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山本 武白志(DeNA)内野手のルーキー回顧へ







 山本 武白志(九州国際大附3年)三塁 187/85 右/右





                  「甲子園では存在感を示せたが」





 甲子園で3本のホームランを放ち、改めて注目された 山本 武白志 。 父は、ロッテでも監督をした 山本 功児氏。そのため入学以来、その存在は注目されてきた。そんな中での、最後の夏だった。

走塁面 走塁偏差値 36.4 

 一塁までの到達タイムは、右打席から4.65~4.85秒ぐらい。これを左打者に換算すると、4.4~4.6秒ぐらいに相当する。福岡予選の7試合でも盗塁は0個であり、走力に関しては期待できない。ちなみにこのタイムを、ドラフト指名される右打者のタイムで偏差値化すると、36.4 というから相当遅い部類に入る。

守備面

 打球への反応が鈍く、キャッチング・スローイングのすべてで厳しいと言えます。昨年から、この傾向はハッキリしており、一年経っても変わっていなかったのは大いに気になります。それでも昨年は強肩ぶりを魅せてくれていたのですが、今年は送球が乱れるのを恐れて、強い送球ができなくなり返球が弱々しくセーブされたものになっていたのも気になります。

 昨年の 岡本 和真(智弁学園-巨人1位)と比べても、それ以下ではないかと考えられ、プロで三塁は厳しいのではないかと。ちなみに今年の岡本のイースタンでの守備率は、三塁手で.926厘 。プロの三塁手ならば、.950厘ぐらいを望みたいところなので、やはり物足りないのは確か。それでもここまで守れるとは、正直思いませんでした。もう1,2年徹底的に鍛えれば、平均レベルの三塁手になれるかもしれません。

 そう、プロで最も伸ばせる資質があるとすれば、それは守備力。そう考えると、全くダメと見限られるかは微妙なラインかと。

 いずれにしても、守備・走力に関しては、相当プロのレベルでは下位レベルであり、苦労することが予想されます。しかしあくまでも打撃が売りの選手なので、そういったことに寛容にならないと、拾って行ける人材はいなくなります。

(打撃内容)

 高校通算は、30本に満たない選手であり、あまり打球が上がりません。もしろ腕っ節の強さを生かし、強烈な打球で野手の間を抜けて行くタイプの強打者。それでも引っ張るだけでなく、右方向にも打ち返す幅は持っています。しかし甲子園でのホームランを見ると、実に打力してポ~ンと対空時間の長いホームランを放って魅せました、まるで 山崎武司(楽天)のような、天性のホームランアーチストの打球でした。ひょっとすると、甲子園何か掴んだのかもしれません。

<構え> 
☆☆☆

 前足を引いて、グリップの高さは平均的。あらかじめ、少し捕手側に引いて添えられています。腰の据わり具合、両目で前を見据える姿勢、全体のバランスとしては並ぐらいでしょうか。どうしても構えから固さが感じられ、それが打撃にも出ています。

<仕掛け> 遅すぎ

 早めに引いていた足を真っ直ぐに揃え、つま先立ちして構え直します。本格的に動き出すのは、投手がリリースを迎える少し前。遅すぎるタイミングでの始動だといえ、打てるタイミングは極めて限られてしまいます。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」がなく、打てるポイントは限られ点の打撃。そのため緩急をつけられると、スピードの変化には脆い一面があります。

 ベース側に小さくインステップして踏み込むので、外角を意識したスタイル。踏み込んだ足元もブレないので、長く壁を作って右方向への打撃も可能にします。外角一杯の球や低めの球にも、食らいつけるスイングではあります。しかしその反面、真ん中~少し内角よりでも、窮屈な打撃になってしまうでしょう。

<リストワーク> 
☆☆☆

 あらかじめグリップを捕手方向に引いて構えており、打撃の準備である「トップ」の形をつくるまでは遅れません。これにより始動の遅さを補うことはできていますが、どうしても引いて構える選手は力みが生じてしまい、柔軟性が損なわれ脆くなりがち。彼が打撃が固く感じられるのも、このへんにも一つ原因がありそう。

 バットの振り出しは極端ではないのですが、インパクトまでは遠回りになりがち。またバットの先端であるヘッドが下がり気味なので、ボールを広い面で捉えられず、打ち損じが多いスイングになっています。

 ボールを捉えてからのスイングの孤は、それほど大きくはありません。しかしフォロースルーでバットを引き上げているので、強引にでも打球を遠くに運ぼうという意識は感じられます。持っている体の強さが桁外れなので、金属バットならば遠くに飛んでゆきます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが殆どない割には、目線はそれなりに動いている感じ。体の開きは我慢できていますが、軸足は結構打ったあとに形が崩れてしまっています。綺麗に軸の回転で打てている、そういった感じはしません。

(打撃のまとめ)

 体の力がケタ違いなので、軽く捉えた打球でもスタンドインできるパワーがあります。しかし現状は、腕力に頼ったスイングであり、木製バットでは中々スタンドインするのは難しいのではないのでしょうか。しかし甲子園で放ったような、脱力した形からポ~ンと空高く放った感覚を掴んでいるのならば、今後大きく、打者としてのタイプが変わって来る瞬間かもしれません。

 昨夏、小野 郁(西日本短大附-楽天2位)投手の、150キロ近いボールを2年生ながら苦になくはじき返していただけに、スピード能力に対応しうる眼の持ち主であることは証明済み。またボール球を振らず、自分の打てる球だけに絞り、その球を逃さない優れた資質は持っています。

