15ky-24








 船曳 海(天理3年)中堅 183/77 右/左





                     「何かが違うだよなぁ」





 高校NO.1外野手とスカウトから評価される 船曳 海 。しかし彼のスイングを見ていると、何かが違うだよなぁという印象をどうしても受けてしまう。プロ志望届けを提出すれば、指名が確実な選手。しかし私には、大学進学を打ち出しのは正しい選択であったように思えてならない。その何かを、まずは考えてゆきたい。

走塁面:走塁偏差値 63.4

 一塁までの到達タイムは、左打席からコンスタントに4.0秒を切ってきます。おおよそ 3.9秒前後。これをドラフト指名された左打者のタイムで偏差値化すると、走塁偏差値は 63.4 となる。プロ入り選手たちの中でも、かなり上位レベルであることは間違いない。

 しかしこれだけの脚力を持ってしても、奈良予選の5試合では僅か1盗塁。実は、最終学年では春・夏3試合の甲子園では0盗塁。レベル差も大きかったU18のワールドカップでは、ようやく9試合で4盗塁を走っているが、けして盗塁の上手い、あるいは積極的に仕掛け来る選手ではないことがわかる。走れる身体能力はあるものの、まだまだ実戦では上手くは活かせてはいない。

守備面

 この俊足を生かし、広い守備範囲が自慢。しかし打球への反応、落下点までの入りなどを見ると、けして上手い外野手ではない。この辺は、プロで最も伸ばせる部分なので、今後の成長は見込めるとは思うのだが。地肩に関しては、中の上レベル以上はありそうで、こちらは上のレベルでも通用するはず。

現状は、走・肩の能力はあるものの、盗塁・守備の技術は、けして高いとは言えません。





(打撃内容)

 昨秋神宮大会で見た時は、スイングが弱々しいのが気になりました。しかしだいぶ選抜の頃と比べても、ヘッドスピード自体は鋭くなってきています。しかしこの選手、何か身の入りが悪いというか、それを打球に伝えるのが上手く行っていないような気がします。それでも上手く捉えた時は、スコーンと遠くに飛んでゆくので、リストは強いのかもしれません。しかしそのスイングを見ていると、まだプロのそれではないといえます。この違和感を、いかに大学で払拭できるのか? 本物のスイングの芯の強さを磨いて欲しいところ。

<構え> 
☆☆☆☆

 前足を軽く引いて、グリップの高さは平均的。腰の据わり具合・両目で前を見据える姿勢・全体のバランスと、形としては非常に良い構え。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下るときに動き出す、「早めの仕掛け」を採用。これは、典型的なアベレージヒッターが採用する仕掛けで、対応力を重視していることがわかります。

<足の運び> 
☆☆☆☆

 足を軽くあげて、まっすぐ踏み込んできます。始動~着地までの「間」には余裕があり、ボールを線で追える選手で、速球でも変化球でも対応できます。

 まっすぐ踏み出すように、内角でも外角でも捌きたいタイプ。踏み込んだ足元もブレないので、外の球にも対応できます。

<リストワーク> 
☆☆☆☆

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるまでの自然体で、リストワークにも力みは感じません。スイング軌道は、けしてインサイド・アウトではありません。しかしながら、外の球を叩くまでにロスはなく、癖のない良いスイングだと思います。

 ボールを捉える時も、バットの先端であるヘッドも下がらずに、広い面でボールが捉えれます。ヘッドスピード自体は鋭いので、あとはそれを打球に上手く伝えられるスイングを身につけるべきではないのでしょうか。この辺は、体幹を鍛えつつ、もっともっとバットを振り込んで腰の入ったスイングを身につけて欲しい。

<軸> 
☆☆☆☆

 足の上げ下げは静かなので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢できていますし、軸足も大きくは崩れません。あとは、軸足の内モモの筋肉が弱いので、そのへんが強化されると打球の強さも増して来ると考えられます。

(打撃のまとめ)

 作られた左打者ゆえの脆さというか、弱さがどうしてもスイングに出ています。スイングの技術的なものは素晴らしいので、あとはもっともっとバットを振り込んで、強い打球を放つための筋力を養って欲しいところ。あとは、腰がグッと入って打球に上手く力を伝えられるように改良してゆくべきではないのでしょうか。どうしても、小手先で打っている印象が拭えません。

 その一方で、U18の時に見せた出塁率の高さは素晴らしいところ。特に9試合で13四死球を記録した、6割の出塁率には目を見張るものがあります。そういったセンスは、彼にとって大いに誇れるものではないのでしょうか。


(最後に)

 守備にしても走塁にしても打撃にしても持っているものは素晴らしいのですが、まだ本物ではありません。特に芯の入っていないスイングは、なかなか改善できないポイント。それをいかに、大学の4年間で改善できるかでしょう。

 技術的には殆ど治すところはないので、今の土台・プレースタイルを大切にしつつ、必要な筋肉をつけて行けば、きっと大学球界でも存在感を示せるはず。守備・走塁の技術も身につけ、本物になって次のドラフトに望んで欲しいと思います。もし今志望届けを提出しても、私は指名リストには名前を記しません。しかし4年後には、☆をたくさん付けられる選手になっていることを期待して、今後の成長を見守ってゆきたいですね。


(2015年夏 U18ワールドカップ)