さや天性の体の強さで強烈な打球を生み出します。

 ボールを捉えるときも、それほどバットの先端であるヘッドが下がっているわけではないので、ミスショットが多いわけではないのでしょう。問題は、真ん中~内角よりの球を上手く捌けない、そこに彼の脆さがあると言えます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動は平均的。体の開きは我慢できており、軸足は地面から真っ直ぐ伸びて安定。軸足の内モモの筋肉が発達しており、強い打球を生み出す原動力になっています。

(打撃のまとめ)

 スイング自体は、昨夏から大きくは変わっていません。しかし大幅にウエートが増え、打球自体の強さは増しているように思います。バリバリの強打者に見えますが、スイング自体はコンパクト。独特の硬さは、あらかじめグリップを引いて構えることで、どうしても力みを作り出してしまっているから。

 更にベース側にしっかり踏み込んで来る分、どうしても内角の捌きは窮屈になって捌けません。打球自体は、引っ張りだけでなく、センター・右方向と打ち分けることができ、無理に打とうとしなければ、打ち分ける技術はあります。

 上のレベルに混ぜると、やはり率が残せるのかというのが問題。その根本的な対応力の無さを、いかに夏までに許容範囲のレベルまで引き上げられるかが、課題ではないのでしょうか。


(最後に)

 守備や強肩という意味では現時点ですでに高いレベルにありますし、秘めたる走力も含めると、高校からプロに行くべき素材だと考えます。しかしその一方で打撃の確実性に乏しいところを、どう見るかで評価も分かれそう。個人的には、これだけの潜在能力を持っている選手は、全国に殆どいないことを考えると、現時点でも☆を付けても良いかなと感じます。

 しかしこの評価が、夏の大会で更に上がるのか、それとも☆がなくなってしまうのかは極めて流動的。しかし今日見てみて改めて、持っている能力は高いというのを実感させられました。夏にもう一度見てみて最終評価をしてみたいと思いますが、春の時点でも指名リストに名前を載せてみたい選手でした。


蔵の評価:



(2015年 春季東京都大会)



 









 オコエ 瑠偉(関東一2年)中堅 182/76 右/右
 




                  「ポテンシャルは相当高い」





 昨年オリックスから2位指名されたガーナ人ハーフだった 宗 佑磨(横浜隼人)内野手同様に、オコエ 瑠偉 もまたナイジェリア人とのハーフであり、日本人には中々いない高い身体能力を持っている。2015年度の高校生の中でも、その潜在能力は全国指折りの存在だと言えよう。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打席から4.3秒前後。これを左打者に換算すると 4.05秒ぐらいに相当する。どうしても180センチ台の大型なので、小回りが効くタイプではない。したがってトップスピードに乗るまでは、少し時間がかかるタイプのようだ。一塁到達タイム以上に、実際の走力は高いとみる。

 この俊足を活かし、中堅手としては広い守備範囲を誇る。ただしキャッチングや打球への勘などを含めると、現状は図抜けて上手い外野手とはいえない。また宗は非常に丁寧にプレーするのが印象的だが、この オコエ はそれほど丁寧といった感じではない。地肩は結構強そうで、宗が遊撃手として中の上ぐらいのレベルだったが、オコエは外野手としてはかなりの強肩ではないのだろうか。

 いずれにしても、まだまだ持っている身体能力を、充分活かすまでには至っていない。ただし持っているポテンシャルは高いので、これから伸びてゆく余地は残されている。





(打撃内容)

 ベース側にインステップして踏み込むので、どうしても内角の捌きが窮屈になり、そこを攻められることが多い。

<構え> 
☆☆☆

 両足を揃えたスクエアスタンスで、グリップは高めに添えます。腰の据わり、全体のバランス、両目で前を見据える姿勢も並ぐらいであり、特に可も不可もなしといった感じだろうか。

<仕掛け> 平均的な仕掛け

 投手の重心が下がりきった底のあたりで動き出すので、「平均的な仕掛け」を採用。ある程度の対応力と長打力を兼ね備えた打ち方であり、中距離ヒッターやポイントゲッターが多くみられます。

<下半身> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」はソコソコであり、速球でも変化球でもそれなりに対応。ベース側にインステップして踏み込んでくるので、外角を意識しているのがわかります。踏み込んだ足元はブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも喰らいつけます。

<上半身> 
☆☆☆☆

 どうしても腕っ節の強い腕力で打とおうとする傾向はありますが、早めに打撃の準備である「トップ」の形を作り、速い球には立ち遅れません。バットの振り出しも上からコンパクトに振り下ろされており、大きなロスは感じません。バットの先端であるヘッドも下がらず、それほど大きな弧やフォロースルーは使わず、体の力で長打に結びつけてしまいます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはそれなりで、目線の上下動は平均的。体の開きは我慢出来ていますが、軸足の安定感は並ぐらいでしょうか。

(打撃のまとめ)

 特に理屈でなく、天性の動体視力・反射神経で対応出来てしまうのかなという印象は受けます。それでも思ったほどスイングに悪い癖がなく、足元も盤石で基本は抑えていると感じます。

 今後も内角を厳しく攻められることが予想されますが、それに対しいかに対処するかで、今後の人生は変わってきそう。少し踏み込みを緩和したり、パッと内角のスペースを空けることで、この欠点を改善して行って欲しい。


(最後に)

 まだまだ守備・走塁に関しては、持っている資質を充分に活かしきれているとは言えません。また打撃も、内角の捌きに課題を抱えており、最終学年ではどのように対処してゆくのか注目されます。宗などは全く体を開かずに内角を捌く特殊技術がありましたが、オコエにはそれがありません。しかしその分現状は、外角をキッチリ叩ける形にはなっています。

 それでもスイング軌道に悪い癖はなく、その点では好感が持てました。果たして何処まで伸びるのか、高校からプロ入りできるのか、2015年度はぜひ追いかけて見たい一人。全国大会の出場経験はありませんが、その能力を全国指折りの外野手だと言えるでしょう。


(2014年夏 東東京大会)