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廣岡 大志(ヤクルト)内野手のルーキー回顧へ







 廣岡 大志(智辯学園3年)遊撃 183/80 右/右
 




               「高校時代の山田哲人(ヤクルト)にちょっとダブる」





 昨年の時点で、巨人に1位指名された 岡本 和真 よりも、この 廣岡 大志 の方が気になっていた。その最大の理由は、高校球界でもトップクラスのストレートを投げる投手達の速球を、岡本以上に確実に芯で捉えていたから。あれから一年、どのぐらい成長していたのか? 残念ながら充分に確認できずに終わってしまった。幸いにして、今年の打撃の映像はあったので、フォームの変化などを中心に考えてみたい。


(プレースタイル)

 ボールを捉えた時の飛距離はあるものの、先輩の岡本和真のようにスラッガーというタイプではないように思います。恐らくスカウトは、履正社高校時代の 山田 哲人 とダブるものがあったのではないのでしょうか。個人的には、今江 敏晃(ロッテ)のようなタイプが、目指すべき方向性かと思っています。


(走塁面:走塁偏差値 41)

 昨年計測した時は、一塁までの塁間を4.4秒前後とたいしたタイムは計測できませんでした。これは、左打者に換算しても4.15秒ぐらいでありプロの基準を満たす程度の脚力。実際にドラフト指名された右打者のタイムで偏差値化すると、41 程度と遅い部類になります。

 しかし隙あらば次の塁を陥れようという姿勢も見られますし、実際にはもっと早いタイムが出せると思っています。イメージ的には、中~中の上ぐらいの脚力はあるのではと。ただしプロで足を売りにするほどの、絶対的なものがあるかと言われると疑問ですが。

(守備面)

 昨年は、右翼手として甲子園に出場。打球への反応・追い方・キャッチングはそれほど上手い感じはしませんでしたが、地肩は基準以上のものがありました。今年はショートを守っていたという話ですが、確認できていないのでなんとも言えません。ただしプロのショートというのは敷居が高いので、三塁あたりを守れるぐらいの能力があればという感じでしょうか。この辺は、未確認なので自信が持てません。

(打撃内容)

 高校通算25本塁打のパンチ力はありますが、広角に打ち返す中距離ヒッターというイメージを受けます。特に素晴らしいのは、速球に対し、滅法強い反応の良さにあります。プロレベルのスピードに対しても、短時間で対応できる可能性を感じます。打撃フォームに関しては、この夏の奈良県大会のものを参考にさせて頂きます。

<構え> 
☆☆☆

 前の足のカカトをあげて、ほぼスクエアスタンスで打席に立ちます。グリップは高めに添えつつ、腰の据わり具合・全体のバランスは並ぐらいですが、両目でしっかり前を見据えられています。両目で球筋をしっかり追うということは、錯覚を起こすことなくボールを捉えることができる大事な要素。

<仕掛け> 平均的

 打席によって動き出すタイミングが結構違うので、どのタイミングで動き出しているのか掴み難いタイプ。おおよそ投手の重心が下がりきったあたりで動き出す「平均的な仕掛け」を採用しているように見えます。

 ある程度の確実性と長打力をバランスよく兼ね備えた、中距離打者やポイントゲッターに多く観られる始動。しかし一つ間違えると、特徴の見えづらい中途半端な位置づけに陥ります。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を引き上げてまわしこんで、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこ取れており、速球でも変化球でもそれなりには対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプでしょうか。特に苦手の球は少なく、幅広く対応できるタイプかと。

 また踏み込んだ足元は、インパクトの際にはブレません。これにより外角の厳しい球や、低めの球にも食らいつくことができます。

<リストワーク> 
☆☆☆

 バットを引くのが遅れがちで、打撃の準備である「トップ」が立ち遅れることがあります。その辺は、充分に注意したいポイント。それでも速球には滅法強いので、それでも打ててしまう自信からかもしれません。

 バットの振り出しの際には、バットを寝せてそれでいてバットの先端であるヘッドは下げないようにして、広い面でボールを捉えることを意識。確実性は高まりますが、打球を上げる選手のスイングではないように思います。

 ボールを捉えてからも、スイングの弧は大きくなく、フォロースルーも取れているわけではありません。しっかり振りぬいて、野手の間を抜けてゆくタイプなのでは? そこからは、スラッガーのスイングではないことが伺えます。

<軸> 
☆☆☆

 足の上げ下げはありますが、それほど目線の上下動は気になりません。体の開きも我慢できていますが、軸足は少し前に傾きがち。前に突っ込んだりすることが多いかもしれないので、自分のポイントまで引きつけて叩くことを意識したいですね。

(打撃のまとめ)

 昨年の時点で、ドラフト上位指名候補だった 田嶋 大樹(佐野日大-JR東日本)左腕のストレートを、しっかり打ち返すことができたのは、智弁学園でもこの廣岡だけでした。2年生当時から、世代屈指の剛球投手のストレートを苦になく弾き返していた、その動体視力とスイングには、目を見張るものがありました。

 昨年のフォームに比べると、かなり欠点は改善されており、技術的な成長も感じます。最終学年では全国大会との縁はなく、それでも2位指名という評価は、彼の打撃能力の高さを高く評価されたからでしょう。特に凄みを増したという印象はないのですが、順調に最終学年を過ごしてきたという印象をうけました。


(最後に)

 個人的には、昨夏から高く評価してきました。しかしこの一年の間、あまりドラフト戦線でも騒ぐれることはなく、正直2位指名だと訊いて、そんなに評価が高いのか?という驚きはありました。ストレートの非凡な対応力には光るものがありますが、プロでショートが務まるのか? 足はそこまで速くないだろうとかいうこともあり、まして岡本ほどの長距離打者というタイプでもない。それなのに、随分と評価が高かっただという違和感は感じます。

 しかし恐らくスカウトは、今をときめく 山田哲人 の履正社高校時代も、こんな感じだったんだというイメージをダブらせていたのではないのでしょうか。遊撃手としてのレベル・走力では山田には及ばないものの、打撃の内容は当時の山田とそれほど私も差がないのではないかとは思います。ただ山田の場合は、意識が高校生離れしていたのを強烈に覚えています。廣岡からは、そういったものを特別に感じないのですが、果たしてどうなのでしょうか? いずれにしても最終学年のプレーをちゃんと確認できていないので、評価づけはできないことを、ご了承くださいませ。将来的には、三塁&二塁&右翼あたりを、担うことになりそうです。


(2014年夏 甲子園)









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