(最後に)

 現状守備力・走力に欠け、プロでも一塁ぐらいしか厳しいのではないのか? という疑問は持ちます。また腕力に頼った打撃であり、柔軟性に欠ける素材が、将来的にどう出るかは気になるところ。

 ただしボールを飛ばすのに不可欠な、内モモの筋肉の強さ・始動の遅さ(若干は早める必要あり)・フォロースルーなども使えることにあり、技術さえ身につけていければ、プロでも飛距離で勝負して行ける選手に育つかもしれません。その片鱗を、甲子園で魅せてくれました。

 何よりプロ野球界で大成した父を持つという血筋の良さと、スピードボールに対応しうる天性の「眼」は持っており、そこに可能性を見出すことはできるでしょう。個人的には、ちょっと厳しいかなと思える部分もあります。しかしこういった選手は、アマで力を付けてからプロ入りというタイプではないので、早い段階からプロ入りさせて、一か八かで勝負した方が好いのではないのでしょうか。

 実際ドラフト会議では、何処かに下位指名では拾われると思っています。若干の可能性に期待して、私も指名リストに名前を残してみることにします。少し感じは違いますが、定岡 卓摩(福岡城東-ソフトバンクなど)の時を思い出します。


蔵の評価:



(2015年夏 甲子園)
 








 山本 武白志(九州国際大附2年)三塁 187/87 右/右





                   「親の七光りなんて言わせるな」





 ロッテの監督なども務めた 山本 功児 の息子として注目される 山本 武白志 。清水 優心((日ハム2位)や古澤 勝吾(ソフトバンク3位)などのいた強力打線を形成する九州国際大附打線においても、2年生ながら6番・三塁手として出場している実力者。187/87 の堂々たる体格から繰り出される打球は、福岡を代表する右打者としてマークされている。

(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、右打席から4.65秒前後(左打者換算で4.4秒前後に相当)ぐらいだから、これはかなり遅いとみて良いだろう。まぁ打撃で勝負といったタイプですし、見るからに足でアピールするようには見えません。

 三塁手としての動きもいまいちで、けして上手いサードとは言えません。打球への反応、キャッチング・スローイング共に、何か危なかっかしい感じがします。地肩だけは結構強そうなので、その点では評価できます。今後の成長次第ですが、現状は上のレベルでは一塁以外では厳しいかなという気は致します。

こうやってみると、地肩の強さはあるものの、守備・走塁ではかなり劣っていると考えて良さそうです。

(打撃内容)

 小野 郁(西日本短大附-楽天2位)投手から、甘く入ったスライダーを左中間を破ったり、外角のストレートをライト方向に大きなフライを打つなど、ドラフト上位レベルの投手にもしっかり対応出来ていた点は高く評価できます。

<構え> 
☆☆☆

 両足をほぼスクエアに揃えて、グリップの高さは高め添えられた強打者スタイル。腰の据わり具合・全体のバランスは悪くありませんが、両目で前を見据える姿勢はもうひとつ。更に全く体を動かすことなく構えるので、どうしても固く見えてしまいます。

<仕掛け> 遅めの仕掛け

 投手の重心が下がりきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。これは、ボールを出来るだけ引きつけて叩く、長距離打者か生粋の二番打者に多く観られます。彼の場合は、完全に前者だと考えられます。

<足の運び> 
☆☆☆

 始動~着地までの「間」は殆どないので、どうしても打てるタイミングは点になります。そのため狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。しかし甘い球を逃さないことはできているので、この打ち方で問題はありません。

 踏み込んだ足元もブレないので、外角の厳しい球や低めの球にも喰らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 あらかじめ打撃の準備である「トップ」に近い位置にグリップを添えており、始動の遅さは補えています。気になるのは、バットの振り出しが遠回りで、ボールを捉えるまでに素直にバットが出てこないこと。それでもインパクトの際には、バットの先端であるヘッドは下がっていないので、広い面でボールを捉えることができ、打ち損じは少ないように思います。

 腕っぷしの強さを活かし、打球は強烈。しかしフォロースルーを使ってボールを運ぶわけではないので、それほど打球は上がらないのではないかと考えられます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げが殆どない割には、結構目線が動くのが気になります。それでも体の開きは我慢出来ており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びています。特に内モモの筋肉が発達しており、強烈な打球を生み出します。

(打撃のまとめ)

 仕掛けの遅さと内モモの筋肉の強さからも、フォロースルーが使えるようになると、もっと長打が増して来るのではないのでしょうか。現状は、スイング軌道が遠回りなのを改善し、確実性を増したいところです。

(最後に)

 恵まれた体格、甘い球を逃さないボールの絞り込み、小野(西日本短大附)レベルの投手相手でも苦にしない対応力には見るべきものがあります。また血筋の良さは、今後の成長を見込む上で大きな後押しにもなります。

 三塁守備あたりを無難にまとめられるようになり、打撃での成長が加わるようだと面白いかもしれません。横田 慎太郎 (鹿児島実業-阪神2位)外野手も、下級生の頃は荒っぽさも結構あったことを考えれば、これからの成長も期待できそう。今後どのぐらいの成長を遂げてゆくのか、春季大会が楽しみです。今後九州屈指の右打者として、ドラフト戦線に名前が浮上して来ることを、期待してやみません。


(2014年夏 福岡大会)